アイランド・サバイバル編
「大変だぁ!」
帰って来て早々聞いたのは騒々しい声だった。
糸田兄弟が帰って来ていた。
淳の慌てた大声だった
「どうしたんですか?
そんなに騒い――」
「花山が攫われたぞ!!」
「......はい?」
胸倉を掴んで来るような勢いだった。
その後ろを見ると使用人たちが心の悔恨が滲み出ている、
迫真の表情を浮かべていた
事態は冗談では済まないことになっているようだ
「誰に攫われたって言うんですか?
ここは無人島のはず......」
そう言いかけて自分にも覚えがあった。
「な?
心当たりはあるだろう?
見たよな?
分かるよな?
アイツ等だよなぁ!?」
「お、落ち着いて!」
こういう時に一緒になって宥めてくれる弟も、
兄の背後でいたたまれない様子だ。
「一慶! 何があったかお前から教えてくれよ!」
「あ、ああそうだ! 俺なんかより一慶の方が説明が上手いからな!」
「......分かった」
神妙な面持ちで了承した彼に促されるままに、
リビングの大きなソファーに腰を据える。
全員が集合して、一慶に視線を寄せた
「僕たちは最初たった三人だった。
ええ、僕らしかいなかったんだから僕ら二人と花山さんの三人だった。
異常だとか、誰かがいなくなるようなことがあれば
真っ先に気付けるような人数なはずだった......だというのに、
アマゾンのようなあの森を歩いていた時、彼女が
消える瞬間を見ていなかった......!」
「ああ、そうだ......俺達は数分、いや、もっと長い時間を!
アイツがいないということに気付けなかった......」
「この唐変木がァ!!」
突如としてらしくもなく怒りを露わにしてリトルメイドが、
淳に飛び掛かった。
「その背丈は飾りかァ!
ノッポであるのは見渡すためだろぉ!!
貴様、お嬢を、お嬢を返せ!!
ついでに身長も寄越せぇ!」
「やめないか!!」
無抵抗にポカポカ叩かれる淳の上に馬乗りになったメイドを担ぎ上げた。
持ち上げるよりも持ち上げた後の抵抗の方が凄かった。
腹から下半身辺りを踵蹴りしてくる
「離せッ!
アイツは、アイツはあろうことか私たちが付いていないから心配だと
心情を吐露した時に、任せろって言っていたんだ!
なのに、なのに!!」
「お、落ち着け!!」
ソファーに落とすように戻した。
こちらも息切れする中、呆然とした表情から
焦ったように言葉を発した淳だった
「す、すまねえ!
あの時は......そう、あの時は守れると思ったんだ!」
「役立たずめッ!!」
罵詈雑言の限りの元凶を手で止めた。
リトルなら噛んでくる可能性もあるが、
このまま言いたい放題にさせていたら彼のメンタルが心配だ
「とにかくッ!
一慶、ここの原住民に攫われたのは確かだったのか!?
どこかで迷子だとか、はぐれたとかそういうのではないんだな!?」
「......ああ、それは確かだよ。
なんせ、こんなものが落ちていたのだからね」
一慶が出したのは手紙のようなものだった。
そこには不気味な血のような赤いインクで何か書かれている。
見たことも無い字だ
「そこに書いてあるんだよ、我らが娘は頂いたってね」




