夏休み編・57
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そうして我がチームは敗北し、
終わるはずだったビーチバレーボールはチームを変えて
続行となった。
主に二人の負けず嫌いの女子の申し入れによって......
「さっきうちのチームには足枷がいたのだ。
新しいメンバーを所望する」
「アタシは8割、いえ7割の力も出せなかった......
もう一戦やらせなさい!」
今度はチーム内で別れることになる。
リトルと美咲は殺気にも似たオーラをぶつけてくる。
これは有希さんと同じになるしかない
もはや目は彼女の手の動きしか捉えていなかった。
「さあ、決めようじゃない!
せーの!」
後出し気味に有希さんに合わせた。
手がごちゃごちゃして明らかに不正であったが、
メイドと幼馴染の出し手が同じパーであるために
アイコンタクトで、暗黙の了解が行われた
「えっと、ハル君がちゃんと出せなかったのでリトライを――」
「監督と一緒で決まりね!」
「ああ、宜しく頼むぞ。
我がエースよ」
「有希さん、今度こそ頑張るから宜しくね!」
自分を含め悪い三人である。
善良な彼女を押し黙らせた
あちらもチーム分けが出来たようだ。
別れを惜しむような友情まであちらには芽生えているが、
こっちはみみっちいものである。
誰のせいであるかは考えたくない
ドキドキの新チームだ。
ビックメイドと同じなら叩き潰されそうで怖い
一瞬、グーサイドに彼女が来そうになる。
心臓が早鐘を打ったが結局、
勘違いしていた所をビルに腕を引かれてパーのチームに行ってくれた
つまり我らがグーチームのメンバーは、
有希さん・吉沢さん・ミドルメイド・自分である。
誰も責めてきそうにない優しいチームだ
心からホッとする。
スポーツなどで役立たずとしてたらい回しにされることは
あまりなかったので、
嫌な初体験であったが最終的には良き場所に落ち着けた。
しかし、重要なことを忘れている。
先ほど何が自分を惑わせていたのかを......
当然、新加入の彼女等である。
それも今度こそ失敗を続ければ、
チームメイトの有希さんに見損なわれることになるだろう
悪意無きハニートラップとプレッシャーが同時に襲ってくる。
せめてもミドルと吉沢さんには前衛を頼みたかったが、
ミドルは攻めは苦手らしく受けを所望した。
守りが三人、さっきと同じ陣形、
トラウマまでもが己の精神を蝕んでいく
頭がおかしくなる一歩手前だ。
「第2試合、スタート~」
気の抜けたミドルメイドの声で、
緊張の試合が始まった。
「集中するんだ!!」
自分の顔をバシバシ叩く。
先ほどの美咲の猛攻の痕が疼く。
婿入り前の男になんてことしてくれたのだろうか
これも奴の作戦なのか!
「パーチーム、1点~」
何かが足元に落ちたとは思ったがボールだ。
既にサーブは打たれていた。
呆然としていてやられた
相変わらず有希さんからは励ましのエール、
不安そうなメイドの目線、
吉沢さんの膨れっ面......
ガラスのハートにヒビが入り始めた。
またもや、自分は哀れな戦犯になってしまうのか......!?
白昼の悪夢の終了を早くも切望するのであった。
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