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夏休み編・56

そうしたデバフを掛けられた自分はことごとくミスを続けた。

その度に美咲にご褒美では済まないお仕置きを喰らい、

耳元では毒舌をメイドが囁くのであった


身も心もボロボロだ。

しかし、そんなことよりも己の弱さのせいで

点差が開いていくことが許せない。


見ちゃダメだ、見ちゃダメだ!


そう言い聞かせても目線は彼女の胸に収束する。

運命のように!


「なにを......やってんのよ!!」


これで何度目か分からない幼馴染からの

闘魂張り手を頂く。

昔からの仲だからこそ、

そこは止めずに甘んじて受けた


決してドMなのではない。

今、必要なのは気付け薬だ。

男にだけ効く状態異常を治せる何かだ


吉沢さんに服を着るように提案するのは酷というものだ。

暑くて脱いでるだけ。

それを責めることはできない


だからと言って見慣れようとすると

釘付けになってしまう。


「なんてこった!!」


「それはこっちのセリフよ!

 わざわざ情けを掛けて貰って休憩を入れてもらうなんて......!

 奴らはあと3点!

 対してこっちは6点取らないといけないの!

 分かる!? 2倍よ!?」


「ああ、そうだ......2倍といえば、

 さっき俺が享受した幸せの度合いか......

 ツケが回ったか」


「何カッコつけてんの!

 いい加減夢から覚めろ!」


またもや気合を注入されるかと思い目を瞑ったが、

そうはならなかった。

瞼を開けるとそこには美咲を止める有希さんの姿があった


「なによ、止めないで」


「もういいでしょう?

 暴力は何も生みません。

 彼はあなたの加虐心を満たすための存在ではないんですよ?」


「加虐って......アタシはそんな―—」


「分かってます。

 熱くなる気持ちは。

 でも、勝敗よりも大事なことがあるでしょう?」


流石は委員長だ。

美咲を見事なだめると、

サディスティックウーメンを連れていってくれた


代わりに歩み寄ってきたのは意外な人物だった。


「か、監督......?」


「お前の動きを見ていて、どうやら何かに

 気を取られていると......私は睨んだ」


「......!!」


気付いて欲しいかったことだ。

ただ、勘付かれたくないことでもある


女子の胸に気を取られてパフォーマンスが落ちているなんて、

口が裂けても言えないことだ


「何も言わなくていい。

 私にはマヌケなことなどお見通しだ。

 なんせ筒抜けだからな。

 間抜けだけに」


「......?」


「コホン、とにかくお前はあることに注目しているようだな」


「それは......」


看破されてしまう。

しかし、これでいいのだ。


誰にも打ち明けられない悩みは見つけてもらうことでしか

救われない。

己の力で超克できないならば、哀れだろうと無様だろうと

指摘してもらう他あるまい


「お前は私たちメイドの内、誰かの胸部に凝視しているな?」


「え、そっち?」


「背丈の大きい方だろう?」


「中くらいの子だよ!

 誰があんな筋肉お姉さん......あ」


正直に悩んでいる事実とは多少違うが、

ついつい言ってしまった。

吉沢さんから目線を離すと、今度は彼女の胸を見ていることも事実だ


「ふん、やはりな」


「え?」


「彼女自身が見られていると言っていた。

 何故かまんざらでもない様子で」


「マジかよ......恥ずかしい」


塩を掛けられたナメクジのように消えてしまいたい。


「ウジウジするな。

 ナメクジみたいで気持ち悪いぞ」


「ナチュラルに胸中の例えを読むなよ......」


「どうにしろ、それでは役立たずが極まるだけだ。

 受け取るが良い」


そうやって投げ付けられたのはサングラスだった。

確か、試合前にリトルが麦わら帽子の上に着けていたやつだ


「お前......これを」


「あまりベタベタ触るなよ。

 付ければ少しはマシになるだろう」


「......サンキュー!」


装着した。

日差しを遮り、

色気付く魔力を振り払ってくれる素晴らしいアイテムだ。


それを手にした自分は、

まさに敗北とは無縁となった


「もう、何も怖くない」






結局、視界が暗くて見えずらいことで

戦犯となって負けた。

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