夏休み編・52
「はっ」
急に電源が入ったように起床した。
字の如く床から起き上がったのだった。
おかげで体の節々が痛い。
辺りにはお菓子やジュースの缶や、
テーブルゲームの残骸が
あちらこちらに散らばっている
酒でも飲み散らかした後の忘年会跡のようだ。
二人はせめてもクッションやベッドに寄りかかって寝ているようだが、
それでも良い目覚めを迎えることは出来ないだろう
「とりあえず戻るか......」
自分に言い聞かせるように呟くと
ゆっくりと退室する。
裸足で歩く朝の廊下は少しひんやりとしている
故に自室のドアを開けた時、
やたら熱気を感じた。
それは白き靄、湯気であった
ミストが顔に掛かり、
寝ぼけまなこを開眼させるとそこには
「おお、来たか。
早速身体を拭いてもらいたいのだが――」
全裸にタオル姿の花山が硬直して目の前に立っている。
入ってきたのが最初はメイドか何かだと思ったのだろうか
次のリアクションには懐かしささえ覚えた
「きゃああアアッッ!!」
そして続く動きも手に取るように分かる。
まさか唯一のお召し物を投げ付けてくるとは思わなんだ。
香り付きの上品なおしぼりみたいな
温かなバスタオルが顔に直撃
「んふっ」
「ノックも無しにレディの部屋に入るとは何事か!」
「俺の部屋でもあるんだから身構えとけよ......」
「も、問答無用! ハルが悪いぞ!!」
朝っぱらからキーキーと喚く騒音レディに投げ返すと、
服を脱ぎだした。
「何をしてるッ!?」
「俺も入るわ」
「ええっ!? こ、ここで脱ぎだすな!」
「互いに裸ならもう恥ずかしくないだろ......」
寝起きで自分でも何を言ってるのか分からないが、
遠慮なく身に纏うもの全て剥いでいく。
その様子を目の前の女は片手で身体をタオルで覆い、
手のひらで目を覆っている。
しかし、若干隙間から輝く瞳を覗かせている
「いやん、スケベ。
見ないでよ」
「なっ! こっちのセリフだ!!」
同年代の異性の前で恥ずかし気もなく素っ裸になると
浴室に入った。
何か文句を言われようものなら、同年代らしくもない
その幼気な女体を指摘するところであった
そうしてどこかに蹴躓いて浴槽に頭からダイブ、
胴体を強打。
湯の中で悶絶の叫びを上げた。
以後、よくよく考えたらいくらロリに見えるからと言って
寝ぼけて起こしてしまった厚顔無恥な行為の数々。
痛みにパニックになって溺れかけたとはいえ、
女子の残り湯を飲んでしまったことなど思い出したくもない
ちなみに花山の方はムッツリスケベがバレたのがバツが悪いのか、
あっちも目が合うたびに顔を赤らめて俯く。
気まずい関係になった人間がまた増えてしまった
それも同室とあっては、
日中のイベントぐらいは別々になれるようにと互いに
考えるのであった。
故に、難しい選択を迫られることになる




