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夏休み編・51

リビングにて治療を受けている。

淳に片足を伸ばすように持ってもらっている


「俺達の部活はたっぷり足を使う競技だからなぁ~

 有痛性痙攣はよく起こるから、対処は熟知してるぜ~?」


「ゆうつう......なんだって?」


「医学的名称ではそういうんだよ、こむら返りを。

 筋肉疲労や水分不足、または寒暖差が激しいと起きるから......

 ほら、水分取りなよ」


「ああ、二人ともありがとう」


一慶からドリンクを手渡される。

寒暖差は花山との生活について付き物なのを思い出す。

暑い外から帰って来ては部屋をキンキンに冷やすせいで、

部屋を出入りするだけで疲れていた


「まあ、こんなとこだろ。

 立てるか?」


「はい、なんとか」


「よーし! じゃあうちの部屋で遊んでいけよ!

 トランプとか色々あるぜ!!」


「その前に夕食だよ、多分走り回ることを想定して

 いつもよりかは遅めになったんだね......

 食べ終わってからゆっくり遊ぶとしよう」


今すぐにでも連れて行こうとする兄を一慶が

制してくれたおかげでゆっくり、部屋へと歩いて行けた。

まだ元気な彼らとテーブルゲームや体力は使わないにしても、

遊ぶには少し休養が欲しい。

それに夜通しぶっ通しの遊戯になる予感がする


そうしてヘトヘトな体を引きずっていって待っていたのは

半袖では極寒ともいえるカチンコチンな気温だ。

これにはカチンときた


「おい、花山......!」


しかし、そこに見えたのは間抜けなとろけ顔。

それにもうパジャマ姿だ。

昨日と打って変わって早寝である。

それも昼頃にも爆睡していたというのに、

寝だめでもしているというのか


それに気になるのは花山だけで寝支度をしたにしては

綺麗に済ませてある


そんな時にノックが聞こえる。


「はーい」


開くとそこにはリトルメイドがいた。

話すのは久しぶりである


「お嬢様はどうしてる?」


「寝てるけど......」


納得したように頷くと

冷たいブルーアイズが上目遣いと称するには鋭すぎる、

視線で見つめてきた


「やはりか。

 では言っておくが、絶対お嬢様を起こすなよ」


「そ、そんなの言われなくたって――」


「お嬢様は繊細なんだ。

 そして今までの疲弊もある。

 お前のような間抜けそうな奴は大きな音を出しかねない。

 細心の注意を払うこと。

 そして今夜はもうそのまま起こさないこと。

 夕食になってもだ。

 既に湯浴みや歯磨きなどは私たちが済ましてあるから、

 もうお前は手を出さないこと。

 一切、触れるな。

 それと麗しき寝顔に欲情して襲ったりしないこと。

 一切、お嬢様に近付かないこと。

 いいな?」


「......」


急な命令に口があんぐりである。

何故今になって警告を出してきたのか


言われたことが頭で反響する度に

苛立ちを覚え、姿勢の良い後ろ姿が見えなくなる前に

言い放った


「追っかけ役、おつかれさん!」


短時間で考えたにしては、なかなか

刺さる台詞だと自画自賛した。

分からないようにしていたのだろうが、

ちゃんと俺は見抜いているぞ、という気持ちを込めた


見抜いたのは自分ではないが関係ない。

煽ることが出来れば良かろうなのだ


そして、ロボットのように胴体はブレず

首だけをこちらに向けて薄い唇が動いた


「情けない叫びを上げながら

 逃げた末に、足を負傷する様な脆弱な爺さんに労われるほど

 軟な人生は送ってないわ」


そう残して、

年下の女の子は消えやがった。

大して年も離れてないガキにひ弱なジジイ扱いされた


「あのロリメイドがァ......!!」


怒りは暴食を生み、夕食も

その後の兄弟とのゲームという娯楽も夜更けまで喰らい尽くしてやった。



燃え尽きた貧弱な男の寝顔が床に倒れていた。

メイドの思惑通り、自室ではなく兄弟の部屋で朝を迎え、

花山の安眠を妨害することはまるでなかった

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