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夏休み編・50

「いや~、冷えたなぁ~

 丁度いいくらいの肝試しだったなぁ......

 あ、言っとくけど全然ビビらなかったからな」


「何言ってんだよ、兄貴......

 あなたの悲鳴でこっちのムードは激下がりだったんですけど?」


「うそっ、聞こえてたのかよぉ!?」


今は帰路の途中、

くたくたに走り疲れて兄弟の話を黙って聞いている。

あの後、走り去った吉沢さんに謝られたが快く返事もできずに

適当に頷いてノロノロ歩いている


自分のスタミナの無さにはホトホト呆れる。


女性陣はササッと先に家に向かい、

二人にはノロマの速度に付き合ってもらっている。

なんなら置いて行ってもらって構わないのだが......


「ヤマオは俺の悲鳴聞いたか!?」


「い、いえ......」


「ほれぇ! 一慶のうそつきっ!」


「そりゃ、最後の組にまで聞こえてたらスタート地点まで

 響いてることになるでしょうに」


先輩ともあろうお方がビビりだったか、

否かの証人にされている。

十分証拠は揃っているので淳の有罪は確定なのは

言わないでおこう


埒が明かないので話題を転換する。

正直気になることでもある


「一慶は......どうだったんだよ、有希さんと」


「いやいや......頼もしいところを見せつけるチャンスだったのに、

 一々兄貴の叫びの中にヒントがあってネタバレもイイとこだったよ」


「おいおい、酷い言いがかりだな!

 そんな叫ぶのに具体的な内容なんてあるわけないだろ」


「こんにゃくが首に~、とか

 走ったら何か出てきたァ~、とか」


やはり他にも走ると現れる何かを体験した人物がいた。

すかさず割って入る


「は、走ったら出てくる奴ってなんでした!?」


「見えなかったのか?」


「ええ、全く」


「ふふん、俺の動体視力を以てすれば楽勝よ。

 あれはクッション材を内包した振り回しやすい棒だったな」


なるほど、看板に書いたルールを破った制裁として

速度超過した者にお仕置きする係がいたらしい。

道理で呼吸が聞こえたわけだ


「誰なんだろうな、普通はビルさんだと思うけどォ......

 大きなメイドさんでも出来そうだな、でも女の人だし」


「言っときますけど、彼女結構力持ちですよ。

 ちなみにちょっと荒々しい」


「マジか!? 駄々こねて、あの人にパートナー頼まなくて良かったァ」


「やっぱり一人じゃ怖かったんだね」


優しさで肩に置いた弟の手を、思い切り兄は払いのけた。

頑固なものだ


その後もやたら観察力と動ける目を持った先輩は

ネタをバラしていく。


「最後追っかけてきた人は小さいメイドさんだったな。

 こんにゃくやってたのが余りのメイドさんだろうな」


「あんまり裏事情を言うもんじゃないよ?

 そうやってムードを守らない人には......ほら、

 そこにお化けが――」


「イヤアアァ!!」


面白半分で一慶が指で適当に示した方向を見るなり、

淳は叫んだ。

あまりの大げさっぷりに二人で笑っていると、


「何故、分かった?」


実物が登場した。


思い返せば帰りでショートカットしてきていたビルだったのだが、

馬鹿にするあまり森の主でも出てきたかと勘違いして、

男三人組は足を引っ張り合いながら家まで慌てて走った


度重なる脚力の酷使でゴール手前で足がつった。

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