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鬼教師

「失礼します、1年の山崎 治雄です...」



ああ~...嫌だ。

そもそも最初に名乗って部屋に入る、このルールも嫌だ

ここは生徒指導室、当然生徒を『徹底』指導して下さる先生方の巣窟だぁ...


当然おっそろしい教師しか取り扱われていない危険なゾーンだ。

狭い部屋にひしめく、どの先生の机にもぶつからないようにゆっくりと進んでいくと

俺を呼び出したご本人がいらっしゃった...


そうしてご機嫌を損ねないようにゆっくりとお声かけするのだ



「そ、染井先生...お、お呼びでしょうか?」


「あぁ!?」


「ひっ!」


この目の前のスキンヘッドで(夏ということもあって)サングラスという

どう見てもアウトでローな方が、

染井先生だ。


簡単な質問と称して飛ばしてくる数学の質問は鬼級に難しい。

それで出来ないと怒鳴り散らしたりするのだから

鬼そのものだ。



「あぁ...山崎か...」


「は、はい」


「...思い出したぞ、何でお前を呼び出したのかを!!」


「は、はいィ~...!」


もうこの大声が大っ嫌いだ...

何故古風の先生方はこう、怒鳴り声が大好きなのだ...



「お前...寝ていたな...?」


まあ、そうですよねぇ...

とばかりに愛想笑い


「へ、へへ...つい...」


バンッ!!


と、お決まりの机ドラム



「寝るとはいい度胸じゃねぇかぁ!!」


「ひィ~!!」


もう胸倉を掴んできそうな勢いだ。

一昔前ならされていた、

いや

この人の場合、最近このご時世の体罰に近い行為を全面的に禁止にする風潮を

知るギリギリまでやっていたに違いない。



「そこでだぁ...」


「は、はい...」


「お前に良いものをやろう...こいつは特別だ...」


そうやって俺にくれたのは


真っ白でキレーイなプリントの束だ。

当然本当に何も書いてないで真っ白なわけでなく、

余白が多いタイプのプリントだ


つまり!



「お前のために苦手とされることの多い、証明問題をたっぷり刷っておいた...」


「...っ!」


もう声にならない声が出始めた

俺が危機的状況に瀕した時に出てしまうものだ。



「しっかりと励めよ...?」


「あ、ああ、あああ...」


また意識を失いかけそうな...


そんな時だった...



「たのもぉー!!」


ノックも学年も名前の名乗りもなく、一人の女が大声を張り上げて乗り込んできた


誰だ...?


いや、誰も何も...


この声は...!



ソイツは俺を見るなりに全速力で色んな先生の机を蹴散らしながらやって来た



「待たせたなぁ、ハルよ」


ドヤ顔でこれから起こるであろう

恐ろしいことも知らずに、

救世主の気分で現れた花山であった。

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