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夏休み編・47

「びっくりしたね!」


なんだかんだで楽しくなってきたのが怖がっていた彼女で、

余裕ぶっていたこちらがしきりに辺りを警戒する、

逆転現象が起こっている。

どちらが率先して手を取り合っているかは、

もはや分からない


「完全に油断しきってたからね......」


やっと肝試しっぽくはなってきてくれたが、

本気で驚かしにくる姿勢には反感さえ抱いてしまう。

臆病な者ほど怒りで精神を持たせるのだ


不意を突かれまいと、

少し前とは打って変わって真剣に歩き始めた。


そうした中、吉沢さんの方は慣れが早いためか

落ち着いた調子で話始めた


「......続きで話すけど、弟はたくさんいるんだけどさ

 上にはお兄ちゃんもお姉ちゃんもいないの」


「長女なんだね」


「そう、女一人に男十人」


話ながらもキョロキョロは止めない。

しかし、徐々に沈む声で語るように感じられる彼女も気になる


「吉沢さんは弟たちに慕われてそうだよね」


「小さい内はね。

 でも、最近は冷たいかな......

 一緒にお風呂に入ってくれないし」


「そ、そうなんだ......」


慕っているからこそ弟たちも強く言えずに大変だろう。

容易にグラマラスを隠しもせず、

日常的に無防備に晒す彼女が目に浮かぶ


危うく妄想の渦に巻き込まれるところだ。

今は戦場にいることを思い返し、

背後を確認すると改めて周囲に目を向ける。


「いつ頃まで弟くんと妹ちゃんと風呂とか入ってた?

 今でも仲良いんでしょ?」


「裸の付き合いとはいうけれど、一緒に風呂に入らなくなるのが

 仲良しの切れ目ではないと思うよ......

 もう、覚えてないくらい昔かな」


「ふーん......」


吉沢さんこそ花山より箱入り娘かもしれない。

異性に対して羞恥がかなり薄い気がする。

現にボディタッチをされている、嫌ではないが。

めちゃ嬉しいが。

その誇るべき身体は早くに恥じらいを覚えさせるはずなのだが......


男子校や女子校などの出身が異性に過剰に意識しやすい故に、

反対に異性に囲まれて育つと恥を感じなくなるのだろうか


すぐにでもスマホで調べたいが、

生憎ライトを増やす行為が禁止のため没収されている。

そういうところだけシビアにされている


「やっぱりさ......下の子って甘えたがるよね。

 もちろん弟も可愛いけど、妹だったらどうだったんだろうって

 たまに思うんだ」


語り口は重い。

悩みを打ち明けるようだ


考えれば自分に置き換えると

今いる妹が十人と想定すれば、正直うんざりである。

可愛さに囲まれるが、ストレスは甚大であろう


裸で動き回れるところが制限されるのは

女の子以上に男としては自由を奪われた気がする。

そこは主観的意見であるけども


「大変だね、たくさん下がいるって」


「うーん、数は問題じゃなくてナツとしては姉妹が欲しかったな。

 だから二十人目になっても、妹なら構わないよ」


「う、うん......」


相談を受けているのだから極力、賛同してあげたいが

そこは何とも理解しがたいものだった。

やはり多くの兄弟を持つ者は精神が強いと感じる


加えて自分は当たり前のように同性・異性共に

下がいるので、彼女の視点とは大きくかけ離れているのかもしれない


それはある意味で妹に夢を見ているという可能性も読み取れる。


これは吉沢さんの目を覚ますため、と

我が妹か弟の駄目エピソードを愚痴も込めて

話すチャンスだと思って口を開こうとすると、


「でも、それは遂に叶わなくなったの......

 だからね?

 エリーちゃんを妹に思うことにしたの」


「......えぇ!?」


トンデモ発言が飛び出した。

我が兄弟たちのことを紹介するどころか、

花山という女が実にダメダメかを熱く言って聞かせなければならなくなった

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