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夏休み編・45

やはり読み通りビビりであった先輩はごねにごねた。


「だ、大丈夫だよなぁ?」


「昼間に散々解説してやっただろ!

 危なくない奴の方が多いんだから心配するなッ!!

 男だろ!?」


「後が閊えてるんだから早く行けっての!」


二人の気の強いお嬢に怒鳴られては行かないわけにもいかず、

懐中電灯片手にビクビクと出発した。

片方のお嬢に関しては、昨日ジェンダーハラスメントがどうとか

言ったばかりである。

一慶と一緒に出した自分達からの激励の声にさえ、

ビビり散らかしている有様だった


そうして数分後には直前まで話していた一慶が

急に上機嫌になって招集に応じた


「では、次にアキと弟ペアが行くがいい」


「一緒にがんばろうね」


「は、はい!」


今までに見ないハツラツぶり。

奴め、虎視眈々と狙っていたのか


無理もない、

彼女の優し気な雰囲気と美貌に当てられて

無事な男などいない。

学校でも実はファンクラブが出来ているだろう、多分


そして見送る時も二人の背中の近さを見送るのは

辛かったが、

更に苦しい時間帯があった。


いがみ合いタイムだ


「もう、いいんじゃないの?

 早く行きましょうよ」


「せっかちな女よのぉ......

 まだアキたちが行って3分も経ってないぞ?

 カップラーメンとか固いまま食うやつだろうな、お前は」


「そんなことしません~」


「本当かぁ?」


目の前では下らない口論からヒートアップして

取っ組み合いになる。

何度吉沢さんと止めたか分からない。

どさくさに紛れて花山に抱き着けることを

彼女は嬉しそうにしているが......


二人は本当にすぐ小さい子供同士のように熱くなる。

こやつらの関係性こそ喧嘩は絶えないが仲の良い幼馴染同士みたいだ。

花山が男だとしたら、お似合いのカップルに見えないこともない


美咲は徹底されたツンデレになりそうだ。

花山も素直になれない男子とか......


想像すると少し笑ってしまった


「「何で笑うの!?」」


そうして二人の声が重なるとまたまた

揉め合いに。

数分が恐ろしく長く感じた


「お、そんなこんなでやっと私たちだ。

 ほれ、いくぞ」


「命令しないでよね、ふんっ!」


暗い夜道も明るく照らすような喧噪が

遠くになってもハッキリと聞こえてくるのだった。


「仲いいよね~

 ああいう関係、憧れちゃうなぁ~」


「そ、そう?」


前向きな捉え方だけは見習いたいと思う。



「ねえ、まだぁ?」


「うーん、もう少し待とうよ。

 アイツら口喧嘩しながらだからチンタラしてると思うし、

 肝試しの雰囲気台無しにするような声が

 聞こえてきちゃうと思う」


「......でも、怖い方がやだよ」


「そ、そっか......」


心細くさせてしまったようで

二人の距離が近くなる。

辺りは虫の透き通った鳴き声。

ただ、好ましい気温になったことを喜ぶだけでなく

異性を魅了する求愛行動だとも言われている。

そんなことを考えると何か生々しい


「そろそろ、行こう?」


「う、うん......」


上目遣いの要求に健全な男子が勝てる訳もなく、

さも当然のように肩が触れ合うような近さで

歩きだした。


寒くなるだろうと恰好は薄着を控えたが、

これは熱くなりそうだ

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