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夏休み編・44

意気込んで淳とのジャンケンに挑んで勝利し、

一番最初に引く権利を手に入れると花山は悔しそうにしていた。

そういったリアクションを取るということは、

その時点で計画が破綻しているようなので推理したりするまでもないのだが、

一応箱の中を入念に探った。


そして分かったことがなんともお粗末な仕掛けであった。


最後に回って来る人間と同じものになるように、

花山は元からくじを引いており

最後の人間に同じマークを引かせるため、

一つだけやたら底にこびりついて離れない紙が一つあった。

最初にやたら隣に座らせようとしたのがそのためである


判明した時は溜め息まで出てしまった。


そんな小細工は力尽くで剥ぎ取って、

もちろん別の紙を引いた。

よって皆よりもドギマギした花山の姿が見ることが出来た。

思い通りにいくことがそうならなくなると、

余計に胃が痛くなるものだ


そんなこんなで結果は、


「ええと、チームを紹介しま~す......ハルとチナトゥのペア~」


「ああ、良かった~

 相方が女の子だったら不安だったよ」


「俺も安心したよ......」


急に元気を失くした花山の紹介の通り、

晴れて吉沢さんと一緒になった。

美咲とはきまずく、有希さんとも二人きりでは辛かったので

悪くない結果だ


糸田兄弟のどちらかでも良かったが、

一慶は幽霊と下手したら見間違えてしまいそうだし、

淳も夜に見たら怖いタイプだ。

それに強面のくせしてビビりな気がする


「次......アキと弟ペア~」


「よろしくね、一慶君」


「あ、はい!」


嬉しさに存在感が増している一慶と、

相手が男子で安心している有希さん。

その光景にまっったくジェラシーなんて感じるわけがない。

良いコンビだ、そのはずだ。

嫌いな食べ物を強引に飲み込むように納得した


「そして......私と......」


「なにウソ泣きしてるのよ!

 アタシだってアンタとだなんてすっごい嫌なんだからね!!」


メソメソして発表もできない花山と怒る美咲。

相性最悪ペア。

さっきのペアもある意味心配であるが、

極めて危ない二人だ


「まあ......以上だ、さっさと終わらせてしまおう」


「ちょ、ちょっと待ったぁ!!」


淳が悲痛な叫びを上げた。

そういえばメンバーは奇数である


「なんで俺は一人なんだよぉ!?」


「外れの無いくじとは言ってないぞ」


「そんなぁ!!」


不幸な兄を幸運な弟は満面の笑みで励ますのだった。

兄弟喧嘩が始まるのでは、と

ヒヤヒヤしながら森の入り口まで向かった



ひんやりとした森に、縄でコースを決められた入り口に立った。

人工的な道を作ってしまっている。

原住民に叱られても文句は言えない


「ペアの代表者よ、ジャンケンで順番を決めるので前へ」


「頑張ってね! ハルオ君!」


「う、うん?」


天然な吉沢さんの何を頑張ればいいのか分からない

激励を受けたこともあってか、晴れて順番は最後となった


「最後っていいことだよね?」


「まあ、最初よりは良いんじゃないかな......」


素直な女子を言いくるめるのには良心が咎めた。

あんまり良くはない気がする


「なあんでひとりのオレがいちばんなんだよおおお~!!」


「恨むなら、てめえの運の無さを恨みな......私のように」


「アタシの方がよっぽどツイてないわよ!!」


可哀想な淳、

灰色の花山、

不機嫌な美咲......


このイベントで一体、誰が得をしているのか。

真の勝者とは誰か



穏やかな美人との散歩の権利を手にした、

一慶のだらしない笑みが全てを物語っていた

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