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夏休み編・34

「起きろ、ハル!!

 死んでしまったのか!?」


「んん......なんだぁ?」


「起きてくれぇ!!」


「......おい、言っとくけど今

 俺は全裸だぞ?」


風呂場にまで入って置きながら絶叫しながら

走って逃げて行きやがった。

朝から相変わらずのハイテンションだ


体を温めるために入浴したというのに

長い時間入り過ぎたせいか、

あまり変わらない気がしながら着替えた。

お互い見えない所で着替え終わったことを確認して

顔を合わせた


というのに、不用心なお嬢さんは素敵な落し物を床にしておられる。

よりによって下着なので指摘もしにくい


「た、大変だぞハル!」


「何がだ? パンツが見当たらないとか?」


「そんなわけないだろ!

 冗談を言っている場合ではないぞ!」


それとなく教えてあげようという

心遣いは届かず、何かを焦っているようだった。


「じゃあ、どうしたんだよ?」


「バレてしまった!

 私とハルが同室であることが!」


聞いてからしばらく状況を掴めなかったが、

確か花山はこの事を皆には隠すことにしていた。

もちろん周知の事実だったかのように思っていたことが、

改めてそうでないことを把握するとゾッとしてきた


「だ、誰にバレた!?」


「よりにもよってアイツだ!

 女であんな大きな声でがなり立てて起こしにくる奴など、

 アイツしかいない!」


耳を澄ましてみると、確かに声だけでなく

ドアを叩く音まで聞こえてくる。

更に血の気が引いてきた。

もはや有希さんにバレて引かれてしまう程度の問題は

昨日どうでも良くなっていたが、昨日から悩みの種であった

幼馴染のことについてはすっかり失念していた


「奴が起こす音で目覚めたのだ。

 史上最悪の目覚ましだ!」


「な、何かないのか!?

 俺達の身の潔白を示せるものは!?」


「何を言っているんだ!

 私たちは何も悪いことはしていないぞ!」


「それを証明できるものをだな......!

 ああ、どうすれば......

 そうだ、お前美咲の弱みとか握ってるだろ?」


急な指摘に花山の目が泳いだ。

間違いない、コイツは何か知ってて

美咲に一方的な態度を取れていたのだ


「それで美咲を落ち着けるしかない」


「う、うーむ......個人のプライバシーに関する

 こと故、黙って置いた方が私的には有利というか......」


「よく分からないけど、それで怒りを静めるしかないんだよ!

 ほら、いくぞ!」


腕を捕まえると引っ立ててドアの前に立った。

これから出て行くのは外なのに、猛獣の檻に入っていく気分だ。

それだけ幼馴染はお怒りのご様子である


「な、何を奴はそんな怒っているんだ?

 そんなにハルを独り占めされて嫌なのか?」


まだウブな隣の女には決して分からない怒りだと感じた。

どんなやましいことをしていたんだ、と開口一番に

言って来るに違いない。

意を決してドアを開いた


「き、聞こえてるから落ち着いて話を――」


「どんなやましいことをしていたの!?

 ねえ、言ってみなさいよ!」


体が反応して間に入らなければ、

花山を頭からかぶりつきそうな勢いで美咲が飛びついた。

これ以上にないほど怯えた表情をした小さな女の子が目の前にいた


「ま、待て......!

 ホントに皆が来ちゃうから!」


「来られたら困ることをしてたっていうのね!?」


「そ、そんなことは一切してないって――」


「よ、米田 美咲!

 静まれい!! 貴様の悪行を忘れたとは言わせんぞ!!」


花山の喝に、一瞬美咲は怯んだ。

しかしまた暴れだした


「な、なによ!

 こんなのあんまりよ!!

 そこまで悪いことしてないじゃない!!

 アタシからどこまで治雄を奪えば気が済むつもり!?」


「何を言ってるんだ、コイツは!

 と、とりあえず中に入れるしかないぞ美咲も!!」


「え、二人の愛の巣にこの猛獣を!?」


余計な一言で今度は言葉にならない叫びで

手が付けられない状態になってきた。

男としての精一杯の意地で獣と化した幼馴染を

自分たちの部屋に封印した



廊下には静寂が訪れたことだろうが、

皆からの視線がどこからか感じていたのは確かなことだった

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