夏休み編・26
「足の裏の皮膚が焼け焦げるかと思った」
「ハルオ君、大丈夫?」
「お、大げさなのよ
治雄は昔から......」
絶賛日光浴中の花山とパラソルの下の角田さんの所までやってきた。
影にお邪魔させてもらって足の裏をフーフーしている
「気を付けてね、ここらへん結構熱いから」
「ああ、心配には及びません」
「ハル、それは事後に言うセリフではないぞ」
珍しくボケ担当にツッコミを受けながら立ち上がる。
どうやら問題ないようだ
「よし、じゃあ――」
「日光浴!」 「海水浴!」
自分の行動には毎度、自由がないと思う。
花山と美咲が同時に提案してきた。
どちらも強気なお誘いだ
「あら、花山さん。
あなたそんな小さい体で真っ黒になったら、
チビクロ子ちゃんとか言われてしまうのではありませんこと?」
「あらあら、米田さん。
そういうあなたはそんな華奢な体では、
海で溺れてハルの足を引っ張るのではなくて?」
どっちもお嬢様にしては気が強すぎる。
花山に関しては身分的にはマジではあるが
「うーん、俺あんまし肌が焼けるのはなぁ......」
「ほーら! お聞きになった?
治雄は日光浴より海水浴の方が良いらしいわよ!」
「でも、海水浴も割と日焼けすんだよなぁ......」
「え」
花山を喜ばせるのは癪だが、
美咲の提案にも乗ってやれそうにもなかった
「せ、せっかく海に来たのに泳がないの!?」
「もうちょっと時間過ぎてからでも良くないか?
今は光が強すぎる」
「それでも男なの!?」
「あらら、米田さん?
男らしさだとか女らしさだとか、そういうのをgender harassment!
というらしいだわよ?」
クイっとサングラスを上げて決め顔をした女に幼馴染が煽られてる。
ここは二人仲良く喧嘩させて置く方がいいかもしれない
ゆっくりできる日陰もといパラソルはそこら中に
前もって連なって配備されている。
一番奥では糸田兄弟が砂遊びをしている。
高校生にもなって何をやっているんだとからかいに行こう
「ちなみに年齢での決めつけは、何ハラなんだろう」
「エイジハラスメントらしいですよ」
「あ、ありがとうございます......」
ふとした呟きにも対応するとは、
角田さんは素晴らしい。
そして巻き付いたスカートが印象的なパレオを着た
彼女の美しさたるや、尊さで直視できない。
ちなみに花山のモノキニビキニもばっくり開けた背中に
幼さが残っていて悲しみで直視できない。
かわいそう
結論、JKの水着姿は直視できないので離れることにした。
きっと彼らも同じ理由でこんなに距離があるのだろう
「ちょっとアイツらの様子、見てきますね」
喧噪を残して向かうと、
職人かのように黙々とお城を作る二人がいた。
驚かして崩しては大変なので遠目から声を掛けた
しかし、反応がない。
仕方なく肩に軽く触れると淳は飛び上がり、
顎に頭突きを喰らうところだった
「ちょっ、危ないっすよ」
「お、おおヤマオか...
すまんすまん......」
何か様子がおかしいことを気に掛けていると、
対面の一慶が手招きをしてきた。
横に座るとヒソヒソと語り掛けてくる。
距離としてはバッチリ聞こえそうだが、淳はまるで
気がつかないようだ
「兄貴って見りゃ分かると思うけど、
異性との交遊がないから水着姿を直視できないみたい」
そう話す一慶の顔はかなり面白がっているようだ。
いつも苦労を掛けられているだけに、兄の不幸だとかを
愉悦しているのかもしれない
「そういう一慶はどうなんだ?」
「......」
兄貴と同じく城作りに励み始めた。
兄弟なのだな、とほっこりしてその場を去った。
あの場にいたら日が暮れるまで、
女子から目を背け続けてしまいそうだ
「あれ、もういいの?」
引き返す途上に男子組と女子組の中心で、
角田さんと鉢合わせた。
「あ、えっと角田さんこそどうして?」
「ああ、うん。
あの人達、挨拶しようとしたらすぐ逃げちゃったから
もう一度トライしてみようと思って」
流石は学級委員長、
誰に対しても公平のお方だ。
それに対して自分は身勝手な男だった
「じゃあ、行ってくるね」
「あっ」
せっかく二人で話せる希少なチャンスを逃したくないと
思わず彼女の手を握って、引き止めてしまった。




