夏休み編・17
「あのボートに乗っている彼らがそうだ」
花山が指さす先には最後の積み荷を運ぶボートに狭そうに乗せられている
三人が見えた。
明らかな冷遇を目の当たりにして、どういう状況かが掴めてきた気がする。
とりあえず乗っているのは美咲と糸田兄弟で間違いないだろう
しかし、思い出しそうになったこととはあの三人のことなのだろうか?
失礼だがもっと重要なことが喉元まで来ていたように感じたのだが......
「ちょっとー! アンタらと同じとこに乗せてくれれば
良かったじゃないのー!」
引っ掛かる悩み事を見事に邪魔する大声が聞こえてきた
「まあ、あの様に無駄に元気な者もいて
更にこのIsland Lifeを賑わいに富んだものにしてくれることだろう。
皆、拍手で迎えてあげよう」
もう少しで上陸であるという状態を限界まで詰め込まれた
荷物の間から、ようやく美咲は把握して怒号を飛ばしていた
「まったく...アイツめ、こっちが下手に出てりゃ
いい気になってぇ......!」
「まさか、ヤマオ君を置いたらすぐ屈強な船員に包囲されて捕まるとは......」
「でも、金払えだとか船下りろだとかじゃなくて
仲間に入れてくれるみたいで良かったじゃねえか」
淳は至極安堵した様子で前向きな発言をした。
そんな能天気を不機嫌女子は睨んで言い放った
「何言ってんのよ......逆に怪しいじゃない。
アタシ達密航してたってのに一つのペナルティも無しに
参加を許されたのよ?
まあ、今はこんな狭苦しい空間で運ばれてるけど」
「見返りを要求されるんだったらあの場で
何か言われるんじゃないのか?」
「うーん......何か嫌な予感がする」
「僕も何となくだけど、タダでは済まない気がするなぁ」
二人はあまりの拍子抜けな対応に
裏があるのではないかと訝しんでいた。
そんな二人に付き合い切れない、と手が届くほど近い海面に触れたり
覗き込んだりして一人は遊び始めた
「何させようって考えかしら......
最悪、ここじゃ警察もすぐ来てくれないし
犯罪めいたことする気かさせる気かもしれない!」
「そ、それは予想が飛躍しすぎじゃ......」
「しかもあのミニ女は演技なんじゃないかってくらい
いつもは馬鹿っぽい感じなのよ。
それが今回は何か...こう、油断ならない感じで......」
「形容し難いですけど、何か凄みがありましたね」
素直に褒める一慶に対して、
意地でも薫の優位性を認めたくないがために
「所詮、使用人とかいう強力な味方が傍にいたからよ!
アタシかもしくは治雄に何かしようものなら、
アイツは元の子供っぽい感じで悲鳴を上げることになるでしょうけどね!」
美咲は強がっていた。
それでも密航者という見えぬとも確かな烙印と
それを無償で許された借りを受け入れざるを得ない訳である。
想定よりも困難な窮地に立たされている事を
密航者組は苦々しく認識したのであった。
「おお! あの魚美味そう!!」
一人を除いて。




