夏休み編・16
「大体、終わったみたいだよ」
「はぁ、こうなったら腹を括るしかないか」
陸地には大量の荷物が積まれている。
この乗客の数から考えてあまりにも過度な量ではあるが、
とりあえず運搬工程は終了したと考えていいだろう
つまり、自然が剝き出しの島を満喫することが決定してしまった。
どこか観光地でも周りながら、ゆったりと皆と親睦を深める
特に角田さんと仲良くなる計画は何もかもおしまいだ......
「ファ~ハハハ......」
乾いた笑いと共に涙が出そうだ。
「楽しみで笑えてきたの?」
「ああ、ホント最高だよ」
「そんな風には見えないけど......」
「そういう吉沢さんは?」
彼女は無邪気な笑顔を見せた。
それが何よりも素敵な答えだった
「こんな綺麗な場所、きっと人がいるような島じゃ見れないよ!
泳いだり走ったり、楽しもうよ!」
「すっごいアクティブ......」
体育会系の女の子にとっては楽園のようだ。
軟弱者にとって溢れんばかりの自然に対しては不安が山ほどに募っていく。
虫だとか日焼けだとか暑さ対策やら、
考えるだけでも面倒だ。
自分もまだまだピチピチの15歳だ。
正直、楽しみな部分も多い。
だが何の心配も浮かばないほど幼い歳でもない
「さぁ! 行こうよ!」
「う、うおっ」
そんな気苦労の多い男と同級生とは思えないほど
元気な女子に手を引っ張られ、自分達も遂に
ボートに乗り込んで陸を目指すのだった。
「ほら、見て!」
ボートに乗り込んだ後も吉沢さんは、はしゃぎっぱなしだ。
感動を共有したい気持ちは分かるが、
島に着く前に電池切れになりそうなハイテンションである
「こっちも凄いよ!」
しかも、その度に近くの自分を呼びつける上に
ボディタッチの多いこと多いこと......
ほんの少し前から感じていたが、かなり彼女は
あざといタイプの子のようだ。
誰だけの男子を勘違いさせてきたのだろう
正直、男としての目線から見れば吉沢さんと仲良くできるのは
嬉しいことだが、状況は二人だけではなく
他にも人がいる。
特に角田さんが!
ついでにチベットスナギツネのように乾いた目で凝視してくる花山が。
露骨な態度で言ったら奴の方が冷たい視線なのだが、
角田さんも居たたまれない表情で見てくる。
気になるのは花山の方をチラチラ見ている事、
何をそんな彼女はヤキモキしているのだろうか
「ねえってば!」
「はいはい、何ですか」
「こんな魚見たことある!?」
何とか淡泊に対応して、過剰に仲が良いことを
見せないようにしているが
彼女に話し相手としてお気に入り登録されてしまっては
なかなか離れることは難しかった。
そんなこんなでやっと、上陸。
「ああ~! 楽しかった!」
楽しみ尽くしているのは今のところ彼女だけだ。
あとは角田さんと花山が遅れて上陸を果たした。
何を話し合ったのか、かなり気になる
「よし、うっさいお前も一旦集まれ」
リーダー面でリーダーシップのない女が仕切り始めた。
「これから私たち四人でこの島を遊び尽くすつもりであったが、
ここでサプライズゲストを紹介しよう」
有り得るはずのない参加者に
何も知らない自分と吉沢さんは首を傾げた。
ただ、何かを自分は思い出しそうになった




