食欲と愛。
彼女はいつも、私を舐める。
この部分だけ聞くと、彼女を変質者に思うかもしれない。
しかし、きちんとした理由があるのだ。
それは、私を食べたいからだ。
もちろん、性的な意味ではない。
彼女は、普通の食べ物を食べることが苦手らしい。
けれど、私なら美味しく食べられそうと言っていた。
私を口に含み、体内に取り込みたいのだとも言っていた。
しかし食べることは出来ないので、いつも私を舐めているのだ。
本来なら食べてもらってもいいけれど、彼女を犯罪者にしたくはない。
このように、きちんとした理由がある。
そして、私も不快に思っていない。
なぜなら私が彼女を愛しているからだ。
だから彼女に舐められ、触れられることはたまらなく嬉しい。
彼女に舐められた箇所は熱くなり、熱を帯びる。
口。
頭。
手。
足。
彼女は私の身体の隅々まで舐めてくる。
私の服を脱がせ、裸にし、小さくて可愛い舌で舐めてくる。
時間をかけてゆっくりと。
まるで極上のスイーツを口にしているような、幸せそうな顔で。
「ねえ、私も、・・・舐めたい。」
ある日、思い切ってそう言ってみた。
今まで、触れて貰ってはいたが、自分から触れたことはない。
触れてみたくなったのだ。
この愛しくてたまらない彼女に。
私も彼女に触れて、そして舐めたい。
そう心から願った。
「なんで?いいけれど・・・私を食べたいの?」
彼女は少し戸惑った顔でそう返した。
そう彼女は、あくまで食の対象としてしか私を見ていない。
つまり私みたいに、恋愛感情をもっている訳ではない。
だからこそ、私のこの誘いは自分を食べたいからだと勘違いしたのだろう。
「うん、そうだよ。私も・・・食べたいの。」
私は、彼女がそう返すであろうことを知っていた。
だって、彼女が私を好きではないことを知っていたから。
だからこそ、私は彼女の言葉に乗ったのだった。
それからは、二人で舐め合う日々が続いた。
私は自分の肉欲に従い彼女を舐め、
彼女は自分の食欲に従い私を舐める。
少し悲しいけれど、私は十分だった。
自分の想いが届かないのは悲しいけれど、やはり嬉しい。
だって、彼女が私を唯一の食の対象として見ているということは、
一生私から離れることができないだろう。
彼女が死なない限り、食欲はなくならないのだから。