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【第二章―過去の鎖】

今回は将介の”過去”について書いてみました。

なぜ将介が信頼という感情を忘れたのかを書いて見ます。それではどうぞ。

【第二章―過去の鎖】

 夕食を食べ終わってからも、僕はずっとパソコンいじりに没頭していた。

何回も何回も説明書の読解不能な単語達に悩まされたが、それ自体が楽しくて、手を止めることはなかった。

久しぶりに心がワクワクして、そんな心が僕にまだあったことに少し驚き、戸惑いながら作業を続ける。

 どれくらいパソコンの画面を見つめていたのだろうか、いつの間にか時計の針は深夜の12時30分を指していた。

(あぁ、もうこんな時間か。つい楽しくてやりすぎたな。明日も学校だしそろそろ寝ないと)

そうは思いつつも、もう少しもう少しと言い訳をしてパソコンで遊び続けた。

そうするうちに、僕は激しい睡魔に襲われ、その甘い誘惑に勝てるはずも無く、机に突っ伏した状態で、ゆっくりと深く暗い闇に意識を沈めていった。

深い藍色の闇に沈み行く意識とは反対に、何かが僕の頭の中から漏れ出して、最初はおぼろげに映っていたその景色が次第にはっきりと、冷酷なまでに忠実に、僕を”過去”の世界へと誘った。

 僕は一人でいつも通る通学路をトボトボと歩き、いつものように学校に向かっていた。

ただ一つ普段と違うことといえば、いつも一緒に登校している幼稚園からの友達であるシンちゃんがいないことくらいであった。

シンちゃんの家に行くと、いつもはシンちゃんが立っている家の前に、シンちゃんのお母さんが立っていた。

「おばさん、おはようございます。」

「将介くんおはよう。」

おばちゃんは、いつもと変わらない優しくてほんわかとした笑顔で挨拶を返してくれた。

「おばちゃん、シンちゃんは?もしかして風邪引いたの?」

「違うの。今日は学校で委員会の用事があるからって早く学校にいったのよ。ごめんね。」

「わかりました。じゃあ僕も行きますね。」

「気をつけていってらっしゃい。」

おばちゃんは少し申し訳なさそうな顔をしながら、手を振って僕を見送ってくれた。

(用事があるなら、昨日言ってくれればいいのに。)

そんなことをぼやきながら、一人でとぼとぼと枯葉を蹴りながら学校に向かう。

それから20分ほどで学校に着き、寒さで凍えてかじかんだ手を暖めるために、急ぎ足で暖房の効いた教室に向かう。

階段を上り、教室の前に着くと、すでに何人かのクラスメイトが登校し、ドアの近くにある一つの机を囲んでひそひそと何かを話しているのが見えた。

そのグループの中にはシンちゃんの姿もあった。

僕は静かに教室のドアを開け、シンちゃんがいるところにスタスタと歩いていった。

「シンちゃんおはよう。」

いつものように声をかけるが、シンちゃんは気づいていないのかピクリとも反応を示さない。

もう一度声をかけようとしたとき、ふいにシンちゃんはスッと席を立ち、隣に座っていたクラスメイトに声をかけ、いそいそと二人で教室の外に出て行ってしまった。

いつもとなにか様子が違うシンちゃんの反応を不思議に思いながらも、教科書の詰まったズシリと思いカバンを下ろすために、教室の窓側にある一番奥の自分の席に向かった。

しかし、自分の机を見た瞬間、僕はその場に氷漬けにされたかのようにカチリと動けなくなった。

昨日まではあれほどキレイだった僕の机は、黒い油性マジックで書かれた”死ね”や”クズ”という、これまで見たことのないような、おぞましく、淀んだ字で埋め尽くされていた。

ピタッと動けなくなった僕の後ろからは、クラスメイトの冷ややかで冷酷なクスクス笑いが聴こえてくる。

そこでようやく僕の頭は機能を回復した―。

それと同時に、これまで感じたことの無い、煮え滾るような怒りがグツグツと腹のそこから湧き上がるのを確かに感じた。

「・・・なんで!!!なんでこんなことするの!!!」

僕はクスクス笑いを止めないクラスメイトに向かって、猛烈な勢いで駆け寄り、荒々しく机を叩きつけながら聞いた。

すると今度は、クスクス笑いではなく腹を抱えてゲラゲラと笑い出したのだ。

「何がおかしいんだ!」

「あのさ、お前がしゃべると菌が飛んで汚いから近寄らないでくれる?」

顔を真っ赤にして叫ぶ僕に、今度は無表情な真顔になったクラスメイトが冷ややかに言い放った。

その言葉を聴いた僕の理性は、とうとう腹の奥底から湧いて出る熱く滾るものに飲み込まれた。

そこからの記憶は霞がかかってるような、ぼんやりとしたもので、よく思い出せない。

確か担任の先生が駆けつけてきて、事情を聞かれたりした気がする。

ただ唯一鮮明に覚えてることがある、それは頭から血を流し床にうずくまっているクラスメイトと、コブシを握り締めて、目を見開いた僕が立っているところだけである。

 そこまで見たところで、僕の意識は何かに引っ張られるかのように急激に現実の世界に引き戻されていった。

(・・・嫌なこと思い出しちまった・・・。クソッ!気分悪い・・・。)

 いつもより早く目覚めてしまった僕は、寝ているときに掻いた冷や汗を流すために、ゴソゴソと下着をとり、風呂場に向かった。

今回も最後までご精読いただき、ありがとうございました。

物語が一向に進む気配がないという声がきこえてきそうですが、自分の文才ではなかなかリズムよく進むことができません。申し訳ありません。

これからも少しずつ物語を進めていきますので、よろしければ読んでください。

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