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あの子は素敵(中)

 ところで、こうなった以上私は野月さんにカミングアウトせねばならぬことがあった。そう、『野月さん大好きっ子』であると(無駄に倒置法)。

 引かれるのは仕方ないとして、これから共同生活を送るにあたって野月さんをおびえさせるのは不本意だったので、告白の場には強力なゲストを召喚した。

「あたしのマブダチの柄本っちゃんでっす!」

 あてがわれた合宿棟の和室で、片膝ついた私が両手で繰り出すキラキラを浴びつつ、柄本っちゃんは「ドーモ、これの腐れ縁だけどマブダチじゃない柄本です」といつも通りややダルそうに自己紹介して雑に頭を下げた。

 そして傍らにボストンバッグをどさっと置くと、「んで? あんたちゃんと言ったの?」と核心をついてきた。

「まだ……」

 胸の前で、人差し指と人差し指をチョンチョンしつつ言うと、柄本っちゃんはハッと鼻で笑って「やっぱりな」と言った。そして野月さんの方を向くと、「なんかよくわかんなくて気持ち悪いと思うけど、コイツ野月さんの自称『強火担』らしいんだわ」とあたしを食いっと親指で指さした。

「自称じゃない! 真実!」

「っつー感じなんだけど、大丈夫? って聞いても多分野月さんは大丈夫じゃなくても大丈夫って無理して言いそうだなと思ったから、緩衝材としてやってきたってわけ。しばらくよろしく」

「えっえっ、しばらくってことはじゃー柄本っちゃんもお泊りできんの?」

 あたしがうっかり喜びつつ反応すると、「保健の先生に言ったら『そうだね、その方が安心だ』って」とジト――っとした目であたしを見た。

「まーそういうことだけど、スマホ漁られたなーとか下着がなくなってるなーとかあったら遠慮なく言って」

「あたしはそんなのしないもん! 推しに迷惑かけるのは一番ダメなことなんだからね!」

「あ、あの、『推し』とか『強火担』って、いったい何?」

 おずおずと言った様子の野月さんがそう問うと、柄本っちゃんは「こいつに限定して言えば、『だいぶ様子のおかしいオタクに愛されてしまった野月さん』と『野月さんを好きすぎて他者を排除するだいぶ様子がおかしいオタク』」と掌であたしと野月さんを示しつつ、明晰に説明を繰り出した。

「クッ……! 反論できないッ……」

「えぇと……それは、私のことを好意的に思ってくれてるってこと、であってる?」

 おずおずとそうおっしゃる様子に、思わずばくっと食いつく勢いで「好意的どころか、野月さんの大大大大大ファンでっす!!!」と言いつのると、さっそく柄本っちゃんが「はいはいそこまで~」と、野月さんとあたしの間に線引きするようにすっと手を入れた。アイドルの握手会にいる有能なスタッフみたいだな……。

「だから初手からその重たいのをぶつけんなって」

「う……ごめん……つい」

「謝る相手がちがーう」

 そう柄本っちゃんに促され、ぎぎぎぎとオイルの足らない機械みたいにぎこちなく野月さんの方を向いて、「ゴ、ゴメンネ?」と伺うように謝った。おそるおそる野月さんを見る。

 ……そこには、恐怖も侮蔑もなくって、ただあたしの大好きな唇の端だけ少し上がったぎこちないスマイルがあって。

「ううん、うれしい」と言ってくれた。

「うぉん、まじ天使……! 写真撮ってもいい……?!」

「あ、それはちょっとイヤかも」

「はい承知しましたァ――!」

 あたしが速攻そう返事をすると。

「居酒屋か」と柄本っちゃんがツッコんで、野月さんが真顔のまま噴き出した。この世の春ってこういうことを言うのねん……。

 ふわふわ幸せを感じつつも、とりあえず共同生活において『自分はよくても相手が嫌がることはしないこと』『自分が悪くない、もらい事故みたいな時には『ごめん』て言わないこと』などをざっくりと取り決めた。


 夜ご飯を学食で食べた後、合宿棟の大浴場に三人で入った。なるべくアレコレ見ないように……。と思ったけど、野月さんの視力があまりよくないのでコンタクトを外すと視界がぼんやりになってしまって、柄本っちゃんが心配するような事態(か、身体を盗み見とか。しないよ!!!!)にはならずに済んだ。ちなみに、普段裸眼で生活しててカラコンもしたことのないあたしはコンタクトを外すのに一苦労&大騒ぎだったことは言うまでもない。明日の朝装着するのが怖いな。

 なんて思いつつ、お風呂上がりの廊下を眼鏡で歩いてる最中にふと違和感を感じて、足を止めた。

「野枝、どしたあ」

 一人遅れたあたしに柄本っちゃんがそう声を掛けてくれた。

「うん、さっきまで興奮しててよく気付けなかったんだけど、」

「?」

「なんていうか……『目』が高い」

「目線が違うってこと?」

 野月さんがすかさずそうフォローを入れてくれたので、「それそれ!」と指を鳴らす。すると野月さんも「私も思ってた。いつもより低いんだなーって」と控えめに申告してきた(優しい)。

「そっかあ、そうだよね~。あたしはなんか、足元が遠くてちょっと怖いな」

「手ぇつないでやろうか?」

 柄本っちゃんがそんな風に少女漫画のヒーロームーブをかますので、「ヤダ、そんなんされたら恋に落ちちゃうじゃんっ……!」とどぎまぎしながら言うと、「あっそ」と差し出された掌は秒で回収されてしまった。

 一日目は、こんな風に非常に良好な雰囲気で幕を閉じた。



 二日目の朝。

 スマホのアラームが鳴ってるのが聞こえる。いつもならそれがメロディのワンフレーズが流れきる前にばっと目が覚めてびっととめてバシーっと起きるとこなんだが。

「っ……なんじゃこりゃあ……?!」

 頭は起きてるのに瞼も手も足も、めちゃくちゃ重たい。けっきょく、アラーム音がフル尺で五巡したとこでやっと体を起こして止めることができた。

 これも入れ替わりの副作用なんかねえ、野月さんだいじょぶ? って話しかけようとしたら。

「……なにこれ、こんなに爽快に目覚める身体なんて実在したんだ……!」

 野月さんは野月さんで、なにやら朝から感動に打ち震えていらっしゃった。

「おはよぉ……」

 よぼよぼな声を掛けると、「おはよう」とつやつやなお返事が。

「野月さんて、もともとはもしかして寝起き超絶悪かったりする人?」

 なるべくそっちを見ないようにして着替えつつ、まだ起きてない柄本っちゃんに悪いので小声で話しかけると、同じくこちらに背を向けつつ着替えをしている野月さんから「そうなの」と返ってきた。

「ひどい低血圧で、いつもは起きてもしばらく眠気があるの。すごいね遠田さんの身体、羽が生えてるみたいに軽いし頭がしゃっきりしてる!」

「そお?」

 でへ、と照れてると、あたしたちのおしゃべりで起きたっぽい柄本っちゃんが「だからか無駄にいつもハイテンションなんだよねこの人」と伸びをしながらあくびした。

「おはよー柄本っちゃん」

「はよー」

「おはよう」

 三人で挨拶して、柄本っちゃんの身支度とあたしの初コンタクト装着が無事に済んだのち、食堂に向かう。朝日の差す食堂はがらんとしてて静かだ。日々のお昼の席争奪戦・注文争いが嘘みたいにしいんとしている。それもそのはず、きのうの夕食に引き続き学食にはあたしたちしかいない(合宿シーズンじゃないので当然だけどね)。すっごい優越感感じてしまうな。いつものあたしなら、『いっただっきま~す!』って高らかに言って思いっきり大口あけてご飯を楽しむとこだ。

「野枝、食べないの?」

 いつもじゃないあたしを不審に思った柄本っちゃんが、そう声を掛けてくれたけど、昨日のお風呂上がりの廊下みたくふざけてお返事する余裕すらない。

「の、野月さん、口、開かないんだけど何……?」

 さっきまではぼそぼそだったり、おっきく口を開けないでしゃべってたので分かんなかったけど、なんと口が縦に一センチくらいしか開かないのだ!

「あ、そうだった」

 野月さんは掌で口を覆いながら(お上品!)もぐもぐして口の中のものを飲み込むと、手を外してあたしに話しかけた。

「朝だけなんだけど、口開かないの」

「病気か何かで?」

「多分、ストレス」

 野月さんの言葉に、柄本っちゃんは「そういや夜中に歯ぎしり聞こえてたわ」とつぶやく。おそらく発信元であろうあたしは爆睡してて気付けなかった。いつもの自分なら友達と一緒だし夜更かしオッケー! って感じなんだけど、野月さんはふだん十二時前には寝るそうで、当然そのリズムを野月さんの身体は覚えているから、起きていたい気持ちとは裏腹に寝落ちしてしまったんだよね。それにしても精神は入れ替わったのに身体には癖が残っているのか。人体って不思議。

「歯ぎしりで口が開かないなんて、大変だねえ」

「二人にも迷惑かけてごめんね」

「自分が悪くないのに謝んのは禁止だよ! とりあえず、隙間からご飯食べてみるね」

 交わしたばかりの約束事を持ち出してそう安請け合いしたものの、一センチに詰め込むのはなかなかに難儀だった。それだけじゃない。

「の、野月サァン……」

「今度はなんだー」と返事をするのはもちろん野月さんではなく、いち早く食べ終えてスマホでSNSをすいすいチェックしている柄本っちゃんだ。

「か、顔が痛いんだけど……?!」

 口はさっきより多少開きやすくなった。そしたら、顔面全体がけっこう強めに痛い状態なのに気付いたってわけ。

 あたしの必死の訴えに、真顔のままおろおろしてしまう野月さん(かわいい)と、人の悪いスマイルを浮かべる柄本っちゃん。

「これはあたしでもわかる。野枝、あんたいつもの調子でハイテンションなリアクションしてたら、それに野月さんの表情筋がついていけてなくて筋肉痛になってんだよ」

「ええええーーーーーってそうだ、顔痛いんだったァ――!」

「鶏よりたち悪いな、一歩も歩いてないじゃん」

「私の表情筋、遠田さんみたいに滑らかに動かないから……。それで誤解されることも多いし、鏡の前で笑顔の練習とかもたまにしてたんだけど全然できなくって……」

 しゅんとしてしまった野月さんに、あたしは慌てて言いつのる。

「じゃあ、これを機に滑らかに動くくらいあたしがあっためておくし!」

「お笑いのライブじゃないんだから『あっためとく』はおかしいだろ」

 あたしの発言に柄本っちゃんがツッコむ。それはいつものやり取りなんだけど、野月さんは初めて金平糖をかじったみたいに嬉しそうにした後、「あっためてもらうだけだと悪いから、お部屋に戻ったら笑い方教えて」って言ってくれた。

 だから、けっこう顔まじで痛いけど、頑張って一緒に顔の筋肉を動かした。


 合宿棟から教室までは五分もかかんないから、登校するまで時間がたっぷりある。

 スマイルトレーニングのあと顔が痛くてへばっていたあたしの横では、野月さんが予習に励んでいて(ちなみに昨日もあたしと柄本っちゃんがゲームで対戦している間、『やらないと落ち着かないから』と復習してた)、なるほど頭がいいって言うのは素質だけでなく運動と同じでちゃんとこつこつやってるからなんだなあと感心した。感心するだけじゃなく自分もやれって話なんだけどね。


 ところで、クラスの並びは一組(野月さん)二組(あたし&柄本っちゃん)でお隣なのだけど、その学力差は平地と富士山くらいある。一組は、特進クラスで頭がよいひとの集団なのだ。

 当然、ガワだけ野月さんでも中身はフツーなあたしなので、授業はそれぞれ元のクラスで受けている。

「野月さん大丈夫かな……」

「あんたに頭の心配されるのは屈辱じゃない?」

「じゃなくて、黒板見えるかな。けっこう後ろの席だって言ってたから」

 ミニマムサイズな身長だと、背の高さによっては前の人が壁になっちまうからね!

「じゃあクッション代わりにしてるひざ掛け持ってってあげれば?」

「柄本っちゃんナイスアイデア☆」

「人の身体でウインクすんな指鳴らすな舌ペロすんな」

 柄本っちゃんの鋭いツッコミを背に、あたしは一組さんに突撃した。

「たのもー!」

 道場破りの勢いで引き戸を開けて、お目当ての野月さんをすぐに見つけた。

「……遠田さん」

 あれ? なんか女子に囲まれて座ってるけど微妙な雰囲気? と思いつつ、行間休みは短いからさっさと用事を済ますことにした。おお、最後尾からひとつ前の席だ。

「やっぱそこからだと黒板見えづらいよね、よかったら使って」

「これって?」

「ひざ掛けを袋に入れてクッション代わりにしてんの」

「ありがとう」

 ぎこちなくでも笑ってくれると、こっちまでハッピーになっちまうわ。でへへ……♡

 ごまかすように「トイレ行っておかなくてへいき?」と尋ねると「そうだね、行っておく」と野月さんは小走りしてトタタタと廊下を駆けた。あ――――かわいい。

 そのお姿をじっくり堪能していたかったのに。

「あんたと野月さん入れ替わったんだ、かわいそー」

「? 何が?」

 それって、せっかくクールビューティーなお顔が素晴らしいのに今の中身があたしだから野月さんかわいそーってことか? と解釈したのだけど。

「ほら、あの人ノリ悪いじゃん、空気読んでよ(笑)ってなるでしょ? あんなのと一緒に朝から晩まで生活するとかお気の毒すぎて」

 いや、まっっったくもって的外れだけど。つか誰か『そんなこと言うなよ』とか言えよ特に男子どもよ。と思ったけど、彼らはこういった現場に慣れっこなのか女子の諍いにはノータッチを貫いていて、介入してくるくらいに男気のあるメンズはいないみたいだった。ちっ。野月さんにからんでないほかの女子はと言えば、おのおののお勉強に精を出してて、やっぱり助けてはくれないみたい。

 なるほどなるほど、そういった環境に野月さんはいたわけか。このやろう、あたしは野月さんと違って優しくないから黙って胸に秘めたりなんかしないんだからね。ちっちゃいからナメられがちだけど、口で泣かせたことは一度や二度じゃない。せっかくだから、この野月さんの容姿も利用させてもらう。

雑魚(ザコ)いこと言ってんじゃないよ」

 フン、と鼻を鳴らして言うと、相手は明らかに鼻白んだ。そこで、腕組みして、顎を上げて思いっきり煽り顔をして見せた。

「美人な上に頭脳明晰で性格もよくてごめんね?」

 悪役のように思いっきり悪い笑みで言い放つと、嫌味をかました女子は一瞬うっと言葉に詰まった後、「いや中身違うじゃん、ちんちくりんじゃん!」と言いやがった。

「ちんちくりんて言うな! 小さめって言え! つか、さすが反応早いな腐っても一組……」

「へんなとこで感心しないでくれる?!」

「あのさあ、野月さんがうらやましいのは分かるけど、八つ当たりはいくないよ」

 あたしが面々の顔を一つひとつ見つめながら静かに言うとみんな目をそらすけど、発言してた女子だけはこちらを見て「……分かってるよそれくらい」とばつが悪そうにつぶやく。

「でもいつも飄々としてんじゃん。いい点とっても表彰されても涼しい顔しててさ、あたしがどんなに頑張ったって野月さんより上になれないのにずるい」

「分かるー」

 しみじみ同意すると「その顔で同意されても……」と突っ込まれてしまった。

「でも野月さんも大変なんだよ」

「どこがよ」

 あたしは、勝手に個人情報をばらすことを内心で謝ってから口を開く。

「低血圧すぎて朝起きらんないでしょー? でも頑張って起きるでしょー? ストレスで朝は口がうまく開かないから、一センチあけたとこになんとかご飯詰め込むでしょー?ちゃんと予習復習するでしょー? それに、表情筋が死んでてよく誤解されるってしょんぼりした後、あたしと一緒に笑う練習したでしょー?  それから……」

 あたしが、この共同生活のあいだで見た野月さんのオフィシャルでない部分をつらつらと述べると、彼女らの纏う表情が変わってったのが分かった。

「……だから、あんま見た目だけで判断しないで」

 あたしは、その言葉をあたし自身にもぶっ刺した。見た目と輝かしい成績だけで判断して、勝手に遠ざけて勝手に神格化して。そんなのはダメなことだった。

 中身を知った上で、美人で性格がよくてちょっとポンコツボディな野月さんは、とってもかわいい女の子なのだった。

 伝わるかなー、伝われ! という念が通じたのかどうかは分からないけど、『ずるい』と言った女子は「……分かった」と言ってくれた。

「ありがと。あとあたしのことちんちくりんって言わないで」

「じゃあ『二組の良く吠えるチワワ』にしとく」

「ちょっと――!」

 そんな風に仲良く? なったタイミングで野月さんが戻ってきてチャイムも鳴ったので、あたしは慌ててクラスに帰った。


「野月さん申し訳ない!!!」

 夕ご飯時、手をパァン! と合わせて謝ると、野月さんはびくっとした。おどかしてごめん。

「え、何……?」

 あたしは、昼間の一組女子の煽り&あたしのレスポンス&個人情報暴露を白状すると、「なんだ、大丈夫だよそれくらい」ってほっとしたようにかすかに笑う(女神)。

「それより、遠田さんにいやな思いさせちゃったね、ご」

「自分が悪くないのに謝るの禁止――」

 あたしがパクパクご飯をいただきながら『こうなっちゃってからの約束事』を朝と同じく持ち出すと野月さんは『ハッ』として(かわいい)それから「……うん、そうだった」とはにかんだ(かわいすぎる――!)。

「言っとくけどミリも傷付いてないし、多分ちょっとは野月さん周りの人間関係良好になった、と思う」

「の割には浮かない顔してる?」

 野月さんはこちらをじいっと見つめてくるので(そうやって無意識に惑わすのはやめなはれ)、あたしは「あだ名付けられただけ!」と秒で吐いた。

「あだ名って」

「……『二組の良く吠えるチワワ』」

 屈辱的な二つ名を口に乗せると、野月さんは「……ごっ、ごめん……!」と謝りつついつまでもくつくつと笑ってた。かわいいから許す。ちなみに柄本っちゃんは「へえ、そいつネーミングセンスあるじゃん」て感心するだけで怒ってはくれなかった。ちぇっ。

「そうそう、先生には『それぞれの人間関係があるからお昼くらい別で食べれば』って言われてそうしてたけどさ、もしかして野月さん、これまで一人で食べてた?」

 昼間に見た感じ、庇ってくれるお友達もいなさそうだったのでそう訊いてみると、野月さんは「うん」と素直に頷いた。

「え、じゃあさ、明日から一緒に食べよ!」

「他クラスで約束してたらそっち優先で」

 あたしと柄本っちゃんが矢継ぎ早に言うと、野月さんは「ほかに約束とかしてないから、ぜひ」ってお返事してくれたので、あたしは嬉しさのあまり『創作ダンス・喜び』を披露した。

 二人が「ほっとけばそのうち疲れてやめるから」「わ、わかった」とやり取りしてたような気がするけど聞こえなーい。

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