異変4
自分の部屋の中も惨憺たる有り様で、ほぼ2Fと一緒だった。
ただ、2Fは争った跡が見られたのに、3Fは何かを探したような感じで
破壊はされてるものはわずかだった。どちらかといえば泥棒が入った感じ?
倉庫部分もぐちゃぐちゃにされており、ビール瓶や段ボールの中の缶が散乱
していた。
まずは、穴が開いて傷だらけの制服を脱いで地面に散らかったままの私服
から適当に着替える。
相変わらず右腕が痛むので着替えるだけで数分もかかってしまった。
ただ、学校に居た時に比べれば痛みも治まってる気がする。
吸血鬼パワー?いや、そんな事はない。そこまで人外の能力は持ってないはず。
多分、アドレナリンがどばどば出てて痛みを感じにくい状態なんだろうと自己解決。
ふと、ズボンを履いた時に太ももに違和感があり、ズボンのポケットを探ると
昨日おじいちゃんからもらったナイフが入っていたせいだった。
一応、護身用に持っておくか。
さて、ここまで着替えて一息つくと、気が抜けたのか足に力が入らなくなり
すとんと床に座った。
「ふぅ・・・一体なんなんだよ」
朝、ふつうに家出るまでは母さんもいていつもの日常だったのに学校着いたら
みんな寝てるし、綺麗なお姉さんがいて気が付いたら学校火の海だし。
クラスメートは・・・いや、ここは今は考えないでおこう。
家に帰るまで誰もいないし、2Fは母さんいないし、怪我したみたいだし、、、。
泥棒入ったのかな。未だに視野紅いし。一生このままだったらどうしよう。
スマホも学校にあるから情報わからな・・・
そうだ!情報!
僕は急いで部屋の机にあるPCの電源を入れる。お小遣いを貯めて買った
ゲーミングPC、動け!
しかし、電源ボタンを入れてもPCはうんともスンとも言わない。
え?何故?壊れたの!?焦ったものの特異能力ですぐに平静にされた我が心。
よくPCを見ると、よく見ると電源コードが抜けていた。
「まぁ、あるあるだな」
苦笑をして、散らかっている物をどかして電源コードをコンセントに刺した時だった。
「あ、いた。生きてるー」
いつの間に入ってきたのか、後ろで若い女性の声が聞こえた。
とっさに近くにあったビール瓶を持って振り返ると、
今朝会ったお姉さんによく似た、”紅い”髪の女性が立っていた。
僕より少し上の年齢で黒いリクルートスーツを着た美人なのは一緒だが、
髪はショートボブで白人系ではない。同じ日本人?
「ど・・・どちら様ですか?・・・っていうか勝手に家に入ってきて!」
もう、何が何やらわからない状況で声をかけられ、ビール瓶を持った手が反射的に力が入る。
パリン!
ビール瓶が割れ、破片が指に刺さる。そのまま破片も巻き込んで完全に握りしめた僕の手から
血がしたたる。
「痛い・・・」
血がしたたる手を開いてじっと見つめつつ、
あー・・・そっかー・・・吸血鬼化してるからビール瓶ぐらいなら粉々に砕いちゃうよねぇ。
何故ビール瓶を武器にしようとした・・・僕・・・。
「ちょ、、、大丈夫!?どうしてビール瓶握りつぶしちゃったの!?」
その女性はそんな僕の姿を見て焦り、心配そうに近寄ってきた
「あ、、、!だ、、大丈夫ですから!そこで止まってください!あなたは誰ですか!?」
悪い人ではなさそうだが、不法侵入なのは変わらない。何があるかわからない異常な状況で
美人だからとそう簡単に心も身体も許さないぞ!
「美人を睨む」という友人Aこと、伊藤が聞いたら泣いて喜ぶシチュエーションな状態の僕は
血まみれの右手を相手に上げながら威嚇した。
そんな威嚇など、歯牙にもかけないという風にやれやれといった感じで女性は言った。
「覚えてない?洋子の姉の光よ。」
「え?光おばさん・・・?」
確かに言われたらそうかも・・・・?でも光おばさんの髪は紅くない。黒いはず。
光おばさんもそろそろ50になりそうな年齢のはず。くそうこういう時にヴァンパイア一族は
年齢が見た目でわからないから困る。この人も若作りの魔人か!
「こら、むー君。おばさん呼ばわりしないでと言ったでしょ。しかも失礼な事考えたでしょ」
む。確かに言われた事もあったような気がする。しかもこの母さん譲りの察知の良さは
まさに光おばさんだ!
「光おば・・・ねえさん、4年ぶり・・・ぐらい・・ですね?、お久しぶりです。
で、どうしてここに?一体全体これは何かわかりますか!?」
とりあえず、(仮称)光おばさんは、僕のそのひっかかった呼び名に一瞬「む」とした顔をしたが、
僕の疑問を解消するのが先と判断したのか、
「あー、うん。結界の中だからね。むー君好きでしょ。こういうのファンタジーっぽくて」
と答えた
え?
「け・・けっかい?・・・光お・・・ねえさん、ゲームのやりすぎですよ。そんな非現実的な事
あるはずないじゃないですか。」
全く、この情報社会の世の中で「結界」だとか、そんな事あるはずないじゃないか。
(仮称)光おばさんは、まじまじと僕を見つめて・・・ため息をつきながら言った
「それをいうならむー君の存在もおじいちゃんの存在もファンタジーじゃない・・・全く
若いのに柔軟な思考をしないのは現代っ子なのかねー」
え、いや・・・だって・・・
「そもそも、この状況おかしいでしょ?むー君目が紅いし、私も髪が紅いでしょ。誰も人も
いない状況説明できないじゃない」
やれやれ・・・といった感じで(仮称)光おばさんが現状認識をさせようとしてくる。
心は焦るも特異能力のせいで勝手に落ち着いてしまうのでこの異常な状況は確かに「おかしい」と
理解はできる。
そ・・・それなら!
「母さん、母さんはどこにいるの!?、2階すごかったよ!一体何がどうなってるのか
知ってるなら説明してよ!」
そうだ、母さんだ!あの血みたいなものもわからないし、母さんに何かあったら・・・
母さんの安否がわからない事に今更ながら心臓が早鐘を打つ、冷や汗も出てきて
最悪を想像して顔から血の気が・・・・引かずに「すん」と元に戻った。くそう。
なんだよこの異能。
そんな一瞬焦ったように問い詰める僕に(仮称)光おばさんは言った。
「洋子は、、、あなたのお母さんは私も知らないの。近くに寄った時に急に「結界」が
しかも、こんな半径数kmにも及ぶ結界なんて20年ぶりぐらいだから周囲を調べてて
お父さんに状況を聞こうと思って家にいったらむー君がいたの」
残念そうな表情で伝える(仮称)光おばさん。多分嘘では・・・ないと思うけど
「結界」とかこの状況とか全く意味がわからない。
僕は善良なる一般人なのに!