異変3
歩く事数分。やっと家に着いた。
下り坂だから帰りは早いのだ。膝へのダメージは蓄積されるけど。
ただ、やはり途中、車も人も1人も見つからず世界にまるで僕1人がいるような
おかしい状況は続いていた。
家に到着した頃には吸血鬼化の症状が消えてるとは思っていたけど未だに視界は紅い。
おかしい、普通はすぐに治まるのに。
うちの1Fの酒屋は10時開店だ。シャッターは閉まっている。
まだ、母さんは2Fにいるだろう。
痛すぎてもう麻痺してしまったのか、学校出た直後よりかは少しましになった
身体をひきずって2階の扉をあける。
「母さんー?母上ー?」
返事はなく、家の中に人気はない。
「ママー、御袋様ー?」
呼び方が気に入らなかったのかと再度呼びかけてみるが返事はない。
仕方なく玄関から靴を脱いでリビングを除いた時、異変に気付いた。
「な・・・なんだよ、これ・・・」
家の中は台風の後のように家具が散乱しており割れた食器や倒れた棚で足の踏み場も
ないぐらいだ。
陶器の破片とかもあるので靴を脱いだまま中に入るのは危ないと思い、靴を履き直して
リビングの中に入る。
壁には何か重いものを投げつけた後のような凹みがあり、奥にいくにつれて惨状は酷くなっていく。
先程の学校で見た最悪を想像し心拍数が跳ね上がり呼吸が浅く早くなってくる。心が乱されていく。
しかし吸血鬼化によってすぐに心がフラットに戻る。こら!僕の身体おかしいだろ!
自分の特殊能力のせいで無理やり平穏な状態へと戻されたまま、奥にある母親の寝室の前まで行く。
母親の寝室も扉は完全に破壊されており、「母上の部屋♡」と書かれたハートプレートは
無残に割れて床に落ちている。
あぁ、、、このプレート技術部で電ノコで作ったやつで結構上手にできたのになぁ。
あ、ダメだ現実逃避してる。
ゆっくり部屋の中に入る。母上御自慢のダブルベットが最初に目に入る。
このダブルベッド。母さん1人なのにシングルでいいじゃないかと昔言った事がある。
しかし、母が言った言葉は
「大きなベッドはそれだけで幸せなのよ。無益はまだまだお子様ねー」
と言われて厨ニ病を患っていた僕は、
「母上、僕を子供と言うならこの技を見てから言うがいい!」
・・・と、、、いやこれ以上は止めよう。現実逃避も甚だしい。
まぁ、その自慢のダブルベッドもぼろぼろで中のスプリングが飛び出していて
そして壁一面には僕やおじいちゃん、母さんの写真が貼ったボードがあったのだが、
それも今では血らしきものがべったりと付いていて、、、つかいもの、、、
に、、な、、ら、、、な・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?
結論から言うと母さんはいなかった。ただ母さんの部屋の壁に付いた物の量を見るに
普通の状態ではない事は予想できた。
2Fに誰もいない事はわかった。周辺だけではなく我が家に異常事態が起きてる事も。
3Fの僕の部屋は?屋上のおじいちゃんのプレハブは?
僕は、とにかく現状を把握しなければと思い立ち、玄関から階段を上りまずは屋上の
おじいちゃんの部屋の様子を見に行った。
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おじいちゃんの部屋は屋上に設置したプレハブ小屋で、何度か中に入ったけど基本
何も持たない人だった。
御飯とかも一緒に食べたのは数えるぐらいで、たまに一緒に食べると
「いやぁ、洋子(母の名前だ)と、むー坊と一緒に食べる御飯はおいしいなぁ」
と嬉しそうに食べるので、「毎日一緒に食べればいいのに」とよく思っていた。
母は、それを聞いて
「あぁ、とうとうおじいちゃんに認知症が、、、無益。高齢者施設今度一緒に探そうね」
と、おじいちゃんと喧嘩を始めるのが常だった。
そんなおじいちゃんのプレハブ小屋は・・・・完全に潰れていた。
こう、上からぐしゃっと踏んだらこうなるねって感じ。
いくら吸血鬼化しているとはいえ、瓦礫をどけるのは一苦労しそうだったので
まずは3Fの自分の部屋の様子を確かめに階段を下りる事にする。