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異変2

クラスの半分程がいる教室・・・しかし全員が突っ伏しており反応がない。


静かな・・それでいて少し不気味な教室に入り、僕はとりあえず近くの


友人Aこと、伊藤におそるおそる声をかけた。


「なぁ、、、伊藤?・・・」


机につっぷしたまま返事がない。


後ろ姿と髪型は確かに伊藤だよな。席も合ってる。


「おい、、、伊藤?何なんだよこれ・・」


ゆっくりと手を伸ばしうつ伏せになっている伊藤に触った瞬間、教室の入り口から声がした


若い女の声だった


「あれー・・・?かかってないの?しんどくないのー?おっかしいなー」



・・・・ん?


教室の後ろの入り口から声がしたので振り返ると、入口の扉に両手をかけて端から


顔だけを覗き込むようにしている、僕より少し年齢が高めの、、、髪の長いお姉さん。


一目で日本人じゃないとわかる白人系で人形のような整った化粧気の無い綺麗な顔なのに


流暢な日本語で、、、そして・・・髪が紅い・・・。




テレビで赤い髪の人は見た事あるけど、染めた感じではなく、夕焼けのような紅い髪。


そして目が離せない程の特徴的な髪の女性が僕を見ながら言った



「んー・・・?仲間?・・・違う・・・?なんだろう?」



その鈴が鳴ったような高い声を聴きながら・・・・何故か・・・僕は・・・




『何も感じなかった』





この教室の状態も、そして彼女の存在も非現実的な状況になるのもわかっていながら


僕は何故かパニックになる事もなく、そして彼女の存在に驚く事もなく。


心だけが置き去りになったように冷静に、そして目の前が紅く塗り替えられていく・・・。


「!?!?!!」


彼女が驚いて何か言っている。わかってるよ。僕も驚いている。何故ならこれは、、、、



『血を見た時に変わる僕の唯一の吸血鬼の症状』だからだ。



音がどんどん小さくなり、視界は既に真っ赤だ。やばい。



何故だ!どうしてこうなる!?


心の冷静な部分では、「血も見てないのに何故!?」とクエッションマークが飛び交う。


体中に力が漲る。人間を超えた力が今なら出せる。感覚でわかる。


「何も見てないのに、何もしてないのにどうしてこの発作が出る!?」


混乱する僕を尻目に、同じようにひととおり驚いた彼女が突然「ニヤリ」と嗤って、


教室の扉を超えてゆっくりと中に入ってきた。



今まで顔しか見えなかったけど、全身が見えると綺麗な八頭身で黒いタイトスカートと

黒いスーツがまた魅力的で、このお姉さん、僕の性癖にぴったりだよ。



「わー、、、綺麗で長い足だなぁ、太ももで挟まれたい」



と、益体もない事を考えながら 何故か僕の意識は突然消失した。


--------------------------------------------------------------------------------



ふと、気がつくと教室に仰向けで寝ていた。こめかみがとっても痛い。何故だ。


身体が重だるい気がする。そして天井に見える景色はまだ紅い。



「あー、、、まだこの症状消えてないのかよぉ」



と、身体を起こそうとして手をつこうとしたら何かやわらかいものをつかんだ。


ん? と横を見ると



人が倒れていた。僕はそれに手をついてしまったらしい。


目の前が紅くてよくわからないが、、、これは、、、、、誰だ、、、



頭が拒否する。これ以上考えるなと


理解しようとするな、意識を失えと言ってくる。


ただ、こんな時にも吸血化しているせいで感情はフラットに近く、そしてその為に


理解してしまった。


”これは人の、、、クラスメイトの■■■の残骸”だと。



「あああああああああああああああああああああああああああああああ」


こんなの未成年に見せるんじゃないよ!


僕はフラットな感情をぶち壊す程のショックに大声を上げ、


痛む側頭部を無視して無理やり立ち上がった。


そして、初めて周囲を見渡して気づいた。



散らばる瓦礫、ゆらめく周囲、そして散乱する机と・・・”残骸”


そして空気が澱んでおり、息をするだけで熱い空気と煙が喉を刺す。


紅いからよくわかんないけど、、、、これ燃えてる?


自分の身体が少し濡れてる事もなんとなくわかるが、視界が真っ赤な為


水なのか誰かの血液なのかわからない。



「まずは逃げなきゃ・・・」


このままでは、多分あのゆらゆらしてるのは火だと思うけど


死んじゃう!


それ以前に煙と熱が容赦なく現在進行形で僕を苛んでいる。


急いで周囲を見渡すと教室は完全に崩壊しており天井もよくみたらぼろぼろで一部


落ちてきている。


教室の入り口は既に瓦礫で閉じられており、逆の窓側はガラスが割れて窓枠だけになってる。


とにかく窓から外に逃げよう。ここ1階だけどかさ上げされてるから下に落ちちゃうけど、


今の僕の能力ならなんとか生き残れるかも!?


咄嗟に色々考えて窓からの脱出を選択する。


こういう時に吸血鬼化してると便利だよね。


僕は急いで窓枠にかけより、窓枠ごと手で押し開ける。歪んでいたのかすこし引っかかったけど


そこは吸血鬼パワーで一気に外に押し通す!


「バキッ」という音と共に木の窓枠がへしゃげて外に飛び散る。


流石吸血鬼・・・・でも・・・・



「いてえええええええええええええええ!」



身体の構造は人間そのものだから、普段鍛えてない僕にはこのパワーは耐えられず


骨にまで響く衝撃で悶絶する。肩の当たりでブチブチと何かが切れてる感じがする。


もう痛くて痛くて泣きそう。っていうか既に泣いてる。



外の新鮮な空気を感じたのもつかの間。すぐに教室の中に籠っていたであろう煙が


出口を見つけて吹き出し、そして空気を得た炎が更に燃え上がる音がする。


あ・・・やっちゃった感がする。


俄然勢いを増した後ろの状況はあえて今は気にしない!


窓から身体を乗り出すと、下に道路と樹木が見える。


道路まで高さ5mぐらい・・・。


まだ視野は紅い。吸血パワーは持続中だ!ここは一気に樹木めがけて飛び移る!


とにかく即断即決。下に見える樹木に抱き着くようにして飛ぶ


バキバキッと枝が折れる音と共にいくつかの太い枝や折れた枝が僕の身体に刺さる


「うわああああああああああああ!」


当たるし刺さるし痛い!


もう、どこをどうなったのか、全身痛くてよくわからない状態でなんとか道路に転げ落ちた。


「い・・・生きてるってすばらしい」


先程の修羅場からとりあえず安全だと思った場所に移動できたからか、つい口に出てしまった


生命賛美



道路に仰向けに倒れたまま腕時計を見ると時間は8:40


あれから1時間しか経ってないのか。


右手をついて起き上がろうとするが、上手く動かせず道路に触れた瞬間激痛が走る。


「うううう・・・」


さっきの窓枠破壊で痛めたのか・・・、ひょっとして骨もやっちゃってるかも知れない。


なんとか立ち上がり、周りを見渡すと、、、誰もいない。


後ろで校舎が燃えてる音はきちんとしている。


あれだけの破壊があって燃えてるのに、1時間経って救急車も消防車も野次馬すらいないのは


おかしい。


いくら山の上とはいえ民家ぐらいは普通にあるのに。


スマホは・・・鞄の中だ。鞄は・・・校舎の中。


つまり、何かしらの連絡する手段はない!


そして消えない吸血鬼症状も気になる。画面真っ赤は結構見づらいんだ。


FPSで死にかけてる状態だと言えば通じるだろうか。


とにかく、、、一旦家に帰ろう。


近くの民家に助けを呼ぶという事も考えたけど、そもそも今がおかしい状況で


民家に行っても誰もいないかも知れない。


まずは現場から立ち去り自分の安全を確保する。


よし、家に帰ろう!無益ゴーホーム!


痛む身体をひきずりながら、僕は家に向かって歩き出した。

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