異変1
次の日も、相変わらず母親に起こされ、
「あと少し・・・」
「いい加減毎日起こすのも疲れるんだけど!」
既に出来上がっている朝食をおいしくいただき、
「たまには、パンも食べたいなぁ」
「作ってもらっていてこの一言、、、四の五の言わずに食べなさい!」
学校に1番手ぐらいで到着する時間を狙って家を出る
「いってきますー」
「・・・ハァ、毎日毎日全く口の減らない息子だこと」
母親のボヤキを背に通学に勤しむ、毎日代わり映えのしない日常だけど、
来年の受験を超えて大学生になったら(なれたら)、
懐かしいノスタルジーな思い出に変わるのかなぁ
学校に繋がる地獄坂をそんな事を考えながら、ひたすら無言で登っていく。
「ハァ・・・ハァ」
学校まであと5分程度。地獄坂も半分を超え、周りの学生も前傾姿勢になりながら
共に登っていく。
ふと、違和感を感じたのは校門をくぐって、教室に繋がる階段を上って1階に着いた時だった。
2階への階段の段差で1人の男子生徒が階段に座り込んでいた。
その顔は、下を向いていて見えないが大分消耗しているように見える。
「・・・・・・・・・」
傾斜のきついうちの学校は、特に1年生は校門のある地下から一気に3階まで上がっていかなければ
教室にたどり着けないため、新入生が途中の階段でへたり込む事は珍しい話ではない。
しかし、僕はいつも1番手に登校する事が多く、他の生徒も朝に会う事はほとんどない。
それなのに、既に学校に着いていてしかも座り込んでいるのは珍しいなと思っていた。
それだけの話だった。
しかし、他の違和感までは感じなかった。いつも1人なのに今日この日に限って
多くの学生と一緒に地獄坂を上っていたという自分もこの些細な違和感に気づけなかった。
その違和感に気づき周りをよく見渡していれば、その後の人生も変わったのだろうか。
些細すぎて気づけなかった違和感を最初に、僕の世界は変わっていった。
教室に入ろうとした僕の目に信じがたい光景が広がっていた。
教室に既に人がいる。半分以上。しかもその全員が先程階段で見た学生のように
机につっぷして微動だにしない。
時計を見る。7時30分。うん。いつもと一緒だ。
この時間、早朝朝練している学生が登校しているという事はありえるが、
朝練をしている学生は部活動に勤しんでいる為、教室にいるという事はまずない。
1人、2人ならいつもの事だが、半数以上となると・・・・。
しかも、それだけの人数が教室に詰めていながら全員突っ伏しており誰1人声すら
上げない。
特に今日何もないよね?
早く登校しないといけない日とかあったっけ?
どうしてみんな突っ伏してるの?
よく見たら伊藤も既に登校していたのか席に突っ伏している
・・・いや、本当に伊藤なのか?
人が多くいるにも関わらず、誰1人話す事とのない静かな教室に僕は足を踏み入れた。