日常3
「ねー、母さん」
「・・・」
「ねーってば」
「・・・」
「・・・いつも美しい母上様」
「なに?」
今日の夕飯は豚の角煮だった。圧力釜でしっかりと煮たてられた豚の角煮は、
口の中に入れるとトロっと溶けてとてもおいしい。
流石、主婦になって33年の匠の技、58年の母親の人生のうま味が凝縮されてますな。
「53年よ。いくらかわいい息子でも母親の年齢を間違えるなんて・・・殺すわよ」
・・・だから、どうして心の中で考えた事がわかるんだよ
「無益の考える事はなんでもわかるのよ。息子だから」
むぅ
それはさておき、今日の昼にあった事を聞いておこうと思ったんだった。
「母上ね。今日じーちゃんからこんな果物ナイフもらったんだけど、何か知らない?」
「あれ?おじいちゃんは旅に出てたんじゃないの?」
「そうだけど、学校から帰ったら書置きと一緒にこの果物ナイフあげるーってあったんだ」
「んー?」
母上は、ポケットから出した果物ナイフを見て一瞬、「何故それを!」みたいに目を見開・・・・
く事も無く、普通ご飯をもぐもぐ食べながら、
「知らないわよ。大体高校生にナイフとか危ないじゃない。おじいちゃんも何考えてる
のやら・・・なにより無益が厨二病の時に色々集めてたのはもう3年も前なのに・・・・あ!
お父さん細かい年数経過を理解できないから、まだ無益が厨二病にかかってると思ったのかしら」
と、全く興味ない返事・・・
っておおい。なんだよ厨二病って、そんな事考えてたのかよ!
「いやいや、なんだよその厨二病って」
「中学生の時に、トゲトゲのついたメリケンサックとか、
木刀とか色々買ってニヤニヤしてたじゃない」
・・・・・・・・・・うぎゃああああああ、
黒歴史を今更母親に再確認されるこの恥ずかしさはたまらん!
「なな・・・な・・そ・・・」
「未だに、そういうのが好きって思ってたからあげたんじゃないの?
全く・・・帰ってきたらきつく言っておくから。
無益あなたはそれ、学校に持っていっちゃダメよ。
ニヤニヤするなら家の中だけにしなさいね。いい加減警察に捕まるから」
「○×・・□◆・・・」
言葉のでなくなった僕に、母上は満足そうににやりと笑うと食事を続けてしまい、
結局、僕の身体に起こった出来事までは聞くことができなかった。