俺酒場で情報集めます
昨日の今日で上げました!
さあ、どうぞ!
森の街ノーラ、大衆酒場[バッカス]
酒場に着いたものの、前世が未成年で終わっていたからか酒の匂いになれない。
酒場には昼間から飲む商人やヤンキーっぽい人、はたまた世紀末のあの人のような人もいる。
こんな所でほんとに情報が手に入るのかと不安になってきた。
「兄ちゃん、見ない顔だな。よそ者か?」
声をかけてきたのは、いかにも戦士という言葉が似合うマッチョの男だった。
「え、えぇ。今日この街に着たばかりです」
「そうか、なら一緒に飲まねぇか? 見たところ俺と同じ旅をしている剣士ってところだろ」
な、なんという観察眼だ。
俺を一目見ただけで剣士であることを見抜くなんて……
ウェイトレスに案内されて二人席に男と一緒に座った。
「まだ名乗ってなかったな。俺の名前はグリスって言うんだ。この街には一ヶ月ぐらい滞在している」
「タツヤといいます。さっきも言ったように今日初めてここに来ました」
「タツヤ……いい名前だな。それでタツヤ、なにかを探しているようだったがいったい何を探していたんだ?」
正直に答えるべきなのだろうか?
魔王を探していることを。
この世界の仕組みや生活、何を信仰しているのかも分からない。
情報が足りなすぎる……。
言葉を選ばなきゃ……!
「じゃあ、この世界の仕組みについて教えてくれませんか?」
「世界の仕組みだと? なぜそれを知らない?」
「お、俺実は記憶喪失で自分の名前以外何も分からないんです」
これで押し通せるか!?
「なるほど、記憶喪失か。そりゃあ災難だったな。だが、生きて帰ってきたことに誇りを持て。人間、生きてなけりゃ意味がねぇ」
お、押し通せたぁ~。
そして、グリスはこの世界の仕組みを教えてくれた。
まず、この世界では人族と魔族がいること。
魔族と人族は共存していてそれぞれに王がいること。
この世界にはその二つの種族以外に未確認の生命体がいて、そいつが魔物を生成していること。
そして、この世界では唯一神であるセイナが信仰されていること。
「なるほど、魔族と人族が共存ですか」
「そうだ。人族の王、【人王】は10年前に行われていた魔族との戦争を話し合いで終わらせた人でな。魔族の王、【魔王】も話し合いで終わらせることに賛同したそうだ。ついこの間に亡くなられてしまったが……」
亡くなっただと!?
三月じゃないよな?
「そ、その亡くなられた魔王さんの跡継ぎは誰なんですか?」
「それなら、つい先日魔王が溺愛していた一人娘が即位したぞ」
よ、よかったぁ……。
三月が生きてることを確認したからか、自分の心が安心感で満たされる。
なら、最後の一押し、魔王城がどこにあるか聞ければいい。
「魔王に会ってみたいのか?」
な、なぜ分かった!?
「会ってみたいですが……でもどうして分かったんです?」
「顔に書いてあったぞ。魔王に会いたいとな。ハハハッ」
顔に出ていたのか。
これからはポーカーフェイスを作らなきゃな。
「魔王に会いたいなら連れて行ってやるぞ」
唐突に、それは本当に唐突過ぎた。
魔王に会える……会える!?
「ほ、本当ですか!?」
「本当だ。俺も魔王城に用事があったからな」
な、なんと言う幸運!
「いくならはやめ――」
「行きます!!」
「お、おうそうか。なら、明日の朝ここで待ち合わせだ」
よし、これで魔王城にいけるぞ。
しかし、約束をすっぽかされないだろうか?
「約束は守るぞ。戦士たるもの、約束は必ず守らなければならない」
なんと義理堅い男、いや、漢だ!
同性でも惚れてまうよ……。
それにしても、魔王城までの道のりが早すぎない?
次回は残酷描写が入ることを予告しておきます。
期待しててください。