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その時、僕達は……

若干のネタバレがあります。

 電子音が部屋に鳴り響く。窓も何も無い部屋には二人の男女がベッドに寝ている。そこにいるのは六人の男女だった。


「孤児自立計画は順調。このままいけば、ゲームをクリアするころには自立ができるようになっているよ」


「兄さん。そろそろ寝ないと、体に毒だよ?」


「これは、神様に言われちゃ敵わないな」


「ちょっと! それはあっちの世界での話!」


 二人の白衣を着た研究者が楽しそうに話している。それを後ろから見ている男女が苦笑いをする。


「あの兄妹は相も変わらずいちゃついてるな。早くあの人が来ないと大変なことになる」


「そうやって言いながらも楽しんでない?」


 こちらも、人のことが言えないほどいちゃついていた。正直に言うと目に毒である。


「あんたたちは……揃いもそろって兄妹や夫婦でいちゃつかないでよ! あたしたちいるんだから!」


「そういいながらも実は羨ましいんでしょ」


 こちらも男女でいちゃつくほどではないが実に微笑ましい。


 東京のとある施設の中にこの部屋はあり、周りにはコンピュータの配線が目まぐるしく並んでいる。部屋にある七つの机には各々の趣味や物で飾り付けられており、それぞれの個性が全面に出ている。


「そういや、奥さんはまだか?」


 苦笑いをしていた男……いや、青年というのが正しいのか。青年がいちゃついてる兄妹の兄に聞く。


「そろそろ来るよ。僕も迎えに行くって言ったんだけど」


「断られたってことか」


 痛いところを突かれたのか兄も苦笑いになってしまう。しかし、この六人の中ではこれは日常らしく、誰一人として止めることはない。それもそうだろう。彼らはこの三年間苦楽を共に過ごしてきた言わば家族に近い関係なのだから。


「はやく晴美ちゃんかえってこないかな~。兄さんまだー?」


 椅子に座って紅茶を飲みながら兄妹の妹が言う。それに反応するように二人の女性は声をそろえて言った。


「まずい、問題児たちが来る!」


「ひとまず、由貴君対応よろしく!」


「え、俺がやんの!?」


 そういいながらも、部屋を出ていく由貴は奥さんのいい使いっパ……旦那さんとして言うことを聞く。それを見ながら青年は言った。


「あはは! 乙姫ちゃんも酷いわ!」


 笑いが堪えきれないのか、気持ち悪い声が聞こえる。ほんとに気持ち悪い。


 ぼくは自分の机にある写真立てを見て心を落ち着かせる。その写真は三年前に撮ったものだが、それは僕の中にある大切な思い出の一つだ。


「失礼します。主任、ダイブから戻ってきました」


「お疲れ様、彼の様子はどうだったかな? 『グリス』」


「その名前で呼ばないでください……。麟弥は順調に成長してますし、物覚えもいい。それに仲間思いですから、これからもちゃんとできますよ」


「そうか、後は『魔王』の報告を待つのみだね。ありがとう、今日はもう上がっていいよ」


 わかりました、といって部屋を出ていくグリス。本名はグリフォード・マルクス。彼にはこれからも頼ることになるだろう。


 グリスと入れ替わるように入ってきたのは、一歳の子供を抱えた女性だった。


「お帰り、晴美の様子はどう?」


「ただいまー! 保母さんたちからは大人しくいい子にしてたって」


「晴美ちゃんーー! おかえりー!」


 妹が晴美を抱っこする。保育園に通っているとはいえ、最近構えなくて寂しかったのだろう。


「それで、二人の様子はどうなの? ()()()()?」


「順調だよ。三か月、向こうで二年間過ごせば十分になるよ()()()()


 僕たちは当初の目的を達成してきた。だからこそ、今がある。


「それならよかった。智美ちゃん、もう少し晴美をお願いしてもいい?」


「任せてください! 命に代えても大事にしますから!」


 続

次回、魔王三月は空駆ける お楽しみに!

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