クレアツィオーネ創世記
昔、そこには何も無かった。
上も下も、朝も夜も、大地も空も、海も無かった。
ある日、空、或いは大地から一人のヒトが落ちてきた。
彼、或いは彼女は何も無いそこを見渡して、不思議に思った。
どうしてここには地面が無いんだろう?
すると彼、或いは彼女の足元に、見渡す限り続いてく大地が現れた。
次に彼、或いは彼女は大地しかないそこを見渡して、不思議に思った。
どうしてここには空が無いんだろう?
すると彼、或いは彼女の頭上に、彼方まで続いていく空が現れた。
次々に彼、或いは彼女は大地と空しか無い世界で不思議に思った。
どうしてここには海が無いんだろう?
どうしてここには森が無いんだろう?
どうしてここには太陽が、月が、夜が、朝が、人が、妖精が、ドラゴンが……。
思い付く限りの、どうしてここには無いんだろう、を不思議に思った。
そしてそこが『何でもある』になったある日、何かに何かが殺された。
それは自然の摂理であり、不条理でもあり、血で血を洗う戦いの始まりだった。
何年、何十年、何百年と戦いは続いた。
彼、或いは彼女は死んでしまった者達の亡骸を抱き、思った。
どうしてこんなことが起こってしまったんだろう!
すると彼、或いは彼女の目の前で戦っていた者達がいなくなった。
肉体無き者は肉体無き者達だけに、小さき者は小さき者達だけに、大きな者は大きな者達だけに、そこが区切られたからだ。
そうして戦い自体が絶えることは無かったが、肉体無き者達が肉体の有る者達を虐げたような、大きな者達が小さな者達を蹂躙したような、理不尽な血で血を洗う戦いは起こらなくなったのでした。