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せっかくの異世界なので、  作者: せきさんち
なので、始まります。
2/4

プロローグ 2〜『トイレに女神?様』なので、

第 0話


プロローグ 2~『トイレに女神?様』なので、



「ゥブッ!!」


 俺は現在、自宅のトイレの便器を抱えて黒色がかった血を吐きながら2回目の人生の死を待とうとしている。輝石 (てるいしのぞむ)17歳の転生者だ。

せっかく転生したのに、結婚も家族も出来ず今回も若くして死のうとしている。


良い人生ではなかったけれど……。





西暦2017年


 俺は、トーキョースミダの高層マンションに住み、窓からはスカイタワーや花火大会が見物出来た。父母妹の4人家族で、運転手のレイさんは綺麗な女性で俺と妹の面倒をよく見てくれた。

たぶん裕福な家庭だったと思う。


 俺と妹の誕生日には、父の馴染みのレストランでよく食事をした。店長兼シェフのマサさんは俺達家族が訪れると嬉しそうに出迎えてくれて、


「よくいらっしゃいました、坊っちゃん嬢ちゃん。」


と、頭をガシガシ撫でられた。見た目豪快なのにメニューに無いデザートは繊細で可愛いデコレーションを施したケーキだった。


 俺の5歳の誕生日、その日もマサさんのレストランに家族と出かけた。特製のナポリタンやデザートを食べる俺を両親は、にこやかに見ながらワインを楽しんでいる。妹の(ユキ)の口の回りはケーキまみれだ。



「レイさん。美味しかった〜っ。」


「それはよかったですね。楽しい誕生日でしたか?」


「はい!」


 食事が終わり、マサさんと話している両親と妹より先に店を出た俺は、店の前の道路に車を停めてドアを開けて待っているレイさんに駆け寄り抱きついた。


「お出迎え、ありがとうございます。」


「私の仕事ですから。旦那様方はまだマサ様と?」


「はい、お話ししています。」


「そうですか。では車に乗って待っていまッゥウッ……」


膝から崩れ落ちなからも、遠ざけようと両手で俺を押す。


「レイさん?」


レイさんの横には知らない男が携帯電話をかけながら右手に血の付いた刃物を持って立っていた。後ろのお店から物が壊れる音の中にマサさんの怒声、母の叫び声、妹の鳴き声が聞こえた。


「あぁ。会長を殺った、後は息子だけだ。」


「坊っ……ちゃん……逃げ……」


涙を流し、悔しい表情のレイさんに言われて一歩二歩離れた所で男に掴まれた。


トスッ


胸が熱い。胸から抜かれた刃物を追うように血が噴き出す。


「あぁ……坊っちゃ……」


うつ伏せに倒れているレイさんは泣いていた。俺に手を伸ばして。


視界が赤から白に変わっていく。


そうして俺は、意識を失った。





『ザザ ……転……生ザザ……ザ ザザす』





西暦2019年


 俺は産まれて直ぐに震災孤児になった。ハンシン、フクシマ、そしてトウキョウの約4割を沈めたトウキョウ大震災。首都機能は暫定的にサイタマに遷されてから今年で15年、復興はたぶん進んでいる。子供の俺には復興の事はよく分からなかったが、路上生活者が少なくなってきているのは確かだと思う。赤子の俺を拾って育ててくれた爺さん曰く、

「人は天には敵わないが、諦めなければ負ける事は無い。幸福を望む人の力は時に天にも通じる。ヒノモト国は必ずや、また豊かな国となる。」だそうだ。

当時の俺にはよくわからない言葉だった。


 俺が16歳になった秋、5メートルもある熊を割り箸で仕留めていた爺さんが、病気で呆気なく死んだ。爺さんの遺言に従い亡骸を埋葬し、二人暮らしだった山奥から街に移った俺は、爺さんが遺してくれたお金でアパートを借りて日雇いの力仕事で細々生活していた。


 街での生活にも何とか馴れてきた17歳の春、慢性的な腹痛から下血、吐き気、吐血をするようになり食事もろくに出来ないようになった。爺さんと同じ症状だった。

 吐き気がしたのでトイレに這っていき便器を抱えて赤黒い血を吐き出す。身体に力が入らない。意識も朦朧としている。爺さんのように遺書を遺す家族もいない。


そう、一人で死ぬんだ……寂しいな。


トイレの中で仰向けになり天井を見た。口からは血が、眼から涙が……何か寒いな……これが死んでいく感覚か?

身体の痛みが薄れて無くなっていく……

視界の焦点が合わなくなり、天井がだんだん白に染まっ……て……い……か……ない?


 天井から暖かく優しい光りが拡がって、光の奥から人影が近づいてくる。……気が付けば身体の苦しさが消えている。何となく、死んだんだなと感じた。

 人影は段々近づき姿を現し、それが女性だと分かった。優しい感じの綺麗な女性だなぁ。瞳が輝いているようだけど、よく見ると金色なのか……白い大きい薄生地を胸元から太股まで貼り付けた様に纏っている。スタイル良いけど……風も吹いていないのにゆらゆら揺れている布は不思議だ。

 女神。……神様がいればそんな言葉が当てはまるだろうか。そんな彼女の声が頭に聞こえる。変な言い方だが彼女の口が動いていないのに俺以外の声が聞こえたからだ。


『やっと迎えにくる事が出来ました。捜したのよ?本当に心配したのよ?本当よ。貴方が間違えてこの世界に転生してしまったので、本来の世界に貴方を送ります。さぁ、行きましょう。』


何だろう……死んだ事より、彼女が気になって仕方がない。それと、


「………………え〜と……生まれ変われる、という事だと思うけど……間違えて〜は言っちゃ駄目だよね。」


『あっ!!…………はわわわわ、そうでしたっ!言ってしまいました! 』


彼女があたふたしている様子は可愛いらしいが、顕れたときの神々しさは何処かに消えてしまった。取り敢えず落ち着かせよう。


「落ち着いて、ね。間違えて~は気になるけど責めているんじゃないんだ。最初は、夢かと思っていた前回の人生の記憶に戸惑ったけど、今回爺さんと過ごせて大変な目にもあったけど、良くもなかったけれど悪くはない。と思える人生だった。間違いなんて聞くと今回の俺と関わる事全てを否定されたようで悲しいんだ。だから、間違えて〜は聞かなかった事にするよ。また俺以外に伝えることがあったら気をつけてね。」


『……はい。……すみません。でも貴方以外になんて……』


最後の方はよく聞こえなかったが、落ち着いたみたいだけれど、落ち込んじゃったかな。でも少し位は反省してもらおう。さて、話を進めてもらおうかな。


「それで、転生だって?只生まれ変わる訳じゃないんだね。理由は……聞かない方が良いのかな。勿論悲しみや悔しい記憶も有るけれど、前回と今回の良い思い出が消えるのも悲しいし、お願いするよ。」


彼女がパッと顔を喜ばしたが、直ぐに唇をキュッと閉じて思い詰めたようになった。


『ありがとうございます。理由は貴方が見つけるであろう目的の為としか伝えることが出来ません。本来ならば、貴方は生きるべき世界で為すべき事を行い、不治の病で17歳で死にこの世界に生まれ変わる予定でした。でも……すみませんでした!私のミスなんです!私が、もっとしっかり貴方の事を観ていれば……今度こそ貴方を送ります!貴方に祝福を……いえ、祝福を3つ授けて!』


彼女が豊かな胸の前で両手をきつく握りしめ決意の表情で語った。いや、しかし。


「分かりましたから、そんなに顔を近づけないで!もう貴女に任せますから。ね。でも祝福って?」


こんな美人に近づかれたらドキドキして頭が沸騰してしまう。女性と親しく会話したことなんか、前生のレイさん位しかないのに。だから、胸の谷間に視線が行った事は許して欲しい。


『え?あ?すみません!私ったら、つい近づき過ぎてしまいました。貴方になら胸なんか好きなだけ見てもらって構わないですよ。だって、私は貴方が……ゴニョゴニョ……ハッ!。……ええと、祝福とは、貴方の願いを叶える事だと考えてもらえればいいですよ。でも祝福は貴方自身の能力に関してだけになります。世界平和とか、誰かを生き返らせるとか駄目ですよ。よく考えていただいて下さい。決まったら、願いを聞かせて下さい。』


「いきなり願いは?と言われても直ぐに出てこないよ。また記憶を有したまま生まれ変わるなら、爺さんや前回の父母、それと他の人達から教わった事が活かせるだろうしね。どうしようかな……」


さて困ったな。と悩んでいる俺に彼女は、言葉に出しはしないが「さあ!、さあ!」と急かすように鼻息荒く待っている。ははは、何をしていても可愛いな〜と考えていると、あることに気付いた。


「ちょっと良いかな。貴女みたいな綺麗な女性は初めて見ました。俺の側にずっと一緒にいて欲しい。と、思える程の貴女の名前をまだ聞いていなかった。教えてもらえないかな?何なら願い事にした方が良いかな。」


彼女が俺の言葉を聞いた途端にアワアワしだした。何故か顔と言わず、見えている肌全て紅潮している。


『あぁ、あぁ、嬉しい。こんなに早く言って貰えるなんて……。あ。私は、ビナス、です。いく久しく……グス……宜しくお願いいたしま……す。あ、これ……は……グス……祝福とは……別ですグス……よ。』


ビナスさん、教えてくれて嬉しいのですが、俺の胸に手と顔を埋めるのは止めてもらえないですか。泣いているみたいだけど。どうして?……対応に困ります。


『グス……私ビナスが………………の……グス………………す……グス。』


胸の中で何か呟いているがよく聞き取れない。何か言葉を言い終わったビナスさんは俯き上目遣いで俺を見る。涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃだし、全身真っ赤だ。何故?どうした?


『ぞれで、じゅくふぐ(祝福)は決まりばじたか?』


「えと、ビナスさん?すみません。物凄く恥ずかしいし、どうしてあげたら良いのか分からないので、少し離れてくれると助かります。」


『あ、私こそすみません……つい、嬉しくて。では、祝福は決まりましたか?』


たった10センチ位離れて満面の笑みのビナスさん。


「あの……もう少『嫌です!』……し」


食いぎみに拒否された。満面の笑みで。諦めて早く祝福を決めよう。っていうか1つは決まっているので質問だな。


「祝福は、今全部決めないと駄目なのかな?」


『いいえ、先程まで駄目でしたけど、今は1つだけ決めてもらえればいいです。傍にいますから残りは何時でも叶えますよ。』


「良かった。では最初の願いは……」


ビナスさんの言葉を軽く受け流していた俺は、光に包まれた。

読んでくれた方にありがとうございます。

遅筆なりに頑張ります。

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