プロローグ〜『愛しの「我が君」』なので、
初めての投稿で稚拙で遅筆になるかと思います。
お付き合いして頂ければ嬉しいです。
第??話
プロローグ〜『愛しの「我が君」』なので、
今日もラダ村を囲む緑豊かな山々には動物たちが溢れ、澄み切った青空の鳥達は気持ち良さそうに舞い、眼前に広がる湖は陽を反射し宝石のように輝き、優しい空気がこの村全体も包む。
王都から馬車で2か月はかかる距離のこの田舎でも人々に不満は無いみたい。
笑顔も溢れていますしね。
「さてと。」
村の広場中央にある巨石に刺さる片刃の剣(刀と教えていただいた)に朝の祈りを終えた私は、朝食を作る為に家へ向かい歩き出した。
「さて、スープは何にしよう? まだキングピッグの肉はあったかな?狩りに行かないと駄目かな?」
独り言を言いながら家へと向かう。
我が家ながら、この小さい村には不釣り合いなほど大きく(地下1階、地上3階、部屋数50!お城かっ!?)白銀の壁の四方には大人2人分の高さの背中に羽の生えた綺麗な女性像(「エンジェ」だったかな?)。
ドアは重厚な趣のある赤いドア(上部の縁には「主の許可無き者にこのドア開くこと無し」って書いてあるって、おっしゃってたかな?)。
と、ドアが勢いよく開き、
「お帰りなさいませっ!」
中から今年で50歳になる子供たちのリーダー格で、緑の綺麗な腰まである髪を後ろで一本に編み込んだ碧眼の少女が私に飛びついてきた。
「サシア、ただいま。皆はもう起きたかな?」
「うん。皆起きて朝のお仕事を始めているよ。だって今日は大事な日でしょ?」
「ふふ。そうね。やっと「我が君」が帰って来るものね。でもねぇ……」
「?」
「「我が君」だから仕方無いのだけれどねぇ。」
「なんのことか分かりませんが、仕方無いですよねぇ。」
サシアに苦笑いしながらも、あの日を思い出す。
「ちょっと王都の北まで行こうかな。ジャンケンで留守番決めて準備してくれ〜。明日の朝出発な。」
「「「っ!!、は〜いっ!!」」」
久しぶりに負けてしまった私が留守番に。あの時の二人が涙を流しながら抱き合って勝利の雄叫びをあげていた姿を思い出すと、未だに笑みが浮かんでくる。
「我が君」に同行する事が出来る者(二人)と我が家で留守番をしつつ子供達の生活を助ける者(一人)を初めは三人で話し合って決めていたが、三人で決めようとすると長時間に及んでしまう為に「我が君」が見かねてジャンケンなるものを私達に教え、決めるようになった。
ジャンケンが強い?私は今回まで負け無しだったのだが(と言うか二人とも必ず最初にグーを出していたので……)、今回初めて留守番担当になったのだ。
どうやら負けが多く泣き崩れていた二人に「我が君」がグー以外を出すことをアドバイスしたらしい。
その時の二人の“ア〜~……”って顔ったら。ふふ。
「「我が君」行ってらっしゃいませ。道中お気をつけ下さい。二人とも「我が君」をよろしくお願いしますよ。そして迷惑かけないようにね。」
「勿論ですわ。甘える事があっても迷惑なんてかけません。ねぇ、ツクヨミさん?」
「そうなのです。朝から晩まで甘えまくる事があっても迷惑なんて、とんでもないのです。ねぇヴァレリー?」
「ん〜だから、それが迷惑になると……」
「「ティードには言われたくないですわ!!」のです!!」
「え……いや、そのね……」
二人からの口撃に思わず怯んだ。口撃は尚も続く、
「貴女ときたら「ご主人様」と一番多く供している事を良いことに朝に夕に晩、お風呂からベッドまで甘えておいでではありませんかっ!」
腰に手をあて頬を膨らますヴァレリー。
「そうなのです!ティードばかり「旦那様」に一番甘えん坊でずるいのです。隙在らば甘えていたのです!」
ジト目で、普段は雪のような白い肌を真っ赤にして怒るツクヨミ。
「はいはいはい。そのくらいにして行くぞ〜。
それじゃティード留守番頼むな〜、帰る時には何時もの様に報せるから。」
「あ、はい。かしこまりました。」
流石「我が君」、いいところで話を折ってくれました。愛しております。
出発して2月後のフーオの月、「我が君」から報せが来た。
『だいぶ待たせた、寂しい思いをさせたかな。すまない。メルド城塞も暇になったからそろそろ帰るぞ。フイの月には着く予定だ。じゃあな、愛してる。それから準備よろしくな。』
もう、「我が君」ったら。私も愛しておりますとも!速く帰ってきて……って、ん?準備!?……準備??
あ〜〜……何でしょう?……私は何時でも準備万端ウェルカム状態にしてますし……。悩んでも仕方ない、お帰りを楽しみにしていましょう。でも、もしかしたら……
そんな事があって今日に至る。記憶に沈んでいると、2階のベランダから
「あっ!主様だぁ!」
洗濯物を干していたシャスナが喜びの声をあげた。
「ティード様、帰って来ましたよ。あれ?でも……1、2、3……4人居ますよ?主様とヴァレリー様とツクヨミ様、あと一人誰でしょうか?ヴァレリー様、ツクヨミ様と並んで歩いていらっしゃいます。」
湖の方を見る。
朝日に照らされた湖面を背景に少しボサッとした美しい黒髪、お気に入りの黒地に銀色の彩飾が入った上下。腰に2振りの大小の刀。「我が君」だっ!愛しい「我が君」!!
あぁ、お待ちしておりました。
あぁ!速く抱き着いて「我が君」の香りを満喫したいっ!頭をなでなでしたいっ!唇を奪いたいっ!「我が君」の全てを堪能しまくりたいっ!!
そのあとで留守番報告をして褒めて頂きたい。じっくりまったりと。それにしても、……増えましたか……只増えただけの家族なら「我が君」と二人に縦に挟まれて歩くところをヴァレリー、ツクヨミの横に並んでますか……ですよね。
なんせ「我が君」ですから。見る目(才能)がある女性ならば放っておく訳がありません。世を統治出来るだろうカリスマと武の才。政などは「我が君」に付き従う才を持つ者が行えば良いのです。机に縛りつけて「我が君」のやりたい事の邪魔などさせません!
あの金髪眼鏡が身を粉にして働けば良いのです。金髪眼鏡を筆頭に政の才ある子達が、このサンノ大陸をほぼ全て善く治めている事は褒めてあげても良いですね。今度ヴァレリー、ツクヨミと相談して褒美でも挙げましょうか。「我が君」に少なからず貢献していますしね。
おっと、そんな事を考えているうちに「我が君」達が近づいて来ましたね。
「サシア、皆に伝えて!帰って来ましたよ!新しい妻も一緒ですから、そのつもりでね。」
「はい!」
「さてと。」
私は髪と服を整え自然とニヘラ顔になるのを笑顔に戻し大きく手を降る。
新しい妻もきっといい女性に違いない。「我が君」が初めて降り立ったこのラダ村もまた少し賑やかになって、また少し幸せが増えていきますね。楽しみです。
「「我が君」お帰りなさいませ。長旅お疲れ様でした。」
お読みいただき、ありがとうございました。
お気に入りになって頂くように頑張ります。