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レイヴン戦記  作者: 一弧
第一章 急転
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王都への出発

 王都にむけて出発の日となった、ルヨも村を出るのは初めてで傍目ににも浮かれているのがわかる、ラファエルのお供で何度か隣の伯爵領に随伴した者や古参で何度も戦場へ赴いた者などは落ち着いた様子なので違いが分りやすい、それでも王都は初というメンバーが半数を占めているので、少し浮足だった感は否めない。

 そういった浮かれ気分と緊張感を紛らわすためか、ルヨはテオに軽く話しかけた


「よお、お前もたいへんだなぁ、しかしさぁ」


 途中まで言ったところで周りの年配の者にかなり痛そうに殴られていた。


「領主様になんて口の利き方だ!次やったら熊の餌だからな!」


テオとしてはまったく気にしていなかったが、対外的にはかなりまずいのだろう、まぁ領主様やラファエル様にそんな口きいてたら、よくて袋叩きだろうからなぁ、などと考えていると、カイが側にやって来て囁く。


「準備が整いましたので、出発の号令をお願いいたします。」


「うん、では王都に向けて出発する!」


 その号令を受け全員「応!」と息の合った返答の声が挙がる、号令をかけたテオとしてはかなり芝居がかった面倒な儀式にしか思われなかった。

 山中にある村を後にして最も近い村まで3日、そこから隣接領主である伯爵邸のある街までさらに5日かかり、全員徒歩であるならもっと早く着けるところであるが、テオは領主から譲り受けた由緒あるプレートアーマーを身に着け、慣れない馬に乗っての移動であり、かなりゆっくりとした行程を行く事となった、不慣れな乗馬での旅とあって周りの風景や山の中と違う平野部での旅行を楽しむ余裕はあまりなかった。

 最も近い村へ到着まで野営をしていたこともあり、最初の村に到着した時はやはり屋根のある所で飲食や睡眠がとれるということで、かなりリラックスモードに入っていた。そのリラックスモードも手伝って、ルヨが疑問に思っていた事を年配の者に聞いてみた。


「あのぉ、別に不満とか文句とかじゃないんですが、領主様の後継者がいなくなっちまうと大変だって話だったじゃないですか?」


「ん?なんだ?」


 デリケートな話題であっただけに一瞬で場に緊張が走り、言った本人もマズイと感じたが、ここで止めるとかえって誤解が広がると思い、かなり慎重に言葉を選びながら、疑問点を言ってみることにした。


「だから不満とか文句じゃないんですよ、後継ぎがいなくなったら具体的にはどういう不都合というかデメリットみたいなことがあるのかと、どうもよく分からなかったんですよ。いいご領主が亡くなられて悲しいというのは分るんですが、領主の後継者が継ぐのと、王様の直接の領地になるので、どう違うのかがよく分からなかったんですよ。」


 そこまで言い切って、周りを見渡すと『そう言えばなんでだろ?』という感じの若手もわりといた感じの雰囲気が読み取れた。

 尋ねられた年配の男も理論だった説明がきちんとはできずなんと言おうか戸惑っている様子が見て取れた、その様子を見た民兵団の引率役として、参加していた村長のマルティンは努めて軽い口調で話し始めた。


「なんだそういう事か、よく理解できてない連中も多そうだし、まとめて説明してやる。」


 知ったようなフリをしていても理論だった説明ができなかった連中も含めて村長の発言に注目が集まると、マルティンは一呼吸おいて話し始めた。


「細かい点は多数あるが、一番大きい点は発展と融通だな。」


「凶作で作物の収穫が壊滅的な年があったとする、王様直轄地の場合派遣されている代官が決められた定数の税を中央に収めるだけだからまず減税などの優遇は考えられない、ご領主様だと餓死者がでるようなひどい有様を目の当たりにすれば、減税にしたうえで低金利の貸付まで考えてもらえる、それがどれだけ大きなメリットか理解できん奴はいないだろう?」


「発展に関しては道路整備、新規開拓、等への援助がご領主様と違い、お代官様ではほとんど期待できない、お代官様は基本的に数年で移動になるため、土地の長期的な視野にたっての発展に寄与するなんて考え方ははほとんどしてくれないからな。まぁだいたいこんなとこだが、まだ理解できん点や疑問点はあるかな?」


 一同からは感嘆の声が上がりルヨも感心することしきりであった、


「さすが、村長!年の功は伊達じゃないっすねえ!」


 言い終わるとほぼ同時にルヨ鼻の頭をそれなりに痛そうに村長に殴られた、


「馬鹿野郎!まだ40ちょいで年の功なんて言われるほどの年じゃねえ!」


 どうもルヨは調子に乗って余計な事を言う傾向にあるが、旅の解放感もあり村に泊れる際はわりと穏当な調子で旅は始まっていった。




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