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レイヴン戦記  作者: 一弧
第一章 急転
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プロローグ

異世界転生物ではありません。

中世ヨーロッパっぽい世界観です、ドラゴン、エルフ、魔法等は存在しません。

あまり露骨ではありませんが若干の性愛描写は入ります。R18まで行ってないと思うけどだいじょうぶだよなぁ・・・・・



 ひっそりと、ただ息を潜めるように淡々と日常が進行していた、ただ村全体を覆う悲壮感は言葉ではなく重い雰囲気として漂っていた。

 昼を少し過ぎた頃に井戸で偶然行き会った二人の青年も口を開けば話題とする事は一つであった、


「なあ、どんな感じなんだ?お前んちだともうちょい詳しく知ってるんじゃないか?」


 ヒョロっとして少し軽薄そうな青年が主語もへったくれもない質問をぶつけていく、質問された方の少し小柄な青年も質問の意味を理解し即応する、


「知らんよ、だいたい家ではあまり会話がないんだ、ってかピリピリしててとても会話できる雰囲気じゃない、できれば代わってほしいくらいだ」


「まあ、そうなんだろうけどさ、後継者いないとたいへんだって、うちの親父もかなりピリピリしてるんだよ、しかもほとんど情報も入ってこないから、余計にヤキモキしてんだろうなあ」


 そこに近づいてくる一人の少女を見て小柄な青年は、首を少し少女の方に向け目で捕えながら、


「むしろ、あいつの方が詳しいんじゃないか?まあ、知ってても言えないかもしれないけどね」


「だなぁ、まあダメ元で一応聞いてみるってか、つーか、お前の婚約者だろ?」


「絶賛拒否られてるけどね」


「全然、進んでないわけね、この騒ぎでまた停滞するし、今後どうなるのかも不透明だしなぁ」


 二人がそんな会話をしているうちに少女は二人のすぐ近くまで来ていた、片手で空の木桶を持ちながら近寄ってきたため目的は明白だったこともあり、小柄な青年は声をかける


「くんでやるよ、ちょっと貸しな」


 少女は木桶を差し出しながら小さな声で答える


「ありがとう」


 ヒョロっとした青年も小柄な青年も意図的に彼女の右腕があるべき場所は見ないようにしている、彼女もそれに気づいているからこそ、引け目を感じ、より寡黙になりがちになってしまっている。

 小柄な青年が水汲みを行っている間、沈黙の間に耐えかねるて、もう一人の青年が少女に話しかける、


「なあ、どうなんだ?」


「よくない」


 返答は身もふたもないものだった、二の句も告げず、沈黙していると、


「ほい、終わった」


 小さめな桶なので、あっさりと水汲みを終えた青年を見て、彼女は言う。


「ありがとう、あなたのお父様から伝言もあったの、「ついででいいんんで、うちのを見かけたら、屋敷に来るように伝えてくれ、なんだったら水汲みと荷物持ちで使ってやれ」だそうよ」


「屋敷にねえ・・・なんの用だか分らんけど、とりあえず一緒に行くか」


「んじゃ、またね」


 ヒョロっとした青年が軽く手を上げ別れると、二人は屋敷に向かって歩き出した。会話は全くなかったがもうその点については慣れているので、それほど苦痛にはならなかった、むしろ屋敷に呼ばれた用事が何なのかが気になっていた、後年彼は「あの日から人生が一変した」と語っている。


 

 会議室代わりの広間には村長、名主衆が全員顔をそろえており、侍従長であるカイも同席していた。


「来たか、まあ、座れ」


 父親に促され末席に座ろうとすると、


「いや、あちらへ」


 カイの目線と手が示す位置は明らかに当主の席で、度を越した悪い冗談にしか聞こえなかった、処刑対象になりうる内容であるため、どうしたものかと視線を父親に向けると、軽くため息をつき


「まあ、言われたとこに座れ」


 と、当主席への着席を促した、それでも不安にかられ他の面々を見渡しても、特に誰もとがめだてする様子はなく、ただただ沈鬱な雰囲気だけが場を支配していた。

 恐る恐る当主席に着席すると、おもむろに村長が話しかけてきた、


「なあテオ、母親の事は覚えているか?」


「はい、亡くなって8年ほどになりますが、覚えていないほど小さくはありませんでしたから」


「母親の出生についてどこまで知っている?」


「え~と、母の母と旅芸人との間にできた子だとか、聞いたように思いますが・・・」


「うん、それ嘘なんだ」


「はい?」


「先代当主ジギスムント様が実はその相手だったんだけど、跡目相続争いなど、面倒な事に発展しないように普通の村人として普通に生活できるように手配されたんだよ、率直に言うといざという時の隠れ分家として存在していた側面があるんだよ。」


 村長は一息に事実を伝えると手元にある茶を飲み一息いれた、言われた当の本人は全く知らない事実ではあったが、この場に呼ばれた理由と今後の展開がだいたいのところ予想がついた。

 名主衆もそろっている所をみると、村の顔役は全員この事実を知っていた事も理解でき、逃げ場などどこにもないであろう事は容易に想像がついた、


「え~と、要するに『時期領主になれ』って事ですか?」


「話が早くて助かるよ、まさにその通りだ」


「まあ、自分には拒否権ないんでしょうけど、ご領主様や奥様はご承知なんんですか?」


 すると黙って聞いていたカイが口をはさんできた


「ご承知です、すでにお二方とも了承しておられます『あなた様はお亡くなりになられたラファエル様の双子の弟で、お家騒動への発展を恐れて生後間もなく子供のいなかった名主夫妻の実子として届け出を出された』というシナリオまで出来上がっております」


 断るという選択肢が用意されていない事はすでに理解していた、ただただ不安でしかなかった、どう返答していいものか、答えに窮していると、それを察したかのようにカイは続けた


「私は先代様に拾われた元逃亡奴隷です、過分な待遇を得て返しきれない御恩があります、先代様の孫にあらせられるあなた様を領主と仰ぎ全力で補佐することを誓わせていただきます、この村の存続のために、名主衆も全員同意しております」


 観念し、決意表明でもしないとこの場は収まらないんだろうなあ、等と考えながら軽くため息をつくとともにテオは言った、


「あ~、なるべくうまくやれるようにがんばりますが、ヘマしたらフォローお願いします」


 なんとも気の抜けたような返答ではあったが、一同には少し安堵の色が浮かび誰となしにつぶやきが起こった、


「血だなぁ」「血だね」


 テオにすれば何を言っているのかよく理解できなかったが、そこはカイがさっそくフォローした


「ご領主様も先代様もどこか気の抜けたような物言いをして周りを心配させるような方でしたからね、似るものだと少し安心感すら覚えたのですよ」


「はぁ、そんなもんですか」


「フフ、そういう所がですよ」


 軽く笑いながらカイが応じる、重苦しい雰囲気が続いた中で軽くでも笑えるのは久々のことであった。


「ご領主様の状態のよろしい時に一度お会いしていただきたい、ご領主様も望んでおられました。ですので、本日より当屋敷に移り住んでいただきます、そう遠くない日には王都にのぼり領地・爵位の継承の承認を受けなければならず、準備も必要になりますから」


「今まで一度も余所の村とか町に行ったことないんですが・・・」


「だから準備が必要なのです、馬もそんなに乗れないですよね?宮廷儀礼とかまったく分からないですよね?」


「はい・・・」


 いまさらながら面倒なことになったと、しみじみと実感した。





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