闇と陰
1章
「朝のニュースです。千葉県○○市の××中学校のいじめ問題で教育委員会は2日、記者会見をし児童が別の児童からいじめを受けていたことを認め校長は謝罪をし教師は懲戒免職の処分が下されたことが明らかになりました。学校側は再発防止に務めるとのことです。」
「今の時代、生徒のいじめを見過ごす先生なんているのかな。」
この時はそう思っていた。
朝のホームルームと言う名の教師の無駄話の時間を終えると、いつも通り拓哉と大貴と博也がニヤニヤしながら近づく。
「おーい高野〜暇だからこれ食べて。」
そう言われて差し出されたカゴの中にはモゴモゴとうごめく幼虫が入っていた。
「さすがに無理だよ。」そう答えると、お腹に拓哉のサッカークラブで鍛えた蹴りが入る。
「食べて?」ニヤニヤしているが目は笑っていない。
大貴と博也が壁を作り誰にも見えないように隠しているが明らかに周りは気づいている。
拒否をするように首をそらすが、さらに蹴りをもらうだけだ。
諦めたようにうなだれ、幼虫の蛇腹状の背中に噛み付く。
「うわー気持ちわりー」と冷たい目で刺し殺し、満足気に3人は去って行く。
「いつも通りの朝だ」
慣れたかと言われれば嘘にはなる。しかし最初の方よりはマシになってきた。いじめが始まったのは学年が変わり浮き足立っていたクラスが落ち着き始めた5月の始めだった。元々悪ガキと評判だった3人ではあったが、クラスが同じになり、すぐさま手を組んだ。最初はいろんな人にちょっかいを出すだけだったが、それだけでは物足り無くなったのか、いじめの対象を見つけ今に至る。
「なんでこんな役回りになったんだろう。めんどくさ。」
2章
ある日の放課後、長く辛い授業を今日も乗り切った生徒たちが先生さよーならーとぞろぞろと帰って行く。
そんな中プールの方から
「ちょっと来いよ」と拓哉の声がした。
いつもの3人がプールサイドでほくそ笑みながら立っている。水泳の授業期間では無いプールには水上に濃い緑色の汚れが浮いている。
嫌がりながらも近づくと
「俺ら楽しいこと思いついちゃったんだ」そう言うと髪を掴み水の中に顔を押し込む。もがいてはみるが、力強く押し込まれた状態では抵抗できない。数十秒押し込んだ後に引き上げる。何度もそれを繰り返し酸素が欠乏しているのだろう、唇が紫色になっているのが分かる。
「ひゃっひゃっひゃっ」と3人が甲高く気味の悪い笑い声をあげると校庭を照らしていた電灯が消えた。横たわる所に何発か蹴りを入れた後3人は去って行った。
それから何分か経ち、辺りが何も見えない中、弱り切った体を起こし、なんとか下校の道に着いた。
3章
「おい!」隣のクラスの担任の先生が拓哉に怒鳴りつける。
「やべ」拓哉が焦ったように胸を掴む手を離す。
「何やってるんだ!」
「何もしてないっすよ〜」拓哉はしらを切る
「どうしたんですか??」
「こいつが高野の胸ぐらを掴んで何かをしようとしてたんだ。」
クラスの担任同士の会話が始まった。
「おい、お前のクラスにはいじめがあるのか?」
「まさか。そんなことないですよ。そんな問題事、僕が起こすわけないじゃないですか。」
少しの時間が経ち、大人同士の会話は収まる。
「拓哉、いじめていたのか?」
「ううん、ただふざけて遊んでただけだよ。」
「それならいいんだ。ただ勘違いでも大ごとにはするなよ。」
「分かったよ。」そう言い拓哉とその取り巻きはそそくさと去って行く。
「もっと上手くやらないとバレちまうぞ。」
拓哉たちは少し離れたところで笑っている。
4章
「こんばんは、高野です。うちの子が学校に行きたくないと言ってるんです。体育の無い日でも体操着はボロボロになって帰ってくるし、ビショビショに濡れたまま帰ってくることもあるんです。うちの子にいじめか何かあるんですか?」
「いいえ、僕のクラスはとても仲が良く、いじめなどは何もありませんよ。」
「僕が見張ってますからね。」
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