ねこ
オレは不思議な生き物と暮らしている。
二本足で立って歩くその巨大な生き物は、へんてこりんな前足を器用に使ってモノを掴む。オレのこの前足では到底不可能な事だ。
オレは自分の前足を眺めた。あいつらのようには動かせないが、この柔らかい皮膚が着地の衝撃を吸収してくれるのだ。ありがたい。その手から伸びたツメは綺麗に切りそろえられている。定期的に例の生物が前足で掴んで使う銀色の物体で切られるのだ。
そうして俺が前足を見つめて思考にふけっていると、横から声が飛んできた。
「うわっ! おかーさーん! ココがかわいいポーズしてるよ!」
へんてこな生物の、妙ちきりんな鳴き声だ。
小さな巨大生物がそう叫ぶと、奥から黒くて大きな眼をもった大きな巨大生物がやってきた。
「ふわぁ〜! ココかわいい〜」
頭にだけ長い毛を垂らしたその生物は、自分の顔の前に黒い眼を構えた。
オレ程の大きな瞳がこちらを見つめてくる。
いつものことだ、とオレは気にせず前足へと視線を戻す。
すると、黒い眼が乾いた音を立てた。そして件の生物は黒い眼の裏側を興味深そうに覗き込む。
そう、こいつらはオレになど興味はない、あの死んだような黒い眼でオレを覗き込むことこそが楽しいのだ。ああ、きっとそうだ。
だが黒い眼で見られるとき、オレは決まって気分がいい。
なぜなら……。
「はーいココ〜、ありがとね〜」
そう言って奴は前足で餌を出す。オレはソイツに飛びついた。
このへんてこりんな生物はオレを黒い眼で覗いたあと、必ずオレにエサをくれるのだ。
いつものカリカリを食べ終えたオレは、オレの指定席であるソファの端っこに身を置いた。
ああ、こいつらはつくづく不思議な生物だ。
元気がないのでしばらくは書きませんけどもね