葵は縁のお気に入り
2.
「ういーっす、おはようさん」
いつも通りに教室のドアをくぐりながら皆に挨拶をする。
「おーっす」
「今日はシロが来る日か。曇りだしな」
「シロちゃんおはようー。今日もマイナスオーラ全開だねー」
男女関係なく俺に話しかけてくる。割とうちのクラスは男女の仲がいい。カリスマを持つ人間が多数いるからかもしれない。
そのカリスマ達は晴天の日や雨の日にこない出席率40%の葵がハブられない理由のでもあり、俺が学校に来ない原因でもあるのだ。
「シロっちおっはよー」
俺のことがお気に入りだと豪語する残念系美少女、浅井縁が席に座ったところを見計らって話しかけてきた。
「無視する >YES NO」
「ちょ!待って待ってシロっち愛してるからちょっと待ってよ!」
「うるさい騒がしい耳元で大声出すな、そして俺は愛してない」
「もう、照れ屋さんなんだからー!うりうりー」
これも毎度のことである。こんなのがあと4人もいるとなっては学校を休みたくなるのも当然である。
ちなみに浅井は生徒会副会長だ。他に会長、書記、庶務名誉会員の4人がいる。先ほど言った残りの4人である。
「他の生徒会メンバーズは遅刻か?」
「う?ううん、皆先生に呼ばれてたよ。この間の事件のことで話があるんだって」
「事件、というとあれか。校内ブーメラン事件」
「そうそう、あれの件で全員座禅中。私は主催側じゃなかったからお咎めなし」
「会長のとばっちり受けて大変だな、生徒会も」
「まあねー、それでも楽しいから。シロっちもどう?」
「遠慮しとく」
ホモでも、いやホモだからこそ大人気の会長、相楽靖。
お気に入りはシロっち、みんなのアイドル、浅井縁。
人外の行動力やフォロー力で会長を支える、秘書みたいだからと書記になった綾坂珠。
電波的未来予測により致命的な事故を防ぐ庶務、天降雀。
全ての活動資金はここから、お嬢様の原動力は面白さ、鷺宮麗華。
まるで戦隊モノのようなこの五人が起こすトラブルに、葵は巻き込まれる。
これは平凡な男子高校生の、平凡とは到底いえない学校生活を綴った物語である。
影で学校の生徒は片白葵をこう呼ぶ、「生徒会の所有物」と。