眠気と笑顔と嘘
今日の夢のなぐり書き
抽選で選ばれた者だけが受けられる「特別学科」。試験すら免除されるという奇妙な制度に、俺は運よく選ばれた……はずだった。指定された謎解き会場に足を踏み入れると、隣では普通の経済学の授業が淡々と進んでいた。何もかもが違和感に満ちている。指定された席は会場の中央付近だったが、俺はなぜか無意識に一番隅の席に座った。そこなら経済学の授業も見えるし、少しだけ落ち着けた気がした。
やがて会場は徐々に人で埋まっていった。いつの間にか見慣れた顔も――そう、彼女だ。彼女もこの特別学科の謎解きに参加していた。彼女は俺に軽く手を振って、堂々と中央の指定席へと座った。その姿はどこか自信に満ちていた。
開始の合図とともに、最初の謎が配られた。それは「5万円プレゼントキャンペーン」という、どこかで見たことのある簡単な暗号……のはずだった。しかし、俺はその答えすら解けず、頭を抱え込んだ。周りは徐々にペンの音を止め、余裕の表情で解答用紙を提出していく。俺だけが素人のままで、恥ずかしさが込み上げた。彼女もこちらをちらりと見て、少し呆れたような笑みを浮かべた。
次の問題は、会場そのものを使ったトリックだった。「配席をよく見ろ」というヒントが渡され、俺は周囲を見回した。どうやら席の下に何かがあるらしい。試しに指定された席の下を覗くと、そこには小さな扉が隠されていた。誰にも見つからないように扉を開け、中に入る。暗い空間の中、ぼんやりと光るパネルに「答えは笑顔でいて」と表示されていた。その瞬間、なぜか強烈な眠気に襲われた。
気がつけば、俺は秘密の部屋の中で眠り込んでいた。目を覚ました時には、すべてが終わっていた。謎解き試験は終了し、会場は静まり返っていた。俺は慌てて会場を出ると、一人の受験者が待っていた。その男は薄く笑いながら、俺に言った。
「残念だけど、不合格だってさ。」
その言葉は鈍器のように俺の胸に響いた。あんなに頑張ったのに――いや、頑張ったところで眠ってしまったのだから、仕方がないのかもしれない。彼女はというと、見事に合格していた。その知らせを聞いた時、彼女は少し困ったような顔をしていた。それから俺たちは次第に気まずくなり、自然と疎遠になってしまった。そして、彼女はいつの間にか、あの「不合格を教えてくれた男」と付き合い始めていた。
数年後、思いもよらない形で真相を知ることになる。
――その男は、本来受験資格を持っていなかった。しかし、俺の受験資格を巧妙に奪い取り、自分のものにして合格していたのだ。俺が試験で不合格になったのではなく、「抽選に当たらなかったことにされた」というのが真相だった。
「眠気が襲ったのはな、お前の席に仕組んだ罠さ。ほら、そう怖い顔するなよ。笑顔でいてくれよ。」
男は笑いながらそう言った。その言葉――「笑顔でいて」――それは、あの時の謎の答えと同じだった。全てが仕組まれていた。俺が罠に気づいていれば、彼女も取られることなく、学科にも合格していたのに。
悔しさと後悔が、今も俺を蝕む。何度も何度も同じ悪夢を見る。俺は特別学科の謎解き会場に戻り、彼女と目を合わせる。そしてまた、あの眠気に襲われる。答えはわかっているのに、解くことができない。現実も、悪夢も、ただ笑顔のない俺だけが取り残されている。
今日もまた、目が覚めると息が詰まる。――この悪夢から、いつになれば解放されるのだろう。