2.冒険者レイン
「騎士も冒険者も、志はそれほど遠いものではありませんよ」
そう語ったのはわたしの命の恩人だった。
大怪我をしたわたしを介抱し、食事と寝床まで用意してくれた。わたしが何者であるかも、なんとなく察していたであろう。罪人を匿ったとあれば、己にも危害が及ぶというのに。
わたしがようやく動けるようになったとき、今後の身の振り方を相談したときに発した言葉だったと記憶している。
正直、わたしは冒険者という人種を見下していた。なぜなら今のわたしがそうであるように、彼らはその人物の過去を問わない。いや、罪人であることがバレなければそれでいい、と云ったような組織だ。ゆえに食い詰めの浪人や罪人が、一時の金銭を得るために冒険者となることもある。
ゆえに冒険者とは、無法者や無頼漢な輩の集まりなのだと、そう思っていた。
しかし恩人はそう思っていなかったようだ。
「たしかにそう云った方々もおられます。ですが本来冒険者とは、困っている人のために何かを成すためのお仕事だと思いませんか? そしてそれはとても素敵なことです」
なるほど、たしかに恩人の言うことに一理ある。
それにもっと直接的な問題として、大の大人がなにもしないでいるというのも、少々外聞が悪いというのもあった。
好き嫌いは別として、恩義に報いるために働くべきである。そのための手段として冒険者というのは、存外ありなのではないか。
だが、それとは別にもう一つ別の問題があった。
この目立つ銀髪の頭髪である。顔などは変えようもないが、さすがにこの銀髪は目立ちすぎる。騎士団にいたころもこの銀髪を何度揶揄されたことか。
それなら、と、わたしの銀髪を黒く染めてくれたのも恩人だった。頭が上がらないとはこのことだ。
こうして3カ月ほどの療養と体力の回復に努めたわたしは、先日晴れて冒険者レインとなったのだった。
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