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兄たちとの勉強

 父カーチスとの話し合いにより、学習の場を手に入れた俺。

 カーチスはすぐに兄たちの家庭教師に話をつけてくれた。

 兄二人もそうだが、家庭教師も難色を示した。

 四歳の子供に何ができるのかと。


 そう、ロイは四歳なのだ。


 四歳という幼さのせいで、ものすごく嫌がられた。

 カーチスは最初は基本文字と数字だけでいいと説明して、家庭教師をなんとか納得させた。

 兄二人にも大人しくしていなかったら、追い出してもいいと説得した。

 だが、そのときのカーチスの顔は悪い顔をしていた。

 もちろん俺も悪い顔をしていた。

 兄二人が俺たちの顔を見て、ビクッとしていた。


 カーチスは俺に期待しているのだろう。

 兄二人をさらに追い込んでくれることを。

 ふふっ、期待に応えてみせようじゃないか。

 特に家庭教師に関しては、一度馬鹿にした態度を取ったからな。

 お前の度肝を抜いてやるのも決定だ。


 夕食は家族一緒だった。

 まあ、俺だけ別メニューなのだが、そこは少しずつ改善だ。

 母オネットが家庭教師の話をカーチスから聞いて驚いていた。

 オネットがロイにはまだ早すぎますと言っていたが、俺からのお願いだということで渋々納得してくれた。

 

 ただ、お目付け役として、アドラをそばに置くことになった。

 アドラがいれば、何かあった時に対応が出来るということだろう。

 アドラはアドラで、お仕事が減るから嬉しそうだった。

 メイドとしてそれでいいのかと思ったが、誰だって仕事は楽したいよな。


 そして、夕食後の団らん室での話は兄二人の勉強の報告を中心に聞くことになった。

 どうやら兄二人は難しい話をして、弟のやる気を削ごうとしているようだ。

 俺は二人の話を聞いて、まだそこまでなのかと内心鼻で笑っていた。

 二人の理解度を確認するために、勉強の話題の中で適度に質問する。

 長男クレスはさすがの理解度だったが、次男ジェロはちょっと怪しい部分があった。

 だが、クレスの説明を聞いて、ジェロは頭の中で考えを整理して、ゆっくりとではあったが、言葉を選んで説明できるようになっていて感心した。

 ジェロは感覚派だが、ちゃんと話を組み立てて説明することが出来るようだ。

 オネットもクレスも、このジェロの成長には驚いていた。

 カーチスはその陰で一人ほくそ笑んで、俺によくやったと視線で褒めていた。




 翌日になり、パン粥の朝食を食べて、アドラが勉強道具を用意して運んでくれる。

 と言っても、木の板が数枚と羽ペンだけだ。

 学習部屋で兄二人よりも先に席について、行儀よく待つ。

 時間になったようで、家庭教師が兄二人よりも先に部屋に来た。

 家庭教師は部屋にいる俺の姿を見て驚いていた。

 遅刻したのかと焦っていたが、俺は時間通りですよと伝えて安心させてあげた。

 兄二人がまだ来ないので、先に勉強を始めることになった。


 基本の文字と数字、ついでに計算に使う記号も家庭教師から教えてもらった。

 まずは一通り書けるようになるために、ひたすらに文字を書こうと木の板に向き合う。

 だが、基本文字と数字、計算記号を一周して書き終わった頃に、悲しいのか嬉しいのかわからないが、聖印のお知らせが頭に響く。


【語学:基本文字を学習しました】

【算術:基本数字を学習しました】

【算術:計算記号を学習しました】


 頭に響くお知らせにより、能力が解禁されたようだ。

 文字がスラスラと書けるようになった。

 本当に四歳が書いたのかと疑うレベルの美文字だ。

 家庭教師が俺の手元を見ていたが、突然綺麗な字を書き始めて「えっ」と声をあげていた。


 家庭教師の先生が驚いているときに、遅れてやってきた兄二人が部屋にいる俺を見て驚いていた。

 俺は兄二人に「遅いですよ」と軽く文句を言って、二人に勉強するように家庭教師を促した。

 今日は2桁の足し算と引き算をやるようだ。

 二人が問題が書かれた羊皮紙を見て、答えを木の板に書いている。

 この年齢ならこんなもんだと思っていたゆっくりさだったが、兄二人が指を使って計算しだしたので口を挟む。



「兄様たちは指を使って計算するのですか? まだ1桁の計算のやり込みが足りないのではないですか?」


「なっ!」

「むっ! じゃあ、ロイはこの問題が解けるって言うのか? 出来ないくせに大口叩くんじゃねえ!」


「ふふん!先ほど計算の記号と数字を教わりましたから、これくらい余裕です」



 家庭教師の先生が俺たちの喧嘩を見て、オロオロしているが今は無視だ。

 俺はサッと兄たちから問題が書かれた羊皮紙を取り上げて、解答を木の板にスラスラと書いていく。

 兄二人が驚いてるようだが、無視して解答を書き終える。

 たった十問だから、あっという間に解き終わった。

 俺は家庭教師に解答を見てもらい、間違っていないかを確認してもらう。

 家庭教師が答え合わせしている間に兄たちがヒソヒソと話し合ってる。



(ジェロ、まずいんじゃないか?)

(何がだよ、クレス兄?)


(これでロイが全問正解してたら、私たちの立つ瀬がないんじゃないか?)

(大丈夫だって、さっき数字を教えてもらった程度だぜ? 正解するわけないじゃん)


(さっきの指摘からして、ロイはかなり頭がいいと思ったんだが……)

(心配すんなって、クレス兄。大口叩いて間違えてたら、この部屋から追い出そうぜ!)



 二人が話してる間に答え合わせが終わったようだ。

 家庭教師が震えながら言った。

 「全問正解です」と。

 青い顔をする兄二人に、俺はドヤ顔をかましてやった。




 勉強時間が終わると、兄二人がぐったりしていた。

 家庭教師の先生は、そんな二人を見て苦笑い。

 俺は数字の繰り上がりと繰り下がりの計算を、ただひたすらに解かせただけだ。

 まあ、1問間違えるたびに俺からデコピンをされるという罰ゲーム付きだったが。


 そうそう、兄たちにデコピンをしている間に聖印のお知らせが来た。

 内容はあんまり嬉しくなかったけどな。


技能(スキル):デコピンを習得しました】

【技能:手加減を習得しました】


 なんでもないことでも聖印は解禁されることがわかって、よかったと俺は思うことにした。




 その日の夕食後の団らん室では、兄たちの愚痴祭りだった。

 だが、俺は勉強に遅れてやってきた二人のことも報告した。

 二人とも両親に怒られていた。

 悔しそうな二人だったが、顔を見合わせてニッコリ。



「明日は体術と魔法の鍛錬だったな、ジェロ」

「そうだな、クレス兄。ロイはまだ参加できないな!」


「ふむ、そうだな。そっちの鍛錬も頼んでみるか? どうする、ロイ?」

「やるよ、お父様!」


「怪我だけはしないようにね、ロイ?」



 兄二人があっさりと俺に許可が出たことに驚きつつも、これならまだ負けないと思っているようだ。

 まあ、こっちは兄たちに少し「手加減」してあげないとね。

 うまくやる気を煽ってあげようじゃないか。

 カーチスがまたなにやらほくそ笑んでるし……

 オネットは怪我だけはしないようにと繰り返している。


 さて、明日は体術と言っても、激しい運動はまだダメだとオネットに言われたので、魔法の鍛錬の方に集中しよう。

 初めての魔法だ。

 楽しみすぎて、今夜は眠れるか不安だな。

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