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日本の仔  作者: 清水坂 孝
第三章
99/100

第99話

「もしかしたら、モノポールエンジンが原因かもしれん」

 桃里くん②が急に話し掛けてきた。


 モノポールエンジンって、イーサンが発明した父さんたちが乗っている宇宙機のエンジンだよね。

 確か、磁気単極子っていう普通には存在できないものを無理やり作り出して、そのそばを通る原子に含まれている陽子や中性子を崩壊させることで発生する莫大なエネルギーを推進力に変換するってやつ。


「あれ、別の宇宙と繋がってんだよ」

「まさか、その宇宙が君たちのいる宇宙ってこと?」

「メイビー」

「でも、父さんたちは、もう光でも3時間も掛かるほど遠くにいるのに、まだ何か影響が出るの?」

「もうひとつ原因がある。宇宙機に積んでるEPR通信機だ」

 桃里くん②は推測を詳しく説明してくれた。


 父さんたちが乗っている宇宙機のモノポールエンジンが、赤い魂を生み出す意識体がいる宇宙とこちらの宇宙を繋げている。

 それだけなら、これだけ離れてしまえば地球近傍にある次元の隙間には影響がないはず。その予測のもとに父さんたちは地球を離れることにした。

 しかし、宇宙のどことでもリアルタイムで通信できるEPR通信機、その中にある量子エンタングルメントされた光子が悪さをしているらしい。


 EPR通信の原理は、量子もつれを施した対の光子をそれぞれ送受信機に封じ込め、その光子の量子スピンに情報を乗せて、観測を繰り返すことによって、時間差の起きない通信を可能としている。

 量子スピンには、通信するために意図的に乗せる情報とは別に、周囲からの影響も乗ってしまう。

 モノポールエンジンから漏れ出る意識体の意識が、EPR通信機内の量子もつれ光子に影響して、地球側に影響を伝えてしまうというのが、桃里くん②の推測だった。


 EPR通信機は、1秒間に100億回、量子スピンのコントロールと観測を繰り返して、情報のやり取りをしている。

 100億分の1秒以下の短い時間の間に、意識体の意識が地球に伝わってしまっている。


「ということは対処方法は2つ、EPR通信機の観測の周期を時間の最小単位である1プランク秒(5.391×10の-44乗秒)まで縮めて、意識体の意識が入り込む隙間をなくすか、宇宙機に搭載されているEPR通信機を破棄するかだ」

「え?そんな周期でEPR通信機を動作させることってできるの?」

「ま、今の技術ではムリだな」

「じゃあ」

「うむ。EPR通信機を棄てるしかないな。まあ、電波による通信はまだ可能だが」

 電波って、今でも宇宙機に届くまで3時間掛かって、向こうからこちらにも3時間掛かる。更に遠くなればその時間は長くなるし、どこまで届くのかも分からないから、いずれ連絡ができなくなってしまうだろう。

 いずれ父さんと連絡できなくなってしまう。

 この事を告げれば、恐らく父さんはEPR通信機を棄ててしまうだろう、地球に残った僕らのために。


『王』

「ソマチット!」

『お久しぶりでございます』

「もう会えないかと思ってたよ」

『私めもでございます』

「父さんとももう少ししたら話ができなくなっちゃいそうなんだ...みんないなくなっちゃう」

『王、悲しまないでください。王はこれからたくさんの子どもたちの命を救うのでしょう?その子達は、みんなあなた様の子どもと言っても過言ではありませぬ。地球の子どもたちと、そして時子殿と共に生きてくだされ』

「ゾマヂッドー」

『大丈夫。きっとうまく行きます』

「うん。ソマチット、ありがとう」

『…』

「ソマチット?」

 涙が溢れて視界が歪んだ。パタパタと涙が落ちる。

 恐らくソマチットにはもう会えない。

 ずっと僕を護ってくれていた。

 ありがとうソマチット。

 これからは地球のみんなと生きて行くよ。


「瑞希、なんで泣いてるんだ?」

 桃里くん②が歪んだ視界に入ってきた。

「今、ソマチットとお別れをしたんだ」

「そうか、いよいよ次元の隙間が塞がるんだな?」


 その後、桃里くん②は父さんと通信を繋げて、次元の隙間が塞がらない原因を話した。

「なるほど、さすがだな。僕もその推測を全面的に指示するよ。EPR通信機は破棄しよう」

「父さん!」

「瑞希、もう別れはとっくに済ませただろう?」

「父さんからもらった自転車、壊されちゃってごめんなさい!」

「うん、辛かったな。お前のことはずっと気に掛けてたんだ。これからも元気でな。EmmaやEthan、果歩、茉莉、武蔵もよろしくな」

「みんな呼んでくるよ!」

「いや、いいんだ。次元の隙間を塞ぐのは早い方がいい。結果を電波通信で知らせてくれ」

「でも...」

「大丈夫だ。これは永遠の別れではない」


 こうして、父さんとの通信は途切れた。


「うわー!」

 急に桃里くんが叫んだ。

「何これ!?これが見えるということ?スゴい!!」

 もしかして、桃里くん②の意識が届かなくなって本来の桃里くんが目を覚ました?

「瑞希さん、僕、どうして?」

 桃里くんに、これまでの経緯を説明してあげると、涙を流して、

「あの夢は本当だったんですね。僕は地球を救うために生まれてきた。これからもらった力を使ってみんなを助けていきます!」


 桃里くんの笑顔が輝いて見えた。

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