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日本の仔  作者: 清水坂 孝
第三章
98/100

第98話

 中軌道宇宙ステーションでは、既にイーサンが発明したモノポールエンジンを搭載した宇宙機が組み上げられていた。

 一から作れば何年も掛かる機体だが、主要な部品は既に作られていた実証試験機から流用しており、コントロールユニットは以前僕たちが月に行った時のものを使うということで、短期間で製造が完了していた。

 居住区やコールドスリープの機材は、新たに製造された機体に設置されていた。


 そういえば、月に行った時に、その時は必要だと感じられなかった食料を生成する人工光合成ユニットが搭載されていたけど、この時のための試験をしていたのかな?


 モノポールエンジンの燃料は宇宙空間に漂う水素原子だけど、なかなか採取できるものではないから、直径1kmにもなる水素原子キャプチャーが宇宙機の前部に搭載されている。

 これは、すり鉢状の形をしており、宇宙機が加速している間は、キャプチャーに掛かった原子が中央に運ばれてくるようになっている。

 採取した水素原子は常温核融合炉で電力を取り出した後、陽子と水素原子核が融合してできた重水素がモノポールエンジンの燃料となる。

 常温核融合炉で発電した電力で磁気単極子を作り出し、重水素の陽子を崩壊させて膨大なエネルギーを取り出し、宇宙機の推進力に変換している。


 モノポールエンジンは、宇宙機を地球の重力と同じ1G(9.8m/s2)の加速度で加速することで、搭乗者に地球上と同じ重力を感じさせながら航行し、光の速度の95%まで加速させることができる。

 太陽から一番近い恒星であるアルファケンタウリまで、距離は4.3光年だが、この宇宙機であれば、5.8年ほどで行くことができる。

 ただし、搭乗している人にとっては、ウラシマ効果によって、3.5年しか経過しない。

 この差分、2.3年分、地球にいる僕らが余計に歳をとることになる。


 父さんたちは、取り敢えずこのアルファケンタウリを目指すことにするらしい。

 地球からアルファケンタウリまで、時空的に一直線(周りの天体の重力の影響による時空の歪みを考慮、途中に障害物があっても光速に近い速度の宇宙機は避けることができないから、事前にすべての航行はプログラミングされている)で、航行するプランとなっている。

 今まで、父さんに育てられた訳でもなく、一緒に暮らした訳でもないけど、別れるのはとても寂しく感じた。


「俺らがどのくらい離れれば次元の隙間の発現に影響が及ばなくなるか分からないから、太陽系内ではコールドスリープせずに交信を続けることにする」

 既に中軌道宇宙ステーションに到着した父さんから通信が入った。


 僕ら地球防衛隊(仮称)は防衛省で出発を見送る事になっていた。

「遂にお別れかな。もう少し地球で遊んでいたかったんだが」

 桃里くん②が寂しそうに言う。次元の隙間が完全に塞がれば、桃里くん②の意識は消失することになるだろう。


「桃里くんありがとう。君がいなかったら、地球に住む人はすぐに絶滅することになっていたよ」

「おいおい、まだ終わった訳じゃないから、気を抜くなよ!俺の方はソマチットちゅう仲間もできたし、こっちの宇宙で別の楽しみを見つけるさ」

 僕らを元気付ける言葉に聞こえる。


「アルファケンタウリまでの航行プログラム、構築完了です。航行ルート上の星間物質の観測及び移動シミュレーション結果も問題ありません」

 時子さんが父さんたちに報告する。

「了解。時子ありがとう。それじゃ出発と行きますか!モノポールエンジン始動!」


 ゆっくりと父さんたちの恒星間宇宙機が動き始める。

 一旦地球の引力圏から離れて、加速するポイントに向かう。

 一度加速体制に入ると、方向を変更するのが難しいため、なるべく重力の影響が少ない場所から方向を定めて加速を行うらしい。

「モノポールエンジンは正常に作動している。L3ラグランジュポイントに到着後、再加速を行い、アルファケンタウリに向かう」

「了解です。航行プログラムの変更はありません。航宙の無事をお祈りいたします」

「時子、次元の隙間の状況は、逐次知らせてくれ」

「承知いたしました。EPR通信で随時報告いたします」


「父さん元気で!」

 思わず別れの言葉が口に出た。

「瑞希、最後に君と敵対する関係じゃなくてよかったよ。君こそ元気でな!」


「父!Mam!」

「Emma、Ethan、地球をキレイに、そこにいる皆とうまくやれ。玲奈さんも達者で」

「まだあなたが秀くんってピンと来ないけど、後の事は任しておいて!」

「徳永。お前のおかげで人生楽しめたよ」

「たかちゃん。色々世話になったね。俺っちの子どもたちをよろしく」


 こうして、父さんとアリスはアルファケンタウリを目指して出発した。

 果たして、どのくらい離れれば次元の隙間の発現への影響がなくなるのか。


【出発から4.5日後】

 宇宙機は秒速3,834km、光速の1.28%まで加速。

 ほぼ木星の軌道まで到達。

 木星は太陽の向こう側にあるため見られず。

 機体及び推進機に異常は見られず。

 次元の隙間の発現は、特に変化は見られず。

 0.03%の確率で予期できない発現が持続。


【出発から11日後】

 宇宙機は秒速9,409km、光速の3.1%まで加速。

 ほぼ海王星の軌道まで到達。

 太陽惑星系の最果て。

 未だ次元の隙間の発現に変化なし。


【出発から30日後】

 宇宙機は秒速25,394km、光速の8.5%まで加速。

 地球から329億km。

 未だに次元の隙間の発現に変化なし。


「おかしい!これだけ離れて何の変化もないのはなぜだ!」

 父さんからの定期連絡の声は、少しゆっくり話しているように聞こえだした。

 宇宙機の速度が上がると、こちらと時間の進み方に変化が現れる。

 向こう側にはこちらの話が早口に聞こえているはずだ。

 父さんの推測だと、太陽系を出る頃には次元の隙間の発現が正常になると考えていたらしい。

 未だに何らかの影響が残っている。

 それを解明できなければ、赤い魂は減らすことができない...

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