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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
99/211

87話 聖女と四神の進化と……

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【見守る女神達】~でぇとの約束~《シドウview》

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「主等女神が生まれるよりも遥かに昔の話じゃが、儂も『黄龍』へと至るにあたって、こう苦しんだもんじゃ」


 儂は人の姿を取り、その自慢の髭を撫でながら、慌てふためいてこの荒野の訓練場にやって来た聖女共に話してやる。


「グゥウウゥッ! 身体の奥底から湧き出るこの力……!」

「上等だぜぇ……抑え込んでやらぁ!」


 うむ。そうじゃ弟よ。大地よ。『進化』によりわきあがる力に呑まれるでないぞ! うまく抑え込み制御せよ。さすれば主等は新たな力を手にするじゃろう。


「えっと、じゃあ頑張れって応援すればいいかな?」

「そうねアリサ姉さん、そうしてあげて。朱美と水菜は眠りについて『進化』を果たすだろうし、大丈夫よねシドウ?」

「うむ。問題はないぞ。『進化』のしかたは種族によってそれぞれ違うでな。朱美と水菜は深い眠りの果てに成すじゃろう」


 儂の言葉に聖女とフェリアは素直に応援の言葉を、弟と大地に投げ掛けておるな。『聖域』を守るため、魔王に対抗するため、何よりも、聖女と女神達の力となるために研鑽を続けてきおった儂達にとって、その応援は励みとなろう。


「任せ、ろ! 姐御!」

「うむ。必ずや『進化』を果たしっ! アリサ殿の、力となろう!!」


グオオォォーッ!!


「うひゃっ! いや、ホント……マジで頑張ってよ爽矢っち! 大地ん!」

「ん! 溢れる力に負けないで!」

「頑張って! 頑張って!」


 末っ子が弟達の呻きに驚き跳び退くものの、しっかりと応援をし、続く次女と長女もまた拳を握り、激励する。

 『進化』とは、研鑽の果てに鍛え上げられた力を更に昇華させるもの。誰であろうと、研鑽を続けておればいずれその時がやってくるものじゃ。しかし、その際に溢れんばかりの膨大な力が沸き上がってきおる。その力に呑まれると、知性を失い、暴れまわるだけの獣に成り下がってしまう。


「そ、そうだったのですね……私達が『聖魔霊』と至った際にはそんなことありませんでしたが……それは?」

「簡単な話じゃ、うぬ等はそこな聖女の助力を受けておったからじゃよ。それに格の違いもあろう」


 フェリア達木っ端悪魔と『四神』の弟達ではそもそもの格が違うのじゃ、『進化』の際に溢れ出る力の総量も桁が違うと言うものじゃよ?


「凄いや……『四神』が『進化』すればさっき言ったティリアの懸念も少しは埋められるんじゃない?」

「……そう、ね。特にロアの『魔装戦士』の物量は圧倒的だから……シドウならわかるでしょう?」

「そうじゃな。あの『魔装巨人(ゴーレム)』の大軍に対抗するにあたり、弟達の『進化』は大きな力となろう。それでも厳しかろうが、何……案ずるでない」


 聖女が弟達の『進化』に嬉しそうな顔を主神に向けるも、主神はその表情を厳しくし、冷静に戦況を予想しては儂に問い掛けてきおる。うむ、ようわかるぞ? あの『技工神ロア』の操る『魔装戦士』と称される『魔装巨人(ゴーレム)』の大軍の為に、次女は『リーネ・リュール』を放棄せざるを得んかったのじゃ。


「……悔しい」


 その思いを過去に馳せておるのじゃろう。次女の口よりこぼれるその一言が如何に重いかを、伴に戦っておった儂にはようわかる。しかしじゃ!


「儂等『懐刀』も、もう間もなくじゃ」

「え!?」


 儂のその言葉に目をまるくし、パチクリと二、三回瞬きをして呆ける聖女達じゃ。ほっほっほ♪ 言うとる意味が直ぐには理解出来なんだか? 愉快愉快。儂もまさか、今になって先に進めるとは思うてもおらなんだ故に、女神達の驚きようも頷けるわい。


「ま、マジ!? マジなのシドウじいちゃん!」

「珠実様も、リン様も、ジュン様も……『進化』が近いと!?」

「凄い! 凄いです! 恐らく今の『懐刀』達が『進化』を果たせば、私達を凌駕するかもしれません!」


 末っ子にフェリア、長女が凄い凄いと囃し立ておるが……うぅむ、儂もまさかこの歳になって、更なる力に目覚めようとはのぅ……もう、遥か記憶の彼方じゃが、儂が幼いときは何処にでもおるような木っ端龍であったのじゃが……


「長生きはするもんじゃなぁ~♪ それはそうと魔女……ではないな、聖女よ。儂との約束は覚えておろうな?」

「ん? なんだっけ?」


 ほへぇ~と、その間抜けに見える口を閉じんか? 儂等『懐刀』が『進化』するのはもうちょい後じゃ。今は掴みかけておるところじゃからな。儂はその『進化』を果たす前に、聖女に約束を果たしてもらうことにする。


「ホレ、あのきゃわわな猫耳幼女の姿で儂と『でぇと』をする約束じゃ!」

「ちぇっ! 覚えてたのか……忘れてくれればよかったのにぃーっ!」


 おのれこのむっちんぼでーめが! 忘れるものか! べーをするでない!


「冗談だよ。ちゃんと覚えてる。『四神』達が無事に『進化』するのを見届けてからでいいでしょう?」


 なんじゃ、ちゃんと覚えておるではないか? まったく、少し不安になったではないか!?

 やれやれと言った感じで、儂を横目に、『四神』達の様子を見守る聖女じゃ、コヤツめ、人をおちょくりおって。


「むぅっ! シドウ、アリサお姉さんはみんなの武器作るんだから、手短に!」

「後、絶対に触れちゃダメだかんね!?」

「そうですよシドウ? アリサお姉さまに触れて良い男性はアイギスさん以外認めませんからね?」

「そうそう。アリサ姉さんとアイギスの恋路を邪魔しちゃ駄目よ?」

「えっ!? ちょ、ちょっとあんた達!? やーんっ! そんな大声で言わないで!」


 ほっほっほ♪ いやいや、初々しいのぅ~。女神共が儂を注意する言葉に、頬を染め聖女が恥ずかしがっておるわ! 安心せい。『でぇと』とは言うても、ただの爺のちょっとしたお願いを聞いてもらおうというだけじゃ……


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【大地と爽矢】~真・白虎と真・青龍~《聖女view》

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「カアアァァーッ!!!」「オオオォォォーッ!!!」


ハアァァーッッ!!! ズッドオォォォーンッッ!!!


 まるでかの有名なボールを七個集める、バトルマンガの一幕のような、大地と爽矢の叫びが、爆音を伴い、この荒野の訓練場に爆ぜる! 凄い神気! 今までの大地と爽矢からじゃ考えられないくらいの力が迸り、私達の頬を撫でていく。


「終わったみたいね! うん。凄い力を感じるわ!」

「す、凄まじい! これが、これほどの力をあのお二人が!?」


 疾る神気になびく髪を押さえ、ティリアは嬉しそうに、フェリアはただただ驚愕して、爆煙に包まれる大地と爽矢を見やる。徐々に砂煙が晴れて来て、『進化』を果たした大地と爽矢の姿が顕になってきた!


「ほう。これは見事じゃ! 見違えたぞいお主等!」

「ああ、済まぬ。待たせてしまったな兄者、そして女神達よ」

「心配かけちまって済まねぇ! 大地こと『真・白虎』ここに見参だぜ!」


おおぉぉーっ!!


 すげぇ~♪ めっちゃ見た目も変わってんじゃん二人とも! 無事に『進化』を果たし、私達に心配かけたことを謝罪する大地と爽矢に、私達は歓声をもって応えた。うん! 凄い! その身に漲る強烈な神気! 更に見た目もかっちょよくなった二人だ!

 まず、大地だけど。『白虎』から『真・白虎』へと『進化』した。

 今までよりも一回りほど身体が大きくなり、何より特徴的なのが全身の至るところに施された紅い隈取りだろう。虎を象徴するその虎縞。『白虎』の時は白とその黒い虎縞の二色だった大地に紅が混じる。

 更にその肩? の毛がまるで翼のような形状を作っており、とても幻想的なシルエットを作り出している。かっけぇ~♪ 前世で狼の姿した神様が主役のゲームに出てきた虎みたいだ。


「見事です……なんて、なんて美しい!」

「だね! めっちゃカッコよくなったじゃん大地ん!」


 うんうん。美しいものが好きなフェリアも感動してるし、フォレアルーネもわーわー喜んでる。私もわーい! ってやっちゃいそうだよ♪

 そして、次に爽矢だけど……大地と同じように身体が一回り大きくなり、『青龍』から『真・青龍』に『進化』を果たした。全体的に青が薄れ、空色になったぽい。至るところの鱗がまるで刃のように鋭利に尖り、触れようものならスパッと切れてしまいそう。

 纏うスパークはより多く激しく、刃のごとき鱗と、大地にも現れた紅い隈取りを照らし見る者に対し大いな畏怖をあたえる。


「爽矢はとても攻撃的な姿に『進化』しましたね」

「ん。怖い……魔王も逃げ出す」


 アルティレーネが顎に手をやり、爽矢を見上げては感嘆のため息と一緒にそう漏らす。レウィリリーネも私と同じような感想を抱いたようで、素直に怖いと言うが……まぁ、爽矢だって知らなければ確かに怖いだろうね。


「ふぅぅーっ! すげぇ力が漲るぜ。直ぐにでも試してぇが……」

「ふっ、慌てる事はない。今は朱美と水菜が『進化』を果たすのを待とうではないか」


 そう言うと二人は『人化の術』で人の形を取って、頷き合う。うん、何て言うか……以前よりも落ち着いているというか、心に余裕が生まれたように見えるね。


「お疲れ様二人とも。ふふっ! 『聖域』に戻ったらあんた達の部下さんもびっくりするんじゃない?」

「ははは! 違いないな!」

「だな! ヘヘ、何にしても待たせて済まねぇな姐御! 女神達! 残りの期間でこの力を更に磨き上げてやるぜ!」


 頼もしいこと頼もしいこと~♪ 私の言葉に快活に笑う二人が凄く力強く見える。これで、朱美と水菜も無事に『進化』を果たせば、かなり大幅に戦力がアップするだろう。魔王との戦いを控え、私達の備えは着々と万全に向かっているね!


「ふむ、朱美と水菜もそろそろじゃな」

「ええ、静かだけど大きな力が感じられるわ。ゆっくり丁寧に制御してるようね」


 シドウとティリアが未だ静かに眠る朱美と水菜を観察してそう呟いた。私達も倣うようにその二人を見守る事にする。


「……水菜は玄武成り立てって言ってたけど、大丈夫なのかな?」

「なに、心配はいらぬ。水菜の力は既に先代を超えておるでな」

「すげぇ頑張ってたんだぜ……水菜はよぉ、俺達に追い付こうって誰よりも努力してたしな!」

「ああ、その通りだ。案ずるなアリサ殿」


 水菜は小さいミドリガメの姿のままだけどしっかり訓練にもついてきた。だから大丈夫だとは思うんだけど、玄武の座についてそう間もないとも聞いていたので、爽矢と大地のように『進化』できるのか少し不安になったんだよね。

 でも、シドウも大地も爽矢も大丈夫って太鼓判を押してくれたし、信じて待つとしようか。頑張って水菜! 朱美!


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【楽しい】~充実した日々~《ゆかりview》

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「おおお!? おいおいシェラザード! 訓練場から結構な力を感じるぞ? 一体なんだろうな!?」

「ああ、多分『四神』達が『進化』してるんじゃないかしら?」


 編み編みと、のんびりなんか糸を木の棒を使って動かすシェラザードに、私は今感じた力の奔流のことを話せば、そんな答えが返ってきた。


「へぇ~そうなのか? じゃあ私も見に行こうかな! お前達の作るそれを見てるのも面白いけど、向こうにも興味あるし!」

「ゆかりさんて面白いね♪ 結構編み物ってちまちました作業だし見ててもつまらないんじゃないかなって思ってたよ?」

「ですね~やっぱり感性が違うのかな?」


 シェラザードと一緒にこのアリサ様の引きこもりハウスの一室で、『編み物』をする、リールとフォーネが私に微笑みかける。見てる間も何度か「退屈じゃないか?」って聞かれたけど、そんなことないぞ?

 みんなが手を動かす度に出来上がって行く『服』を見てると、おおー! ってなるし、ワクワクするんだ。


「ふふっ完成にはまだまだかかるし、行ってらっしゃいゆかり。あ、でも夜はゲームの続きするんだからちゃんと戻って来てよ?」

「ああ、わかった! じゃあちょっと様子を見てくるぞ!」


 どうやら、『編み物』も暫く、今と同じ工程が続くようだし、少し目を離してもそう変わらないって事だ。それに、今回限りって訳じゃないんだし、私は『四神』達の『進化』の様子を見に行くことにする。

 アリサ様の提案で始まった、この『無限円環(メビウス)』内でのみんなとの訓練だけど。凄く楽しい! 今まで、アリサ様と私にシェラザードの三人でのんびりとゲームをしたり、料理を作ったり、一緒に散歩したりと、ゆるゆるとした穏やかな生活を送ってきたけど。


「ふふっ♪」


 自然と笑みがこぼれてしまう。アリサ様の映像通信(ライブモニター)越しにしか会えなかった『ユーニサリア』のみんなと、九尾や黄龍、神狼に天熊達と言った旧友にも再会できて、しっちゃかめっちゃかの訓練にワイワイ楽しい食卓。みんなで騒ぐのがこんなに楽しい!


「シェラザードも早く幽閉が解けるといいのにな!」


 始めの頃こそ成り行きでこの『無限円環(メビウス)』に留まっていたけど、今じゃすっかり情がわいてしまった。私が『ユーニサリア』に行くと、シェラザードはお留守番になってしまうからな。聖女のアリサ様も魔王討伐の為に不在の場合が多いし、一人きりにするのも忍びないんだ。


「でも、いざと言う時は私も出るぞ! 私だってアリサ様のお力になりたいんだ!」


 その為にも旧友達、ましてやその弟子とも言える『四神』達に遅れを取る訳には行かないからな。さぁ、この『転移陣(ワープポータル)』の先が訓練場だ! 『進化』した『四神』はどれ程だろう? 負けないからな~!


シュンッ!!


 私は例え『進化』した『四神』達がどれ程強くなろうとも、更に先に行くのだと決意して、『転移陣(ワープポータル)』に飛び乗った。


「わっ!? 眩しい!」

「あれ? ゆかりじゃない、あんたも気になって様子を見に来たの?」

「そのお声はアリサ様? ええ、そうなんです。それよりこの光はもしや『進化』の光ですか?」


 訓練場に転移した途端、私は眩しい光に包まれた。とても眩しくて前が見えない! 逆行の差し込む中にアリサ様のお声が届いたので確認をすれば……


「うん。今朱美と水菜が『進化』するところだよ!」


 おお、やはりか!? 手で『進化』の光を遮りながら、よくよく観察をすれば、どうやら朱雀と玄武が眠りから覚めるところのようだ。そうこうしている内に、徐々に光が弱まって、視界が開けてくる。


「ふわああぁぁーっ! あ~よく寝たわぁ♪」

「うーん! なんて気持ちのいい目覚めでしょう~♪ こんなの久し振りですね!」


 おおっ凄いぞ! 二体とも見事に『進化』を果たしたじゃないか!

 目覚めた二体だけど、特に玄武の変化が劇的だ。小さいカメの姿だった玄武はなんと! 私のような竜にも似た見事な巨躯に様変わりしているのだ! 翼こそないが、その背や、各関節に玄武を象徴する甲羅がついており、『盾竜(シールドドラゴン)』と言っても差し支えがなさそうだ。

 そして朱雀。今までよりも一回り大きくなったその姿は、玄武とは違いそれほど変化はしていない。鶏冠や背羽根に尾羽根が更に流麗となったくらいだ。しかし、内包するその神気は今までと比にならない程に膨れ上がっている。


「お待たせしました。『真・玄武』今、目覚めました!」

「同じく。『真・朱雀』よ。心配かけてごめんなさいね?」


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【じいちゃんとでぇと?】~視線に敏感です~《聖女view》

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「水菜は随分変化したな! 竜と見間違えそうじゃねぇか」

「うむ。立派に成長して、我等も嬉しいぞ。朱美も無事に『進化』を果たせたようで何よりだ」


 朱美と水菜も無事に目を覚まして、立派に『進化』した姿を見せてくれた。先に『進化』を済ませた大地と爽矢も二人を喜んでるね。特に、水菜がミドリガメからドラゴンに見間違える程の劇的な変化を遂げ、その事に感無量みたい。


「ありがとう二人とも!」

「アリサ様、女神様。シドウ様、ゆかりさんもフェリアも見守ってくれてありがとうございます」


 朱美が嬉しそうにその翼を広げて、水菜がその長い首を垂れて私達にお礼を言ってくる。いやいや、お礼を言うのはこっちだよ、ありがとう『進化』してくれて!


「お~おめでとうお前達! 私もなんか嬉しいぞ? どうだ、慣らしもかねて一緒に運動してみるか?」

「ほっほっ黒竜……いや、ゆかりよ。程々にするんじゃぞ? お主達も『進化』した力を徐々に慣らすようにな?」

「応! 相手してくれるかゆかり!」

「了解だ兄者。残り期間で存分にこの力を振るえるよう仕上げて見せよう」


 『四神』達の『進化』の様子を見に来たゆかりが、彼等の相手を務めてくれると言う気遣いに『四神』達は揃ってお礼する。シドウはそんなみんなに熱くなりすぎないようにって注意してるね、うんうん。慣らし運転は大事だからね、それに今日はお休みなんだし、軽く汗を流すくらいにしてほしいな。


「ええ、そうさせてもらうわ」

「最初から全力出しちゃうと後に影響出そうですしね」

「それならば是非私もご一緒させて下さい!」


 私のその言葉に頷くみんな。フェリアも嬉しそうにその慣らし運転に参加表明する。そんなフェリアを「勿論」と歓迎する『四神』とゆかりだ。うんうん、仲良しで大変よろしい!

 そして、休めるときはしっかり休むべし。適度に休みを挟むことで心身共にリフレッシュ♪ そうすれば、続く訓練にもまた身が入るってもんだよ。


「では私達は武具作成をのんびりと行いましょうか?」

「ん。色々作ってみる」

「ほいほーい♪ なんにせよ『四神』のみんなが無事だったし、安心して戻れるね」


 妹達も一安心~と、安堵して武具作成を再開するため、『転移陣(ワープポータル)』へと足を向けた。


「アリサ姉さんとシドウはこれからお話するのよね? 私達は先に戻ってちまちま作業してるから、気にしないでいいわよ?」

「ほいさ~んじゃ、じいちゃん『ユニの花園』でも散歩しようか?」

「うむ。よろしゅう頼むぞい」


 そう言って転移するティリアを見送って、シドウじいちゃんに呼び掛ける。「でぇと」とか抜かしてるけど、シドウはシドウで何か魔王達に思うところがあるんだと思う。それはきっと、確信はないけど、「もしかしたら~」って内容じゃないかと思う。

 とにかく、話を聞いてみよう。さてさて、どんな話なのかな?


「──ほう、これはまた見事な花園じゃなぁ」

「……とか言いつつ、じいちゃん? さっきから視線。バレバレなんですけど?」


 そんな訳で、訓練場に『四神』達とゆかりにフェリアを残し、私とシドウは『ユニの花園』にやってきた。

 『ユニの花園』はその名の通り、辺り一面を沢山の花畑に囲まれた自然公園で、面積はさほど広くはない。中央に噴水広場があり、ベンチ、テーブル、椅子なんかを設置して休憩スペースなんかもある。ここでお花を愛でながら、軽くごはんとかも食べられるよう、屋外調理場なんかも用意したんだ。いずれみんなでお花見パーティーなんかもしたいしね♪

 円を描くように作ったこの『ユニの花園』は俯瞰視点で見ると大きなひまわりを象どる。太陽のようなにっこり笑顔のユニをイメージしてるんだ~だから、『ユニの花園』って言うのだよ。


「仕方なかろうて! お主のその姿、まさに儂のどストライクなんじゃもん!」

「にゃーにが、もんよ! 折角この花園を案内しながら説明してあげてんのにー!」


 じいちゃんのリクエストに応えて『人猫(ワーキャット)』幼女に変身した私は、シドウと二人並んで花園をのんびりと歩く。その際にこの花園のことを説明してたんだけど、いやいや……この変態(ロリコン)爺めの視線が凄いのなんの……胸元から下に下がって腰、お尻に脚。そして上に来ては顔見て、また胸元をって、バリバリに感じます。


「少しは遠慮しなさいよ? 多少なら許容できても度が過ぎると相手を不快にさせるだけなんだからね!?」

「す、済まんのぅ……できるだけ善処するわい……」


 まったく! 元の姿だと、ブレイドくんとかバルドくん、ゼルワやアイギスと言った若い男性達から時折そういう視線を受けた事はあるけど、それはほんの一瞬だったのよね。でも、今のシドウの視線は酷い! 視姦されるってこう言う時に使うんだろうねぇ? 全身を舐め回すように見られると、流石に気分が悪くなるよ。


「次に妙な視線感じたらミーナの着ぐるみ着るから、そのつもりで!」

「わかったわかった! では本題に入るとしようかの……」


 どっこいせっと、噴水広場の椅子に腰かけて話をする体勢を取るシドウだ。まったく、もう少し紳士的に接してくれれば散歩も楽しめただろうに……とりあえず、約束通り茶飲み話とするため、ミーにゃんポーチから緑茶を取り出して~後はお煎餅を用意してテーブルに、ほい、どーぞ召し上がれ♪


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【もしかして……】~黒幕が?~《聖女view》

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「おお、済まんの。頂くぞい……ほお~これはまた面白い菓子じゃな。醤油に海苔、米……かの?」

「正解♪ お米を粉にして焼き上げたお煎餅だよ、緑茶に合うと思うよ?」


 私がこの『無限円環(メビウス)』で過ごす期間、沢山料理を頑張ったのだよ♪ 前述したけど、『無限円環(メビウス)』内でなら、私も妹達のように、無から物を創り出す事が出きるので食材には困らない。ただ、『ユーニサリア』に持っていこうとすると消滅してしまうのが、検証の結果判明している。『ユーニサリア』に『無限円環(メビウス)』から持ち出すには、素材から作られた物じゃないと駄目みたいなんだよね。やっぱり妹達は凄いんだなぁ~って実感したよ。


「うまい……なに、培われた技術は物と違い、その身に刻まれるもんじゃろう? お主も負けとらんよ」

「そう? そう言ってもらえると嬉しいかな♪ それで、私と二人で話したい内容ってのは結構重要な話よね?」

「うむ……これは儂の憶測が大半故な、しかし、捨て置けぬ重要な話じゃ……聖女よ、お主は魔神の事、ディードバウアーの事をどう聞いておる?」


 やっぱり重要な話だったようだ。その目を真剣なものに変えてシドウが私に訊ねてくる。魔神とディードバウアーがどんな奴なのかきいてるかって? 魔神は元々善神だったけどみんなにちやほやされる内に野心を抱くようになった、と。ディードバウアーは人の、いや……万物の悪意と邪心を餌にその力を強める厄介な獣だって聞いてるね。


「そうじゃな、ではまず魔神についてじゃが……お主は今の話を聞いておかしいとは思わなんだか? 周りに褒め囃されたからと言って、その善性がそう簡単に失われると思うか?」

「言われてみれば……そうね、みんなに褒められて調子に乗ったから……っていうにはエグい事するなぁ~とは感じてたよ」


 シドウの言葉に改めて、ティリアに教えてもらった魔神の話を思い返す。みんなが褒め称えて、自分は凄いのだと思い込み、遂にはティリアの持つ力を狙うようになった魔神は、とにかく酷い事をしてきている。その極端とも言える方向転換は「神」の感性故かって、思ってたんだけど……


「主神に女神達を見てわかる通り、神とてそう変わらぬぞ?」

「そうよね……だとすると、何か他に原因があったって事?」


 そうだ、長いこと妹達と一緒に過ごして……ルヴィアスにシェラザード、フィーナとセルフィっていう神に会って、まぁ、多少の違いはあれど、その感性は私達とさほど変わらない。


「先も言うたように確証はないのじゃ……それにな、ディードバウアーについてじゃが、今でこそ邪神として問題視されておるが、儂が幼少の頃は、総ての悪意や邪心を浄化してくれると言う有難い神と伝えられれおったのじゃよ?」


 なんだって? それじゃあ……


「儂が『黄龍』と至り、神界へと招かれた時には今の邪神とされておったが……腑に落ちん」

「……元は善神だったっていう魔神と、ディードバウアー……それがまるで正反対の神に……!?」


 まさか、これって……

 覚えがある。どころじゃない、ごく最近身近で目の当たりにしただろう?

 ──そう、『世界樹(ユグドラシル)』だ。


「……『反転の呪い』かしら?」

「魔神についてはおそらくそうかも知れぬが、ディードバウアーについてははっきりとせんな」


 私達に緊張が走る。総ては憶測に過ぎないけれど、いや。だからこそシドウは私にだけ話したのか……

 もしかしたら、魔神もディードバウアーも何者かによって踊らされただけなのかもしれない、そんな可能性の話だ。でも、ああ……確かに捨て置けない話でもある。

 アーグラスの代から続く『魔神戦争』は魔神の消滅によって終結したものと思われていた。復活する魔王達を倒してその事後処理が完結するのだと思ってた。

 でも、違うのかもしれない……『魔神戦争』は今も続いている、その黒幕とも言える誰かを倒さない限り。


「今は主の心に留めておいてくれぬか? そして、もしそうであるなら……」


 ふと、シドウが寂しげな表情を見せて私に語りかけてくる。


「その踊らされる奴等……ディードバウアーも、その復活を望む黒フードの『亜人(デミヒューマン)』達を救ってやってくれ……」

「そう……だね。中々にしんどそうだけど、やれるだけの事はやってみるよ……」


パリッ……


 お煎餅を食べる、乾いた小さな音が『ユニの花園』に響いた。

フォレアルーネ「いやいやヾ(・д・`;) うちらだって何でも無から創るなんて無理だかんね?(゜∀゜;)」

アルティレーネ「それが出来るならわざわざ『聖域』を開拓なんてしません( ̄▽ ̄;)」

レウィリリーネ「……限定的とは言え、それを可能にするアリサお姉さんがおかしい(_ _)」

ティリア「しっかし今はしゅぎょーでドタバタしてるけど、『ユーニサリア』じゃ一日も経ってないのよねぇ(゜д゜)」

フォレアルーネ「ヤバいよねぇ~( *´艸`) 食べ物には一切困らないし、楽しそうなゲームもあるし(*^▽^*)」

レウィリリーネ「……『ミーナ野原』で一日ボーッとしてたい(*´-`)」

アルティレーネ「私は『ユニの花園』で一日を無為にしてみたいです(ーωー)」

ティリア「私は断然ゲームね!( ・`ω・´) ちょっと見せてもらったんだけど、懐かしいあれやこれがもうズラァーッと並んでたわ!(ノ≧∀≦)ノ」

フォレアルーネ「へぇ~(*^.^*) みんなでできるゲームもあるのかな?(*´∇`)」

レウィリリーネ「ん。シェラザードとゆかりは一人用のゲームを二人で楽しんでるって聞いたけど……σ(´・ε・`*)」

アルティレーネ「これだけの大人数ですし、一緒に楽しめるゲームがあるならやってみたいですね♪( ・∀・)」

ティリア「でもでも、シェラザードとゆかりが独占してるのよねぇ(`ε´ ) なんとしてもプレイ権を勝ち取らなきゃ!(≧□≦)」

フォレアルーネ「……普通に「まぜて~」って言えばいいじゃん?(;´A`)」

レウィリリーネ「なんでわざわざ勝負事にするの?(;´∀`)」

アルティレーネ「ティリア姉さまの悪いクセですよ、もう( ̄0 ̄;)」

ティリア「だって絶対ゲームしたいんだもん!( `Д´)/」

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