閑話 女神様が造り直したダンジョンに挑んでみたんだが……2
アーヴィル「まさか俺達にスポットライトがあてられるとは(T_T)」
ビリー「感無量だな!(*`ω´*)」
シンシア「ほらほら、二人共感動してないで挨拶挨拶!( ̄0 ̄;)」
ディーネ「PVアクセス十万突破記念のお話の二話目です!(ノ≧∀≦)ノ」
エリック「何卒某達の活躍を御覧下され♪ヾ(≧∀≦*)ノ〃」
ファビル「ふへへ(*`艸´) 踏んでくれていいんだよぉぉ~?(^q^)」
ゴード「罵ってくれていいんだぜぇ~♪((ノ∀`)・゜・。 アヒャヒャヒャヒャ」
アーヴィル「おい、マジでやめろよこの節操なし!(>д<)ノ」
ビリー「みんなドン引きして帰っちゃうだろう!?( :゜皿゜)」
シンシア「この二人はまったくもうっ!ヾ(*`⌒´*)ノ」
ディーネ「ささっ、早いとこ〆ましょう!ヾ(゜д゜;)」
エリック「それでは皆様、ゆるり御覧じませい!ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿」
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【戻ってきたゴード】~どうなってんの?~《ファビルview》
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「うわあぁぁっ!!」
「ゴード!?」「おいっ! しっかりしろ!」「一体何があったのです!?」
いやぁ~驚いたよねぇ~? 僕が『セリア洞窟』の六階層のスタート地点の扉のトラップを調べてたらさぁ~何処かに飛ばされたって思われてたゴードの奴がいきなり現れて叫び声挙げるんだもん。
あ、僕はファビル。『七つの光』っていうパーティーの斥候やってる『人犬』の男さぁ~ふへへ、覚えてくれるかーい?
「び、びっくりしたぁ~ゴード! あんた突然消えたと思ったら、一体何がどうしたってのよ!?」
「とにかく、無事なようでよかったですね……」
パーティーメンバーも全員が突然現れて大声を挙げるゴードに驚き、何があったのか聞こうと近付く。いや、ホント何があったんだぃ? って、この扉のトラップ解除出来そうにないな。
「はっ!? えぇ!? どう言う事だこりゃ? 何で俺っちってば生きてんの!?」
「落ち着いてくれゴード。お前はこの部屋の扉を開けた瞬間、俺達の前から突然消えたんだ。そこは覚えてるか?」
みんなに心配そうに見守られる中でゴードは混乱してるのか、しきりに辺りを見回した後、ペタペタと自分の体に触れているね。アーヴィルが落ち着くように言ってるけど、なんか物騒な事口走んなかった今?
「ああ、あ~うん。ここは、六階層のスタート地点だな? 一体どうなってんだ? っと、悪いみんな。心配かけたぜ! とにかく、何がなんだかわかんねぇが見てきたことありのままに話すぜ?」
ダーメだぁ~どうやってもトラップ解除出来ねぇや……とんでもねぇ魔力……いやぁ神気ってやつ? でロックされてるねぇ~。とりあえずいったん諦めて僕もゴードの話聞こーっと。
「俺っちはよ、ここと似た部屋に飛ばされたんだ。一瞬何が起きたかわからなくて焦ったが、トラップで飛ばされたって気づいてよ、皆と合流しないとなって、部屋から出たんだ」
ふぅん、どうもゴードの話だと飛ばされた先の部屋も、そこを出た通路もここと似たような木の板張りで出来た回廊なんだってよ?
「薄暗い廊下に僅かな蝋燭の灯りを頼りに、俺っちはとりあえず歩いてみたのよ……そうしたら」
「「そうしたら……?」」
そこまで話して、ゴードはあの壁に掛けられた仮面を睨み指差して吠えた!
「あの仮面だ! あの仮面を付けた妙な奴等が徘徊してやがったんだ!」
「なんだって!? 魔物なのか?」
うぇっ!? マジかよぉ~こんな不気味な仮面を付けた魔物なんて聞いたことないぞ? それで、どうしたんだよぉ?
「妙な鈴に、全身を隠す丈の長い服装、背を隠すほどに長い黒髪、怪しく赤光りする仮面の目……情けねぇけどその異様な不気味さに俺っちは思わず隠れたんだよな」
「怖いわね……想像したら背筋に悪寒が走ったわ」
シンシアがゴードの話を聞いて身をすくませる。誰もゴードを臆病者と罵る奴はいない。そりゃそうだ、話を聞く限り確かに異様だし、不気味過ぎる。初めてのダンジョン。得体の知れない不気味な初見の魔物? 慎重にもなるよね?
「んで、その時床がギシィって軋みを挙げちまって、気付かれた。奴は俺っちに振り向いて襲って来やがったんだ。やるしかない! って思って応戦したんだけどよ……効かねぇんだよ! 俺っちの自慢のハンマーが不思議な力に阻まれて攻撃が届かねぇんだ!」
!?
みんなが息を飲んで絶句する。
「嘘だろ!? って思った時には俺っち……奴に首を掴まれてた……そして……」
あの絶叫を挙げてこの部屋に飛ばされた……らしいねぇ~はは、マジかよぉ? 乾いた笑いしか出ねぇわ。
「……ま、まとめよう。ファビル、この扉のトラップは?」
「無理。すげぇ力でロックされてて解除は不可能だねぇ」
アーヴィルがゴードの話を聞いて、冷や汗をかきながらも落ち着いて現状をまとめようとしてくれてるじゃないの、正直僕も恐怖が強くて帰りたいんだけどねぇ~?
「つまり、俺達はこの扉を潜れば、分断されてダンジョンを彷徨う事になるんだな?」
「厳しいわね。でも、ゴードがここに戻された事は?」
僕の答えにビリーがなるほどと頷き、ディーネが疑問を投げ掛ける。そうだねぇゴードは多分、いやぁ~間違いなくその仮面付けた魔物にやられた筈だ。それが五体満足でこの部屋に戻されたってことは……
「もしかしたら、この階層……いえいえ、その仮面にやられても、この部屋に戻されるだけで済むのやもしれませんぞ?」
「かもしれねぇ。俺っち絶対死んだって思ったし」
エリックがもしやと、その普通ならあり得ない可能性を口にして、それにゴードが同意するね……正直、僕達は信じられない気持ちでいっぱいなんだけど、実際にゴードが体験してるからなぁ……
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【再挑戦】~六階層~《ゴードview》
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あの仮面付けた妙な魔物に首を掴まれた瞬間。俺っちは終わったって思ったぜ。それがどうしたことか、このスタート地点とも言える部屋に戻された。何が起きたのかさっぱりわからねぇが、それこそがこの六階層の秘密なのかもな。
あ、俺っちはゴード。『七つの光』に所属するドワーフの『鍛冶師』だ。自慢のハンマーで魔物をぶっ飛ばし、時に仲間の武具の手入れしたりと。自分で言うのもなんだが、縁の下の力持ちみたいな立ち位置にいるぜ! よろしく頼む。
「攻撃の通じない魔物に死んでもこの部屋に戻される仕掛けか……どうする? ここで調査を切り上げて街に戻るのも間違いじゃない。それとも、先に進んで見るか?」
「う~ん……正直言えば怖いわ。でも、調査も何も、あたし達まだなんもしてないのよね?」
アーヴィルが安全を見て、ここで引き返すのか、それとも危険と知りつつ調査する為に踏み込むかで迷ってる。アーヴィルは仲間思いのいい奴だからな、俺っちの体験談を聞いてメンバーの安全を優先しようとしてるんだろうぜ?
「アーヴィル。シンシアの言う通りだ。確かに仲間達の命は大事だが、俺達は冒険者なんだ。危険に挑まずして冒険者とは名乗れないだろう?」
「ビリー……そうだな。ここで尻込みしていてはSランクなんて夢のまた夢だな! よし、行こう!」
「おっけぇ~でもその前に確認したいねぇ~この仮面付けた魔物に出会したら、攻撃せずに逃げて隠れてやり過ごす。ってことでいいんだねぇ?」
一度やられちまった俺っちが言えた事じゃねぇが、ビリーの言葉は最もだ。アーヴィルの奴も、他のみんなも心は決まったようだぜ。そうさ、俺っち達は『白銀』と『黒狼』に続くSランクパーティー目指すんだ! こんなとこで挫けてなんていられねぇよな!
「それが無難だと思うぜ? 後、みんなコンパス持ってるよな?」
ファビルが俺っちを見て確認してくるのでそう答える。戦った感じからあの仮面の魔物は、恐らく武器も魔法も通じないだろう。それと、懐から魔装具のコンパスを取り出し、みんなに見せる。この魔装具はダンジョン攻略の必需品でな。任意の場所を覚えさせておくことができる優れものだ。
「勿論ですぞ! ではこの部屋をコンパスに覚えさせて脱出経路とするのですな?」
「了解よ。にっちもさっちも行かなくなったら、コンパスの針を頼りにここに戻りましょう!」
エリックとディーネが皆まで言わずともコンパスを操作して、このスタート地点を登録させた。他のみんなも頷き、次々に登録する。よし、これで準備は整ったぜ! 今度はさっきみたいな無様は晒さねぇようにしねぇとな!
「じゃあ行こう! みんな無理はするなよ!?」
おおーっ!!
ガチャっ! シュンシュンシューン!
アーヴィルの掛け声に応えて俺っち達は扉を開け、六階層へと踏み込んだ。さぁ、改めて調査開始だぜ!
やはり、さっきと同じように転移させられた。どうやら部屋の中みたいだな。スタート地点より更に狭く、頼りになるのは一本の蝋燭の儚い灯りだけだ。だが、俺っち達は伊達にAランクじゃねぇぜ? ダンジョン攻略に照明は必須。スタート地点にも設置した明かり玉を懐から取り出し辺りを照らしてみるとする……つもりだったが、俺っちは手を止めた。
(危ねぇ……奴等の鈴の音が微かに聞こえたぜ)
そう、微かだがリィーンって音が聞こえた。この薄暗い中で明かり玉なんて付けたら一発で居場所がバレちまう。仕方ねぇがこのままこの部屋を調べるか……扉が一つに、格子の窓、タンスが一つに……なんだこりゃ、籠か?
何のための部屋なのかはわからねぇが、このデケェ籠は一体なんだ? ビリーみたいな『鬼人』でもすっぽり入れそうなくらいでかいぜ……待てよ、もしかしたらこれに隠れる事も可能か? 一応中身見てみるか。
うん? こりゃ布地か、中々に上質そうだな。それに、清潔そうだ……入っても問題なさそうだな、どれどれ?
(おおぅ! こいつは思った以上に居心地がいいぜ!)
何かやたらと箱に入りたがる猫の気持ちがわかったような気がする……って! そうじゃねぇだろ? 取り敢えず隠れるにはもってこいってのがわかったぜ。さて、次はタンスが気になるな。
「いいか~い? タンスってのは下から開けてくんだぜ? そうすりゃいちいちしめる手間が省けるんだ」
……とか、ファビルの奴が以前得意気に抜かしてやがったな。どれ。
なんて微妙に役に立つんだか立たないんだかわからん豆知識を語りやがる『人犬』のニヤケ顔を思い出し、下から順に開けてみた。シンプルな三段タンス、下と中段には特に何もなく、上段を開けて見れば、一つの鍵がポツンと置いてある。
(鍵か。攻略に使いそうだな、ありがたく持っていくぜ)
手にいれた鍵を大事にしまい、コンパスを確認。登録したスタート地点のあの部屋を指すコンパスの針は東を指している。どうやら俺っちは西の方に飛ばされたようだ。
一応この部屋の扉に目印として『カゴ』とでも書いておくか。
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【ご飯食べつつ】~ちょっと観戦します~《アリサview》
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いやはや、本当にエミルくんは仕事が早いね。
シェラザードが眠ってた『悲涙の洞窟』は、アルティレーネによって一度造り変えられて、『セリア洞窟』と名を改めたんだけど。『セリアベール』のお祭りの時に合間を見て、私とアルティレーネの二人でチラ見してきたんだよね。
その時に六階層を私が手を加えてちょいといじっておいたのだ。前世でどっぷりはまったとあるホラーゲームを参考に好き勝手にいじっちゃった♪
「天国のような五階層から、恐怖の六階層へと叩き落とすのだ! ふふふ、冒険者達よその恐怖にうち震えるがよいわ!」
「まるで悪役じゃねぇか……今挑んでるって言う冒険者達も可哀想にな……」
イカフライを食べてウマー♪ してる私の話を聞いていたヘルメットさんがあきれたようにため息をついてくる。なんだね? そういう態度取るならイカの天ぷら没収しちゃうぞ?
「意地悪すんなよ! 大人気ねぇな!?」
「あはは♪ アリサ様、その洞窟の様子って見れないんですか?」
「挑んでる冒険者達の様子も気になるよね? 私も見てみたいな!」
私がヘルメットさんの前に置かれたイカの天ぷらが乗ったお皿を、スススって手で引き寄せようとしたらヘルメットさんに怒られちゃった。てへへ、ごめんごめん。それを見てたノッカーくんとブラウニーちゃんがどうやら、『セリア洞窟』の様子を気にしてるみたいだね。勿論見る事は可能だよ。
馴れてきたのか、私自身レベルアップしたのか、以前はオプションに乗せてじゃないと出来なかった映像通信も今じゃ、一度訪れた場所や、知っている人物がいる場所なら思い浮かべるだけで開線する事が可能になったのだ。
「見るの? もしかしたらスプラッタぁ~な場面が映るかもしれないよ?」
「見せて頂けるなら、是非ともお願いしたいです。僕が派遣した『七つの光』の皆さんの様子が気になりますから」
スタート地点に戻されるとは言え、能面を被った人形達は殺意ましましで侵入してくる冒険者を襲うのだ。様子を見るのはいいけど、ご飯時に見るもんじゃない~って場面も映し出されるかもしれないんだけど? その辺りを、天ぷらとフライセットを食べてる映像通信越しのエミルくんにも、ノッカーくん達にも言ったんだけどね。
あ、エミルくんがどうして『聖域』で作った揚げ物を食べてるかは、私のイメージ魔法『物質転送』で送ってあげたからね?
「それでも見たいです」「お願いしますアリサ様!」
「あいあい。そこまで言うなら見てみましょうかね? 『監視カメラ』っと」
ブゥゥーン……
私がイメージ魔法『監視カメラ』を発動させれば、七つのモニターが『聖域』のお屋敷のダイニングに現れ、『セリア洞窟』六階層を攻略中の冒険者達の様子を映し出す。
「おお、映った映った。エミル坊、こいつらがその『七つの光』って連中か?」
「ええ、そうですヘルメット殿。中々個性的なメンバーですよ。Aランクのパーティーです」
「はぁ~『人間』二人に、『鬼人』さん、『人犬』にエルフ、ドワーフ、『龍人族』さんも……」
ふむふむ、『黒狼』と同じ七人パーティーか、ヘルメットさんがエミルくんに確認を取ると、彼等が先遣隊として選ばれた冒険者達らしい。ノッカーくんがその多種多様な面子にほぇ~って感心してる。うむ、確かによくぞここまでバラけた種族で集まったもんだね。
「あれ? この『人犬』ってアリスに踏まれてひっぱたかれて、ありがとうございます! って、してた奴じゃん? へぇ~斥候か、タンスの開け方とか、格子窓から物を投げ入れた音で人形を誘導とか……手馴れてるなぁ」
私もみんなと同じように挑戦中の冒険者パーティー『七つの光』の動向に注目すると、一人の『人犬』の姿が目に入る。『セリアベール』から帰る時の見送りで、アリスに踏み踏みされてひっぱたかれてお礼してた、うわぁ~な人物だったので私も印象に残ってた。
エミルくんによれば、彼はファビルと言う名で、斥候だそうだ。流石と言うか、能面人形達から上手く逃げている。ある時は鈴の音を察知して手近の部屋に隠れたり、見付かってしまってもその健脚を活かしカゴの中に入って追跡を逃れたりと、中々に六階層の趣旨を理解した動きを見せる。
「ちぇーっ! 僕の『鍵開け』が全部通じないのは癪だなぁ~あの見えてる光る玉……あれって絶対お宝か攻略に必須なアイテムだよねぇ?」
モニターからそのファビルの愚痴が聞こえてくる。ふっふっふ、その通りだよ。その扉は鍵がないと開けられないぞ? 無限魔力で編み上げた神気で作った鍵でのみ開く扉の中にはゴールの扉を開くための宝玉の一つが安置されている。まぁ、そこ以外にも宝玉はあるから、拘らずに他を当たってみたまえ♪
「ああ! 『鬼人』の騎士さんが!」
「うおおっ!? 本当に通じない! うおああぁーっ!!」
ドガーンッ!!
一方でブラウニーちゃんが見てたのは『鬼人』の騎士、ビリーくんが能面人形に追い詰められ、抵抗虚しく、あばばされた瞬間。大きな音を立てて人形にぶん殴られて、床に倒れ伏すビリーくんはその場からシュンッと消えてスタート地点に戻された。残念。振り出しに戻る! だね、もしこの時宝玉を持っていたら一個没収されるぞ?
「ほ、本当に死なないんですね……スタート地点に戻されたビリーさんも信じられないって様子で自分の身体を触って確かめてます!」
「まぁ、でも痛かったりしただろうし……? 再挑戦するのも勇気いりそうですね」
だろうね。私の説明が実際にこうして証明されたのを見て、エミルくんは驚いてるよ。ブラウニーちゃんはほぅってため息ついて、意を決したように再びスタート地点の扉を開けるビリーくんを感心して見てる。
「お? 見ろよ『人間』の二人が合流したぞ?」
「おお、アーヴィルさんとシンシアさんですね。二人共にお互い無事だった事に安心してるようです♪」
続けてヘルメットさんが見ていた『人間』の二人。逆立った髪が特徴的なアーヴィルくんと、栗色のふわふわ髪の可愛らしい女の子のシンシアちゃん。街に出向いた時も思ったけどさ、この世界って美男美女が多いんだよね。この二人はどんな関係なのかな~? ぬふふ、ちょっと下衆な勘ぐりしちゃいますなぁ~♪
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【冒険者の知恵や道具】~感心感心~《ヘルメットview》
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ほぉ~大したもんだ。アーヴィルって奴と、シンシアって奴。二人共クリアに必要な宝玉を持ってるじゃねぇか。これで残りは三つか? まぁ、それもアリサの嬢ちゃんの話じゃゴール地点の台座に納めなきゃ意味がねぇらしいから、まだまだ安心できねぇだろうがな。
「怖かったわ……何故か魔法は掻き消されるし……この薄暗い廊下を一人で歩いてさ、リィーンって鈴の音が聞こえる度にビクビクしながらそぉ~っと部屋に隠れたりして……」
「ああ、俺もだよ。戦闘とは違う恐怖だな……神経が参りそうだ……」
おうおう、二人共だいぶ苦労したようだな? 普通の魔物相手に切った張ったしてても、それらが一切通じねぇ相手には逃げるしかねぇもんな。ったく! アリサの嬢ちゃんもまたとんでもねぇダンジョン造ったもんだぜ……俺様は絶対ごめんだな!
「魔法も無効なのですね? シンシアさんにはより厳しい条件のようだ」
「この子魔法使いかぁ~そりゃ厳しいわ。魔法使おうとすると、魔素が霧散するようにしたからね~やっぱこういうフィールドで光るのはゼルワとかニャモとか、このファビルと言った斥候達だね」
エミル坊が冷や汗をハンカチで拭い、モニターに映る二人を真剣な表情で見つめてらぁな。確かに虎の子の魔法が使えねぇんじゃ魔法使いはたまったもんじゃねぇわな? それでもこうして探索続けてるんだから大した奴じゃねぇか。
「うん。やっぱりこのファビルって『人犬』さん、種族柄、耳も鼻もいいし。職業もこういう探索に凄い向いてるみたい♪」
「ディーネってエルフも中々だぜ、エルフは元々耳良いし、気配にも敏感だから、コイツも探索に向いてるな!」
ノッカーの奴がファビルって言う犬っころの動きを見て、俺様はディーネって言うエルフを見つつ感想を口に出す。エルフは聴覚も気配察知も優れてるからな。この二人は大丈夫だろう。無事にみんなと合流できるのを祈るぜ!
「ドワーフさんと『龍人族』さんはどうだろう?」
「ドワーフがゴードさんで、『龍人族』がエリックさんです。慎重に動いているようですね」
ブラウニーとエミル坊が残りの二人、ゴードとエリックが映るモニターに注目した。ゴードの奴は調べた部屋の扉に炭でチェック済みの印を付けながら進んでいるな。成る程、迷わないようにするため、いざって時に逃げ込めるようにって対策か。
一方でエリックは廊下の曲がり角に差し掛かっている。壁に身を寄せ、顔を角の先に向け安全を確認してる様子だ。手馴れたもんだぜ、Aランクってのは伊達じゃねぇようだな。
二人の職業は剣士と『鍛冶師』って話だ、どっちもこういう探索には向いてる訳じゃねぇな。
「あ、エリックじゃねぇか!?」
「ゴード! 無事だったようですな!」
おぉ、案外二人は近くにいたんだな? 合流したぞ!
二人は合流出来たことを喜んだ後、ハッと気付いたように口を手で覆い、互いにシーッ! ってしてるな。うんうん。二人共あの人形に追い掛けられたりしたんだろうなぁ~。
「二組が合流したね。どれ、ダンジョンの全体図でみんなの位置でも確認してみようか」
「おぉ! 思ったより狭いのですね? 入組んでいるから広く感じたのでしょうか?」
ブゥウン……
アリサの嬢ちゃんが軽く手を振れば、新たなモニターが現れ、そこにはこの六階層全体のマップが表示された。それによると、どうやらこの六階層は正方形の巨大迷路になってるようだ。エミル坊が今言ったように、思ったほど広くはない。南のスタート地点から真っ直ぐ北に向かえば、ゴールでもある宝玉を納める台座のある部屋だが、スタート地点の部屋の扉を開ければ全員バラバラに転移させられるので、そこで方向感覚が狂っちまうだろう。
「冒険者は皆さんコンパスを持っていますからその点は問題ないでしょうね。ふむ、ファビルさんはゴール目前のようです」
「なるほど~ダンジョン攻略は冒険者の得意とするところって訳ですね? そのための準備も抜かりないんだ」
エミル坊によれば、冒険者ってのはダンジョンとの付き合いも長く、様々な手段が講じられてきたんだと。むしろ、ダンジョン潜ってなんぼっちゅー業界らしいな。コンパスって言う魔装具もそのノウハウの一つらしい。ノッカーの奴も感心したようだぜ。
「次いでアーヴィルくんとシンシアちゃんが近いかな? エリックとゴードはやや遅れ気味で、ディーネちゃんは……随分端っこにいるね。端の方は人形もあんまり行かないから良い判断だわ」
「ビリーさんは、ああ~やっぱり振り出しに戻ってしまった分、一番後方ですね。スタート地点の転移でもそう遠くへは飛べなかったようです」
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【臨機応変な対応】~流石Aランク~《ノッカーview》
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「アーヴィル、シンシア。こっちこっち~?」
「「ファビル!」」
「シーッ! 大声出しちゃダメだよぉ~? あの仮面の魔物に気付かれるだろぉ?」
お~♪ ファビルさんとアーヴィルさん、シンシアさんの三人がゴール近くの廊下で合流しましたよ!
「二人共無事にここまで来れたんだねぇ~よかったよかった♪」
「無事じゃないわよぉ~どれだけ神経使ったか……」
「ああ、もうずっと緊張しっぱなしで、流石に疲れたな」
アーヴィルさんとシンシアさんはここまでとても慎重に歩を進めて来ました。時に息を潜めて部屋に隠れたり、時に見付かって全速力で逃げたり。見てるボクもハラハラしちゃいました!
「二人は戦闘職だもんねぇ~無理もないね。それより、ほら、見てごらんよあの部屋」
苦笑いで二人を労うファビルさんが右手の親指で指し示すのはゴールの宝玉を納める台座ですね。その向こうにはとても大きな扉があります。あの扉の先に六階層のボスが待ち受けているらしいですよ?
「丸い窪みが五つある台座があるな、もしかして……」
「途中鍵がかかってた部屋に置かれてた、この宝玉を嵌めるのかしら?」
「おお、ナイスぅ~♪ 二つもゲットしてたんだね? 僕も一つ手に入れたんだ。これで残りは二つだねぇ」
ファビルさんも宝玉を一つ入手していたんですね。アーヴィルさん達は揃ってゴールの台座に移動して、早速その宝玉を納めました。
「……ここは安全だろうか? 一応隠れておくか?」
「いやぁ~多分大丈夫だよぉ、あの仮面達ってさぁ~音には敏感だけど、視界は狭いみたいなんだよねぇ。で、その音にもさ~鳴った順番に調べるみたいでね~そいつを利用して別の部屋に誘導して逃げる~なんて事も出来たんだよ」
ポカーン……ファビルさんの説明にボクもアーヴィルさん達も言葉を失いました。凄いです……この短時間でよくそこまで観察できますね?
「はぁ~大したもんだわ。そこまで見抜くなんて……エミルくん、斥候ってのはみんなこのレベルなの?」
「Aランクの斥候なら結構普通ですね。他の国や街の冒険者はどうかわかりませんが、我が『セリアベール』の冒険者達は同じランクでも高いレベルにいると思います!」
アリサ様もファビルさんの観察眼に驚いて、エミルさんに聞いています。冒険者の街『セリアベール』とは嘘偽りない名前みたいですね!
「あんた変態なのに頼もしいじゃないの。なんかムカつくんだけど!? 踏んであげましょうか?」
「あっはっは♪ シンシアに踏まれてもなーんも嬉しくないからね? アーヴィルとイチャイチャしてなよぉ~?」
「え、俺ディーネとイチャイチャしたいんだけど?」
プフーッ! やーい! シンシア振られてやんのぉ~ウヒョー♪ とか言って変な踊りをするファビルさんと、ポリポリ頭を掻いて困り顔のアーヴィルさんの間で、キィーッ! ってティターニア様みたいな悔しがり方をするシンシアさん。あはは♪ なんだかとっても楽しそうな人達なんですねぇ~♪
「ちょっとちょっと~♪ この子達ってどういう関係なの~? めっちゃ気になる気になる~ねぇ、エミルくーん?」
「プ、プライベートな事ですので、僕にもわかりかねますよ?」
ふふ、アリサ様もなんだか楽しそうですね。話を振られたエミルさんはとても困った様子ですけど。
「はっはっは! んじゃそのディーネって言うエルフの嬢ちゃんの様子を見てみようぜ!」
「うん! このエルフちゃん結構凄いよ!?」
ヘルメットさんも笑いながら、そのディーネさんの様子を映すモニターを見る。ブラウねぇちゃんはちょっと前からディーネさんの様子を見てたようで、僕達に嬉しそうに話しかけてきた。
「見て見て! 仮面人形が近付く鈴の音を聞いてすかさず弓を構えるんだよ!」
「え、攻撃効かないんだよね?」
実際にビリーさんが攻撃しても弾かれちゃって返り討ちにあってたじゃないか? それなのにどうして弓を?
「今こっちに来られると困るんですよ、ふっ!」
ヒュオンッ!! カッ! ビィィーン……
「おおっ! 成る程、矢が木の壁や床に刺さる音で仮面人形を誘導しているんだね!? この子やるねぇ~♪ そう言えばレイリーアも弓士は相手をよく観察するのが大事な基本って言ってたっけ」
そういうことだったんだ! リィーンって鈴の音がディーネさんの放った矢の方に遠ざかって行くのがモニターからでもわかるよ! ディーネさんはすかさず踵を返してその場を離れました。この臨機応変な対応にアリサ様もしきりに感心しています。
ノッカー「冒険者さんって凄いねぇ~(*´∇`)」
ブラウニー「そうだね~って、イカフライ美味しっ!ヽ(*´∀`)ノ♪」
エミル「イカフライって、この長方形のですか?( ´ー`) どれどれ、僕も食べてみましょうかね( ・∇・)」
ヘルメットさん「しっかし、料理だけをエミルの坊やんとこに転送させちまうたぁなぁ~( ゜A゜ ) 器用さに更に磨きがかかったんじゃねぇかアリサの嬢ちゃん?( ´ー`)」
アリサ「まぁ、結構馴れてきた感があるからね(^ー^) これからも色々と試していくよ♪(*^-^)」
エミル「ホントだ!(^o^) これは美味しいですね!(°▽°)」
ノッカー「ボクねボクね、このカニクリームコロッケが好き~♪ヽ(*´∀`*)ノ」
ヘルメット「俺様はこのホタテのフライだな!(´・∀・`)」
ブラウニー「うんうん♪(*´∇`) アリサ様の特製ソースでも美味しいけど、このタルタルソースで食べると……んん~♪( ☆∀☆) 病みつきになりそう!( ≧∀≦)ノ」
エミル「この天ぷら達も素晴らしいです!(*´▽`*) 塩もいいですが、この天つゆ……どうしたらこんなにも味わい深いものが作れるのか……(;`・ω・)」
アリサ「みりんの製造に協力してくれた、爽矢の部下さん達に感謝したまえよエミルくん( *´艸`)」
ノッカー「あはは♪( ´∀`) 爽矢様の部下さん達って何気に一番アリサ様と一緒に料理研究されてますよね?(^-^)」
エミル「はい!o(*⌒―⌒*)o 感謝していただきます♪(*^▽^*)」