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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
96/211

閑話 女神様が造り直したダンジョンに挑んでみたんだが……1

ティリア「あい(*´∇`*) PVアクセス十万突破記念の閑話よ~(ノ≧▽≦)ノ」

レウィリリーネ「……あたし達の出番ないけどね(_ _)」

フォレアルーネ「は(・・;)? どういうこと? うち一応おめかししてきたんですけど!?(; ゜ ロ゜)」

アルティレーネ「このおはなしの時間軸が今なんだそうです(^_^;)」

ティリア「え~?(*゜Д゜) じゃあ誰の話なのよ?(,,・д・)」

レウィリリーネ「とある冒険者達の話(  ̄- ̄)」

アルティレーネ「私達の中で出番があるのはアリサお姉さま?(^-^;)」

レウィリリーネ「ん、『聖域』にいる妖精達と『セリアベール』のエミルくらい……(・o・)」

フォレアルーネ「そんなぁ~( ;´・ω・`)」

ティリア「まぁ、仕方ないか(-_-;)」

レウィリリーネ「ん。とりあえずどんなものか見てみよ?( ´ー`)」

アルティレーネ「今日から三日間の連続投稿となりますので、よろしくお願いしますね(*´艸`*)」

────────────────────────────

【Aランク】~『七つの光(セブンズレイ)』~《アーヴィルview》

────────────────────────────


「行ってしまったな……アリサ様達」

「ああ、だがまた直ぐに来るって言ってたぞ?」


 俺の名はアーヴィル。『セリアベール』の冒険者で『七つの光(セブンズレイ)』と言うAランクパーティーのリーダーを務める『人間(ヒューマン)』の剣士だ。覚えてくれると嬉しい。

 この『セリアベール』の街に颯爽と現れた、美しい『聖域の魔女』ことアリサ様。

 彼女達『聖域』からやってきた皆は、俺達を長年苦しめてきた『氾濫(スタンピート)』を解決に導き、箒で空高く舞い上がり帰って行く。その空を見上げ呟く俺にサブリーダーである、『鬼人(オーガ)』の槍騎士、ビリーが答えた。


「楽しみね、何でもオシャレな装備も色々広めるそうよ♪」

「ああ~そうすれば私もアリサ様や、アリス様のような可愛い服着れるのかしら~?」


 そう言って嬉しそうに笑い合うのはパーティーの可憐な花。『人間(ヒューマン)』の魔法使い、シンシアと、エルフの弓士のディーネだ。

 過去に例を見ないほど大規模な戦いとなった、今回の『氾濫(スタンピート)』が、アリサ様を始めとした『聖域組』の協力によって、奇跡的に誰一人死者を出すことなく解決したのは先に述べた通りだが、アリサ様方がこの『セリアベール』にもたらした物はそれだけではなかった。今、シンシアとディーネが話してるように、機能性よりも見た目に重きを置いたオシャレな服装のデザイン。それに美味しい数々の料理……


「それだけではありませんぞ! アリサ様がもたらしたポーションが今後一般的に流通するそうですな!」

「マジか!?」

「そいつは朗報だ!」


 笑みで破顔させた顔を見せて声を大にする『龍人族(ドラゴニュート)』の剣士、エリックの朗報に俺とビリーもその声を大きくして驚き、喜ぶ。何せ俺達冒険者にとって、ポーションは切っても切れない関係だ。その苦虫を磨り潰し、生臭い川魚を漬け込み、雑巾の絞り汁をブレンドしたかのような恐ろしく不味いあのポーションが劇的に美味となったアリサ様のポーション! あのポーションが普及されるとあれば俺達も活動に身が入ると言うものだ!


「ふへへ……アリス様もまた来て踏んでくれないかなぁ~」

「踏まれてたのはあんただったのファビル!?」

「ドン引きなんだけど……何で私こんなのとパーティー組んでるんだろ?」


 妙な趣味を持ち合わせる『人犬(ワードック)』の斥候(ローグ)、ファビルがその顔を恍惚とさせてぼやいた言葉にシンシアとディーネが二、三歩後ずさる。ファビルはついさっきも『聖域組』のアリス様に言い寄ってはひっぱたかれ、ゲシゲシと足蹴にされていたのだが……いや、とやかく言うべきじゃないな。人の趣味嗜好はそれぞれ違うのだから……理解は出来なくとも、文句を言うべきじゃないだろう。


「くぅっ! どうすればアリサ様に罵ってもらえるんだ!?」

「悪党にでもなればいんじゃね?」

「そうなったらパーティーから叩き出すわよゴード!」


 そう、ドワーフの『鍛冶師(スミス)』、ゴードもまた、ファビルと似たような趣味を持つのだから……いちいち気にしてたら疲れるだけだ。

 ゴードはアリサ様に叱られたいと言う変な願望を持ち、どうすればいいかを日々悩む。いや、お前鍛冶で悩めよ? 思わずツッコミたくなるが、気にしない気にしない。叱られたいなら悪党になればいい。アリサ様に叱られる前に他大勢から責められるだろうがな? シンシアも言うようにそうなったらパーティーから叩き出す! その時はパーティー名も『六つの光(シックスレイ)』に変更だ。


「バカタレ~! そんなことしたらアリサ様に嫌われてしまうだろうが!?」

「ゴードは変態なれど根っからの善人ですからな……」


 怒鳴るゴードに俺とエリックは苦笑いで返す。わかっているぞ? 確かにゴードは変人だが、悪人ではないからな。


「シンシアとディーネなら喜んで罵ってくれるし、踏んでくれんじゃね?」

「「え、イヤよ?」」


 ビリーが名案だとばかりに、手をポンッと叩き言うも、間を置かずシンシアとディーネがそれを拒否。だけど君達普段から結構バッサリくるよね?


「ちがーう! 俺っちはアリサ様に罵ってもらいたいんお!」


 おってなんだ? おって?

 どうやらゴードはゴードなりに、普段は優しく淑やかな女性に罵倒されたいと言う、妙なこだわりがあるらしい。まぁ、今に始まった事ではないので放っておこう。

 それよりも俺達は冒険者ギルドのサブマスターである、エミルさんから一つ依頼を受けているのだから、そちらに注力しなくてはならない。


「ハイハイ。ほら、『悲涙の洞窟』改め『セリア洞窟』に行くぞ~?」

「おー!」


 そう、今まで『氾濫(スタンピート)』を起こしていた『悲涙の洞窟』はアリサ様達によって造り変えられ、『セリア洞窟』と名を改められたのだ。俺達はその『セリア洞窟』の先遣隊として選ばれた。


────────────────────────────

【調査依頼】~『セリア洞窟』~《シンシアview》

────────────────────────────


「ようこそ、お待ちしてましたよ『七つの光(セブンズレイ)』の皆さん。どうぞおかけください」

「ありがとうございます!」


 あたし達は『セリア洞窟』に赴く前に冒険者ギルドに立ち寄った。サブマスターのエミルさんから、依頼の詳細を聞くためだ。

 あ、あたしはシンシア。『人間(ヒューマン)』の魔法使いです。

 同じく『人間(ヒューマン)』の剣士、アーヴィルがリーダーを務める『七つの光(セブンズレイ)』っていうパーティーに所属しています。よろしくね♪

 冒険者ギルドの執務室の扉に立ち、ノックをした私達をエミルさんは快く迎え入れてくれたわ。ちゃんと私達の人数分の椅子も用意してくれているじゃない。ありがとうございます。


「さて、皆さんもご承知の通り、長年僕達の『セリアベール』を苦しめてきた『氾濫(スタンピート)』がアリサ様方『聖域組』のご協力により見事解決しました!」


 うんうん! 本当に喜ばしいことよね! 私達は揃いエミルさんが用意してくれた椅子に座り、お皿に乗せられたお菓子と紅茶を片手に彼の言葉に頷き合う。あ、このお菓子凄く美味しい♪ 後から聞いたんだけど、このクッキーっていうお菓子もアリサ様が作ったんですって!


「その発生源でもあった魔王も無事にアリサ様とレーネ様が討ち取り、『悲涙の洞窟』も『セリア洞窟』と名前だけでなく、その構造も造り変えたと伺っています」


 びっくりよね? まさか『氾濫(スタンピート)』の原因が魔王に依るものだったなんて、もし、アリサ様達『聖域組』が来てくれなかったら間違いなくこの『セリアベール』は滅んでしまっていたでしょう……そう考えるとゾッとするわ。


「ある程度の情報はアリサ様から伺っているのですが、詳細がわかりません。そこで、貴方達に調査を依頼したいのです」

「成る程、それでそれなりにバランスの取れた、それなりに腕の立つ冒険者パーティーの俺達が選ばれたってわけだ?」


 エミルさんが私達『七つの光(セブンズレイ)』に『セリア洞窟』の調査依頼を持ち掛けた理由を話してくれた。それに頷くアーヴィル。確かに私達は攻守共にバランスの良いパーティー構成だ。『鍛冶師(スミス)』のゴードもいるので、武具の手入れも現場でできるし!


「ふふっAランクまで登り詰めて尚、「それなり」に、とはご謙遜ですねアーヴィルさん」

「ははっ! 『白銀』や『黒狼』は勿論。あの『聖域組』の皆を見た後なら、どうしたって俺達は「それなり」。だろう?」

「あああ、アイギスさんが羨ましい~僕もいずれ『聖域』に行って、アリス様にまた踏んでもらいたいなぁ~♪」


 キモっ! ファビル~ちょっとあんた自重してよ?

 それは置いといて、エミルさんがアーヴィルの言葉を謙遜だと言うけど、ビリーが答えたように私も自分達を「それなり」だと思う。

 街の英雄達に神様の遣い達っていうとんでもない連中と比べることがおかしいのかもしれないけど、Aランクだからと言って胸を張ってなんて、できないわ。それだけに彼等は凄かったんだもの!


「いずれ精進を重ね、某達も『聖域』へと渡って見ましょうぞ!」

「そうねエリックの意見に賛成するわ。そのためにも今はエミルさんからの依頼を頑張りましょう?」

「だね! じゃあエミルさん。アリサ様から聞いたって言う話を教えてくれますか?」


 ファビルの言い方はキモイけど、『聖域』に行ってみたいって気持ちは私達も同じだ。エリックもディーネも目を輝かせてワクワクしてるし、アーヴィルもビリーも、あぁ~ちょっとゴード! 「うへへ、アリサ様に罵ってもらえるかも~♪」とか、キモイ顔で言わないの!?


「……『セリアルティ王国』が再興すれば『聖域』とのアクセスも容易になるでしょう。そのためにも頑張らなくては!」


 そんな私達を見てエミルさんは嬉しそうに微笑んだ後、『セリアルティ王国』復興にやる気を漲らせているみたい。遥か昔に滅んだ王国の復興なんて凄くロマンがあるわよね! 勿論私達も協力するつもりよ♪


「さて、それではお話しましょう。アル……んんっ! レーネ様が仰るには五階層迄はそう変わっていないとの事ですので、『七つの光(セブンズレイ)』の皆さんには、先ず六階層をくまなく探索して見て頂けますか?」

「六階層……驚きだな、あの洞窟に未踏区域があったなんて」

「そうね、私達が今の今まで気付きもしなかったのに……本当にアリサ様には頭上がらないわ」


 エミルさんから出た「六階層」と言う言葉に反応するビリーが椅子の背もたれに背を預け、腕を組みうぅーむと唸り、ディーネはその肩を竦めて苦笑いでやれやれする。

 元々『悲涙の洞窟』は私達の間では五階層で構成されたダンジョンと言う認識だったのよね。実際に五階層から先に進める通路も階段も、それらしいものは長い『セリアベール』の歴史を振り返っても出てこない。


「仕方ありません。魔王にも匹敵するほどの魔力を持たないと認識すらされない、強力な結界と隠蔽魔法によって隠されていたんですから。あまり気にせずに話を進めましょう?」


 そう言ってあたし達に苦笑いを見せるエミルさん。もしかしたら、最も悔しがっているのはこのエミルさんかもしれない。彼はギルドマスターのゼオンさんと一緒に『氾濫(スタンピート)』の原因をずっと調べ続けていたんだものね。


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【ホテル?】~『安全領域(セーフティエリア)』~《ビリーview》

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 そんなこんなでやってきた『悲涙の洞窟』改め『セリア洞窟』だが。

 先の『氾濫(スタンピート)』で街が襲われた時、南にはアースドラゴンが現れ、地震を起こしやがったせいで道が潰れてしまい、いつものルートが通れなくなってしまっていた。

 そのため、普段なら三日はかかる道が更に遅れるのでは? と、懸念していたのだが予想外にたった二日で到着した。皮肉なことに、アースドラゴンの起こした地震でショートカットコースが出来上がっていたからだ。

 俺の名はビリー。『鬼人(オーガ)』の槍騎士で、パーティーの『盾役(タンク)』を担う者だ。よろしくお願いする!


「エミルさんの言った通りね! まさか一日早く到着しちゃうなんて。余計に買い込んでおいたのも無駄になっちゃうかな?」

「うんうん、すごいよねぇ~エミルさん。僕も尊敬しちゃうんだなぁ~こんな近道が出来てるなんていつの間に調べたんだよぉ~?」

「俺っち達にも何かと便宜をはかってくれるしな! 頼りになるサブマスターだ」


 アリサ様達が『聖域』にお戻りになり、俺達がエミルさんからこの『セリア洞窟』の調査依頼を受けてからたった二日しか経過していない。先に述べたようにアースドラゴンの起こした地震により普段の道が隆起したおかげで、大きなショートカットルートが開通した結果だ。この道の整備も進めなければいけないだろうな。


「エミルさんの情報じゃ、五階層が今じゃ『安全領域(セーフティエリア)』になってるって、話だったよね? どうするアーヴィル?」

「そうだな、五階層迄は今までとそう変わらないって事だし、一気に行って見るか。みんなもまだ余力はじゅうぶんだろ?」


 シンシアがエミルさんから聞いた情報を思い出しながら、アーヴィルにこのまま進むのかどうかを確認している。アーヴィルは五階層迄進むつもりのようだな。確かに普段より早い到着に、俺達の体力、疲弊、物質等含め、余力は申し分なし。アーヴィルの言葉に俺達は頷き、洞窟へと足を踏み入れた。


「──本当に変わりありませんな。階層も、出てくる魔物も」

「だな。俺っちが思うに、アリサ様達は敢えてそのままにしてるじゃないかと思うんお」

「ふへぇ~♪ ここが新人育成の場にも使われるって事を聞いたんだろうねぇ?」


 一から二、三、四階層と、俺達は難なく進み、エリックが感想を漏らすと、ゴードとファビルがそれに答える。どうやら「変わりなし」と言うエミルさんの情報は正しいようだ。

 確かにこの洞窟は新人冒険者の登竜門としての役割もあった。ギルドでいろはを学び、コツコツと地力を付け、細々とした簡易な依頼を受けて、GからFランクへと昇進して、実力がある程度ついてきたら先輩冒険者の立ち会いの下でEランクへと昇進するための試験が行われる。


「懐かしい。俺達もやったなぁそれ?」

「そうね、当時は凄く怖くてドキドキしながら魔物と戦ったわ」

「ああ、その時の先輩方の頼もしいことと言ったら……忘れられんよ」


 かくいう俺達も通った道を思わず振り返り、懐かしむ。アーヴィルもディーネも……俺も。頼もしい先輩に見守られながら必死で魔物を討伐したものだ。

 アリサ様達はおそらく『白銀』あたりからその点を聞いていたんだろう。だから五階層迄は手を加えず、今まで通り活用出来るようにしておいたに違いない!


「さあ、次は五階層だ」

「うん。『安全領域(セーフティエリア)』って話だし、休憩が可能なのかしらね?」


 アーヴィルを先頭に俺達は五階層へ続く階段にたどり着く。何度も世話になったダンジョンだけあって、皆迷うこともない。

 シンシアが今言ったように五階層は『安全領域(セーフティエリア)』とのことらしいし、六階層を本格的に調査する前にしっかり休憩を取り、準備を万全にしたいものだ。


「一体どんな感じに変わったんだろうな? 魔物避けの結界とか張ってあるんだろうか? ……って! うおおっ!?」


な、なんだこれはーっ!?


 アーヴィルが五階層に入った途端大声で驚くので、何事かと俺達も続いて足を踏み入れた!

 そして俺達もアーヴィルと同じように驚きの声をあげたのだった。


「な、なんだこれぇ~♪ 凄すぎんじゃーん!?」

「まるで高級ホテルみたいだわ……あ、ウソ!? これお風呂じゃないの!?」

「こ、こっちにはトイレもありますぞ!?」

「マジか!? すげぇ清潔そうなベッドもあれば調理場も!?」


 そう、五階層はまるで高級ホテルと見紛う程に施設が充実していたのだ!

 四階層から階段を降りて、真っ先に目に入るのは、綺麗に整えられた白い大理石の壁に覆われた広い空間。中央にレーネ様とおぼしき石像を讃えた噴水があり、その水はとても清浄で飲み水としても使えるようだ。

 その噴水の左右には、それぞれ個室があり、ディーネが言った浴場に、エリックが叫んだトイレ。ファビルが嬉しそうに尻尾を振る広く間取りが取られた多人数で寝食が可能なダイニングとキッチン。


「うおぉい! 鍛冶場まであるぞ!」

「こっちは魔装具の錬成場に、調薬室もあるわ!」

「それだけじゃないわ、見てあの花って薬草じゃない!?」


 まさに至れり尽くせり。ありとあらゆる施設が整えられた空間だ。ゴードもシンシアもディーネも、部屋の扉を開ける度に驚いては声をあげている。


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【なんと快適な!】~準備万全~《エリックview》

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「いやはや、これはありがたい限りですぞ!? どうやら結界も張られ魔物も寄り付かない様子。『安全領域(セーフティエリア)』とは誠でしたな!」


 某はエリックと申す『龍人族(ドラゴニュート)』の剣士。以後、お見知り置き下され!

 気の合う仲間と冒険者としてパーティーを組んで、もう結構な年月が経ちますな。この洞窟にも大変世話になったのですが、これは驚きですぞ!


「ああ、確かにこいつは有難い……だが、こうまで快適な空間だと不法滞在する輩も出てくるんじゃないか?」

「ふひゅぅぅ~アーヴィルの言う通りだねぇ~街でこれだけの設備の宿なんてそうそうないだろうからねぇ~?」

「ああ、ファビルの指摘は最もだ。これはエミルさんに伝えておかないと駄目だな」


 某達はガラッと様変わりした『悲涙の洞窟』改め『セリア洞窟』の五階層の様子に小躍りしつつ、一回りしてみたのですぞ? うむうむ。驚きましたな! あの岩と光石に囲まれて実に土臭かった五階層が清潔な大理石の美しい壁に覆われ、あらゆる設備が整えられた快適な『安全領域(セーフティエリア)』と変貌していたのですからな!

 しかし、アーヴィルやファビル、ビリーはその快適さ故にここを不法に占拠する者が現れると懸念しておりますな……


「食料さえ持ち込めば……何日でもいられそうだものね」

「だな! 俺っちもここなら鍛冶に集中できそうだし!」

「ふふっもしかしたら既にアリサ様は対策されているかもしれないけどね。折角なのだし利用させてもらいましょう?」


 そうですな! この件はビリーが言うようにエミル殿に報告し対策を講じて頂くとして、今はありがたく使わせてもらいましょうぞ!


「よし、そうするか。じゃあ食事を取って休憩した後に改めて……」


 そこまで口にしてアーヴィルは某達から一度目線を六階層に続く階段に向けて、再び某達に向き合い告げたのです。


「未踏区域。六階層に挑もう!」


おおーっ!!


 うむ! うむうむ! 某、今日こそ冒険者をやっていて良かったと思ったことはなかったかもしれませんぞ! 何せ女神様が造り変えたダンジョンに、他の冒険者達の魁として挑めるのですからな!


「ディーネディーネ♪ 折角だしお風呂入ろうよ!」

「ええ、賛成♪ アーヴィル、ビリー。その変態共をしっかり見張っててちょうだいね?」


 そうと決まれば早速~と、言わんばかりにシンシアがディーネを湯浴みに誘ってますな。うむ、馴れた道中とは言え、数日の旅ですからな……清拭だけでは綺麗好きの二人には酷だったのでしょう。


「ああ、わかった。ゆっくり浸かって身体をほぐしておいてくれ」

「お前達二人にはいつも、魔法に弓にと、サポートしてもらってるからな。お安いご用だ!」

「かぁーっ! 俺っち変態じゃねぇーやい!」

「踏んでもくれない女にキョーミないんだなぁ~僕は」


 ふふ、シンシアとディーネはこのむさ苦しい男所帯に癒しを与えてくれる可憐な花ですからな! しっかり労ってやらねばなりません。アーヴィルもビリーも嫌な顔一つせず見張りを引き受けました。何だかんだと文句を垂れるゴードとファビルもシンシアとディーネの嬉しそうな笑顔に微笑んでおりますぞ♪


「アーヴィル、ビリー、エリック、ファビル獲物を出しな~? 俺っちが手入れして万全にしておくぜぇ~?」

「ああ、頼む」「応。よろしくなゴード」「いつも済まないねぇ~♪」


 浴場に入って行くシンシアとディーネに、やれやれと肩を竦めさせたゴードが某達に向き直り、武具を見せるよう申して来ましたな。未知の領域に踏み込む前にこうして準備が出来るのは誠、有難い限り! アーヴィル達に続き、某もゴードに愛剣を手渡し手入れをお願いしました。


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【不気味】~六階層~《ディーネview》

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「……暗いわね、床の軋む音がまた不気味だわ」


 私達は五階層で一泊した後、遂に六階層へと続く階段を降りた。

 私はディーネ。『七つの光(セブンズレイ)』の弓士を務めるエルフです。十九歳と言う、長命種のエルフの中では赤ちゃんだけど、ギルドのサブマスターのエミルさんや、『白銀』のサーサさんのように立派なエルフになるため日々を頑張ってます、よろしくね!


「何というか……薄気味悪いな……光石もない」

「不気味だねぇ~ぽつりぽつりと蝋燭の灯りがあるだけで見通し悪いし……」


 初めて踏み入る六階層は、床、天井、壁……総てが木造で出来た私達が七人並ぶとやや狭く感じる一室から始まった。四階層まで至るところに落ちている光石もなく、ビリーとファビルがこぼしたように、ぽつんぽつんと置かれた蝋燭の灯りが僅かに室内の様子を教えてくれるのみで、とても気味が悪い。


「なんだこれは……仮面、か?」

「女の人……の仮面かな? ちょっと怖いね」


 アーヴィルとシンシアが見ているのは壁に飾られた一つの仮面。顔にすっぽりと被さるような作りで、紐を後頭部で結んで装着するみたいね。虚ろな目に太く短い眉、少しだけ開いた口……うん、確かに怖い……えも言われぬ恐怖感がこみあがってくるのを感じるわ。


「趣がありますな……このようなダンジョンは某、初めてですぞ!」

「おっと、扉があるぜぇアーヴィル。早速調査開始と行こうじゃないの?」

「おいおい~待ちなよゴード、ちゃんと僕がトラップを」


ギィィーガチャッ! シュンッ!!


あっ!!?


「馬鹿野郎かよぉーっ!? まずは僕がトラップが仕掛けられてないか確認してからだるぉぉーっ!?」

「なんてこった! ゴードがどっかに飛ばされちまったぞ!?」


 た、大変!? ファビルが注意すると同時にゴードが扉を開けた途端にトラップが発動したみたい! さっきまで目の前にいたゴードが一瞬の内に消えてしまったわ!


「あ、慌てるなみんな! いいか、パニックだけは起こすんじゃないぞ!」


 怒鳴るファビルに慌てるビリーをアーヴィルが一喝して落ち着かせる。ああ、危なかった……危うく私も我を忘れてみっともなく叫んじゃうところだったわ。


「ですぞ! 落ち着きましょうぞ……あの扉を開けてゴードと同じ場所に飛べるのか? もしそうなら皆で扉を開けて合流すべきですな」

「待って! 何処に飛ばされるかわからない以上、このスタート地点に目印を付けたいわ」


 エリックとシンシアがすかさずどうすべきかを判断し、その案を提案してきたわ。流石熟練の冒険者よね! 私も見習わなきゃ。


「よし、そうしよう! ファビル。明かり玉を設置してくれ、この薄暗さだ、明かり玉の光量なら嫌でも目立つ!」


 『明かり玉』とはこの洞窟で採れる光石を加工して、街の街灯にも使われている魔装具の一つね。光石は手にする人によってその光の色を変える不思議な性質があるからそれを弄って街灯にしてるって聞いたわ。


「よぉし! 設置完了だよぉ~何処に飛ばされるのかわからないけど、ゴードを放っておけないしねぇ~行きますかぁ~?」

「ありがとうファビル。やれやれ、いきなりトラブルとはな……存外、女神様達は意地が悪いのかもしれないぞ?」


 ファビルが明かり玉をこのスタート地点に設置したのを見届けてアーヴィルがお礼を言った後、一つため息をこぼす。そうね、この薄暗くて異様な不気味さの一室にじわじわと恐怖が込み上げて来たところにこのトラップだもの……むぅ、今度アリサ様にお会いできたらちょっと文句言いたいわ!


「おいおい、ディーネ。気が早いぞ?」

「まだ始まったばかりだ。隈無く探索してリターンが少ないならともかく、今から文句を言うには早すぎるぞ?」

「う、それはそうだけど~!」


 アーヴィルとビリーに怒られてしまったわ。

 確かに、ゴードが先走って何処かに飛ばされてしまったことで、少し冷静さを欠いてしまっているのかもしれない……気を付けなきゃ!


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【今度は僕が『聖域』に行く!】~絶対に!~《エミルview》

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「──はぁ……何ともまぁ、驚く報告ばかりで……絶句してしまいます」

「ふふっゼオンが戻ったら色々聞くといいよ♪」


 皆さんこんにちは。『セリアベール』冒険者ギルドのサブマスターのエミルです。

 『七つの光(セブンズレイ)』に『セリア洞窟』の調査を依頼して、彼等を見送った後の執務中。『聖域』のアリサ様から映像通信(ライブモニター)による連絡が入りました。

 この『セリアベール』から『セリアルティ王城跡地』に立ち寄り、『魔神戦争』時代の聖騎士、ビットさんを仲間にしたこと、『聖域』に戻り『ルヴィアス魔導帝国』の皇帝と友誼を結び、更にその帝国の問題を解決したこと、そして現在『無限円環(メビウス)』と言う、特別な空間でゼオンさん達は主神ティリア様直々の訓練を受けている事。


「このたった数日の間にそれほど沢山の出来事があったのですね? ううぅーっ! 狡い! 狡い!」

「おやおや、エミルくんがそんな駄々こねるなんてね♪ ちょっとレアじゃないの?」


 映像通信(ライブモニター)には『聖域』内の調理場なのでしょう。アリサ様が馴れた手付きで海の魚を綺麗に三枚下ろしにしておられる姿を見せてくれています、今夜のお食事なのでしょうね? 火にかけられた鍋? も視界に入りますし……ああ、僕も食べてみたい!


「だってだって! 三女神様達だけでなく、主神のティリア様にシェラザード様にまでお会いして、伝説の武人ビットさん。北方の覇者、ルヴィアス皇帝陛下にまで!? うぅーっ! 僕も、僕も行きたかったぁーっ!」


 それにそれに! きっと、いえ! 絶対アリサ様が作られた美味しい料理も食べたに違いありません! そんな貴重な体験目白押しな旅に同行出来なかったなんて! うぅーっ! 悔しいです!


「あはは♪ そっかそっか、でも『セリアベール』と『転移陣(ワープポータル)』が繋がればエミルくんも気楽に『聖域』に来れるようになるから、もうちょっとの辛抱だよ? そうすれば妹達にもシェラザードにも会わせてあげられるし、私のご飯も食べられるって♪」

「はい! もう今から待ち遠しいです! 期待していますアリサ様♪」


 うんうん! 兎に角、ゼオンさんが戻ったら色々仕事を押し付けて、今度は僕が『聖域』に行く番です!


「それで、そっちはどう? 何か変化や……動きはあった?」

「……今のところ大人しいものです。ボスのヴァンパイアの指示でも待っているのか、単に動かず機を伺っているのか……」


 アリサ様が声のトーンを下げて抽象的に聞いてきます。それはいまだ動きを見せない黒フードの連中の動向についてですね。


「そう、私達が街から出た事で何かしら動くのかと思ったけど……」

「慎重にならざるを得ないのでしょう……アリサ様達『聖域』の皆様に目をつけられては、迂闊な行動は命取りでしょうからね」


 流石にアリサ様達のお力を目の当たりにして、派手な行動を控えているものと思われます。ですが僕達は決して油断など出来ません。君主であるゼオンさんを狙う卑劣な輩達、彼等の好きなようにさせるつもりは毛頭ありませんよ!


「そのため、と言う訳でもありませんが、アルティレーネ様が造り変えたと仰っておられた『セリア洞窟』に現在先遣隊を派遣しています。潜伏先として利用されては敵いませんからね」

「おー! 早速行かせてみたのね? 五階層から下を結構いじったからねぇ~中々大変だと思うよん♪」


 そうイタズラっ子のように愉快気に微笑まれるアリサ様です。ふふっアルティレーネ様もそうでしたが、女神様方は僕達の想像以上にとても親しみやすいお方達ですね。まるで気心知れた朋友のように接して下さるのが、とても嬉しいです。


「前にもチラッと話したけど、五階層は完全に『安全領域(セーフティエリア)』だよ。四階層でやばくなったら逃げ込めばいいし、六階層に挑む前にしっかり休んで態勢を整えるのもよし!」

「なるほど、ですがそれですと無法者に占拠される恐れがあるのではありませんか?」


 それこそ、先に話した黒フード一味のアジトにもなりかねません。その辺りはどうお考えなのでしょう?


「大丈夫じゃないかな? 五階層には一日しかいられないようにしてあるし。時間が過ぎると強制的に『セリアベール』の南門に転移させられるからね。次に五階層に入れるのは更に一日のインターバルが必要なんだよ?」

「は、ははは……振り出しに戻されてしまうのですね?」


 苦笑いを浮かべる僕に「そういうこと~♪」と、楽し気に笑うアリサ様。五階層の『安全領域(セーフティエリア)』には様々な施設を充実させたと聞いておりましたが、それだけに不法に滞在する者が現れるのではないかと懸念していました。ですが、それは杞憂だったようですね。


「でね、六階層にはちょっとした仕掛けがあってさ。まず、死んじゃう事はないんだ。スタート地点の扉を開けると、それぞれ別々の場所に強制的に転移させられて、パーティーは分断させられるんだよね。そして、能面って言うお面を被った人形達が襲ってくるんだけど、そいつ等にはどんな攻撃も通じないのよん♪」

「ええっ!? それじゃあどうすれば良いんですか?」


 ひたすら逃げるしかないそうです……逃げて、隠れてやり過ごしたり、大きな音で誘導したりと色々と戦う以外の技術が必要になるらしく……もし、捕まってしまうと、殺されてしまうのですが、その後何事もなかったようにスタート地点に戻されるんだそうです。


「で、その徘徊してる人形達から逃げつつ、五つの宝玉を集めてゴールの台座に納めると、晴れて階層主……六階層のボスの間に続く扉が開くのだよ♪ 同時にスタート地点に戻る『転移陣(ワープポータル)』も出現するからそこでどうするか判断させるのよ」

「うわぁ~優しいのか厳しいのか……判断に迷いますね……いえ、普通のダンジョンなら、死んだらそこで終わりな分優しいのでしょうか?」


 どうやらかなり異質なダンジョンのようですね。更にお話を伺えば、階層主はSランク指定の魔物が一から二体。倒されてもスタート地点に戻るのは徘徊する人形に倒された場合のみ。七階層から先はまだ踏み込まない方が懸命と言う事でした。

 さて、『七つの光(セブンズレイ)』の皆さんには六階層の調査を、とお願いしましたが……どうなる事でしょうね?

レウィリリーネ「ん……彼等をどっかで見たなって思った人(゜ー゜*) ありがとう(*⌒∇⌒*)」

アルティレーネ「あの方達のお話なんですね♪(*´∇`)」

ティリア「そっかそっか、『悲涙の洞窟』をアルティとアリサ姉さんで造り変えたって言ってたもんね(*`▽´*)」

フォレアルーネ「しかしまた、変なダンジョン造ったもんだねぇ~?(;^∀^)」

レウィリリーネ「ん( ̄0 ̄;) 途中に豪華ホテル挟んだダンジョンなんて前代未聞(-ω-;)」

アルティレーネ「アリサお姉さまは結構普通って言ってたんですけど……( ̄▽ ̄;)」

ティリア「あー( ゜∀゜) 途中に休憩ポイントあるのは確かにゲームじゃよくあるけども(*≧∀≦)」

フォレアルーネ「今回は六階層だけなの( -_・)?」

レウィリリーネ「ん。そうみたい(・-・ )」

ティリア「十階層構造なのは変わらないのよね?(・о・)」

アルティレーネ「はい( ゜ー゜) 七階から下はちょっと……(((UωU` *)(* ´UωU)))」

フォレアルーネ「……もしかしてアルティ姉?( ̄▽ ̄;)」

ティリア「やりすぎちゃった?(゜∀゜;)」

アルティレーネ「アリサお姉さまにも「攻略させる気あるの?」って言われちゃいました(*/□\*)」

レウィリリーネ「……色々落ち着いたら再調整だね(  ̄- ̄)」

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