73話 魔女とリリカ救出作戦
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【バンシー】~何か変~《聖女view》
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「ティターニア一つ確認しておきたいんだけど……このバンシー、あんたどう思う?」
ここは『聖域』で建設中の女神の神殿内の会議室。魔女の私とユニがアイギス達を迎えに『セリアルティ王城跡地』に飛んだ後、残った私達は映像通信に映る嘆きの妖精バンシーに憑依し、アイギスの名前を呼び続けるリリカさんを、どうやって救うのか話し合っているところだ。
「バンシーとは「死を告げる妖精」ですわ……死に近しい者がいるところに現れ、その嘆きの叫びで報せるのです。まぁ、それも自分が気に入った相手に限るのですけれど……ある意味何処にでもおりましてよ? ……ですが、このように妖精が妖精に憑依されているのを見るのは初めてですわね」
どうやらバンシー自体はそう珍しい訳でもないけれど、「妖精が妖精に憑依する」と言う事については、妖精女王でも見たことがないくらいのレアケースなんだそうだ。
どうもキナ臭い……そんなに稀有なことがそう都合よく起きたりはしないだろう?
(うーん……何か、こう……作為的な何かを感じるのよね……)
私はリリカさんではなく、その宿主であるバンシーに注視する。妖精には様々な姿の者が大勢いるけど、このバンシーは何か変な感じがするんだよね。そこに『居る』のではなく、『在る』と言うか……酷く無機質な感じ。
例えるなら、そう……ヘルメットさんだ。ヘルメットさんは無機質ながらも、妖精として確かな意志と生命力に満ち溢れていて、一人の個人として認識できるんだけど、このバンシーにはそれがない。
まるで予め用意された入れ物のような……
「死を告げる妖精でっすかぁ~? んじゃなんでっす? コイツは帝国全土に「死んじゃうぞ~」とか抜かしやがってるんです?」
「冗談じゃないよアリスさん……そんなこと絶対にさせないさ。この北方大陸を平定するのには、協力してくれた『三神国』の王や武将達と一緒に苦労して成したんだ。こんなことで潰えさせてなるもんか!」
ティターニアの話を聞いたアリスが少しあきれたような、怒ったような表情で言った言葉にルヴィアスがそうはさせないと息巻く。
「私も共に! と、言いたいのですが、剣しか振るえぬこの身では邪魔になってしまいますな……」
「ビットさん。ここはルヴィアスに、妖精女王陛下、そしてアリサの嬢ちゃんとアイギスに任せましょうや」
静かに話を聞いていたビットが私達に同行したいけどって言うけど、魔法が不得手だということで辞退。うん、ここはゼオンの言う通り私達に任せておいてほしい。なにが起きるかわからない以上、護る対称は少なくしておきたいからね。
「うむ、妾達は冒険者となるべき部下の選定と、教育に訓練と動かねばならぬ故な。ここはアリサ様達にお任せじゃ。来客達にはその手伝いをしてもらおうかの?」
「人化の術も覚えねばならんからな、忙しくなる」
珠実の言う通り、『懐刀』や『四神』達には『聖域』出身の冒険者を育てあげると言う、大事な役目もあるのでそちらに注力してもらわないといけない、リンが呟いたように忙しい日々になるだろうけど、頑張ってもらいたいね。
「アリスもマスターにご一緒したいでっすけども、今は鳳凰とグリフォン達を鍛え上げる事にしまっするよぉ~♪」
《応っ! よろしく頼んますアリス様!》
《ぐわー!》《やるぜやるぜーっ!》
今回はアリスも留守番だ。先に話した冒険者の選定と育成に、『懐刀』と『四神』達が集中できるよう鳳凰とグリフォン達を鍛える役目を担ってもらう。ゼーロにレイミーア、レイヴンにユナイト達も、いつもの『聖域』のパトロールをこなしてもらいつつ、アリスに協力してもらう事になる。
《うむ! 『聖域』の事は我等に任されよアリサ殿!》
《勿論、必要あらばいつでもお喚び下さいませ!》
《例え極寒の地なれども駆け付けましょう!》
《アーグラス殿の所縁の地か、一度訪れたいものだ!》
頼もしい。ホワイトボードにみんなの役割を書き上げて行く中、鳥達とユナイトがそう言ってくれるんだけど、この猛吹雪の中飛べるかね? ユナイトは冬眠しちゃうんじゃないの? 大丈夫? まぁ、もし彼等を召喚するなら、その辺りを考慮して、場を整えてからじゃないと危ないかもしれないね。
「バルガス達聖魔霊家族は、ジャデークとネハグラ達。そして魔女がこれから連れてくる『白銀』と『黒狼』にガウスとムラーヴェの相手をしてあげて。パルモーとフェリアはケンカしちゃ駄目よ?」
「お任せ下されアリサ様。きやつらをしかと案内致しましょう!」
「け、喧嘩など致しません! なぁパルモー!?」「相手によるかな~?」
「セラさんとブレイドくんあたりが心配だわ……アリサ様。私と夫でこの子達によく言って聞かせますわね?」
聖魔霊一家には客人の案内をお願いする事にした。バルガスとネヴュラは街で一緒した間柄だし、適任だろう。パルモーとフェリアがネヴュラの懸念した通り、セラちゃんとブレイドくんの言動に怒って喧嘩になることが予想できるため、事前に話しておいてもらうのは助かる。
「あぁ、一応俺達からもフォローするようにするぜ。ラグナース、リールにフォーネもいいな?」
「ええ、お任せください」「「はいはーい♪」」
うん、ゼオンにラグナース、リールとフォーネもフォローに回ってくれるなら安心だね。
「その子達も『聖域』を拠点にするんでしょう? じゃあ、私が住む家をちょちょいと用意してあげるわ! ジャデーク、ネハグラ。後で「こんな家がいい」っての教えてちょうだい」
「そ、そこまでしていただくわけには!」
「あわわ! しゅ、主神のティリア様直々になんて」
「「恐れ多すぎますよぉーっ!?」」
ティリアが気を利かせてみんなの住まいを用意してくれるそうだ。『聖域』の設備建築に関しては、建築班のリーダーであるティリアに一任しているので任せよう。お客さんに不便を強いるなんてできないからね、だから二組夫婦達もそんなにビビらんと娘さん達みたいにわーい! って喜んでちょーだいね。
「ヘルメットに建築班のみんな~彼等の家にアホぽんの従者達の住まいを先に建てるわよ? いいわね?」
「がってんでぃっ! 聞いたな野郎どもーっ!!」
おおおぉぉーっ!!!! やってやるぜ! 儂等に任せとけぃっ!!
あわわわわ……と、とんでもないことにっ!!? って慌てふためく二組夫婦達はまぁ~うん、ほっとこう。バロード、カレン、オルファの三人は落ち着いたもので、ティリア達にお礼をしている。
でもって、アルティレーネ、レウィリリーネ、フォレアルーネ達妹はユニが戻り次第、『世界樹』に入り、帝国の『龍脈の源泉』より魔力を吸い上げる作業に当たる。
「ある意味、『聖域』を再生した時よりも大変な作業よ? 二人とも慎重に行きましょう!」
「ん……フォレアはなにかと雑だから外で状態を監視してること」
「あうちっ! 酷いよレウィリ姉~! ま~うちには確かに向いてないけどさぁ~」
いや、ホント大丈夫なのよね? 頼むわよ可愛い妹達!?
(魔女様~あぁ、いえいえぷぅ……聖女様~ワタシ達はどうしましょう~か~?)
「エスペル達モコプーはミーナ含めた子供達の護衛よ? いいわね? 絶対目を離しちゃ駄目よ?」
なんだかんだで『聖域』は危ない所が多いのだ。生息している魔物達は勿論、さっきの建築班による工事箇所、よく訓練であちこちから魔法が飛び交ったり、鳥達が落っこちてきたり、『四神』が吹っ飛んできたりする。この辺も次の議題『新しい鍛練方法』で話し合いたかったんだけどなぁ~まぁ、優先順位は大事だし仕方ないか。
(ぷぅぅ~責任重大じゃないですか!? 頑張りますねぇ~!)
「ぷぅ~♪」「プップー!」
「カインも人化の術を覚えながらでいいから、気にかけてあげてね?」
「はい! わかりましたアリサ様!」
うん。こっちの準備はこんなものだろう。リリカさんを救う手立ては私に考えがある……恐らくそのバンシーについても……
さぁ、後は魔女がアイギス達を連れてくるのを待つとしましょうか。
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【『聖域』に行く前に】~気をつけて~《魔女view》
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「──ってわけで、バルガスとネヴュラがみんなを案内してくれる事になったから。『聖域』に着いたら、ちゃんとお話聞くのよ? そして、その娘さんのフェリアちゃんは特に堅物ちゃんだから、あんまりはしゃぐと雷が落ちるからね!」
「ははは! 後はパルモーだな。ブレイドくれぇの見た目子供だけどよ、コイツもまた礼儀にうるさいぜ?」
「ホッホッ♪ 初めて『聖域』を訪れた時にやらかしおった奴の言葉は重みが違うのぅ~なぁゼルワや?」
「ほーんと! あの時はアタシも死ぬ! って思ったわよ!? このバカゼルワ!」
「そうですよ!? 今でこそ笑い話ですけどあの時は本気で寿命が縮む思いでした! 反省してくださいゼルワ!」
「そうだぞ? アリサ様が依頼書を元に戻して下さったからランクダウンも免れたんだからな?」
はい、すんませんでした……ってしょぼぼんするゼルワである。『鏡映す私・私映す鏡』による遍在存在の私……今は便宜上『聖女』って呼んでる私の事と、『聖域』で私達を待つその聖女達の様子を、この『セリアルティ王城跡地』に集結した冒険者達、アイギス率いる『白銀』と、バルドくん率いる『黒狼』に加え、冒険者ギルド職員を退職してまで私達に着いていくって豪語するガウスとムラーヴェの二人に対し、事細かに説明しておいたのだ。
今は彼等が『聖域』に渡った後どうするのか? っていう事についてを説明したところ。『氾濫』で一緒したバルガスとネヴュラが案内役なんだけど、その子供のフェリアとパルモーについては初対面になるだろうからね、一応注意したんだけど。
「……気を付けるんだぞセラ、ブレイド?」
「……ミュンルーカ……お前も……だぞ……?」
「ばば、バカ野郎! アタイだってちゃんと礼儀くらいわきまえてらぁーっ!」
「バルガスのおっちゃんの娘と息子かぁ~へへっ! 仲良くなれっかな!?」
「あらぁ~あらあら~失礼ですね! ワタシはお淑やかな僧侶ちゃんですよぉ~?」
バルドくんとデュアードくんが「特に」と、言わんばかりに三人を名指しで注意する。それに心外だ! と吠えるセラちゃんと、同じくらいの少年であるパルモーと会うのが楽しみのブレイドくん。そして何を言い出すのかしれっと自分はお淑やかなお嬢様ですよぉ~とかのたまうミュンルーカだ。
「……ふ、不安はありますけど! とにかく行ってみましょうよ! ね、シェリーさん!」
「ふ、ふふふふ……すごい、凄いわ! へ、へへ遍在存在だなんて……あああアリサ様! アリサ様はどれだけ私の心を鷲掴みなさるおつもりなのですか!? ……もう、私絶対アリサ様のお側を離れません!」
「しぇ、シェリーさん? ちょっと怖いんですけど!?」
「しっかり気を持ちませい! アリサ様も引いておられますよ!」
ううわぁ~……『黒狼』の問題児達の返事に、ミストちゃんが苦笑いしつつも話をシェリーに振ったんだけどさ、シェリーってば何か恍惚とした表情で私を見ては、メガネ光らせてじゅるりって垂らしたヨダレを拭ってるじゃないの!? 怖い! ムラーヴェの言う通り怖いし引く! ドン引き! ガウス、頑張って正気に返してあげて!
「も~なにやってるのみんなして~? ほらほらぁ~アリサおねぇちゃん! みんな待ってるんだから早く行こうよ!?」
「あ、ハイ」
そんな馬鹿なやりとりしてたらユニに「めっ!」ってされちゃった♪ 確かにいつまでも聖女達を待たせて置くわけにはいかないので、「これから飛ぶからね」って心で念じる。
私も聖女も結局のところどっちもアリサさんなので、思うだけで伝わるのだ! 普通なら頭が大混乱起こすけど、並列意志がそこんとこしっかり処理してくれるから何の問題もないんだよーん♪
「じゃあ行くよみんな!」
おおぉーっ!!
私の号令にみんなが応えるのを確認して『転移』の魔法を発動する。目的地は『聖域』の女神の神殿の会議室! そーれ!
シュシュシュシューン
「うおおおっ!? びっくりした! これが『転移』!?」
「ここが『聖域』!? なんと言う濃い魔素だ……俺達耐えられるのか?」
シュンシュンシュウーン……
私の『転移』で『セリアルティ王城跡地』から『聖域』の『世界樹』を守護するための女神の神殿の会議室に移動した冒険者達。はじめての体験に驚きの声を挙げるブレイドくん。街とは比べ物にならない魔素濃度に焦るガウス。大丈夫だよさっき渡した『浄化の指輪』ちゃんと装備してるでしょ?
「待っていたわよアリサ姉さん。そして……ようこそ、勇敢な冒険者達」
「私は『生誕』を司る創世の女神の一柱、アルティレーネ。あなた方の来訪を歓迎しましょう」
「ん。ようこそ……あたしは『調和』を司ってるレウィリリーネ。よろしく」
「オッスッス~♪ 『終焉』のフォレアルーネってのはうちの事だよ! みんなよろ~(σゝω・)σ」
なにやってんだこの妹達は? 普段は滅多に見せないクセに、ここぞとばかりに四人とも……中央後部にティリア、前列中央にアルティレーネが、左右にそれぞれレウィリリーネとフォレアルーネが少し浮遊した状態で後光を発しながらポーズを決めてカッコつけている。
「おおぉぉっ!!? 創世の三女神だけでなく、主神ティリア様までも!?」
「ああぁ……ワタシ、ワタシ……今ほど僧侶でよかったと思ったことはありません!」
そいでもってすっかり騙されてるバルドくんにミュンルーカだ。いかんいかん、さっさとこの茶番を終わらせないとね。と言うか……他のみんなは……あ~あきれて苦笑いしてるわ。
「はいはい、初対面だからって変にカッコつけてんじゃないよ妹達? それにもっと台詞考えなさいな、特にフォレア」
「あうぅっ! アリサ姉きびちーっ!!」
「だからもっとしっかりした挨拶になさいって言ったでしょうフォレア!」
「そうよ! なにがオッスッス~♪ よっ!?」
「ん……フォレアには後でお仕置きが必要。覚悟しとくように」
私が妹達に指摘をしてやると、あうーって簡単に馬脚を現し、ぎゃいぎゃい騒ぎ出す。みんな~これが妹達の素だよ~?
「……えっと、姉妹仲が良いのは……喜ばしい……んじゃ、ないか……?」
「わははは! いや~女神様って面白ぇんだなぁ~♪」
「まぁ、街でアルティレーネ様とアリサ様にお会いしていたし、映像通信でも御拝見致しましたし……」
あはは♪ って、妹達の騒ぐ姿にみんなが笑う。普段寡黙なデュアードくんも苦笑いを浮かべ、セラちゃんは大笑い。シェリーはうふふと微笑んでいる。緊張してるのはミストちゃんとガウスにムラーヴェくらいか。
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【見つめ合う二人】~腐のかほり~《聖女view》
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「さて、おふざけしてる場合じゃないわ。今は一刻も早くリリカさんを救出しなきゃね! ルヴィアス、ティターニア。そしてアイギス。私の側に来てちょうだい」
「了解ですわアリサ様! 皆、必ず私達の同朋を救い出して参りますわ! それまでちゃんと女神様達の指示に従うのですよ?」
おおーっ!! 頼みます女王陛下!! お帰りお待ちしてますぜぇーっ!!
ティターニアが元気よく私の呼び掛けに応え、妖精さん達に手を振っている。妖精さん達もノッカーくんやブラウニーちゃん達を始め、みんな今までに見たことがないくらい真剣な眼差しだ。うん、同朋を想う気持ちが強いティターニアはやっぱり慕われてるよね!
「畏まりましたアリサ様! 必ずやリリカを説得し救い出して見せます!」
そして続くのはアイギス。その瞳には必ず大切な家族を救うという揺るがぬ意志を秘めている。うん、絶対に救おうね!
「では行くか。バロード、カレン、オルファ。君達はこの『聖域』で俺達の帰りを待っていてくれ。くれぐれも女神達に迷惑をかけるなよ?」
「あんたじゃないんだから……」
「こっちのセリフよ! あんたこそアリサ様に迷惑かけないでよ!?」
「はいはい、行ってらっしゃい。皇帝らしいとこ見せてよね?」
ははは、こりゃまた手厳しいね。近衛の隊長、副隊長に魔法士団長から釘刺された皇帝陛下は思わずボリボリと頭を掻いて苦笑いだ。そして、アイギスに向き合った。
「……立派になったな、アイギスくん」
「……陛下は変わりませんね」
互い言葉は少なく、只々見つめ合う。十年の歳月はルヴィアスにとっては一瞬に過ぎないだろう。しかし『人間』であるアイギスにとっては中々に長い時間だ。
少年だったアイギスが立派に成長し、今は遥か遠い約束の友人と瓜二つのその姿……ああ、きっとルヴィアスには本当に沢山の想いが胸中駆け巡っているのだろうね?
一方でアイギスもまた、十年前の記憶にある、親身になって、なにかと気にかけてくれていた皇帝の変わらぬ姿から様々な思い出が去来していることだろう。
暫く続く無言の沈黙……なんだけど……
「え~なんですなんでっすぅ~♪ ねぇ~みゅんみゅん☆ いやですねぇ~男同士で見つめ合っちゃったりしてぇ~うぷぷ♪」
「アリスちゃん、ここはしぃーっですよぉ? きっと今お二人とも瞳で口に出せない愛を語り合っているんですからね~♥️」
「ご馳走ね! 温かく見守りましょう♪ うふふ♥️」
台無しである。
ひそひそひそ~って、アリスがミュンルーカに耳打ちして腐のオーラを匂わせると、シェリーまでそのメガネを光らせ便乗してくる始末。やめたまへよチミ達、その暗黒道は茨の道だぞ?
「違うから! 俺そう言う趣味ないから!」
「アリス殿お止めください……」
それに気付いた二人、ルヴィアスとアイギスは片やあわてて、片やあきれて全否定してくる。それに対し「ちぇ~」とかのたまうこの娘っ子等である。なにやってんだか……
「ぷっ! ははは! まぁ~謝っておきたい事とか、これまでの経緯とか話したいことは山ほどあるけどさ。今は……」
「ええ! そうですねルヴィアス様! 今は彼女を、リリカを救いだしましょう!」
あらら、お互いに吹き出して笑い合うルヴィアスとアイギスだ。なんだかんだでアリス達のふざけた会話に緊張の糸も解れたみたいだね! 内容はアレだけどいい仕事したねアリス達。……内容はアレだけどさ。
「よし! じゃあリリカさん救出作戦を開始するわよ! ユニ! アルティ、レウィリ、フォレア! 配置に着いて!」
「はーい! ユニがんばる!」
「お任せくださいアリサお姉さま!」
「ん! 必ず救ってあげてね?」
「あいよ! 大丈夫だと思うけど、ティリア姉フォローよろ~♪」
さぁ、役者は揃ったわ! 私の作戦開始の号令にユニと女神三姉妹が『世界樹』へと向かい、会議室を後にするのを見届け、私とアイギス、ルヴィアスとティターニアは手を取り合い円陣を組む。
「いい? 妹達が『聖地』の魔力を吸い上げてこの吹雪を弱めさせるから、アイギスとティターニアはその隙にリリカさんに接触して説得を試みてちょうだい」
「了解です!」「畏まりましたわ!」
『転移』する前の作戦の最終確認をする私達。この作戦の要はやはりアイギスとティターニアの二人による説得だろう。
「私とルヴィアスは、二人に絶対危害が加わらないように護りきる事を第一に動きましょう!」
「ああ、任せてくれ! こう見えて魔王のなかでも結構強いんだぜ、俺?」
その要を護りきる事が私とルヴィアスの仕事になる。ルヴィアスの能力については未知数だけど、魔神の目を掻い潜り最後までスパイとして活動したその手腕に、この広大な大陸を平定して見せたっていうその実績だけで、十分に頼りになる存在だ。
(そして……頼むわよ魔女?)
(オッケー! 十中八九「そうだ」ってことで動こう!)
前世の名残……かな? 臆病な私はこういうとき、どうしても「最悪の事態」を想像しちゃうんだよね……杞憂であってくれればいいんだけど……
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【作戦開始!】~みんなに頼る~《魔女view》
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そうして四人が『転移』で帝国へ移動して行った。私は早速リリカさんを映す映像通信を見つつ、オプションを操作。懸念される不安を確認するため彼女を鑑定するのだ。
ピコーン
『バンシー』。妖精。死期の近い親しい者がいる際に、その親類縁者達の近くに現れては、嘆き叫んで報せる者。その容姿は女性だが、見る者により、老婆であったり若い娘であったり、幼子だったりする。
おかしい……鑑定結果を見た私はその情報を訝しむ。
「嬢ちゃん、どうかしたのか? 難しい顔してるぜ?」
「何か不審な点でも発見されたのですか? どうぞご遠慮なく私達にご相談下さい」
眉間にシワをよせてむむむって唸ってると、横からゼオンとネヴュラが顔を覗き込んできた。っていうかあんた達は自由にしてていいのよ?
「バカ言うなよアリサ! アイギスの奴が頑張ってるんだぞ!? 見届けてやりてぇじゃねぇか!?」
「そう……だな……俺達も、どうなるか……気になる……」
セラちゃんとデュアードくんの言葉に顔をあげて見れば、まぁ~みんながみんな映像通信に注目しているじゃないの。ふふっ! 「お任せじゃ」なんて言ってた珠実達『懐刀』も、誰もこの会議室を離れようとしてない。
「まったく、みんな仲間思いのいい子ちゃん達なんだから! アリサさん嬉しい♪」
「それでアリサ。何か気になる事があったのかしら? 遠慮せずに私達に話してちょうだい、ユグライアに誓ったからね、いくらでも力になるわよ!」
「ふふっ! いい顔するじゃないかシェラザード。アリサ様! 私も力になりますので、どうぞ頼って下さい!」
シェラザード、ゆかり! うおお~滅茶苦茶頼もしいぞ! こうなったらみんなで相談しつつ一気にこの帝国の問題を解決しちゃおう! そうすれば、最初の予定に戻せるし!
「うん、じゃあみんなの知恵を貸してちょうだい! 私は今、このバンシーを鑑定して見たんだけどさ、その結果がこれなんだよ」
そうと決まれば早速! とばかりに、私はバンシーの鑑定結果をでかでかと別の映像通信に映し出して、『聖域』のみんなに見せる。
「普通のバンシーの鑑定結果のようですね。ギルドの研修で見た覚えがありますよアリサ様」
「おお、そう言えばジャデークは鑑定班だったな? 詳しい訳だ」
その結果を見て真っ先に答えたのはジャデーク。冒険者ギルドの鑑定班に所属していたなと、ガウスに言われたジャデークは、この結果に見覚えがあるそうだ……って、ちゃんと研修とかあんのね?
「そう、普通の結果なのがおかしいのよ。見て! こんな吹雪を起こすバンシーって普通なの?」
「そうか……確かに俺達も見たことねぇや。なぁ、妖精のみんなはどうだ?」
私の指摘にゼルワがなるほどと頷き、集まっている妖精さん達にも問いかけている。それを受けた妖精さん達は揃い顔を見合わせて、どうだ? 知ってるか? とか相談し始める。そして、一人のアルセイデスが代表して答えた。
「私達もこのようなバンシーは存じません」
「ん~ってことはよ……このバンシーって『特殊個体』って事になんじゃねぇの?」
「へぇ~ブレイドくん『特殊個体』の事知ってるんだ? 正直意外だよ。思ったより物知りじゃん?」
「あぁ~いや~俺はその特徴つーか、そう言うのがいるって聞いてただけでよ、実際に会ったことねぇんだよパル。あ、俺の事は呼び捨てでいいぜ!」
「ふふっ! オッケー、ブレイド♪ 知っているってだけでも十分だよ?」
数々の種類がいる『聖域』の妖精さん達でも、このバンシーの事は知らないそうだ。その事にブレイドくんが『特殊個体』なんじゃないかって言うんだけど……うん、私もパルモーと同じく意外だって思っちゃった。よく知ってたね? ってか、いつの間にか二人仲良くなってない?
「……いえ、やっぱりおかしいです! もしこのバンシーがブレイドの言うように『特殊個体』なら……どうして、その情報が鑑定結果に出ないんですか? どうしてリリカさんが憑依している情報が出ないんですか?」
「はっ!? そうか、その通りですよシェリーさん! アリサ様の鑑定レベルは上限突破して神クラスであるとレウィリリーネ様より聞き及んでいます!」
「そのアリサ様の鑑定が『特殊個体』や、他者が憑依している情報を見抜けぬ訳がありませぬな!」
「ああ、ビット殿の仰る通りだ……と、なれば……」
そう。自慢するわけじゃないんだけど、レウィリリーネに魔装具作りを教わっているときに、素材の鑑定とか色々とやってたんだよね。その時に私の鑑定にレウィリリーネが凄いって褒めてくれた事があるんだ。だから、結構自信あるんだよね。シェリーの気付いた言葉にオルファが補足説明しつつ相槌を打ち。なるほどと頷き合うビットにバルガスの二人。
「事情を知らん他の冒険者なら、その鑑定結果を見ようと『特殊個体』の珍しいバンシー。と、決めつけるだろうが……俺達は事情を知っているからな……」
「もしかするとリリカさん……このバンシーに「憑依している」んじゃなくて、「憑依させられてる」ってのが正しいのかもしれないね!」
「なんにせよ、このバンシーは何かがおかしいってことなんだよねアリサちゃん? それなら……」
バルドくんにフォーネとリールが何かと話し出す。そうだ、既に事情を知った私達には、この鑑定結果は違和感しかなく、疑問を抱かせるものだ。フォーネの言うように、リリカさんがバンシーに利用されているのなら助けなくてはいけない。
「何か秘密が隠されてるってことじゃない?」「真実を隠すためのカモフラージュでしょうね」
ほぼ同時、リールとサーサがその答えを導きだした。
ティリア「やっぱりもっとこう~私も翼とかハイロゥ出してさ(*`Д')」
アルティレーネ「そうですね!(*´∇`)私も出します( `Д´)/」
レウィリリーネ「ん(¬_¬)フォレアにはいっそ寝ててもらう?(,,・д・)」
フォレアルーネ「ちょーっ!?Σ(´д`*)そりゃないよぉ~o(T◇T o)」
アルティレーネ「だったら口を開かず目をつむってなさい……(-_-;)」
ティリア「さぁどうだ!( ・`ω・´)」
レウィリリーネ「……なんか、微妙?(・・;)」
フォレアルーネ「もーっ!(*`Д´*)こうなったらアリサ姉も交ぜようよ!?(ノ^∇^)ノ」
アリサ「私も!?σ(゜Д゜*)イヤよ!(>д<*)あんた達の変なポージングに巻き込まないで!( ;゜皿゜)ノシ」
ティリア「ダメでーす!( *´艸`)」
アルティレーネ「アリサお姉さま強制でーす♪(ノ≧∀≦)ノ」
レウィリリーネ「ん(゜ー゜*)拒否るなら……ユニが大変な事になる( ゜∀゜)」
フォレアルーネ「プフフ♪(((*≧艸≦)いいのぉ~アリサ姉~?(°▽°)ゆにゆにとミーにゃんが……」
アリサ「あ、あんた達!( ; ゜Д゜)ユニとミーナに何する気よ!?Σ(ノ`Д´)ノ」
ユニ「わー゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜アリサおねぇちゃん助けて~♪(/≧◇≦\)」
ミーナ「にゃぁん?(。-ω-)zzz」
ティリア「ふふふ……(*`艸´)アリサ姉さんが協力しないならぁ~(  ̄▽ ̄)」
フォレアルーネ「ゆにゆにとミーにゃんは、アフロヘアーだぁーっ!!ヽ( ゜∀゜)ノ」
アリサ「なっ、なんてことをっ!!Σ(´□`ノ)ノ」
ユニ「アフロヘアーってなぁに~(´・ω・`)?」
アルティレーネ「ご協力頂けますね?(^ー^)」
アリサ「わ、わかったわよ!( `д´)もー、さっさと終わらせるしかないわね!(≧□≦)」
ティリア「うへへ(*´艸`*)人数増えたときの構図は考えてあるのよ!(*´∇`*)私とアリサ姉さんで、こう両手を組んでカメラ目線でニッコリ(*´▽`*)」
レウィリリーネ「ユニは真ん中でミーナを抱っこして(^ー^)アルティ姉さんはユニの両肩に手を添えてね(*-ω-)」
フォレアルーネ「うちとレウィリ姉はゆにゆにの両サイド(ノ^∇^)ノそいで、こう両腕を広げて~斜め四十五度だぁ~♪ヽ(*>∇<)ノ」
アリサ「は、恥ずかしい!(*/□\*)終わらせなきゃ……はいチーズ!(*´∇`*)パシャ!」
フォーネ「あはは( ゜∀゜)アリサちゃんもユニちゃんも女神様達もいい笑顔~♪(^ー^)」
リール「ユニちゃんが抱っこしてるミーナちゃんもちゃんとこっち向いてる~♪(σ≧▽≦)σ」
ヘルメットさん「おう!(°▽°)コイツはいいぜ!ヽ( ゜∀゜)ノ建築班の野郎共ぉーっ!(*`ω´*)」
建築班「「「アイサー!(ノ≧▽≦)ノ早速像を造り上げるぜぇぇーっ!(`∀´)」」」
アリサ「ちょっ!?Σ(*゜д゜ノ)ノ像って何よ!?」




