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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
79/211

70話 行くぜ! 『聖域』

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【再びこの道】~行くぞ!~《アイギスview》

────────────────────────────


「アイギス、寝ているのか?」

「ん……あ、あぁ……済まないバルド。少しうたた寝していたようだ」

「構わん……まだ『セリアルティ王城跡地』前のキャンプ地点だ……現れる魔物もたいしたことはない」


 『セリアベール』の『氾濫(スタンピート)』を解決し、バルド達『黒狼』と元冒険者ギルドの職員だったガウスとムラーヴェと共に私達『白銀』は再び『聖域』に赴くべく旅立った。

 今は街から徒歩で約一日程進んだ先、旅人の為のキャンプ地にて一夜を明かそうと夜営の準備中だ。


「少し疲れているんじゃないか?」

「この大人数だ……無理もないが……そう……気負うな」


 寝床となるテントを準備したあと、小休止とばかり座り木に背を預け水筒の水を一口飲み、ふぅ~と一息していたらいつの間にかうとうとしていた。そんな私に心配そうに声をかけてくれるバルドとデュアード。ふむ、確かに……少し気負い過ぎかもしれない。まだ『聖域』に着いてもいない内からこれでは先が思いやられるというものだ。


「そうだな。ありがとうバルド、デュアード。皆を必ず無事に『聖域』に送り届ける……どうやら私はまたそんな大きな責任を一人で背負おうとしていたようだ」

「バッカじゃねぇのお前!? 何様だよ? 仲間をもっと頼って信じろよ!」

「あっはっは♪ セラってばキビシー! でも~ニャイギスさんは~確かにマジメ過ぎかも!」


 ガサガサ、ドサドサッ。セラとミュンルーカの二人が薪を集めて戻って来た。話が聞こえたのだろう、歯に衣着せぬ物言いでズバッと私を注意するセラ。それを可笑しそうに笑うミュンルーカが火起こし所に薪を置いた。


「ふふふっ! そうだぞ、一人で抱え込むなニャイギス♪」

「バルドまで……あの『風雲! アリス城!』が余程気に入ったのか?」

「そりゃそうだろ! サイッコーっに面白かったからな!」

「俺も……ふふっ! アイギスも楽しい事……考えろ……」


 はははは♪ ミュンルーカの言葉に笑うバルド。かつて『聖域』に滞在中に女神様達とティターニア様、アリス殿が企画したイベントに参加した私達『白銀』の様子を一部始終記録した映像を観てからと言うもの、『黒狼』の面々は『聖域』に赴くことをとても楽しみにしている。セラもデュアードもいい笑顔を見せるじゃないか。今のように私をニャイギスと呼び、からかったりしてくることも多くなったしな。


「ほっほっほ♪ 賑やかじゃのう~アイギスよこのキャンプ周囲に異常はないようじゃぞ?」

「ひぇー! 寒みぃ~! 日が落ちてくると冷え込むようになったよなぁ~」

「ふふっブレイドはちゃんと汗拭かないと駄目だよ~風邪ひいちゃうからね?」


 談笑しつつ火起こしの準備をしていると周囲警戒に出ていたドガとブレイドにミストが帰ってきた。ブレイドは夕刻のこの冷え込みに体をブルッと振るわせ、ミストから失笑を買っている。


「いよいよ冬も本格的になりつつありますね。今夜はしっかりと暖を取りましょう! アイギスさん、バルドさん周辺異常無しです」

「然り! 体調を崩したせいでレーネ様の試練が達成出来ませんでしたでは話にならんからな!」

「そうね、そんなことになったらアリサ様や女神様達に笑われてしまうわ。今夜は暖かくして寝ましょう」


 もう一組。ムラーヴェとガウス、シェリー達も戻ってくる。どうやら彼等の方も特に問題はなかったようだ。うむ、よかった。


「あ、もうみんな集まってる! ほら、急ぎましょうサーサ、ゼルワ!」

「おう! おーい! みんな異常無しかぁ~?」

「こっちは何もありませんでしたよ~!」


 続いてレイリーア、ゼルワ、サーサ達も戻り、これで全員が揃ったことになる。旅人のためにと用意されているこのキャンプ地だ。そうそう危険はないのだが、周辺を警戒しておくに越したことはないからな。グループに別けてそれぞれ見て回ってもらっていたのだ。


「ふっそう言って留守番しているお前がうたた寝していては意味もないんだが?」

「す、済まない。一息ついた事で一気に気が弛んでしまったのかもしれない」

「ははっ! いいんじゃないか? お前は普段から気を張り詰めすぎだからな、アリサみたいに弛めるとこは弛めとけよ!」


 バルドの最もな指摘に謝罪するとセラが笑いながら注意してくれる。アリサ様のように、か……うむ、そうだな。アリサ様は普段は結構のんびりと構えているが、いざというときはきっちり行動をしている。以前にも「遊びをおぼえろ」と指摘されたことだし、倣わねばな。


「アリサ様達は今頃どうされているだろうか? 我々と同じように夕飯の支度をされておられるのだろうか?」

「多分もう『セリアルティ王城跡地』だろうな~ゼオンとラグナースと一緒に復興の計画でも練ってるんじゃねぇか?」

「そして『中継基地(サテライトハウス)』で一泊でしょうね」


 ムラーヴェが北の空を見上げ呟いた言葉にゼルワとサーサが答える。確かに空を駆けるペガサスのカイン殿にアリサ様、アルティレーネ様、アリス殿も皆空を飛んでの移動だからな。私達の倍は移動しているだろう。


「旅先でもベッドで寝れるのは羨ましいわよね~それにアリサ様の手料理もついてくるのよ?」

「マジかよ! 最高じゃんかそれ!? アリサ姉ちゃんホントすげぇな!」

「サーサよアリサ様の『中継基地(サテライトハウス)』はヌシ等の『魔導船』を参考にしたと言っておったじゃろう? なんぞ似たようなの作れんもんかのぅ?」

「無茶苦茶言わないで下さいドガ。『魔導船』だって里の者達が何代にも渡ってようやく完成した物なんですよ?」


 レイリーアの捕捉説明にブレイドが驚く。無理もない、携帯可能な家など前代未聞だからな。

 『聖域』の内海を渡る為の『魔導船』は確かにサーサとゼルワのエルフ達の里の秘宝と言う話だった。その秘宝を一目見ただけで模倣して見せたアリサ様。改めて考えれば、まさに神の御業と言えよう。


「どうせドガさんの事ですから、それがあれば旅先でもお酒が飲めるのに~とか思ったんでしょう~?」

「ほっほっほ♪ 察しがいいのうミュンルーカよ! その通りじゃ! 儂も冒険は好きじゃが如何せん酒が飲めん事も多いでなぁ~」


わははははっ!!!


 なんともドガらしい理由に皆は声をあげて笑ったのだった。


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【あったかい】~なめこのお味噌汁~《サーサview》

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「いーい? みんなの分のお弁当だけど、状態保存の魔法をかけておくから。ちゃんと一つ蓋開けたら食べきるのよ?」

「はい! アリサ様!」

「またそんな高度な魔法をなんとはなしに……むぅぅ、私も必ず使えるようになって見せます!」


 旅に出る前の『白銀』の『(ホーム)』のキッチンで、私とアイギスはいつもの様に、お料理をされるアリサ様のお手伝いをしていました。『白銀』のみんなも、『黒狼』のみんなも揃って旅の道中、アリサ様のお弁当を食べたい! と、もう~わがままに正直におねだりしたのです。私は遠慮しなさいって言いましたよ!? 本当は食べたいですけれど、こんな大人数のお弁当を作っていただくなんて……大変な手間ですよ!? それなのにみんなときたら……


「サーサは優しいね♪ そんなに気にしなくても大丈夫だよ? 手間で考えるならそんなに変わらないし、作る方も楽しいからさ!」


 あぁぁ……もう、なんてお優しいんでしょう! アリサ様大好きです!


「一応十四人の三食分、四十二食のお弁当だけど一人三個づつ持てばそんなに荷物にならないよね?」

「うおおぉ……あ、アリサ様、よんじゅうにって……こうして並べると凄い数です!」

「私達もうアリサ様に頭が上がりません! 絶対足向けて寝れない……」


 そうして全員の分のお弁当をご用意下さって、微笑むアリサ様が私にはもう、慈愛の女神様に見えて仕方ありません!


「大袈裟だっつーの……スラムでみんなに串焼き作った時より楽だよ? で、話を戻すけど、一個一個に状態保存の魔法かけてあるんだけど、お弁当の蓋を開けるとその魔法が切れるから注意するようにね?」

「では、旅先でアリサ様の手作りのお弁当が出来立てで食べられる! と言うことですか!?」

「こ、これは嬉しい! 重ね重ねお礼申し上げますアリサ様!」


 なんて嬉しい! アリサ様の手作りのお弁当を旅先の景観の良い場所で、みんなでワイワイしながら食べるなんて素敵な事も出来そうですね♪ しかもホカホカの温かい出来立てです!


「いいねそれ♪ 色々落ち着いたら実際にやってみようよ。んで、もう一つ試してもらいたいのがあるんだ!」


 そうして私達にアリサ様がお渡しになられたのが……


「これです!」


 じゃじゃーん! そんな回想を挟み、私がバッグから取り出したりますはっ!


「……サーサ……この四角い……か、紙……は、なんだ?」

「ふんふん……なんかミソの匂いすんな?」


 キャンプ地周辺の警戒も済んで、夜営の準備も万全。ですので、ここでアリサ様のお弁当をみんなで食べようとなりました! そこでアリサ様から試してほしいと渡された物をみんなに配ったところです。

 デュアードさんとゼルワが配られた、その包装紙に包まれた四角い塊を、手のひらで転がしてみたり、匂いを嗅いでみたりしています。


「うん、私も未だに信じられないんだが……このくらいの椀に、この包装紙を剥がして中身を入れるだろう? そして……」

「茶色い塊が出てきましたね? 味噌と言う調味料を固めたのかしら?」

「でもシェリーさん、これすごく軽いですよ?」


 アイギスが手に持ったお椀にその四角い中身を入れて、焚き火にかけて沸かしていたお湯の入ったケトルに手を伸ばします。その様子をまじまじと観察している他の面々。そんななか、シェリーとミストちゃんが特に興味津々の様子ですね♪


「お湯をこう注いでかき混ぜれば……」


お、おお!? おおおおーっ!!


「すげぇ! ミソスープじゃねぇか!?」

「なんとぉーっ!? これは素晴らしい!」

「マジかよ……こんな小せぇ塊が湯を注いだだけでスープになっちまうなんて!」


 ブレイド、ガウス、ゼルワが立て続けに驚愕の声をあげます。様子を伺っていた他のみんなも、それはそれは大層驚いていますよ。私もホント信じられないくらいです!


「ゼルワ、ミソスープ好きだろう? 飲んでみてくれ」

「良いのか? サンキュー♪ ずっ……んんっ! うめぇ~俺の好きな、なめこのミソスープじゃねぇか! このとろとろちゅるんでコリっとしたのがいいんだよなぁ~あったけぇ~♪」


 アイギスからそのミソスープを受け取ったゼルワが嬉しそうにスープを口に含み、味わっては、ほぅ~とため息。以前『聖域』でアリサ様が作って下さった「なめこ」と呼ばれるキノコのみを具としたスープです。「なめこ」が持つぬめりが味噌と絡み合って少しとろみのあるそのスープは保温性が高く、この寒い時期には嬉しい限り♪


「アリサ様は「ほんとは『豆腐』もいれたいけどね」って仰ってましたよ? なんでしょうね『豆腐』って?」

「はぁ~美味しい♪ 私もこのなめこ好きかも!」

「温まる……アリサ様の知識は深いな……その『豆腐』もいずれ……見つけるだろう……楽しみだ……」

「弁当! 弁当食おうぜ! あぁ~腹減ったぁ~!」


 聞いた話ですと『豆腐』というものがあればそれも具に入れたかったって仰っていました。これも豆から作られるそうですけれど私達は聞いたことないです。

 シェリーが美味しそうになめこのミソスープを飲んで顔を綻ばせています、好みに合ったようですね! デュアードさんとセラもそんな彼女に倣うように一口。デュアードさんはアリサ様の知識の深さに感心してるようです、本当にそうですね。『豆腐』があればまた色んな料理ができるのに~とも仰ってましたし……今でも沢山美味しい料理を作られていますのに、まだまだあるとか! あぁ、本当に凄いですアリサ様!


「ああ、俺達の厚かましいお願いに応えて下さったアリサ殿に感謝していただこう!」

「あはは! バルドの言う通りだね~って、うわぁ~♪ ほっかほか!」

「おおーっ! 本当に出来立てだ! なんとうまそうな匂い!」

「うむっ! まさか旅に出てこのようなご馳走を頂けるとは夢にも思っていなかった!」


 パカッ! ほわぁ~ん……待ちきれない! って言わんばかりのセラに触発されて、私達はみんなで、アリサ様から頂いたお弁当箱の蓋を開けました! 出来立てのお料理の美味しそうな香りが湯気と一緒に私達の鼻腔をくすぐります。


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【アタイ達に出来ること】~何かないか?~《セラview》

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「なぁ~みんなアリサの事好き?」


 アタイはアリサが作ってくれたお肉たっぷり弁当を食べながらみんなに聞いてみる。ってか、この弁当マジでうまいなぁ~♪


「どうしたんじゃセラ? 藪から棒じゃのぅ~勿論好いておるぞ? アリサ様ほどお優しく楽しい方は他におらぬじゃろうしなぁ~♪」

「だな! 俺もアリサの姉ちゃん大好きだぜ! おっぱいでっけぇし!」

「もうっ! 何言ってるのブレイドは!? でも、えへへ♪ 私もアリサ様大好きです♪ ぎゅってされると、小さい頃死んじゃったお母さんのぬくもりを思い出しちゃいます」

「同じ女としても、その人間性にもご尊敬しているわ! 寧ろ大ファンよ!」


 はは! アタイのとりとめない質問にみんな笑って答える。その答えは頷けるもんばっかだ。

 ドガはアリサの優しさと楽しさを、ブレイドはそのスタイルに、ミストは母性に、シェリーは性格に……うーん、やっぱそうだよなぁ~アリサの悪いとこなんて見つける方が難しいよなぁ~?


「セラ、その質問の意図はなんだ? 何か思うところがあるのか?」

「ん? ああ、いやな……」


 バルドがアタイがそんな事聞いてきた理由がわからず、質問してきた。うーん、なんて言ったもんかな……


「なんかさぁ、アリサの奴時々すげぇ寂しそうな表情するときあんだよ……その姿が、何て言うか……儚げでさ……どうしたんだよって聞くに聞けねぇ雰囲気でさ……」

「…………」


 あ、やべ……みんな押し黙っちまった! 美味い弁当食ってる時にする話じゃなかったぜ!


「アリサ様は転生者と聞き及んでおります。この世界と転生前の世界との……様々な『違い』を思い、憂いたりもするでしょう」


 ムラーヴェ、うん……やっぱそうなのかな? アタイもチラっと聞いただけなんだけど、アリサは転生前の記憶が一部残ってるって言ってたんだよなぁ……その中にはきっと辛い記憶もあるんだろうなぁ……


「然り……今を見、過去に想う……ああっ! 俺もあの時馬鹿な事を言わなければ今頃彼女が出来ていたかもしれんのに!!」

「ぶっ! はははっ! なんだよガウス~? お前昔なんかやらかしたのかよ!?」


 おぉ? ガウスお前、わざわざ自分の恥ずかしい過去の失敗を笑い話にしてくれんのか? 済まねぇなぁ~アタイの迂闊発言のフォローしてくれて。ゼルワもこの少し暗くなっちまった空気を吹き飛ばそうと大声で笑い出す。


「アリサ様のあの決して傲らず、謙虚な姿勢は過去の辛い経験から学んだものだと言う話だ。誰よりも痛みや、悲しみ、辛さを知っておられる故にあの慈愛がある」

「そうね。だからこそ、女神様達に選ばれたんだわ……うん、これは凄く美味しいお弁当ね! アタシはそんなアリサ様が大好きよ?」

「私もです! 過去にお辛い目に合われたと言うアリサ様……私は全力でアリサ様が幸せでいられるように頑張りたい……」

「それが散々世話になった俺達なりの恩返しだ」

「その通りじゃ。アイギスの腕を治してもらったばかりか、妻や朋友のいる街まで救ってもろうた……儂等はこの大恩を生涯をかけてアリサ様にお返しするつもりじゃよ」


 お前ら……アイギス、レイリーア、サーサにゼルワ、ドガ。『白銀』のみんなが力強く頷く。以前腕を失って、なんとかしようって『聖域』に渡って、アリサに助けられて……アタイ達も同じだよな。『氾濫(スタンピート)』でどんだけ助けられたか……アリサ達がいなかったらアタイ達はおろか街も絶対ぶっ壊されてたはずだ。そんなアリサが悲しげな表情を見せた時、アタイは……


「アタイはそん時すげぇなんかしてやりたいって気持ちになったんだ! 一番頑張ってくれたアリサにあんな顔させたくねぇ! なぁアイギス! アタイ達はアリサに何がしてやれっかな?」

「セラ……そうだな! やはり大前提となるのは私達全員。無事で、元気な姿で『聖域』の『世界樹(ユグドラシル)』まで辿り着くことだろう!」


 気付けばアタイはアイギスに……いや、みんなに向かって叫んでた。だってホントにそう思うんだもん! アイギスは一瞬驚いたような表情を見せるけど、すぐに嬉しそうに力強く、全員の元気な姿を見せてやる事だって言った!


「ああ! そうだな! そして俺達は更に力をつけ、アリサ殿に頼られるような存在になろう!」

「応! 俺はやるぜぇーっ! へへっ! アリサ姉ちゃんに『剣聖剣技』教えてもらっていつかアイギスさんやバルドさんよか強くなって見せるぜ!」


 おおっ! バルドにブレイドも燃えてんな! そうだぜ! バルガスのおっちゃんもネヴュラもみんな強ぇのなんのだった、それでもまだまだ足りねぇって珠実様も言ってた! 死に物狂いでやってやろうじゃねぇか!


「……俺達は皆……同じ想いだ……案ずるなセラ……」

「然り! デュアードさんの言う通りであります!」

「俺達も頑張らないとな……皆さんのような実力を身に付けるのは難しくても、やれることはあるはずなんだ」


 デュアード、ガウス、ムラーヴェ! そっか、やっぱそうだよな! アリサの力になってやりてぇよな!? ムラーヴェの言う通り戦闘力だけじゃなくて、もっと色んな方法で力になれることってあるよ!


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【意味わからん】~不思議な製法~《バルドview》

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「そうね、その為にも実際に『聖域』の魔物と戦った経験のある『白銀』の皆の意見を聞きながら、陣形等をどうするか決めて行きましょう!」

「防衛戦ではアリサ様の『聖なる祝福(セイクリッドブレス)』のおかげでなんとか戦えましたけど、今回はそれがありませんからね……」


 アリサ殿のために何かしたい。セラのそんな想いに俺達は皆同じ気持ちを抱いている。それを成す為の一歩に、アルティレーネ様が課した試練を果たさねばならない。全員が無事に『聖域』の『世界樹(ユグドラシル)』まで辿り着き、元気な姿をお見せせねば! それには今シェリーが話したように先達であるアイギス達から詳しい話を聞いて、立てられる対策は立てておこう。ミストの指摘通り、今回はアリサ殿の支援はないのだから。


「はぁ~……美味いのぅ。うむ、まぁまぁ待たぬか。若い者はせっかちでいかん、折角のアリサ様の心尽くしの弁当にミソスープじゃ。しっかり味わって食わねばならんぞい?」

「だな。『聖域』は逃げやしねぇぜ、それにまだ夕暮れだ。今はこの弁当とミソスープを堪能しようぜ?」


 ドガとゼルワが気持ち逸る俺達に対し、ズズズっとミソスープを飲んで、時間はまだあると言う。ふむ……そうだな、デールも以前「焦りはミスを生む」と教えてくれていたし、二人の言うようにこの弁当をしっかり食わねば勿体ないのも確か。


「そうですよぉ~♪ あぁ~玉子焼き美味しい~♥️」

「ズズッ……はぁ~あったまるぜぇ、このキノコのちゅるんって口に入って、こうちょっとプリプリした歯ごたえもまた面白ぇし、うめぇや♪」

「……気に、なったんだが……このスープの……あの塊……アリサ様は……どうやって作った……サーサ?」


 それはごもっとも~とミュンルーカが玉子焼きにフォークを差して、美味しそうに食べ始める。うん、俺も食べよう。冷めてしまっても美味いだろうが、折角アリサ殿が状態保存の魔法までかけて出来立てを用意して下さったのだからな。

 なめこのミソスープを飲むブレイドがその美味しさに感心していると、デュアードがこのスープの元の塊の製法を気にしだし、サーサに問う。


「えっと確か……なんとかかんとか製法って言ってました!」

「いや、わかんないわよサーサ。何よそれ♪」


 ふはははっ! なんとかかんとかってなんだサーサ! 思わずスープを吹き出すところだったじゃないか!? レイリーアも他のみんなも笑っているぞ?


「サーサはあの時、アリサ様から味見を仰せつかっていてな……作られる料理に恍惚としていて聞き逃したんだろう。『フリーズドライ製法』と言うらしいぞ?」


 アイギスが苦笑いしつつ、その時の状況を説明する。


「と言っても、私にも正直難しくて殆ど理解出来なかったんだが……なんでも、魔法で急激に冷して凍らせて。げ、減圧だったか? 真空状態だったかな? すると水分が水蒸気になって飛んで乾燥する……らしい」


 ん? んんん?? いや、済まんアイギス……折角説明してくれて悪いんだが……何を言ってるかさっぱりわからん……


「そ、そんな製法があるんですね!? あぁっ!! アリサ様の叡智! なんて素晴らしいのかしら! 早く『聖域』で教えを請いたいわっ!!」

「シェリーさん落ち着いてぇ~!」


 シェリーは今の説明で理解出来たのか? 流石は魔法使いと言ったところだな。ただ、あの知識欲旺盛なところは若干引くが……


「さ、さっぱり意味がわからないですね……まぁ、流石はアリサ様! と言うことですね!」

「しかし惜しい! この技術が広まれば保存食の世界に革命が起きたであろうに……」

「然り……この……ミソスープ……また飲みたかったのに……」

「あはは♪ デュアードってば、ガウスさんの口癖真似て~お茶目さん!」


 た、確かに! 流石はアリサ殿だ! ガウスが残念そうに言った一言にムラーヴェと同じ感想を抱いた俺。もしこれが保存食として広まれば、俺達冒険者の活動にも大きな影響が出るだろう! デュアードもまた飲みたいと思うように、リピーターが続出するぞ。


「うーん……出来なくはないかもしれませんよ? 簡単に言っちゃえば、一気に凍らせて、何か容器に入れて空気をギュンギュン引っ張ってやればいいんですから。シェリーの言うように『聖域』でアリサ様に教えを受けて研究すれば、きっと世に広める事も、そう遠くないはずです!」


 なんだって! それは凄いぞ!? サーサの言った事で益々保存食革命が現実味を帯びて来たではないか! その衝撃的なニュースに俺達は皆嬉しくなり破願する!


「むふふ♪ 実はミソスープだけじゃなくてトマトスープにコンソメスープも預かっているんです! 沢山ありますから明日の朝食に頂きましょうね♪」


マジかよぉ~♪ ヤッホォォーウッ!!


 くぅっ! なんて嬉しい朗報! 他にもあるのかサーサ!? これには全員が大喜びの歓声を挙げる! 俺も今から明日の朝食が楽しみだ! なんせ今まではただ塩に適当に野菜を入れただけの味気無いスープだけだったのだからな!


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【輪形陣】~りんけいじ~ん♪~《アイギスview》

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「基本は輪形陣だ。中央にサーサとミュンルーカの二人、中衛としてパーティー全体の把握に努めてほしい。その四隅、前方をガウスとムラーヴェ、後方をミストとシェリー」


 ガリガリ。私は木の枝を使って地面に丸を描いて『聖域』を進む為の陣形を示して行く。基本的にラグナースを護衛したときの陣形をアレンジする形になるだろうと思っての提案だ。


「なるほどなるほど~ワタシ達が輪形の中央ですね?」

「中衛の役目まっとうして見せます!」

「フォローは任せてちょうだい! ね、ミスト?」

「はい! 頑張ります!」

「ふむ、我等は陣を抜けて来た魔物を足止めする役目ですな!」

「だな! 俺達が足止めして、魔法で倒してもらう形になるな」


 サーサは元より私達『白銀』の中衛。ミュンルーカとシェリー、そして見習いだがミストもその役割についているとバルドから聞いたからな。ガウスとムラーヴェには万が一陣の外輪を抜けてくる魔物がいた場合の足止め役を担ってもらう、倒す必要はない、サーサ達スペルユーザーに近付けさせないようにしてもらうことが大事だ。


「そして外輪だが、最後尾にゼルワ、その前方にレイリーアを配置する。この大人数での移動で最も恐れるのは背後からの奇襲だ。索敵に長けた『斥候(ローグ)』のゼルワと、負けず劣らずの『弓士(アーチャー)』のレイリーアがいれば安心だろう?」


 先に描いた六つの円の後ろに並べるように、追加で二つ丸を書き加える。


「ああ、了解だぜアイギス!」

「任せなさい! アタシとゼルワがいれば不意討ちなんて絶対させないから!」


 ああっ! 頼もしいぞ二人共! これまで何度も二人のその索敵能力には助けられて来た、その実績は絶対的な信用がある。


「俺達にも索敵に長けたメンバーがいればな……済まないが宜しく頼むゼルワ、レイリーア」

「アタイ達はとにかく火力重視の面子だかんなぁ~ははは♪」


 バルド達『黒狼』は剣士、騎士、戦士、魔法使いと戦場では花形となる面々が揃っており、『氾濫(スタンピート)』の際にはその圧倒的な火力で大層目立っていたものだ。だが、ダンジョンの探索や各地での冒険では何度か罠に掛かったり、魔物の不意討ちを受けたりもしていたりする。


「そんなセラとブレイドはここだ」

「お、アタイとブレイドは外輪の後方か。アタイが上の方……シェリーとレイリーアの間の上ね! オッケー、シェリーとレイリーアを守ればいいんだな!?」

「逆に俺は下の方だな! ミストとレイリーア姉ちゃんの間の下!」

「アタシはセラとゼルワに守ってもらうから、おっぱいブレイドくんはちゃんと彼女を守るのよ~♪」


 その呼び方止めてくれよぉーっ! と、騒ぐブレイドはまぁ、置いておき。


「ドガとバルドは外輪上下についてくれ、不意討ちは何も背後からだけじゃない、陣の横っ腹を叩かれる可能性もあるからな。ドガのタフネスにバルドの火力で食い止めてもらいたい」


 俯瞰で見たその陣形が徐々に完成の形に近付いて行く。外輪を埋めるのはドガとバルド。常に前衛で魔物と正面切って向き合う猛者の二人任せる。


「儂が最上部じゃな! 腕がなるのう!」

「ああ、この位置ならブレイドのフォローにも回れるな。いいだろう任せろ!」


 そして残すは……


「私とデュアードはここだ。最前列に私が、そのすぐ後ろにデュアード。同じ騎士として皆を全力で守りきるぞ!」

「いいだろう……望むところ……!」


 完成だ。私達は地面に描いたその陣形を皆で確認しあう。


────────────────────────────

             ドガ

←進行方向                セラ

            ムラーヴェ シェリー

 アイギス デュアード サーサ ミュンルーカ レイリーア ゼルワ

            ガウス ミスト

                     ブレイド

             バルド

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「悪くない。後は明日実際にこの陣形を試してみようじゃないか」


 おおーっ! 皆がバルドの声に応える。ふむ、特に反対意見は出なかったか。それをよしとするべきか否か、これは明日、実際に試して見てからだな。

 その後私達は、皆でテントを設営し、就寝まで各々自由な時間を過ごした。

 その夜……


「確かに、昼間にうたた寝してしまったのは事実だがなぁ~」

「ホッホッホ! 皆揃ってお主を名指しで見張りにご指名じゃったなぁ~♪ ある意味息が合っておるとも解釈できようぞ?」


 そうなのだ……夜の見張りを決める際、皆揃って「昼寝してたお前がやれ!」と言って来たのだ。事実なので何も反論出来ず、私は首を縦に振るしかなかった。


「なぁに、いつもやっとる事じゃろう? ちゃんと交代交代なんじゃからなっと、むぉぉ~夜風が冷たいのぅ~!?」

「まぁ、そうだがな……しかしドガは相変わらず寒いのが苦手か?」


 見張りに付き合ってくれているドガが吹く北風の冷たさに身を震わせる。確かにこの時期の夜風は身を切るような冷たさだ、冬も本格的に近付いて来ている……雪もそろそろ降り始めるかもしれないな。


「おぬしは平気そうじゃのぅ?」

「ん? ああ、私は元々北国の産まれだからな……ふっ、私の故郷の寒さはこんなものではないぞ? 今なら既に雪が降っているだろうしな」


 うえぇ~イヤじゃのう~!? 私の話に面白いくらいのしかめっ面を見せるドガに、気をよくした私は思わず笑ってしまう。


「あまり、いい思い出があるわけではないが……この時期になるとどうしても郷愁の念に駆られるものだな……」

「儂は南の暖かい……いや、熱いかの? とこの出じゃからなぁ~老骨にも染みるこの寒さは堪えるわい! あぁ~『聖域』で熱い風呂に浸かりたいのぅ~して、ぬしは北とな?」

「ああ、『ルヴィアス魔導帝国』だよ……」


 今は戻れぬ私の故郷を想い、私は北の空を見上げた。

セラ「お肉たっぷり弁当サイコー♪《*≧∀≦》」

レイリーア「あら~(・о・)ミニハンバーグにミートボール、味違いの焼き肉にメンチカツ……ホントにお肉いっぱいね(*´∇`)」

セラ「だろーっ!( ゜∀゜)お肉たっぷりでって頼んだかんな!(*`艸´)」

シェリー「もう!(*`エ´)セラってば、アリサ様がお優しいからって甘えすぎよ!?(。・`з・)ノ」

セラ「いいじゃねっかよ~!(`ヘ´)それよか聞いてくれよ!(*`Д´*)アタイさ、ブロッコリー嫌だって言ったのに、アリサのヤツちゃっかり入れてるんだぜ!?( `□´)」

サーサ「ああ、セラ(゜ー゜*)そのブロッコリーですけど、アリサ様は『マヨネーズ』をかけて食べるようにって仰ってましたよ?(*´∇`)ほら、そのクリームみたいなやつ(*^-^)」

セラ「『まよねぇずぅ』~?( -_・)こんなんでアタイのブロッコリー嫌いが治るもんかよ!?(`□´)」

アイギス「まぁまぁ( ´ー`)騙されたと思ってそのマヨネーズをつけて食べてみてくれセラ(°▽°)」

セラ「むぅ~しょうがねぇなぁ(-_-;)こうフォークでぶっ刺して、この『まよねぇず』をチョイチョイって付けて……あむちょ!((゜□゜;))うおぉっ!?」

ブレイド「ど、どうしたんだよセラの姉ちゃん!(;゜д゜)不味かったのか?(;´A`)」

セラ「すげぇウマイ!(ノ゜Д゜)ノ」

ブレイド「ほ、ホントかよ!?Σ( ゜Д゜)俺の弁当にも入ってっから食ってみるぜ!(^ー^)」

デュアード「……あ、俺のにも……入ってる( ゜ー゜)んぐんぐ……!!ヽ(゜д゜ヽ)(ノ゜д゜)ノ!!」

ブレイド「すげぇぇーっ!ヽ(*≧ω≦)ノうんめぇ~♪」

ミュンルーカ「あらぁ~(*´▽`*)野菜嫌いのセラとブレイドがとっても嬉しそうにお野菜食べてますよ~( *´艸`)」

シェリー「デュアード、美味しいのはわかったから踊らなくていいわよ(^_^;)」

ムラーヴェ「うおおぉ!(;Д;)こうしてアリサ様の手料理が食べられるとは!( ゜Д゜)生きててよかった!(*`ω´*)」

ガウス「大袈裟な(^_^;)と、言いたいが……確かにこのような美味な食事は生まれて初めてだからな(゜ー゜)(。_。)」

ゼルワ「ハハハ(´▽`*)俺等も初めてアリサ様の料理食った時は、そりゃあたまげたもんだぜ!(^ー^)」

ドガ「そうじゃのう~( ´ー`)はて、ミストや、じっと弁当を見つめてどうしたんじゃ(・_・?)食わんのか?」

ミスト「い、いえ!( 。゜Д゜。)その……お弁当がネコちゃんなんです!(ノ゜Д゜)ノ」

バルド「ほう、これは見事な!(*´∇`*)食材でネコを描いたのか( ^ω^ )」

ミスト「うぅ~(>_<")かわいくて食べられないよぉ~( ;∀;)」

レイリーア「あはは(*´∇`)気持ちはわかるけど、食べずに残しちゃったらアリサ様が悲しむわよぉ~ミストちゃん?(^_^;)」

ミスト「うう~(・´ω`・)仕方ないです……えいっあむぅ!o(T□T)oふわぁ~美味しいぃ~(*´Д`*)」

アイギス「ふふ( ´ー`)さて、私もアリサ様に感謝して頂くとしよう(。-人-。)なっ!?Σ(O_O;)こ、これは!?」

バルド「どうしたアイギス(-ω- ?)貴様の弁当もネコだったのか?( ^ω^)」

ミュンルーカ「どれどれ~あらっ!(’-’*)♪」

サーサ「わぁ~(≧▽≦)ハートが沢山♥️O(≧∇≦)O」

ゼルワ「おぉ~(  ̄▽ ̄)愛されてんなぁ~アイギスよぉ~えぇ、おいぃ~?(*>ω<*)σ)Д`*)ゞ」

アイギス「つ、つつくなゼルワ(〃 ̄ー ̄〃)しかしこのハート、玉子焼きを楕円に作って、斜めに切ってひっくり返したのか……(・о・)」

レイリーア「いいわねこれ!(*´∇`)アタシもアリサ様に教えてもらって、ダーリンに作ってあげたいわ♪ヽ(´▽`)/」

デュアード「ライスの……上の、ハート……肉か……('_'?)」

アイギス「鶏肉らしいぞ( ゜ー゜)確か『そぼろ』と仰っていたな(´・∀・`)」

ミスト「私も『聖域』に着いたらアリサ様からお料理教えてもらいたくなっちゃいました( *´艸`)」


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