閑話 風雲! アリス城! ~弐~
アリサ「はい!( ^ω^ )新春特別番組二日目だよ♪ヽ(*´∀`)ノ」
ティリア「続き続き~!ヽ(*≧ω≦)ノ」
ユニ「アイギスのおにぃちゃん達頑張れ~♪゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜」
アルティレーネ「彼等は無事に第一関門をクリアできるでしょうか?(^ー^)」
フォレアルーネ「レウィリ姉の作ったエアもっちカノンが火を吹くぜぇ~♪(*´∇`*)」
レウィリリーネ「まだまだ関門は続く♪(*⌒∇⌒*)」
みんな「さぁ~ご覧あれ~♪(ノ≧▽≦)ノ」
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【流石リーダー】~第一関門突破!~《レイリーアview》
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「安心しろドガ! お前の無念。この私が晴らそう! 次は私が行く、サーサ、レイリーア、ゼルワはその後に続いてくれ!」
いや、だからアイギス。ドガは死んでないからね? 単にお酒もらえないから拗ねてるだけよ? アタシが呆れているのもお構いなしにアイギスはサーサから『浮遊補助』を掛けてもらって、すいすいとロープを登って行く。
「おぉーっと! 次の挑戦者はむっつりん騎士ことアイギスのようだぁーっ! しかぁーし! どうする『白銀』リーダー! 上空にはゼーロ様達が率いるグリフォン軍団が待ち構えているぞぉぉーっ!!?」
いちいちやかましいわね、あの司会のエルフ。まぁ、アイツが騒ぐ度に場が盛り上がってるからそう言うお仕事なんでしょうけど。でも、アイギスには何か策があるのかしら? 自信満々に登って行ったけど……
「レイリーア、私達も『浮遊補助』をかけた状態で待機しましょう! きっとアイギスなら突破口を開きます!」
「そうね、ここはリーダーを信じましょうか!」
サーサがそう言って私に『浮遊補助』を掛けて来たわ。これでアタシ達も直ぐに登れるようになった。さぁ、信じてるわよアイギス!
中継のゼルワと声を掛け合ったアイギスは迷うことなく、てっぺんに辿り着いた!
《来やがったなこんにゃろめぇーっ!》《オラオラーっ!》
《ふはは、落ちるがよい!》《そう易々とは通しませんよ!》《さぁ、一斉射開始!》
ポポポポーンッッ!!!
「なんの! 迫る攻撃の正体が判明した今! 私を退けることはかないません! はぁぁぁーっ!!」
バシバシビシィパシィ!!!
登りきると同時、ゼーロさん達から一斉にアイギスに向けて放たれる『エアもっちカノン』! しかしアイギスは動じることなく剣を抜き放ち、素早い剣捌きでその砲弾を弾き、反らし、時に盾でも同じことを繰り返し耐えている!
「これはスゴォォーイ!! なんとアイギス! 迫る無数の砲撃を悉く弾き返しているぞ! この『聖域』に来た頃とは段違いの動きだぁぁーっっ!!」
わああぁぁぁぁーっっ!!!!
「やるじゃないアイギス! サーサ! 今のうちよ!」
「ええ! 行きましょうレイリーア!」
これなら行ける! そう判断したアタシとサーサはすかさずゼルワが用意したロープを登り始める!
「もう一本垂らすぞ! 同時に登ってこい二人とも!」
ナイス! ゼルワも今が好機と思ったんだろう、迷うことなくロープをもう一本バンカーパイルから垂らし、アタシとサーサが同時に登れるようにしてくれたわ!
カチカチカチッ……
《おわぁ!? なんてこった充填が切れやがった!》《くっそ! こっちもだ!》
《むぅぅ、なんたることだ!?》《ここで弾切れ!?》
上空を飛ぶゼーロさんにグリフォン達が慌て出したわ! 一体何があったの!? あ、もしかして弾切れ起こしたのかしら! だとしたらチャンスよ!
「今だみんな、攻撃が止んだ! ゼーロ殿達の攻撃には溜めが発生しているぞ!」
「おっしゃぁ! 一番乗りってなぁ!」
「アタシ達も」「いっきまーぁぁーす!!」
ヒョイヒョイヒョイーッ!!
「お見事ぉぉぉーっ!!! クリアクリアだぁぁーっ!! アイギスのファインプレーが光ったぞぉぉ! ドガと言う尊い犠牲を出しつつもアイギス、ゼルワ、サーサ、レイリーアがこの第一関門を突破したぁぁぁーっ!!」
うおおぉぉぉーっ!!! やるじゃねぇか! 見直したぞお前ら~!
アタシ達はゼーロさん達の妨害の手が弛んだその隙を逃さず、無事に城壁を乗り越える事に成功したわ! さぁ、後残す関門は四つ! どーんと来なさいよ!
だんだんとこの催しを楽しく思っている自分を自覚しつつ、アタシ達は次の関門に向けて走り出す!
「いやぁ~なかなかに見応えのある第一関門でした! それではここで解説の珠実様からお言葉を頂きましょう! 如何でしたか珠実様?」
「ふはははは♪ 愉快愉快! 実に面白い催しじゃのぅ~ぷふふっ! このドガめの吹き飛ばされるしーんは何度見ても、わははははっ!!」
「おぉ~ん! 珠実様、そんなに笑わんで下されぇ、儂泣きそうじゃわい……」
「カカカ♪ いやいや済まぬ済まぬ! 詫びに妾のとこの酒をくれてやるでな♪ さて、解説じゃったか? そうじゃのう、アイの字め中々に腕を上げておる。きゃつの此度の働き、誠に見事ぞ! そしてゼルワの奴もサーサめも、機転を効かした良い判断じゃった!」
司会のエルフがついさっきまでの城壁でのシーンを振り返り、いつの間にか側にいたたまちゃんこと、珠実様に解説をお願いしているわ。珠実様はドガが吹っ飛ばされた瞬間の映像を繰り返し見ては大笑い、プッ! だ、ダメね、アタシも笑っちゃいそう! 泣きそうになってるドガに追い討ちかけるのもかわいそうだし、我慢しないとね。でもドガったら、珠実様からお酒をもらえるって聞いて喜んでる、現金ねぇ~。
そして珠実様の解説が始まったわ。うんうん、まさにその通りよね! サーサを始めに、ゼルワもアイギスも中々に見事な動きだったわ! 特にアイギスの獅子奮迅たる剣と盾捌きはホント凄かった! アタシも負けてらんないわね!!
うんうん感心しながら進むアタシ達の目に、今度はちょっとした森が見え始める。もしかしてあの森が次の関門かしら?
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【やっちまったぁ!】~第二関門~《ゼルワview》
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「あっりがとぉぉ~ございました! お集まりの皆様~ご解説下さった珠実様に盛大な拍手をおなしゃーぁっす!!」
わぁぁーっ!! ぱちぱちぱちぱちーっ!!
実況する司会のエルフの言葉にこの会場のみんなが大きな拍手を珠実様に向けている。珠実様は珠実様で、それに応えるように手を振って「よいよい♪」って御機嫌だ。
「あの森が次の関門か!?」
「城壁から見た限りそんなに広い森じゃねぇぜ!」
「ふふ、エルフに森なんて足止めにもなりませんよ!」
「ええ! このまま一気に駆け抜けましょうか!」
城壁を越えた俺達の前には鬱蒼と生い茂る木々が構成する、ちょっとした森が広がっている。おそらくこの森を抜ける事が第二の関門ってことだろう。アイギス、俺、サーサ、レイリーアの順に走りながら声を掛け合い、一気に抜けようとする!
へへ、アイギスはともかく、俺もサーサもレイリーアも種族柄、森なんぞ馴れたもんだぜ! こいつは楽勝だな!
「さぁーっ! 囚われのアリサ姫を救い出すべく駆ける『白銀』の前に、第二の関門が立ちはだかるぞぉぉーっ!! その名もズバリ『迷いの森』だぁぁーっ! 彼等は無事にこの森を抜ける事が出来るのかぁぁーっ!?」
「うっしっし♪ それじゃあうちがルールを説明しよう! この『迷いの森』から先はなんと! 一切の魔法が使えましぇーん!!」
何だって!? って、一瞬びびったけど、そもそも俺ってあんま魔法使わねぇしな……ヤベェのはサーサか。ここは俺がエスコートしねぇといけねぇな!
「今のフォレアルーネ様の言葉を聞いたなアイギス! ここは念を入れてペアでいこうぜ!」
「ああ、異論はない! レイリーア、私と共に頼む! ゼルワとサーサで組んでくれ!」
「オッケー♪」「了解です! 頼りにしてますよゼルワ!」
任せとけって! 俺達はフォレアルーネ様の言ったルールを聞いて即座にペアを組む!
「あっはっは! 当然それだけじゃなくて、色々なトラップが仕掛けられてるからね! 精々気を付けて進むといいよ~ん♪ 無事に森を抜ける事がクリア条件だぁぁーっ!」
「ありでぇっぇーっすフォレアルーネ様ぁぁーっ! 聞いたな『白銀』のみんなぁーっ! 我々は諸君等の面白可笑しい絵が撮れる事を楽しみにしているぞぉぉぉーっ!!」
うるせぇーっ! 見てろよ!? 俺達エルフにとって森なんざ障害にもならねぇって事を教えてやる!! って、あの司会実況してる奴もエルフだし、知ってるか?
「よし、行くぞみんな! ペアの者と決して離れるな!」
「「「おおぉーっ!!」」」
アイギスの号令に応えた俺達は揃い、この第二の関門である『迷いの森』に足を踏み入れた。その瞬間……
シュシュシュシュンッッ!!!
「なん……だとぉーっ!?」
速攻で俺達は分断された。馬鹿な! 一体何が起きやがった!?
あまりに一瞬の出来事に、俺はパニックになりバッ! バッ! と、左右、背後と振り向き振り返り状況を確認する! なんてこった! すぐ隣にいたサーサも、アイギスもレイリーアの姿も何処にもねぇぞ!?
「サーサぁっ! アイギスぅっ! レイリーアぁっ! 何処だぁーっ!?」
しーん……
クソっ! 駄目だ、誰も呼び掛けに応えねぇ……落ち着け、落ち着けよ俺! そしてしっかり思い出せ……フォレアルーネ様は何て言ってたんだ?
「うはははっ! 早速トラップに引っ掛かったねぇ~みんなぁ~♪」
「うっひょっひょ~♪ ど~しちゃったんでっすぅ~? さっきまでの勢いはぁ~?」
俺が立ち止まり、落ち着いて現状を把握するために思案しているその時、フォレアルーネ様とアリスさんの嘲笑う声と一緒に、目の前にモニターが表れる!
「迂闊が過ぎますね皆さん。フォレアが言った筈です。「トラップがある」と。更に魔法も使えないのですよ?」
「ん。それなのに勢いで突っ込んじゃうなんて……貴方達、バカなの?」
ぐああぁぁーっ!! なんも言い返せねぇーっ!! やっちまったぁぁーっ!! そうだよ! アルティレーネ様にレウィリリーネ様の言う通りじゃねぇか、何勢いで突入してんだ俺達はぁぁーっ!? 先ずは俺が罠を見破ってからだろぉぉーっ!!
「ゼルワ~あんた、『斥候』じゃなかったの……? なにやってんのよぉ……」
「す、すんませんアリサ様ぁっ!」
「そーだそーだ!」「なにやってるニャ!?」
「そんなんで『斥候』だなんて笑わせるワーン♪」
ぐおおっ!? クソ、チキショーめ! アリサ様の呆れた顔と声に頭下げると、ケットシーやらクーシーって言った、俺と同じく『斥候』稼業の得意な奴等からブーイングがわきやがる!
「これは第二関門開始直後からの~大っ! ハプニングゥゥーッ! 意気揚々と『迷いの森』に突入した『白銀』がのっけから『転移陣』の罠に嵌まったぁぁーっ!! 同士ケットシーとクーシー達からゼルワに対してのブーイングがスゴォォーイ! マジでなにやってんだゼルワぁぁーっ!?」
くっそぉぉっ!! 滅茶苦茶悔しいぜぇぇーっ!!
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【ヒント】~楽しいですわ~♪~《ティターニアview》
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うふふ♪ 順調! 順調ですわぁぁーっ!!
今回の『風雲! アリス城!』の第二関門『迷いの森』こそ、私達妖精の本領を存分に発揮できるステージですの!! しかも上手いこと『白銀』の皆さんはドガさんを除く四人共に分断されておりますわぁ~♪
「うっふっふ♪ アリサ様、女神の皆様。とくと御覧になっていて下さいましね? ここからが私達妖精のイタズラ好き共が本領をお見せ致しますわぁぁーっ!」
「あはは、めっちゃ嬉しそうねティターニアは」
「うひひ♪ うち、こーいうのだーい好き☆ で、で、ティタっち! 次はどうしよっか!?」
アリサ様が微笑んでいらっしゃいます、楽しまれているようで何よりですわね。よかったですわ~この方の暗いお顔など見たくありませんもの。
いいですわいいですわぁ~フォレアルーネ様もノリノリで早速次の手を打とうとされておりますわね! フォレアルーネ様も私達妖精に負けず劣らずのイタズラ好きですし、相性がとてもよろしいですわ。
「そうですわね、さりげないヒントを与えて仲間と合流するように誘導致しましょうか?」
「はは~ん、なるほどねぇ~そうして合流しようとした彼等には罠が待っているという訳ね?」
あら、イヤですわそんな罠だなんて! 待っているのは妖精のイタズラですわ。ティリア様♪
「ん。みんなの様子見てみようか」
レウィリリーネ様のお言葉に応えるように私達の前に四つのモニターが表れて、アイギスさん達の様子を映し出します。
「このモニターは会場の皆さんにも見えているものよねレウィリ? アイギスさん達には見えていないのね?」
「うん。そう……証拠にほら……」
四人の様子を映し出したモニターを御覧になられたアルティレーネ様が、確認するようにレウィリリーネ様に質問していらっしゃいます。その質問に応えるレウィリリーネ様が、会場の様子を映すもうひとつのモニターを指差しました。
「さぁーっ! 突如としてメンバーと分断されてしまった『白銀』達! 彼等は無事にこの森を抜け出す事が出来るのか!? ここでその四人の状況をモニターで見てみようじゃあないかぁーっ!」
司会と実況を務めるエルフがそう叫び、会場の皆さんにも見えるように大きなモニターが四つ並べられます。私達のいるこのモニター室に並べられているものと同じやつですわね。
「わーん! みんな何処ですかぁーっ!? うぅ、ゼルワぁぁ~」
「くそ、マズイぜ。方向がわからねぇ!」
「あらら、なるほどねぇ~迂闊だったわ、速攻でトラップに引っ掛かるなんて……」
「…………」
各モニターにはそれぞれ、サーサさん、ゼルワさん、レイリーアさん、アイギスさんが映っておりますわ。うふふ♪ 狙い通り狼狽えていらっしゃいますわね! アイギスさんだけは一人立ち止まって空を見上げて押し黙っていますけど。
「おやおやぁ~? 流石の『白銀』も突然の事態にあわくっているようだぞ!? さぁーっ! どうする『白銀』!?」
「ではここでヒントを差し上げましょう。女神様、彼等に今いる方角を教えてあげてくださいませ。後は彼等の動きを見ましょう!」
「オッケー♪ んじゃ、私が……」
司会実況のエルフのアナウンスを聞きながら、私は女神の皆様に、彼等に与えるヒントの内容をお話します。方角を知れば彼等はきっと合流しようと動く筈ですわ。ティリア様がすかさずそのヒントを伝えるべく動きました。
「ふっふっふ! 困っているようね四人共! 仕方ないからこのティリアさんが一つだけヒントをあげるわ!」
「おぉーっと! ここでまさかの天の助け! ティリア様直々にヒントをお与え下さるぞぉ! 心して傾聴せよ『白銀』ーっ!!」
『白銀』の面々の眼前、そして会場にこのモニター室を映す、モニターが現れます。ふふふ、楽しいですわぁ~まさかこうして女神の皆様と一緒にこんな大掛かりな遊びが出来るなんて!
「まずはアイギス。あんたは今、森の北にいるわ! 一番ゴールに近い位置よ! ゼルワは西ね。レイリーアは東、サーサが南よ。さぁ、この情報をうまく使いなさい!」
「ありがてぇ! 今いる大雑把な位置だけでもじゅうぶんなヒントだぜ!」
「南ですか……うーん、もしかしてスタート地点からあまり離れてないのかな?」
「アタシは東にいるのね。と、なると……」
「ふっ……感謝するぞ。デール、君の教えがこうも役立つとは」
動き出しましたわ! ふふ、やっぱり合流しようと動き出しましたわね! って、あら? アイギスさんとレイリーアさん? え? 合流されませんの!?
ティリア様のヒントを聞いて仲間と合流しようと動き出したのはゼルワさん。南東に向けて歩き始めました、サーサさんと合流するおつもりですわね! サーサさんは一度南に歩き、スタート地点を確認した後、再び北に向かって歩き始めていますわね、おそらくきちんと方角を確認するためにそうしたのでしょう。ですが……
「動き出したぞぉ! むむっ!? これは……どうした事だ! 仲間と合流しないのかアイギス! レイリーア!?」
アイギスさんとレイリーアさんは迷わず北……ひたすらにゴールを目指して歩き始めたではありませんか!? むむむぅ~やりますわね!
「あ~こりゃちょいとむっつりんさんは仕掛けるには間に合いそうにないでっすねぇ~迷うことなくゴールに向かってまっする」
「うーん、アイギスのおにぃちゃん、なんかずっとお空見てたよね? その後ティリア様のヒント聞いてから真っ直ぐ歩き始めたけど……なんかわかったのかな?」
「ふふ、ユニ。アイギスは太陽の位置を見てたんだと思うよ?」
真っ直ぐにゴールを目指して歩くアイギスさんには、アリスさんが仰るように、位置的にもイタズラを仕掛ける間がなさそうですわね。仕掛人が間に合いませんわ。そんなアイギスさんを見ていらしたユニさんが不思議そうなお顔をされていますわね。うーん、確かに、分断されてから彼は動かずにずっと空を見上げておりました。その事にアリサ様が答えます。え? 太陽の位置ですの?
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【こんな罠なら】~私も撫でたい~《アリサview》
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「太陽ってさ、東から昇って、西に沈むじゃない? ってことはさ、朝は太陽のある方が東で、夕方は西ってことになるのよね。お昼に近い場合は太陽が南に来るの。それを知ってれば、今の時間と合わせて、方角がわかるって訳。ほら、さっきまでアイギスがいた場所ってちょっとだけ木々が開けて、空が見えるじゃない」
前世では常識的な知識だけど、アイギスの行動を見る限り、この世界でも通じるみたいだね。おそらくアイギスは、仲間と分断されて直ぐに転移で飛ばされたと悟ったんだろう。慌てることなく、置かれた状況を理解して対策したんだね。
「やはり、間違っていなかったな。どうやらだいぶ出口に近い場所に飛んだようだ」
「はやぁぁーいっ!! なんとアイギスがあっという間にゴォォール!! 第一関門に続き、またもファインプレーだぁぁーっ!」
「ブーブー!」「あっさりクリアしたらつまんねぇじゃねぇかぁぁーっ!」
やれやれ、無事にゴールに辿り着いたアイギスは、みんなから非難轟々。しょうがないなぁ~撮れ高を気にするなら確かにつまらないだろうけど……私だけでも称賛してあげましょうかね。
「お見事だよ、アイギス! 太陽の位置から進む方角を見つけ出すなんてよく知ってたね?」
「アリサ様! よかった、ご無事のようで……ええ、以前にデール……私に冒険者としての知識を師事してくれた者から学んだのですよ。おかげで何事もなく出口に辿り着けました」
へぇ~やっぱり物知りな人っているとこにはいるもんだね。でも、その教えをしっかり思い出して実際にこうして活かせたのは、アイギスの凄いとこだと思うな。
「ふーんだっ! 中々やりやがりまっすねむっつりん! でっもでもぉ~他の三人はどうでっしゃろねぇぇ~? ぷっふふ☆ まだ第二関門でっすよぉ~?」
「うふふふ♪ 残り三つの関門が御座いましてよ? それまでに何人が突破されるのか楽しみですわねアイギスさん?」
「アリス殿! それに、ティターニア様までこのアトラクションとやらの仕掛人だったのですか!?」
私の左右からにゅっ! ってモニターを覗くアリスとティターニアを見て、アイギスが驚いている。どうやらアリスはともかく、ティターニアもこちら側にいるとは思わなかったみたい。
「おっと、またその森に戻っちゃうと失格だよぉ~んアイギっち~?」
「ふふ、引き返して仲間達に脱出方法でも教えるつもりでしたか? 残念ですがその場で大声をあげて教える。等も失格とさせて頂きますよ?」
踵を返し、森に戻ろうとしたアイギスにフォレアルーネとアルティレーネが声をかけて釘をさす。まぁ、その辺は仕方ない。教えてもらってクリアーじゃあ試練にならないもんね。
「くっ……わかりました。皆、私は信じているぞ!?」
「そうそう、大人しく私達と一緒に観戦しましょうね? どれ、今ゴールに一番近いのは?」
「ん。レイリーア。既に妖精達のイタズラを受けてるとこ」
まあまあアイギス。そんなに肩肘張らなくても大丈夫だって、所詮お遊びなんだし♪ ……規模がでっかすぎるけどさ。でもって、私はティリアとレウィリリーネの声にレイリーアが映るモニターに目を向ける。レイリーアも迷わず北を目指して動いてるんだよね? なんで方角がわかったんだろ、後で聞いてみよう。
「「にゃんにゃんにゃぁぁぁ~ん♪ よーこそよーこそだにゃぁんレイリーアにゃん!」」
「ケットシー? はは~ん、あんた達二頭がアタシに差し向けられたトラップって訳ね?」
あらん♪ こりゃ可愛い~! 二頭のケットシーがレイリーアの行く手を遮ったぞ。ふふ、一体どんな手段でレイリーアを罠に落とすつもりなのかな?
「説明しようぅっ! レイリーアに仕掛けられた罠は、いたって簡単だぁぁーっ! 立ち塞がる二頭のケットシーをレイリーアっ! 君はその二頭を撫で回して満足させなければいけないのだぁぁーっ!!」
おおおぉぉーぉ……? なんだそりゃあぁぁーっ!!?
あははは♪ いやいや、ホントになんだそりゃーだね! 観客達も一瞬盛り上がりそうになったけどすぐによくわから~んってなったようだ。でもいいなぁ~レイリーア、そんな可愛い罠なら私も引っ掛かってみたいよ♪
「あはは♪ ユニもケットシーちゃん達のことなでなでしたぁーい!」
「ふふ、そうだねユニ~私もだよ。まぁ、しょうがないからミーナを撫でようね?」
なでなで、にゃぁん♪ ユニと二人で仲良くミーナを撫でてレイリーアの様子を伺う私達。さてさて、レイリーアはこの罠を切り抜けられるかな?
「上等よぉ? ふふふ、アタシのマッサージはダーリンをいつも骨抜きにしてるんだからね……覚悟するといいわぁ~?」
「うーにゃ!」
「ボクたちは負けないにゃぁん♪」
キラーンッ☆ と、目を光らせ、両の手をワキワキさせてケットシー達に詰め寄るレイリーア。そんな彼女に少したじろぎつつも、負けにゃいと立ち塞がるケットシー達! あれ? これどっちが挑戦者だっけ?
「うにゃぁぁ~……参ったにゃぁぁん♥️」
「た、たまらんのにゃぁぁ~♪」
「ふっ! 勝ったわ!」
おおおおぉぉぉぉーっっ!!!!
「あっ! 圧倒的ぃぃーっっ!! なんというテクニックだレイリーアァァーっ!! まるで即落ち二コマを見せられたかのようだぁぁーっ!! 撫で回されたケットシー達がまるでマタタビを食べたかのように変な動きをしているぞぉぉーっ!」
ふはははっ!! やるじゃんレイリーア♪ 私もあの撫で方を参考にして今度ケットシーを撫でてみようかな。
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【哀れサーサ】~が、頑張れ!~《アイギスview》
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「お待たせアイギス! 流石アタシ達のリーダーね、無事にゴールしてたなんて!」
「ああ、たまたまゴール近くに飛ばされたと言うだけだ。私には妖精達の妨害すらなかったしな」
特に苦労することなくケットシー達の罠を正面突破して見せたレイリーアが、無事にゴールまで辿り着き私と合流を果たした。
「ゴォォール!! ここでレイリーアが第二関門を突破したぁぁーっ! おめでとう!」
おめでとぉぉーっ!! もっと迷うかと思ってたぜーっ!?
「ゴールおめでと、レイリーア♪ あんたなんで転移させられた後、直ぐに北がわかったの?」
「ありがとうアリサ様♪ そっちはなんかめっちゃ楽しそうね? って、北がわかった訳じゃないのよ~あれは単に勘だったの!」
勘ってマジかーっ!? と、アリサ様だけでなく、アリス殿とティターニア様もレイリーアの言葉に驚かれている。正直私も同じ思いだが、レイリーアの『直感』には今まで何かと助けられた場面もあったのだ。
「さぁっ! これで残るはゼルワとサーサの二人だぁぁーっ! 末永く爆発してほしいこのカップルには一体どんなトラップが待ち受けるのかぁーっ!?」
そーだそーだ! 爆発しろぉぉーっ!!
やれやれ、相変わらずの凄い騒ぎだな。だが、決して不快ではない、このようなお祭り騒ぎは『セリアベール』でも度々起こるからな。その中心に私達がいることが少し誇らしいくらいだ。
「ふふ、なんか楽しそうな顔してるわよアイギス。あんたはいつも真面目すぎるからね、このアトラクションを通して少し『遊び』を覚えるといいわ」
「そーいうレイリーアはもう少し慎重さを学ぼうね~?」
「いやぁん! もう~アリサ様ったらぁ~うぅ、やぶ蛇だったわ……」
そんな私を見てレイリーアが珍しくアドバイスをしてくる。『遊び』……その言葉に私はレイリーアの恋人であるラグナースを思い出す。彼は私よりも三歳ほど年上の青年、落ち着いた物腰にユーモアもある理想的な人物だ。なるほど、確かに彼ならこの催しも楽しみながら参加するだろうな。ふふ、アリサ様から戒めのお言葉を受けしゅんとなるレイリーアに内心感謝しておこうか。
「わっぷぅぅっ!!? やーんっ! また泥んこぉぉーっ! わぁぁーんっ! ゼルワどこぉぉーっ!?」
「おっと! これはひどいぃーっっ! サーサがノームのトラップに引っ掛かって転んだ先に、ウンディーネが作った水溜まりぃぃーっ!! 哀れ! 泥んこサーサの出来上がりぃーっ!」
うわっ! これは、ひどい連携もあったものだ。モニターから聞こえたサーサの叫び声に目をやれば全身泥まみれになった彼女が泣き叫んでいるではないか。助けに行きたいが、それでは失格になってしまうからな……仕方ない、頑張れと応援しておこう。
「あはは♪ サーサってばまた泥まみれになってるわ! だから魔法使えない時の事を考えて、身のこなしってのも学んだ方がいいわよって言ったのよ~?」
「魔法使い、魔法使えなきゃただの人。なーんてこっちゃ駄目ダメちーん♪ って、アリスちゃんが言った通りになっちゃったねぇ~?」
「でっす! あーだこーだ言って、最後に物言うのはけーっきょく、自分の体だったりしまっするんでっすよんユニちゃん先輩♪」
魔法は確かに便利であり、戦いの場に置いても攻守補助。どれをとっても有効だ。しかし、それを成すにあたり、深い知識、高い魔力を要求されるためどうしても体を動かす事から遠ざかってしまう。
「かわいそうに~ゴールできようが、できまいが、終わったらあったかいお風呂入れてあげよう! それと美味しいデザートも用意してあげなきゃね♪」
ふふ、お優しいアリサ様だ。泥まみれになったサーサのために風呂とデザートなる菓子を用意すべく、魔法を行使しておられる。頑張れサーサ! ゴールすれば温かい風呂と美味な菓子がお前を待っているぞ!
「うふふ、サーサさんは今、魔法が使えませんからね。本当にイタズラ程度に済ませておりますわ♪ ですけれど、ゼルワさんには遠慮は要りませんわよね?」
そう愉快そうに微笑むティターニア様。魔法を封じられ、非力な状態のサーサには遠慮気味なトラップ……それこそイタズラ程度で済ませるよう、妖精達に話してあるそうだが……ゼルワに対しては違うらしい。私達はゼルワを映すモニターに注視した。
「うぇぇ~んっ! ゼルワのばかぁ~!」
サーサは……うん、頑張れ!
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【こりゃ無理だ】~もうおしまいだぁ~《パルモーview》
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「「「ゼルワぁ~どこにいるのぉ~?」」」
「くっ! 四方八方から聞こえてきやがる……完全に嵌まっちまった!」
あ~あ、駄目だねこりゃ♪ 情けないなぁ~ゼルワの兄ちゃんは! あははは!
僕はあせあせしつつ狼狽えるゼルワの兄ちゃんが映るモニターを見てそう思う。完全にあのぽんこつ女王のとこの妖精達にしてやられてるよ。ある意味綺麗な嵌まり方に感心しちゃうくらいだね!
「ふふん、この『聖域』に来たときに魔法の耐性を上げなよって教えてやったのにねぇ~?」
「いや、パルモー。あいつらはそのあたりの修行もしているぞ?」
へぇ、そうなの姉ちゃん? じゃあ単純に足りてないんだね。
僕と一緒に兄ちゃん達の奮戦を観賞してるフェリア姉ちゃんが、一応兄ちゃん達は魔法耐性を上げる修行はしているって言ってきた。
「耐性は魔法を封じられようが、自身に宿る力だ。それでもゼルワがああも見事にトラップに引っ掛かっているのはまだまだ修行が足りていないのだな?」
「だろうねぇ~アルセイデスとドリュアスの幻惑魔法にどっぷり嵌まっちゃってるし、あれはもう抜け出せないよ?」
森妖精なんて言われる事もあるエルフ達だけど、それはあくまで、森に住んでる事が多いから、ってだけで。生粋の樹木の妖精のドリュアスや、森そのものの妖精であるアルセイデスと比べればたいしたことないんだよ。
「これはぁぁーっ! ゼルワが動けなぁーいっ!! 完全に罠に嵌まってしまったぞぉぉーっ! 全方位から聞こえるサーサの声に進むべき方角を見失ったぁぁーっ! どうするゼルワぁぁーっ!!?」
あはは! いやいや、ムリムリ♪ 司会のエルフさんや、あぁなっちゃうときっと僕達でも抜け出せないよ?
「「「ゼルワ~ゼルワ~クスクス♪」」」
「あ、ああっ! サーサ! サーサが、何人も!?」
木々に囲まれ、サーサの姉ちゃんの声に惑わされ、立ち往生してるゼルワの兄ちゃんの前に数人のサーサ姉ちゃん……に、擬態したアルセイデスとドリュアスが迫る。けど、ゼルワの兄ちゃんにはそれを見破る術がないんだよね。
「「うふふ♪ もぅ、どこに行ってたんですか?」」
「「そうです、こんな可愛い彼女をほったらかしにするなんて……」」
「「ふふふ、ひどいですゼルワ♥️ たっぷり可愛がってくれないと許しませんからね?」」
「あ、ああぁ……も、勿論だぜサーサ!」
わぁー! す、凄いや! 母ちゃんには及ばないけど……い、色っぽいなぁ~! ゼルワの兄ちゃんも沢山のサーサ姉ちゃん……に、擬態したアルセイデスとドリュアスなんだけど。囲まれて鼻の下を伸ばしてデレデレしてるよ!
「ぱ、パルモーは見ちゃ駄目だ!」
「わっぷぅっ! な、何すんのさぁ~姉ちゃん! 今いいとこなのに!?」
ドキドキしながら僕はモニターに釘付けになってたんだけど、いきなりフェリア姉ちゃんに両手で目を覆われてしまった。続き! 続きが見たいよ!
「いかんいかん! こらーっ! ティターニア、子供も見ているんだぞ!? こ、こんな、破廉恥な罠を仕掛けるんじゃないっ!?」
「あらら? うふふ♪ 大丈夫ですわよフェリアさん。よくご覧になって?」
「何を? って、おい! どこが大丈夫だ!? ゼルワにあんなにくっついているじゃないか!」
さっきからフェリア姉ちゃんとティターニアが騒いでる。うう、ゼルワ兄ちゃんにあんなにくっついてだって? なんか目を塞がれてるから余計に想像が働いちゃうんだけど!?
「ユニも見ちゃ駄目よん♪」
「あー! アリサおねぇちゃんそんなぁ~!」
アリサ様とユニちゃんの声も聞こえる。どうやら僕と同じでアリサ様に目を塞がれてるユニちゃんが抗議してるみたい。
「こ、これはぁぁーっ!? なんてうらやまけしからんのだぁぁーっ!! おいっ! ゼルワこのやろぉぉーっ! そんなに美女侍らせてどうするつもりだぁぁーっ!」
おおぉぉーっ!! そうだそうだ! そこ代われゼルワぁぁーっ!!!
ギャラリーも凄い騒いでる! 見たい見たいよ! 姉ちゃん手どけてよぉ~!
「ああ、可愛いサーサ。よしよし沢山愛してやるからな?」
「「うふふ~嬉しいわゼルワ」」
「「さぁ、行きましょう♥️」」
「「そぉ~れっ!」」
ドボォォーンッッ!!
「ぶっへぇっ!!? ガボッ! ゲッホ! おわあぁぁーっ流されるーっ!!」
「はーい♥️ 一名様ごあんなぁぁ~い♪」
「うふふ♪ 面白かったわよぉ~ボウヤ♥️」
僕がようやく、フェリア姉ちゃんの手を振りほどいた時に見えたのは、ドリュアスとアルセイデスにドボーンッて川に落とされて、セルキー達に流されて行くゼルワ兄ちゃんの姿。
ゼルワ兄ちゃんは、そのまま流れに流されて、最後は泉の妖精。ニンフのナイアデスに『神々の雫の泉』にボッチャーンッッ!
ドガじいちゃんと同じように『聖域の水蛇』に襟首を加えられて、城壁前にペイッて放り投げられて戻ってきた。
「イエェェアアァァーッ!!! 失格っ! 失格だぁぁーっ!! ゼルワざまあぁぁーっ!!」
「イィヤッホォォーッ!! ざまみろ~!!」「スケベ根性出してんじゃねぇぞコラァッ!」
「アイギスがむっつりならゼルワはただのドスケベ野郎かぁぁーっ!! 第一関門で見せた機転は何処へやら!? 『白銀』二人目の失格者はゼルワだぁぁーっ!!」
テンションあげまくりの司会実況エルフの声に、ゼルワの兄ちゃんは……
「なんも言い返せねぇ~……」
って項垂れて、ドガのじいちゃんにポンって肩を叩かれるのだった。
アリサ「はぁ~♪(*>ω<*)ケットシー可愛いよぉぉ~♥️」
ユニ「うんうん(*´▽`*)ユニもなでなでしたいなぁ~♪(ノ・∀・)ノ」
アルティレーネ「レイリーアさんも撫でるのお上手ですね(^ー^)」
ティリア「……(〃艸〃)毎日あのテクニックでダーリンさん骨抜きにされちゃってるのね!?(/ω\)キャーなんか、なんかぇっちだわ!」
ティターニア「うふふ♪(*`艸´)お色気でしたらほら、ドリュアスとアルセイデス達も凄いですわよ~(*´∀`*)」
フォレアルーネ「おぉっ!?Σ(*゜Д゜*)色気ムンムン!( 〃▽〃)」
レウィリリーネ「ネヴュラとはまた違った色気をもったお姉さん達……(゜A゜;)」
アリサ「ほほう……( ・`ω・´)これは勉強に……いやいや((‘д’o≡o’д’))そうじゃなくて(゜ω゜;)」
アルティレーネ「幻惑魔法ですとこう見えます(´・∀・`)」
ユニ「いっぱいのサーサちゃん!(*´∇`)ゼルワのお兄ちゃんにはこう見えてるんだね(*^▽^*)」
ティリア「流し目とか髪をかきあげる仕草とか……もう全部がエロい!?Σ(゜ロ゜;)」
アリサ「ユニは見ちゃダメ( ̄0 ̄;)」
ユニ「あーんΣ(ノд<)気になるよぉ~(>_<")」




