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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
68/211

66話 魔女とトマトとチーズ

────────────────────────────

【ハッピーウレピー】~待ちに待ったチーズ~

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「欲しい! ねぇ、その『ケーゼ』って持ってきてないの? めっちゃ欲しいんだけど!」


 なんとルヴィアスのとこの帝国ではチーズが作られているらしい! ずっと欲しいって思ってた食材の登場に私は興奮を抑えられず、食い入るようにルヴィアス達、帝国から来たお客さんに詰め寄った。


「あ、ああ~勿論持って来たよ魔女さん。『魔法の鞄(マジックバッグ)』に入れて持ってきて、既にティリアに渡してあるんだ」

「ないすぅ↑ ティリア~!」


 『聖域』の『世界樹(ユグドラシル)』を護る為に、建設中の神殿の会議室。私の料理の紹介をしているので、室内はとっても美味しそうな匂いが立ち込めている、こりゃ後でしっかり換気しないといけないかな?


「はいはい、私達が変にいじるよかアリサ姉さんに渡した方がいいね、って思ってちゃんと『冷蔵庫』にしまってあるわよん?」


 話を聞いていたティリアが異空間から『冷蔵庫』を喚び出し、ホワイトボードの横にドンって置く。この『冷蔵庫』は前世でも各ご家庭に必ずあった物を、魔装具として再現したものだ。サイズが大きく、施されている冷却術式も複雑な為に、一般に広めるにはまだまだ改良してやらなきゃいけない。


「デカっ! アリサの嬢ちゃんそりゃ一体なんだ?」

「これは『冷蔵庫』って言って、中がすんごい冷たくなってるの。そこにお肉とか、野菜を入れて、保存するんだよ。ほら、気温の高い夏場に比べて、さむーい冬場の方が食材が腐らなかったりするでしょ?」


 ゼオンが『冷蔵庫』を見て、なんだそりゃ? って聞いてきたので簡単に説明すると、今度はラグナースが興味を示し始めた。


「それは素晴らしいです! アリサ様、是非『セリアベール』の飲食店に普及を!」


 如何にも商人らしいけど、さっきも言ったようにまだまだ改良する必要があるので、待っててもらう事にする。「よろしくお願いします!」って何度か念を押されたので、まぁ、頑張ってみましょうかね。


カパッ!


 ひんや~り。おう。いいね! 冷えとる冷えとる♪ 『冷蔵庫』の扉を開けると冷えた冷気がほわわ~と流れ出してくる。うむ、なかなかの再現具合だ。どれ、チーズちゃんを確認しましょうか。


「きゃーっ♪ 見て見て聖女! すんばらしいラインナップだよ!」

「素敵! カマンベールにチェダー、ああ! ちょっと魔女! これこれ!」


 早速『冷蔵庫』の中身、チーズを確認した私と聖女はその素晴らしい種類の数々に歓喜する! 白カビの生えた前世では「チーズの女王」とまで謳われたカマンベール。きっとディンベルのおっちゃんが仕入れたってのはこれだろう。

 それに馴染み深いチェダーチーズ、サンドイッチとかによく挟まってるやつ! ゴーダチーズ。プロヴォローネなんかもあって、ピザを作りたくなる!

 そして聖女が嬉々として取り出したのが、白いもったりした小さいスライム……ではなく、クリームを固めたようなチーズ。


「こ、これは……も、ももも!」

「もっつぁぁ~れぇぇらぁぁ~♪」


 きゃーっ☆ 私と聖女はあまりの嬉しさに思わず手を取り合ってその場でぴょんぴょん跳ねて歓声をあげてしまう。これよこれ! 欲しかったんだぁ~♪


「魔女! 早速とめぃとぅを準備しましょ!」「うきゃぁ♪ ウレピー! バジルあったっけ? オリーブオイルは!?」


ポカーン……


「あ、あはは~アリサおねぇちゃん達、とっても嬉しそうだね! そのちーず? で早速何か作るの~? ユニもお手伝いするよ♪」

「驚きました、まさか『聖域の魔女』様にこれほど喜んで頂けるとは……」

「そう言えば以前にも「チーズはないのか?」と、(わたくし)達に聞いておりましたわね、アリサ様は」


 そんな魔女の私と、聖女の私。二人のはしゃぐ姿に呆気にとられているみんなだ。ユニは私達が早速何かしら作るんだなって察してお手伝いを申し出てくれるので、有り難くお願いしよう。

 カレンは私達の喜びように驚いてる、不人気だった特産品がここまで喜ばれるとは、露ほどにも思ってなかったんだろう。

 ティターニアは思い出したように、顎に手をあてて、以前に私が聞いた事を思い出しているみたい。あの時は妖精さん達も発酵食品については知らなかったからね。


「楽しみじゃのぅ~アリサ様、その……も、「もつあられ」とやらを使ってどんな料理をなさるのじゃ?」

「ふふ、「モッツァレラ」ね。期待していいよ! 『ルヴィアス魔導帝国』と、『セリアベール』の『調和(レウィリリーネ)』を今から見せてあげるから!」

「マジ? うちの『ケーゼ』が一体どんな風になっちゃうんだ!?」

「嬢ちゃんがこんだけ自信満々なんだ、楽しみが過ぎるぜ!」

「ん? あたし? ……確かに『調和』を司ってるけど」


 珠実にルヴィアス、ゼオンが一体どんな料理を作るのか、凄く楽しみにしてる様子だね。あ、レウィリリーネの名前を出したのはただの喩えだから、そこはあんま気にしないでね?

 私が今から作るのはとてもシンプルな一品だ。素材の味を活かす、前世でも好物だったアレ。


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【はぢめてのほうちょぅ】~ミーナ大興奮~

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「そう、ゆっくり手前に引くようにして切ってみて?」

「う、うん……どきどき……」


スゥッ


 ユニが慎重に、でも、しっかりした手付きでトマトにゆっくりと包丁を入れて切っていく。正直ユニに刃物を使わせるのはまだ早いって思っていたけど、この丁寧な扱い方なら大丈夫かな?


「わぁ! 切れたよ、アリサおねぇちゃん! どうかなどうかな?」

「うん。綺麗な切り口だね、偉いよユニ~花丸をあげましょう♪」


 おーっ! って私と一緒にユニの初めての包丁を見守っていたみんなから、歓声があがる。


「お見事です、ユニ様。ですが忘れてはいけませんぞ? この刃は人のそれもこのように切ってしまう物でもあるのですからな?」

「うん! ユニ気を付けるよ。アリサおねぇちゃんがどうして今までユニにほーちょーを使わせなかったのか、わかったもん」


 ありがとうビット。年端のいかない子供に刃物を使わせる事の危険性をしっかり教えてくれたね。ユニもちゃんとその危ないってことを理解してくれたようだし、今後お手伝いしてもらう時には、その幅を広げてみよう。当然、私が責任をもって監督しつつだけど。


「どうでぃアリサ様よ? 俺達が鍛えた包丁は、よく切れんだろう?」

「がっはっは! 包丁打つのなんて久し振りだったがな! いい仕上がりだと思うぜ!」


 映像通信(ライブモニター)を通して、私達にそう声をかけてくるのは、ティターニアのとこのドワーフ達だ。私が料理好きって知った彼等は包丁セットをご自慢の鍛冶場で打って、今しがたプレゼントしてくれたのだ。


「うん。凄くいいよ! よく切れるのは勿論だけど、何より持ちやすい。ホントにもらっちゃっていいの?」

「おうよ! アリサ様にはこんなんじゃ返しきれねぇ程の施しを受けてるからなぁ!」

「遠慮なく使ってくれ!」


 おぉ、ありがとう~ドワーフさん達! お互い持ちつ持たれつ。これからも色々頼りにさせてもらおう♪


「なあぁーん! なぁーん! うぅにゃ!」

「わかったわかったって! 今あんたの分用意してるんだからパンチしないの!」

「ミーナちゃん、凄い興奮してます」

「ミーナはその「チーズ」ってのが好物なのかー?」


 一方で久し振りの好物に大興奮しているのが私の愛猫、ミーナである。聖女がチェダーチーズをミーナが食べやすい大きさにカットしている間、ずっとなぁーんにゃぁぁーんうなぁ~! って鳴きまくり、その場でくるくる円を描くように回っては聖女の腕にパンチパンチする。その様子を見てた水菜は、普段見ないミーナの変わりように少し驚き、ジュンは楽しそうに笑ってる。


「ぷぅ~♪」「プップー!」「プー?」


 どうやらミーナの様子に反応したのはモコプー達も同じのようだ。なんだなんだ? と言わんばかりにミーナに近付いて様子を伺おうとしている。


「にゃ!? にゃあぁーん!」

「あ、こら! ミーナ! 威嚇しないの! そんな悪い子にはあげないわよ!?」

「うにゃっ!! にゃああーっ!!」

「だまらっしゃいこのワガママ娘! ちゃんと仲良くしなきゃダメっていつも言ってるでしょ?」


 横取りされるとでも思ったのか、あろうことかミーナがモコプー達に警戒し始める。その証拠に耳が横向きで、お尻を持ち上げて尻尾を立たせては爪先立ちだ。慌てて聖女が叱るけど、それに対しても猛抗議! うーん、前世では飼ってた猫ってミーナだけだったし、ご飯の取り合いなんてなかったから、ちょっと新鮮だね。


「しょうがないなぁ……はい、これ食べて少し落ち着きなさい」

「うにゃぁぁーんっ!」


 あむあむあむっ! 聖女が差し出した食べやすくカットされたチェダーチーズを嬉しそうに頬張るミーナ。正に一心不乱、無我夢中と言ったところか。その隙にモコプー達にも別皿にわけてあげた。


「「プップー♪」」「「「プーッ!」」」

(同朋達みんな美味しいって言ってます! ありがとうございます魔女様~わたしにもくださいな~♪)


 はいはい。勿論あげるわよエスペル。みんなに配るこっちをね。


「さぁ、出来たよ……「カプレーゼ」でございます。バジル、トマトにチーズをまるっと食べてみて~♪」


 そう、前世で大好きだったのがこの「カプレーゼ」だ。約八~十ミリ程の厚さにカットしたトマトとモッツァレラチーズにバジルを乗せた物を一皿に三個づつ。ホントは一皿にもっと盛ってあげたいけど、数に限りがあるからね。そのフレッシュな素材を塩とコーチョ、オリーブオイルだけで頂くシンプルな料理だけど、これがまた美味しいのよーん!


「見た目も美しいですね……それでは、頂きます」

「北の『ケーゼ』と南の『トマト』の調和か、アリサ様。有り難く頂きます!」

「あ、この『トマト』なら私の領域にも実ってたわ! 今度収穫しておこうっと!」


 目の前に並べられた「カプレーゼ」を早速とばかりに頂きますする、アルティレーネにゆかりと朱美、そしてみんなも。『無限円環(メビウス)』にいるゆかりとシェラザードにもちゃんと届けてあげているよ。


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【カプレーゼ】~ふっかつの……~

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「「…………」」


 会議室を沈黙が支配する。みんな揃って「カプレーゼ」をいただきますした直後だ。


「……言葉が……出ない……っ!」

「なんなのだ……? これは……食べ馴れたケーゼの筈が……」

「このトマトと合わせるだけで、こうも見事な……」


 うん。こりゃ美味い! あぁ~最高だわ。またこの味を楽しむ事ができるなんてね。なかなかに濃厚な甘味と酸味の『セリアベール』産トマトを『ルヴィアス魔導帝国』のモッツァレラチーズがまろやかに包み込み、絶妙のハーモニーが口内で奏でられては、味蕾に届けてくれる。

 帝国からルヴィアスの護衛についてきた、バロード、カレン、オルファの三人は揃って、その見事な調和に心底驚いた様子だ。


「凄い! これは凄いよ魔女さん! ゼオン、ラグナースくん! このトマトの輸入量増やせないかな!?」

「落ち着けよルヴィアス……はぁ……うめぇ~、成る程……アリサの嬢ちゃんが言う『調和』……確かに堪能させてもらったぜ!」

「あのケーゼにこんな可能性があったなんて……ルヴィアス様! トマトの件、僕がディンベル先生に掛け合ってみますよ! ですので、是非ケーゼの仕入れをお許しいただきたい!」


 おうおう、皇帝さまも大喜びだね。立ち上がっては興奮した様子で私に賛辞を送り、ゼオンとラグナースにトマトをもっとちょうだいって言ってる。ゼオンは、「カプレーゼ」の余韻に浸っているのか、目を閉じて感心したように頷く、ラグナースはラグナースでチーズの可能性を改めて認識したみたいだね。


「鳳凰、ちょっと部下達にこのトマトを収穫してくるように言いなさい! そして、量産する手筈をフォレアルーネと相談しましょう!」

《おっけぇぇっ! 任せてくれよ姉ちゃん!》


 そして朱美だ。じっくり「カプレーゼ」を味わい、「美味しい美味しい♪」ってニコニコ顔で食べてたんだけど、何せ一皿に三個しかないもんだから、すぐに食べ終わっちゃったのね。しょぼーんって顔で悲しそうに空になったお皿を見てのこのセリフである。同じくぺろんちょと食べた鳳凰も、物足りないって思ったんだろう、朱美の言うことに即座に動いた。


《あのものぐさな鳳凰が嬉々として飛んでいったぞ……》

《食の力とは偉大なるものですね……》


 普段の鳳凰を知ってるゼーロとレイミーアは意気揚々と動く彼に少しあきれた様子だね。まぁ、美味しいご飯のために頑張るって姿勢は悪くないんじゃないかな?

 そして私は次なる料理に手をかけていく。折角これだけのチーズが多種類揃っているのだ、色々作りたいんだよね!


「やっぱりピザ作りたいよね! 最初はマルゲリータで行こうよ?」

「うん♪ 定番だもんね!」

「はう~アリサおねぇちゃん、ホントにすごぉい……こんなに美味しいのユニ初めてなのに、まだまだあるなんて……」

「アリスはこれめっちゃ好きでっす! マスターには勿論、このケーゼっての持ってきてくれたルヴィアスさんに感謝しまっするよぉぉ~♪」


 私と聖女がピザ生地を作る横で、ユニとアリスがいまだ残る「カプレーゼ」の余韻に酔いしれている。いや、ホントにルヴィアス達には感謝だ。もたらしてくれたこのチーズで、沢山美味しい料理を作って歓迎してあげなきゃ! ふふ、何より私も楽しいし!


「おい、シェラザード! 凄く美味しいな! お前アリサ様に拾われたのって実は凄い幸運なんじゃないか?」

「そうね、ゲームは楽しいし。料理は美味しいし……ああ、こんなにだらけてしまっていいのかしら? あ、ゆかり。ちゃんと「じゅもん」はメモしてあるわよね? 前のように書き間違えてやり直しなんてイヤよ?」


 大丈夫だ! って、シェラザードの問いに答えるゆかり。別にゲームはつけたままでもいいのに、律儀に王様からパスワードを聞いてメモを取って、しっかり電源を落としている二人だ。そして、御多分に漏れず「パスワードの書き間違い」という、当時のゲームにおける「あるある」をやらかしているのだ。当時はモニターの解像度も悪かったからね、「ぽ」と「ぼ」とか濁点、半濁点の見分けがつかなかったりしたものだ。うんうん、懐かしい~♪


「あはは♪ いいわよシェラザード。あんた今まで苦労してたんだし、しばらくのんびりしてなさいな」

「そう? それなら遠慮なくのんびりさせてもらうわ。「ユニの花園」のお世話したり、「ミーナ野原」で日向ぼっこしたり……あ、そうだわ、アリサ。ちょっとした菜園なんか造っていいかしら?」


 シェラザードは『無限円環(メビウス)』内でのんびり暮らすことに、ちょいと引け目でも感じてるのか、気にしぃだねぇ~、でも、ティリアから遠慮しなくていいってお墨付きもらうと、嬉しそうにやりたいことを言い出した。


「いいよ~♪ ちなみに何を育てたいの?」

「そうね、このトマトを作るのもいいわね……後はおいおい考えるわ」


 ほほう、シェラザードも「カプレーゼ」の魅力にはまったようだね。トマト大人気♪


「それならミニトマトでも栽培してみる? ちっちゃくて可愛いし、食べても美味しいよ♪」

「まぁ、そんなのもあるのね? 「ミニ」って言ううくらいだし、普通のトマトより小さいのね?」


 そうそう、普通のトマトよりなんまわりか小さいの。お弁当とかに入れると彩りがよくなっていい感じだし、今作ってるピザにも合うし、私も好物だしね!


「あぁ、小粒のトマトですか。それでしたら私達の村でもたまに出てきますよ。このくらいのサイズで、私達は「トマトの子供」って呼んでます」

「あれって、ちゃんと育たなかったトマトじゃないの? 村でたまに出て、出荷出来ないから私達「おやつ~♪」って言って食べちゃってたよね?」


 リールとフォーネがミニトマトの話を聞いて、そういえば~ってのっかってくる。普通のトマトに比べて、大分ちっちゃいからね、「子供」と揶揄されるのも納得だ。


《おおーい! 姉ちゃん姉ちゃん~持って来たぜ~トマト! はは、沢山だぜ!》

「でかしたわ鳳凰! アリサ、お願い~さっきのまた作って~!」

《あ~後よ、すげぇ小せぇのもあったんでついでに収穫させたぜ?》


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【仲良くなる三人】~お裁縫~

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 なんと言う素晴らしいタイミングだろうか♪ 食い意地を張った朱美にトマトの収穫を命じられた鳳凰が帰ってきた。その背に馬鹿でっかい籠を背負って帰って来たんだけど、その中には今さっき話題に出たミニトマトも沢山入っていたのだ。


「おぉ~まさにこれ。これがそのミニトマトだよシェラザード?」

「あら、本当に小さくて可愛いわね。でも、ちゃんと育てられるかしら?」


 鳳凰から朱美。朱美から私に、とバトンタッチしてきた『聖域』産のトマトに、ミニトマト達。私はそのミニトマトを一粒手に取ってはシェラザードの映る映像通信(ライブモニター)に掲げ見せてあげる。


「うん、ミニトマトは家庭菜園でもビギナー向けだからね。大丈夫だよ♪」

「そうなのね? ふふ、じゃあ頑張って育ててみるわ。後で少し頂戴ね?」


 オッケー♪ 微笑むシェラザードに対してサムズアップで返事する。ふふ、ゲーム以外にも楽しみが増える事を素直に喜んでくれたようだ。上手く育てられたら改めて「シェラザードガーデン」とでも名付けて、色々な作物の栽培に挑戦してもらおうかな?


「ユニのお花畑とミーナちゃんの野原があるの? アリサおねぇちゃん!? ユニ行って見たーい♪」


 ちゃしちゃし……


「うなぁ~ん?」

「ミーナってば「美味しい口」して嬉しそうね。余程チーズがお気に召したのかしら?」


 そんな私とシェラザードのやり取りを見てたユニが、話題に少し出た自分の名をいただく花園と、同じくミーナの名前を冠する野原について興味津々の様子だ。ミーナもチーズを食べ終えたようで、目を細めては舌でお口周りをペロペロする「美味しい口」をしては、「なんぞ~?」とばかりに私達に向かって一鳴きする。ティリアはそんなミーナの様子を微笑ましく見てる。


「ふふ、『無限円環(メビウス)』は、そうだね、『懐刀』や『四神』達でいうところの棲処なのよ。だから私の好きなものいっぱい詰め込むつもりなの♪ 落ち着いたところで招待するからね、楽しみにしてて?」


 うむ、『無限円環(メビウス)』については、議題にも挙げた「新しい鍛練方法」にて詳しく話そうと思う。それまでは、こーいうのあるよ程度に留めておくとしよう。


「ミーナ大先輩もユニちゃん先輩も羨ましいでっす! アリスもアリスの名前をつけたなんかほしいでっすよぉマスター?」

「はいはい。わかったわ、何か考えておくから、後で相談しようね?」


 わーい♪ って、喜ぶアリス。この子も私の大切な『聖霊』だし、『無限円環(メビウス)』内に「アリスの~」っていう何かを用意してあげるのもいいだろう。こういったクリエイトも楽しいね。


「あ、あの! シェ、シェラザード様はお裁縫がお好きと聞きましたけど、お間違いないでしょうか?」

「あら? 貴女は末っ子のところの子孫ね? 確かリールと言ったかしら?」


 私達とシェラザードのやり取りを見守っていたリールが意を決したように、声をかけてきた。シェラザードの言う末っ子ってのはフォレアルーネのことで、『ルーネ・フォレスト』の子孫って事を言ってるんだろう。


「は、はい! 『ルーネ・フォレスト』の末裔、リールです。シェラザード様と、ゆかりさん? のそのお洋服が気になっちゃって……」

「私もです。ふふ、実は私達もお裁縫が好きなものでして。ずっと気になっていたんですよ♪」


 リールは少し緊張してるみたいだね。シェラザードは魔王だった事もあってどういう対応すればいいかわかんないのかな? おっかなびっくりした様子だ。でも、フォーネはそうでもないみたい、どうやら興味の方が勝っているようだ。


「あら♪ そうなのね! ふふ、この服いいでしょう? お気に入りよ」

「そうだろうそうだろう? なんせアリサ様が私達のためにご用意下さったのだ! 自慢の逸品なんだぞ!」


 シェラザードとゆかりが着ている服は、聖女が彼女達のリクエストを聞いて神気で編み上げた物だ。パンクなジャケットとミニスカートに格好いいブーツのゆかりと、清楚なお姉さんなニットセーターにロングスカート、可愛いパンプスのシェラザード。うん、いつ見てもよく似合ってると思う。


「わぁ! いいなぁ~とてもよくお似合いです!」

「うんうん。私達もそんなお洒落な服作りたいな♪」


 おやおや、いい感じに打ち解けて来てるんじゃないかな~これは! いいね、この二人に来てもらってよかったよ。正直妹達とシェラザードを会わせるとギクシャクするんじゃないかなって思ってたから、まぁ、お互いに謝罪しあってわだかまりも溶けて来てはいたけども。


「裁縫は私やったことないなぁ~あんた達三人に教えてもらおうかな?」


 乗っかる事にする。シェラザードがみんなと早く打ち解けられるように、こう言った何気ない話題は大切にした方がいいだろう。それに私も裁縫には興味があるしね。


「いいねいいね! やろうアリサちゃん♪ 前にもお話ししたけど私達にはお料理教えてよ!」

「うふふ、いいわね♪ 私はいつも暇してるようなものだから楽しみよ?」

「やった! ふふ、今から楽しみです♪」


 にこにこ♪ うん、三人共にいい笑顔。こうやって少しずつでもシェラザードに楽しい時間を提供して、お互いに仲良くなっていければ最高だよね!


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【ピザ】~みんなは何が好き?~

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 ピザの種類は沢山ある。トマトソースをベースにしたものだけでも……

 『マルゲリータ』……モッツァレラチーズとトマトにバジルと言ったシンプルなトッピング。しかし、それでいて王道。ピザと言えばこれだ。と言わしめるほどの知名度を誇る。

 『マリナーラ』……チーズを使わないピザ。アンチョビやオレガノがトッピングされるやつだね。

 『ペスカトーレ』……魚介類をトッピングするピザ。エビやホタテ、アサリとかがメジャーかな? 断じてタンバリンが得意な優男の踊り封じではない。

 『オルトラーナ』……ズッキーニやパプリカ、ナス等と言った野菜をたっぷり乗せた彩り綺麗なピザだね。

 『パルマ』……生ハムの塩気がピザと相性バッチリ♪ 私も好きなピザだけど、生ハムが手に入らないため断念。残念。私が『聖書(バイブル)』扱いしていた某漫画の五部に登場した、あの兄貴の名前でも呼ばれるのだ。

 『カラブレーゼ』……ナス、サラミ、トウガラシをトッピングしたピリッと辛い味付けのピザ。こちらもサラミが手に入らないので残念、断念。大人達には喜ばれると思うけど、ユニ達のように小さい子には敷居が高いかな?

 『ディアボラ』……こちらも辛いピザだね、トッピングはチキン、サラミ、トウガラシが主。前述の『カラブレーゼ』よりも辛いので、食べるときは注意だ。

 『サルモーネ』……スモークサーモンとルッコラとモッツァレラチーズを乗せた美味しいピザだね、魚の燻製ってこっちの世界にもあるかな? 今度聞いてみよう。


「で、今回作ったのは一番最初に言った『マルゲリータ』だよ。さあさ、お味は如何~?」


 って……あれ? どうしてみんなプルプル震えてんの? なんかミスったかな私?

 調理途中で何かしら失敗してしまったかと思い、聖女と顔を見合わせる。みんな振る舞ったピザを一口食べると、呆けた顔で固まってワナワナと震えだしたためだ。


うんまぁぁぁぁぁーいぃぃぃっっっ!!!!!!


 なんて、思った次の瞬間、神殿中。否、『聖域』中に響き渡るのではないかと思うほどの大歓声が放たれる! ビックリした私と聖女は思わずお互いに抱きついちゃったよ。


「すげぇーっ! 姐御! 滅茶苦茶うめぇぜこれ!!」

「うわぁぁ! 僕これ大好きかも!」

「このケーゼとやらが伸びるのもまた面白い!」

「うむ、何よりこのトマトとの相性が最高じゃのぅ♪」

「なんと言う幸運! 旅行く前にこのような食事を頂けるとは!」


 大地、パルモーがすっごい興奮して『マルゲリータ』を大絶賛してる。どうやら舌に合ったようでよかったよ。

 で、爽矢はピザからトロ~ンと伸びるチーズを楽しんでいる。うん、それもまたピザの醍醐味よね。

 珠実はトマトとチーズの「カプレーゼ」とはまた違った味わいを楽しんでくれているし、ビットはまたさっきと似たような事言って感激している。まぁ、彼が健在だった時代は魔神とバチバチやり合っていただろうから、今よりも食べ物に苦労してたのかもしれないね。


「アリサ姉~これって「粉もの」だよね? やっぱうちが思った通り、うんまいわぁ~♪」

「むぅ、ケーゼは乳製品って聞いた……合わさるとこうも美味しくなるんだね……」

「いけません、これは、いけません! 私病みつきになってしまいそうです!」

「マジにうまぁぁ~♪ ねぇねぇ、アリサ姉さん。『セリアベール』のトマトと、朱美のとこのトマトで味違うんじゃない?」


 そして妹達。フォレアルーネがピザは以前から気にしてた「粉もの」なのかって聞いてきたけど……これってハッキリと分類されてるかわかんないんだよね。どっちなんだろうね? 美味しいからあんまり気にしてないけども。

 レウィリリーネは乳製品を気にして、『酪農班』に志願したくらいだ。その代表格であるチーズを使ったピザの美味しさに感動したんだろうね。この子の事だからきっと、『聖域』でも作りたいって言い出すだろう。その時は、ルヴィアスに協力してもらおうかな?

 アルティレーネはダメダメと言いつつも、食べる手が全然止まらない、気持ちはよくわかるよ。ピザって魔性の魅力があるんだよねぇ……ん? そうでもない?

 ティリアはなんでも色んな世界に遍在しているらしく、ピザも食べた事があるそうだ。それでも私の作ったピザを美味しいって言ってくれてるあたり、ちょっと自信が付くね。んで、流石と言うかなんと言うか、トマトの味が産地によって違うってとこに気付いたみたいだ。


「うむ、余は鳳凰が持って来た方が甘く感じるな」

「我もそう感じますな……少々『聖域』の物の方が味が濃いか?」

「いやぁ~どっちにしても美味しいよ! バロード、カレン、オルファ。帝国から何人かこの『聖域』に派遣できないか? 魔女さんの料理を学ばせたいよ」


 リンとユナイトがティリアと同じようにトマトの味の違いに気付いたね、因みに私も同じ感想を抱いてるよ。なんだろね、土が違うのかな?

 ルヴィアスはトマトそのものが珍しいのか、どっちも美味しいって食べてる、護衛の三人も同じみたい、そしてどうやら私の料理教室に留学生を送りたいらしいね、いやはや……なんか規模がでっかくなってきちゃったな。


「おお? それならルヴィアスよ、『セリアベール』に来させたらいいんじゃねぇか? うちじゃ『氾濫(スタンピート)』が終息したおかげで教育機関の設立に着手出来るようになってな」

「アリサ様もその機関でお料理を。街全体には各飲食店のために様々なレシピの提供と、実演までお約束して下さっているんですよ?」


 マジ? いいなぁ~! ってゼオンとラグナースの説明に羨ましそうな顔をするルヴィアス一行である。そうなのよん、この辺は「セリアベールとの交流」の議題で詳しく話そうと思ってるけど、私もその「教育機関」の先生の一人として選ばれているのだ。まぁ、色々忙しいから臨時講師って感じだけどね。


「勿論『聖域』での料理教室も続けるよ? だから妖精さん達に各々の部下さん達~そんな絶望だぁ~みたいな顔しないでよ?」


 その先生やるよって話をすれば『聖域』の妖精さん達と、部下のみんなが「えぇ~そんなぁ!」って嘆くのでちゃんとフォローしておいた。私の料理に喜んでくれるのは嬉しいけど、いかんせん私の負荷が大きいのよん……「鳳凰の処遇」、「セリアベールとの交流」、「ルヴィアス魔導帝国の問題」を含めてその辺を詰めていこうか。


「さて、みんなお腹膨れて満足してもらえたかな? 次の議題に移るよ?」


 お客さん達の紹介と、ご飯タイムを挟み、和気藹々とした様子からみんなもいい感じにリラックスできてるみたいだし、次の議題では誰もが忌憚なき意見を出せるだろう。


「現在進行形で起きてる大きな問題……『黒フードと魔王ディードバウアー』について、対策を話し合おうか」

ゼオン「うめぇ~やべぇなこれ……さっきあんだけ食ったってのにいくらでも食えちまう!(^○^)」

ラグナース「本当ですねゼオンさん!(*´∇`)僕って結構小食な方なんですけどね、もうこんなに食べちゃって(^_^;)」

リール「すごいよアリサちゃん!Σ(゜ω゜)」

フォーネ「こんな美味しいの毎日食べれるの!?(ノ^∇^)ノ」

バロード「是非とも作り方をお教え下さい!( ・`ω・´)」

カレン「こ、こんなに美味しいの食べちゃったら私達……((( ;゜Д゜)))」

オルファ「僕達……帝国に帰りたくなくなっちゃう!(゜Д゜;)」

ルヴィアス「あぁ~俺も~料理美味いし、魔女さん優しいし、気候穏やかだし……帰りたくなくなっちゃうねぇ~やばいわぁ( ̄▽ ̄;)」

ファネルリア「色々食材を変えることで様々な味が楽しめるなら、あぁ!( 〃▽〃)」

ナターシャ「試したいわね!(*゜∀゜)食べ比べとかしたいわ♪(ノ≧∀≦)ノ」

ネハグラ「手で掴んで無作法に食べるこのスタイルはマナーを気にする貴族には受けないかもしれない……自分が貴族じゃなくてよかった(´・∀・`)」

ジャデーク「兄さん……ゼオンさんはともかく、ルヴィアス様は皇帝陛下だし、護衛のお三方も貴族相当の身分なんじゃないの(´・ω・`)?」

ルヴィアス「ふふ( *´艸`)見栄っ張り貴族なんかにこの料理は勿体ないかもしれないけどね、伝えればもっと領地の生産者達の待遇を良くして、ケーゼとか生産効率上げてくるかもよ?(*´▽`*)」

ティリア「あはは(*`▽´*)まさに『聖域』は今そんな感じよねぇ~?(^-^)」

フォレアルーネ「うしし(*´艸`*)ノッカーくんとか妖精達に色々教わりながらいっぱい野菜畑ができてるよん♪(ノ゜∀゜)ノ」

レウィリリーネ「ん( ´ー`)動物達も美味しいご飯食べさせて、まるまると肥えさせてる(゜ー゜*)ルヴィアス、後でケーゼの作り方教えてね?( ^▽^)」

アルティレーネ「私は各国と外交を頑張って美味しい食材を探しましょう(’-’*)♪」

魔女アリサ「飲み物も色々作りたいわね( ´~`)」

聖女アリサ「ピザにはコーラ!ヽ(*´∀`)ノ炭酸水を確保しましょう!( `Д´)/」

朱美「炭酸水って(・_・?)ふんふん……(゜-゜)(。_。)あぁ~あのシュワシュワねぇ~私の領域に湧いてるわよ♪ヽ(o・∀・)ノ」

魔女と聖女「「イヤッホーィ♪ヽ(*>∇<)ノ朱美ナイスぅ~(σ≧▽≦)σ」」

シャフィー「よーし!(`ヘ´)いっぱい食べて大きくなるぞぉ~♪ヽ(´▽`)ノ」

ネーミャ「私も私も~♪O(≧∇≦)O」

魔女「あ、私達は『不変』持ってるからいいけど、毎日こんなの食べてたら絶対太るから気を付けてね?( *´艸`)」

みんな「「「Σ( ̄ロ ̄lll)」」」

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