65話 魔女と有名なあのセリフ
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【皇帝の従者達】~三神国との繋がり~
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「ふざけんなよ、このクソ皇帝が!?」
「僕等を異空間に押し込めといた挙げ句に「忘れてた」だとぉ?」
「まったく、下らない思い付きに付き合わされる身にもなってほしいものね!?」
ゴスッ! ドゴッ! ベチーンッ!
「イテテ……ごめーんって! 謝るから許してちょーよ?」
さて、引き続き『聖域』で、完成間近の神殿内の会議室。私を驚かせると言う目的の為に、アホっぺこと、『ルヴィアス魔導帝国』の皇帝陛下、ルヴィアスが異空間に隠れさせていたその従者三名が、姿を見せました。しかし、その直後。ボコされる皇帝陛下で御座います。
「まぁまぁ、三人ともそのくらいで……できれば自己紹介をお願いしたいんだけど?」
おちゃらけた謝罪をするアホっぺに更に殴りかかろうとする三人を取り敢えず止めてみる。いやはや、血の気が多いのか、普段から振り回されているのか……おそらく後者かな? とにかく皇帝陛下相手に容赦ないねぇ……
「これは大変失礼を致しました! 『聖域の魔女』アリサ様。貴女様のお噂は皆様よりお聞かせ頂きました! 私は『ルヴィアス魔導帝国』近衛隊長を務めるバロードと申します! どうぞお見知り置き下さいませ!」
「同じく『ルヴィアス魔導帝国』近衛副隊長のカレンと申します。この度はこの愚帝が大変失礼を働きましたこと、心から謝罪致します」
「本当に申し訳ございません! 僕は『ルヴィアス魔導帝国』の魔法師団、団長のオルファです。『聖域の魔女』アリサ様、お会いできて光栄です!」
ほらやっぱり、礼節を守るしっかりした人達じゃないの。ルヴィアスがきっと普段から何かと馬鹿やらかしてこの三人を振り回しているんだろう。
私に対して三人共に恐縮した様子で、丁寧な挨拶を返してくれる。そんなに畏まらなくてもいいんだよ? 取り敢えずお近づきの印と言うか、礼には礼をもって返さねば。と、思い、ミーにゃんポーチからケーキを取り出してふるまうことにする。
「わ、私共にもお恵み下さるのですか!? なんと有難い事か……アリサ様、このバロード! 心より感謝致します!」
「似ています……」
「ええ、面影がありますな……」
ルヴィアスの近衛隊長のバロードを確認したアルティレーネと、ビットくんがその身を乗り出してきた。
「貴方はかつて『セリアルティ王国』の聖騎士団……」
「その第二騎士団を率いたバロン団長のご子息殿で相違ないだろうか?」
二人の言葉にケーキを食べる手を止めて、少し驚いた表情を見せるバロードは、アルティレーネとビットくんを交互に見つめ返し、力強く頷いた。
「如何にも! 私の祖先はかつて『セリアルティ王国』の聖騎士であったと伝え聞いております! 皇帝陛下の仰られた通りですね!」
「おお、そうか……バロン殿はその剣技だけでなく、魔法の扱いにも長けておられた……ルヴィアス殿と共に帝国に残る事を陛下が指示されても不思議はないと言うもの……」
「ええ、ユグライアの采配は理にかなっていますね……バロードさん、こうして貴方と会えたこと、嬉しく思います」
先のルヴィアスの説明で帝国に残る事になった、三神国の人達のうち、『セリアルティ王国』からは第二騎士団の団長さんが選ばれたそうだね。そしてバロードはその団長、バロンの子孫なのだそうだ。当時を知るアルティレーネとビットが感慨深そうにするのもまた無理からぬことだろう。
「いやはや、しかしこのケーキは美味しいですね! 頬が落ちてしまいそうだ!」
「ふふ♪ ありがとう。バロードくんは近衛隊長と言うには、随分若く見えるけど妖精さんの血が入ってる?」
彼の容姿は、二十代ほどの若々しさに、線の細い男性。真ん中分けの髪は耳を隠すか隠さないかってくらい。鋭い目付きに白っぽい髪色も相まって、前世で有名になった某漫画の野菜の名を冠した王子様の息子を思い起こさせる。
「はい! 私の父がハーフエルフで、母はアルセイデスなのです」
「まぁ、クォーターエルフなのですね。帝国も『セリアベール』のように他種族が入り交じる国なのですか?」
元気よく答えるバロードくんはクォーターエルフだそうだ。アルセイデスはティターニアの妖精国にも沢山いる、森のニンフの事を差す。ネヴュラが興味を示したけど、ルヴィアスのとこは色々な種族がいるのだろうか?
「ええ、その通りです。『人間』も『亜人』も皆仲良く暮らしていますよ。それにしても、なんて美味しいのかしら! アリサ様、是非帝国にもこのケーキを広めていただけませんか!?」
それに答えたのはケーキに夢中になってる近衛副隊長のカレンさんだ。なんなら『聖域』に滞在中にケーキの作り方を覚えていくかね?
彼女もまた若いね。目立つのがその蒼と白のグラデーションがかかったポニーテールの髪だ。そしてうなじが色っぽい。
「お察しかとは思いますが私にも妖精の血が混じっておりますので、見た目ほど若くはないのですが……」
「なるほど~うちらカレれン達と数日過ごしてて、どっか懐かしい感じしてたんだけどさ、ルヴィアスの話聞いてようやっとわかったよ~カレれンってば、フォレストくんと一緒にいたダルクくんに似てるんだ」
いや、フォレアルーネ……「カレれン」って、ちゃんと呼んであげなさいよ? しかし彼女もまた三神国の一つ『ルーネ・フォレスト』の側近の末裔さんか。
「はい。ダルクは私の祖先です、王であったフォレスト様の近衛を努めていたと聞き及んでいます」
「うんうん♪ ダルクくんはフォレストくんも「頼りになる親友だ」って言ってたくらいだったんだよ~なっつかしいなぁ~」
そう言って笑い合う二人になんかほっこりしちゃう、時を越えて、代を経て縁深い人物がまたこうして巡り合うのって面白いものだね。
「はは、やっぱり『聖域』に……三人の女神達に会いに行くならさ、彼女達とも関わりの深い奴を連れて行こうって思ってさ、選んだのがこの三人ってわけなんだ。三人共に俺の護衛って理由にも相応しい地位にいるからね」
「じゃあ、オルファはやっぱり……オリビアの子孫?」
なるほど、どうやらルヴィアスなりに気を遣って人員を選んでくれたらしい。レウィリリーネもその話を聞いて、三人目のオルファに目を向けた。
「はい。僕はオリビアの子孫、フェイのオルファです! 改めて宜しくお願いします。レウィリリーネ様の事、リュール女王陛下の事。代々伝えられておりました」
オルファは一人称が「僕」だから文章だけだと誤解されるけど……女の子だ。いわゆる「ボクっ娘」ってやつだね。でも、別にボーイッシュって訳じゃなくて、茶髪の髪は綺麗なストレート、毛の量が多いのかふわりとしていて、さわり心地が良さそうで、肩より少し長いかな?
魔法の得意な妖精フェイである彼女は帝国の魔法師団、団長で『リーネ・リュール』の末裔だと言う。いやいや、それにしても三神国の末裔達が皆凄い役職に就いているものだこと。それだけ彼等が優秀ってことなのかな?
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【ゆかりとシェラザード】~あの台詞をガチ考察~
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「さぁみんな~賑やかに談笑するのもいいけど、次の議題に移るよ~?」
ルヴィアスの護衛としてついてきたかつての三神国の末裔達の紹介も終わり、それぞれ縁のある者を中心に、みんな話に華を咲かせている。話が盛り上がるのはいいことだと思うけど、今はまだ会議の途中だからね。やんわりと声をかけて議題を進めようとする。
「ああ、いや……魔女さん。シェラザードはどうしたんだい? 確か魔女さんが保護してるんだよね?」
「ちょっとアホぽん!」
「ん。折角だし一緒に紹介しよ? アリサお姉さん」
「うぇっ!? ちょ、まだ心の準備が……」
「いいですね! 彼女ともう一人もこの場で皆に紹介しましょう?」
ルヴィアスの言葉に相反する答えを出す妹達だ。それはシェラザードとの面会について。魔神の呪いを受けてたと言う話はこの場にいるみんなが知っている事だけど、魔王として猛威を振るっていたのもまた事実。中には割り切って考えることが出来ない者もいるかもしれないので、正直、今回は見送る事も視野に入れていたんだけど……まぁ、いいだろう。
「ティリア姉さま、フォレア。まだ決心がつかないのですか?」
「ん、ヘタレ」
「だ、だってさぁ~」「へ、ヘタレじゃないやい! ただ、その~気まずいじゃん?」
それをヘタレって言うんだよ二人共。まぁ、気持ちはわからなくもないけどさ……
「それはいけないよ二人共。こう言うのは早い方が良いんだ、時間を置けば置くほどますます気まずくなってしまうものさ」
おっと、ルヴィアスが私の言おうとした事を全部言ってくれたね。そうなんだよね、こう言うのって時間が経つにつれ、拗れるものだ。早いうちにしっかり話して和解した方がいい。
「私とフォーネがケンカしたときみたいな?」
「スケールが違いすぎるわよ、リール」
「こう言うとき女ってめんどくせぇよなぁ……俺と爽矢がケンカしたときはお互いにぶん殴りあってスッキリするぜ?」
「大地~女性を目の前にそんなこと言わないの! 私も怒っちゃうよ?」
あ、いや……ごめん水菜! って話を聞いて呆れたように口を挟む大地は、水菜に睨まれてはシュンとなる。口は災いの元だよ大地くんや。でも、確かにスケールの違いはあるけど、リールとフォーネの言うようにちょっとケンカしたみたいなものかもしれないね。
「はい、ティリアもフォレアも覚悟決めなさい。直接会うのが気まずいって言うなら、『無限円環』と映像通信で繋ぐから」
「あーもう! わかったわよ!」「ええい! 女は度胸だ!」
発破をかけられたティリアとフォレアルーネがようやく覚悟を決めたようなので、『無限円環』との映像通信を繋ぎ、シェラザードとゆかり。ついでに聖女の様子を映し出す。
「ちょっとアリサ! このお姫様どーいうことよ!?」
「いやいや、待て待てシェラザード。興奮するな!」
「あはは~シェラザードとゆかりはどう思ったの?」
映し出された映像は三人がテレビの前でぎゃいぎゃいと騒ぐ様子だ。彼女達がやっているのは、以前に説明した、私の前世の記憶から魔法で再現した、某有名RPGの一作目。
レベル上げもだいぶ頑張ったようで、ドラゴンをやっつけて囚われていたお姫様を救い出して、街の宿屋に泊まったところだね。
「そ、そうね……ゆかり。いえ、この主人公の少年? 青年? は、魔物に囚われていたお姫様の心労を慮って、抱き上げて連れ帰るっていう、紳士だと思うのよ?」
「そうだな。この姫も「うれしゅうございます。ぽっ」とか言って気に入った様子だったな」
「でも! だからって宿屋に泊まって即「ゆうべはおたのしみでしたね」って、どう言うことよ!?」
そう、今議論が白熱しているのは、かの有名なあのセリフについてだ。このゲームに登場する件のお姫様はシリーズ中屈指の肉食女子の異名を持つほどだからね。『不滅』持ちの二人にとって、その流れは衝撃的だったのだろう。
「お、「おたのしみでしたね」ってことは……つまり、この主人公とお姫様は……「致した」と言う事よね?」
……真剣な顔で何言ってんだコイツ? あ、いやいや……いけないいけない。つい本音が漏れそうになってしまった。
「よくわからんが……定命の若い男女二人だぞ? 別に不思議じゃないだろう?」
「ばっ! ゆかり! いい? この娘は「お姫様」なのよ? 国王の娘って言う偉い立場なの!」
「うーん……つまり私とアリサ様のような関係として考えてみればいいのか? 私がこの主人公でアリサ様がお姫様だとして?」
そうよ! って力強く頷くシェラザードさん。うーん、この辺りの考察をガチでやるのは流石に恥ずかしくないのかね、チミ達~? 喩えだとしても私も恥ずかしくなってきたよ。
「うむ。まず私からそう言う行為に至ろうとは思わないと思うぞ? 何せアリサ様は私の恩人だからな!」
「そうよ、貴女がアリサを敬うように、この主人公だって一国のお姫様に手を出そうだなんて思わないはずよ? だから、迫ったのはこのお姫様からだって事になると思わない!?」
めっちゃ熱弁しとるなぁ~顔赤らめて照れるくらいなら、別に語らなくてもいいんじゃないの?
「ああ、なるほどな。ではこの姫は何故この主人公に迫ったんだ?」
「それは……アリサ! さっきから傍観してないで答えなさいよ! ちゃんと交ざりなさい、一緒に遊んでるんだから!」
「はいはい、そうだね……私が思うに~このお姫様ってずっと魔物に捕まってたじゃん? きっとすんごく怖かったと思うんだよね? 箱入り娘で何の力もないみたいだし。
そこに颯爽と現れて、救い出してくれた勇敢な主人公に助けられて、宿屋で落ち着いた時、安堵感と、もし彼が来てくれなかったらって言う想像をしちゃったりしてさ、もういてもたってもいられーん! ってなったんじゃない?」
自分のピンチを助けてくれる白馬の王子様みたいな、テンプレ展開だけど、リアルにそんな経験しちゃったらガチに惚れるんじゃないかな?
「さ、流石ねアリサ! そう、きっとそうだわ! やっぱり愛よね愛!」
「わ、私もアリサ様の事大好きです!」
ネタバレになるから言わないけど、このお姫様と主人公は将来的に結ばれて幸せな生活送るからね。うん、やっぱり愛だね。
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【妹達とシェラザード】~ゆかりと懐刀~
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「え~? なんだか、とても楽しそうなのですけど……アリサ様、あれは何をされているんですか? あの箱は? 繋がったあの線は? 実に興味深いです!」
「あの手に持った四角いのはなんだ? それにあの箱に映る映像は一体? 全然わかんねぇぞアリサの嬢ちゃん」
そんな『無限円環』内の三人の様子を見ていたラグナースとゼオンが反応した。ラグナースは商人ゆえか、ゲーム機とテレビに興味津々の様子で、ゼオンの言ってるのはシェラザードが手に持ったコントローラーだね。うむ……まぁ、この世界の住人にはまだまだテレビゲームは理解に苦しむ物なのだろう。
「あの黒髪に赤いメッシュ入った娘、カッコいいね!」
「黒い上着とミニスカートに赤いライン入ってて、何て言うのか……カッコよくて可愛い!」
リールとフォーネはゆかりの着るパンクファッションを見てはきゃっきゃとはしゃいでる。やはり珍しいんだろう。
「ぐぬぬ……何を、何をやってんのよシェラザードはぁ!?」
「ずるーい! なんかめっちゃ楽しそうにしてんじゃーん!!」
そしてティリアとフォレアルーネである。さっきまで凄い覚悟決めて、「さぁ行くぞ!」みたいな感じで、いざ、御対面! と、くればどうだ? 目に飛び込んで来たのは、楽しそうにしてるシェラザード達の様子。一瞬ポカーンと拍子抜けして、気付いたようにハッとなっては、ウガーって叫び出した。
「うわっ!? びっくりした~って、あら? ティリア達じゃない。それにポンコツ姉妹達」
「へぇ~このやたら全身白くて、アホ毛の女が主神なのか? アリサ様、この映像は向こうの世界と繋がっているのですか?」
ティリアとフォレアルーネの声に驚いて振り向いたシェラザードとゆかりは、そこでようやく映像通信で見られていたことに気付いたようだ。軽口を叩くシェラザードの耳が少し赤らんでいるから、照れ隠しなんだろう。ゆかりは妹達とは初対面みたいだ。
「あ、うん。久し振りねシェラザード……って、様くらい付けなさいよ! お淑やかなお嬢様だったあんたはどこ置いてきたのよ?」
「ふーんだ。イヤよ? 私はもう貴女の部下じゃないもの、それに取り繕う必要ももうないわ」
あらら、プイッてそっぽ向いちゃった。でも、素っ気なくしてるように見せてもみんなには、どんな顔すればいいかがわからない~ってのがバレバレなんだよね。
「……アリサから聞いたわ。私の処遇の事……その、何かと便宜をはかってくれたみたいで……あ、あ……ありがとう……そして、迷惑かけて、ごめんなさい……」
か細く、今にも消え入りそうな……そんな小さな声。だけど、シェラザードはしっかり、ティリア達、妹達に対して謝罪と感謝を述べた。
「シェラザード……」
それは誰の声だっただろう?
妹達はシェラザードの言葉に泣き出しそうな表情を見せる。
「……赦します。そして私からも謝罪しましょう。ごめんなさい、シェラザード……私が不甲斐ないばかりに貴女の苦しみをわかってあげられなかった」
「私達も同じです……シェラザード。ごめんなさい」
「ん……貴女の辛さ、全然わかってなかった……ごめん」
「あ、あのさ……うちら、シェラっちに相談にのってもらってばっかで、シェラっちのことさ、全然わかってなかったよ……ホント、ごめん!」
妹達の真摯な謝罪。四人とも改まって、真剣なその『想い』をシェラザードに向けている。シェラザードは俯いて、ただ涙していた。
これで少しはシェラザードと妹達の関係も修復されるといいな。まだまだ時間もかかるだろうけどさ、そこはゆっくりと、ぎこちないながらも整えて行けばいいと思う。
「なんだ? よくわからないが、ケンカでもしてたのか? お互いこうして謝っているんだ。いつまでも湿っぽくしてても仕方ないと思うぞシェラザード?」
「……さっきから気になっておったんじゃが、そこな娘は誰じゃ魔女よ?」
で、そんなしんみりとした空気を何一つ読まずにぶったぎるのが、ゆかりちゃんである。そんな彼女を呆れたように見るシドウが誰ぞと私に聞いてきた。
「ん? そう言うお前は黄龍か? 久し振りだな、私は黒竜だよ? 人の姿見せるのは初めてだったか?」
「何だと!? 貴様黒竜なのか!?」
「おー! お前何処に行ったのかっておもってたんだぞー?」
「カカカ♪ 『竜神』の庇護から飛び出したはぐれ者がまさか魔王に取っ捕まっておったとは!」
素性を明かすゆかりに『懐刀』のリン、ジュン、珠実がさぞ驚いたように声をあげる。あれま、あんた達って知り合いだったのね?
「ええっ? あなた達彼女と顔見知りなのですか?」
「これはまた懐かしいのぅ~そうじゃぞ女神よ。ヌシ等が生まれる前から儂等は知り合いじゃ。ホッホッホ、所謂腐れ縁と言うやつじゃの」
アルティレーネも知らなかったのか、驚いてシドウに確認しているね。ゆかりってそんな古参だったのか。
「フェンリルに天熊……縮んだな? 九尾は相変わらずだが、って……お前達はまだ人化するのめんどくさいとか言ってるのか!?」
「あっ! しまった!」「こ、これは、あ、アレなんだぞー?」
リンとジュン、珠実の姿を認めたゆかりがその様子を見て色々と察したようだ。あわてふためくリンとジュンの姿が面白いね♪ ジュンや、アレってなんだねアレって?
「よいぞよいぞ! 黒竜よもっと言ってやるのじゃ♪」
「九尾よ、私は先日アリサ様から「ゆかり」と言う気高くも尊い御名を賜ったのだ。黒竜など無粋に呼んでくれるな?」
ふんすっ! って勝ち誇ったかのように鼻を鳴らすゆかりちゃんである。よっぽど気に入ってくれたんだね、その名前♪
「ほう、ならば妾のことも「珠実」と呼んでくれるかの? 妾もアリサ様から名を賜ったゆえな♪」
《えー! いいないいなーっ!》《俺達も名前ほしいぜゼーロの兄貴ぃ~!》
《甘いわ! ゆかり殿は『懐刀』に並ぶ黒竜殿だぞ? お前等木っ端共と同列で語るわけにいかんのだ!》
ブーブーってグリフォン達から文句を言われまくっているゼーロが一喝するけど、二~三羽くらいなら私は名前考えてもいいよ~? あんまり敷居を高くしてグリフォン達のやる気を削いじゃダメだぞ?
「そうか「珠実」か、いい名前だな! 流石アリサ様だ!」
「うむ! 「ゆかり」も良い名じゃ♪ お互いアリサ様に出会えて良かったのぅ♪」
珠実とゆかりは仲がいいね。お互い笑顔でおしゃべりしてる様は見てるだけで嬉しくなる。
「ほらほら、リン様もジュン様も逃げようとしてないで、一緒に人化の術を学びましょう? 僕も覚えたいので、珠実様にお願いしたんですよ?」
「カインは勤勉であるな……余は細かい事は苦手なのだが、致し方あるまいな……」
「か、カインも覚えるのかだぞ? そ、そんならオイラも負けてらんないんだぞ~!」
「ホッホッホ! こりゃぁ愉快じゃ♪ お主達もようやっと観念したようじゃのぅ?」
一方でこっち、リンとジュンに「自分も学ぶから頑張ろう」って誘うカインのファインプレーが効いたようで、この二頭も長年避けていた人化の術を覚える気になったみたい。そんなやり取りを面白そうにシドウは笑うのだった。
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【待ちに待った】~ケーゼ~
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妹達とのわだかまり? も、氷解してきたところで、シェラザード達にも会議に参加してもらうことにする。続いての議題である「魔王ディードバウアー」について、シェラザード達の意見も大いに役立つのではないかと思っての采配である。
「俺からも謝っておくよシェラザード。ごめんな? 君が魔神から呪いを受けてるって知った時にはもう遅かったんだ……なんせ勇者達に倒された後だったから……」
「いいわ、ルヴィアス。過ぎた事だもの……それより今は……」
申し訳なさそうにシェラザードに対し、謝罪するルヴィアスだけど、シェラザードはあんまり気にしてないみたいで、正直ちょっと意外。「なんであんたはのほほんとそこにいるのよ!?」とか喚き散らすんじゃないかなって思ってたよ。
「そう、今はこのアリサ姉さんの作った新作料理の数々の方が大事! うまーい♪」
ははは……はぁ~もう、みんな食いしん坊なんだから……『セリアベール』でも作ったハンバーガーとか、新しくハッシュドポテトとか、魚の煮付けだの、餃子だのなんだのと、和洋中問わず、バランスも考えずにとにかく沢山作った料理が、見る間にみんなの胃の中に消えていく。
「そ、そんなアリサ様! 街に広めようとされている料理の数々以外にもまだ、これほど……っ!」
「いやぁ~美味い! アリサ様のお料理は本当に美味しいですね! ファネルリア、頑張って覚えてくれ、もし俺も一緒できるなら頑張るからさ!?」
「ええ! 頑張るわ! あなたと可愛いシャフィーの為にも♪」
だいぶのんびり進行してた会議だから、そろそろお昼も近いってことで。時間的にも私の新作料理の紹介を挟んだのは悪くないのかな?
ドジュウゥゥーッ!! って超火力で火を通される炒飯を魔法で大量に踊らせ作り上げていく。人数が人数なのでもう、一気に作らねばならんのだよ!
んで、ラグナースがなんか、「まだレパートリーあるの!?」ってびっくりこいているけども、まだまだあるさね。このくらいで驚いてもらっちゃ困るよん? ネハグラは奥さんのファネルリアに是非、私の料理の数々を覚えてほしいそうだけど、彼自身も料理に興味があるのかな? それとも奥さんばかりに任せるのをよしとしないだけか?
「オムライスなんて作るの久し振りだけど……結構覚えてるもんだね、『不朽』の効果かな?」
「多分そうだよ。こっちも餃子なんていつ以来かって感じだけど、美味しく出来てるし」
神殿内には専用のキッチンがあるんだけど、お客さん達の歓迎の為にもパフォーマンスとして会議室内で作っている。隣の聖女にはとろとろオムライスを、魔女の私は炒飯をそれぞれ作るのだ。お手伝いには私にユニが、聖女に珠実がついてくれている。二人とも一生懸命に動いて頑張ってくれているので助かるね♪
「いやぁ最高だね! なんて沢山の料理! 『ルヴィアス魔導帝国』じゃこんなに用意出来ないよ。餃子うまっ!」
「ですね、帝国じゃその技法もそうですがこれだけの食材が手に入りませんから……これが芋だなんて、すごい……」
「帝国じゃ肉とか野菜に『ケーゼ』かけて食べるくらいです、あぁ~なんて美味しいのこの炒飯!」
「オムライスもすごいぞ! 包まれた玉子にスプーンを入れればトロリと中身が流れ出す! これを赤く染まったライスに絡めて食べると、うーん! 美味すぎるぅぅ~♪」
うん。『ルヴィアス魔導帝国』から来た四人も、そして他のみんなも美味しそうに食べてくれているね、よかったよかった♪
ルヴィアスは特に餃子が気に入ったようだね、タレを作るのに四苦八苦したけど、概ね前世の物に近いのが出来てよかったよ。
オルファはハッシュドポテトを食べて、芋がこんなに美味しくなるなんて~みたいに驚いてる。そして、どうやら北方の帝国でも調理技術はそれほど発展してないみたい。
カレンは炒飯に舌鼓を打っているね。強烈な火力でパラッパラに焼き上げたライスにお肉や野菜の美味しいとこを醤油、卵、コーチョ等で絡めた一品だ。前世ではどうしても火力が出せなくて色々工夫したね、マヨネーズ絡めてみたり、冷や飯を流水で洗ってぬめりを取ったり……
炒飯、餃子とくれば、当然ラーメンもほしいよね? でもラーメンは難しい、納得のいく麺にスープの研究だけでも途方もない時間が必要なのだ。今は無理でもいずれ作りたいね!
バロードはオムライスにご執心だ。『セリアベール』産の季節外れのトマトを使って、ケチャップも作ってみたの。ケチャップって言えばチキンライスが真っ先に浮かび、流れでオムライスが浮かんだので、作ってみた。これも前世で一時期ドハマリしたんだよね、玉子から溢れるその半熟トロトロに憧れたのだよ。
「なんか今聞きなれない単語が出てきたような……カレンちゃんや、『ケーゼ』って言わなかったかね?」
「え? ええ、アリサ様。私達の帝国の唯一の特産品なのですけれど……その、お恥ずかしながら他国にはあまり人気もありません」
ケーゼケーゼ……カレンが言うには帝国の特産品らしいけど人気がないらしい。でも、どっかで聞いたことあるのよね、その名前……
「いや、ルヴィアスよぉ~アレは人気出ねぇのも、無理からぬっつーか……」
「そう、ですねぇ……決して美味しくない訳ではないのですが」
ゼオンとラグナースがその『ケーゼ』について話してる、二人は食べたことがあるみたい。
「うーん、何て言うか独特の味と匂いだよね~?」
「私は嫌いじゃないよ? あのネチネチした食感も結構好きだし」
おやおや? リールとフォーネも話に参加したぞ? え、なになに? 『セリアベール』にもお店に並んでたの? むぅ、私としたことが見落としていたと言うのか!?
「以前ディンベルさんが仕入れて来たんですよアリサ様。でも結構好き嫌いが別れてしまったようで、以来見かけなくなりましたね」
ふぅん、そうなんだ? ジャデークが私も『ケーゼ』に興味を持ってるって気付いたみたいで、疑問に思ってた事を教えてくれた。それにしても、一体どんな食材なんだろう?
「娘達は好きだったわよねファネルリア?」
「そうね、シャフィーもネーミャちゃんも喜んで食べてたわ。因みに、私も嫌いじゃなかったわよ? でも、あの見た目がねぇ~切り取ってしまえば問題ないのだけれど……」
んん~? 美味しいけど見た目がアウトなの? ナターシャとファネルリアが思い出しては苦笑いしてるけど、シャフィーちゃんとネーミャちゃんは好きだったと言う。
「あ~やっぱり?」
「表面にカビが生えてるのは敬遠されちゃいますよねぇ~?」
ふぁっ!? ルヴィアスとオルファの言葉でわかった!! そうだよ! 『ケーゼ』って!
「チーズのことじゃん!!」
バロード「アリサ様の『偏在存在』凄いなぁ(;゜д゜)」
カレン「元々神で元魔王で現在うだつのあがらない皇帝陛下なら真似出来ます(´・ω・`)?」
オルファ「無理でしょ(¬_¬)出来てたらとっくの昔に使って僕達をもっと振り回してたさ┐(´д`)┌」
ルヴィアス「君達容赦ないなっ!?Σ(´□`ノ)ノまぁ、実際『並列存在』も使えないけどさぁ~(-∀-`; )」
帝国の三人「そのまま使えずにいて下さいよ?( `ー´)只でさえあんた面倒なんだから!(#゜Д゜)」
ルヴィアス「ふーんだっ!(`へ´*)ノそう言うこと言うなら意地でも覚えてやるから覚悟しておきなよ!?(`Δ´)」
帝国の三人「あぁ~( ´△`)もぅ既に面倒になってるし……(-_-;)」
ティターニア「なんだかルヴィアス陛下に親近感を感じますわぁ~(’-’*)♪」
魔女さん「アハハ( ・∀・)それだけ仲がいいってことだね(^ー^)」
聖女「私達『聖域』のみんなもそうありたいって思うよ(*´∇`*)」
大地「俺達『四神』はともかく、ジジイ達『懐刀』は頭堅ぇからなぁ~ちっと難しいかも知れねぇけどな~Ψ(`∀´)Ψケケケ」
リン「小僧が生意気な口をききおって!(*`ω´*)」
珠実「そういうとこじゃぞリンよ(  ̄- ̄)」
ゆかり「ははは(*´▽`)天狼はプライドばかり高い、変わってないな?( ´ー`)」
リン「うぐぅ……(-_-;)」
ティリア(身分差関係無く、皆が本音を言い合える……『神界』もそんな風に変えていければ……ふふ( *´艸`)ホント、学ぶこと多いわね(´・∀・`))
フォレアルーネ「あ、ティリア姉その餃子食べないならうちがいただきぃ~(ノ゜∀゜)ノ」
レウィリリーネ「ん(-ω- ?)ティリア姉さん、折角のアリサお姉さんの玉子焼き食べない(・_・?)じゃあ、あたしがもらう」
ティリア「ふぇっ!?Σ( ゜Д゜)ちょ、食べるわよ!ヽ(゜Д゜)ノこらぁフォレア!( `д´)レウィリ、はしたないでしょう!?(≧Д≦)」
ユニ「アハハ(´▽`*)女神様達も仲良しさんだよねぇ~o(*⌒―⌒*)o」