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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
65/211

63話 魔女と長い会議

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【協力した理由】~誰のため?~《ティリアview》

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 ルヴィアスも元々は私、主神ティリア直属の部下である一柱の男神だった。彼が何故魔王となって、妹達の創造したこの世界『ユーニサリア』へ降りたのか、その理由からアリサ姉さんには話さないといけないだろう。


「ふむむん、随分と遠い昔からのお話しになるみたいね。まぁ、魔王って言うからには、元々神様だってことらしいから仕方ないか……」

「そう言うこと。んじゃ続けるね、魔神と一緒にこのアホぽんまで妹達の世界にちょっかい出し始めたって聞いた時は流石に私も頭抱えたんだけど……」


 あ、そうそう。いい忘れたけど、ここは『聖域』の『女神の神殿』の内部にある一室。アリサ姉さん達が帰ってきた時、「異空間に隠れてびっくり作戦」をこのアホぽんこと、ルヴィアスが実行に移すも、呆気なく看破されて鎖で縛られてミノムシ状態にされたのね。

 一応私達から、「コイツは敵じゃないよ」って説明して、アリサ姉さんを納得させないと、ほどいてあげられないので、今こうして『聖域』の主要メンバーで集まっているの。


「驚いたぜ……ルヴィアスお前、魔王だったのかよ?」

「おー、ゼオン久し振り~♪ 『氾濫(スタンピート)』の応援に行けなくてごめーん! 俺のとこも問題が起きててな~」


 メンバーの中にはアリサ姉さん達が『セリアベール』から連れて来たお客さん達もいる。『セリアベール』の代表者のゼオンもその中の一人ね。と言うか、何? 二人は知り合いだったの?


「僕も驚きました。まさか北の『ルヴィアス魔導帝国』の皇帝様が魔王だったなんて……」

「え、マジで? 『ルヴィアス魔導帝国』って、あんた魔王のクセに国まとめてんの?」


 そう、お客さんのラグナースが今口にしたように、ルヴィアスは北方の小国家群を一つにまとめあげて帝国を築いたのだ。アリサ姉さんも驚いてるけど事実なのよん。


「北方は極寒の地でね、人が住むにはあまり適していないんだよアリサちゃん」

「そこで、魔法の力で少しでも住みやすくした国々が興ったんだけど、大昔から争いが絶えなくて……」

「そこに現れたのが、後の帝王ルヴィアスである。と、聞いたことがあります」


 うんうん、やっぱり伝わっているんだね。リールと、フォーネ、それに黒フードの連中に利用されたジャデークがアリサ姉さんに捕捉の説明をしてくれているわ。


「さて、どこまで話したっけ? このアホぽんがこの世界にちょっかい出し始めたってとこか。さて、アリサ姉さん。以前話しに聞いたと思うけど、魔神と一緒にこの世界に手を出してきた魔王は何人いたかしら?」

「確か七人よね? 『七大魔王』とか言われてたんだっけ?」


 私が話を戻して、アリサ姉さんに確認すると、「う~ん」って顎に手をあててそう答える。


「うん、正解よ。そこで考えて見てほしいの。私が対抗策としてアーグラス達を喚んだけどさ、それだけで七人もいる魔王達をどうにか出来ると思う?」

「ううん、無理だと思う。だからメルドレードや、三王家、妹達に色々な人が協力してくれたおかげで討伐を果たせたんでしょう?」

「うむ。我々『セリアルティ聖騎士団』も勇者殿達と共に戦いましたな!」


 続けて質問した私にアリサ姉さんが答えると、一人の騎士がそう付け加えた。あれ、彼ってもしかして当時の聖騎士? えっと……どういうこと? さも体験談のように語っては頷いているけど……いや、今は置いておこう、後でアリサ姉さんの話も聞かないと。


「その協力者の一人がこのアホちんってわけなんだよアリサ姉。いわゆるスパイってやつ?」

「ん、最初は魔神側に付いたのかって疑ったけど……ティリア姉さんと秘密裏に連絡を取り合って、あたし達に助言をしてくれてた」


 へぇ~って感心したようにフォレアとレウィリの話を聞くアリサ姉さんは、ルヴィアスへの警戒を弛めたのか、彼の下半身を縛る鎖を部分的に解除した。


「転がったままじゃどうにも様にならないからね、はい、椅子。その調子でもっと私を納得させてくれたら自由にするから」

「えっ? あれ、この椅子ってどこから……魔法? マジか、すげぇな……んじゃ失礼して座らせてもらいますよっと」


 魔王に対する警戒心を植え付けたのって私達だから、アリサ姉さんがここまで用心深いのも仕方ないわね。まぁ、私に任せておきなさいよ! なんだかんだでこのアホぽんってば大役を果たしたんだから。


「アリサお姉さま。ルヴィアスは本当に大丈夫です。彼は魔神に疑われることのないように、自ら魔王となり、『神界』を捨てた程の覚悟を示してくれたのですよ?」


 あ、アルティが先に説明しちゃった。そうなのよ、ルヴィアスってば『神界』での地位も何もかもを捨てて、魔王になってまで私達に協力をしてくれたのよ! どう? アリサ姉さんもグッと来たでしょ?


「……じー」

「……えっと、やっぱ信じてもらえない……のかな?」


 その話を聞いたアリサ姉さんは、何かを確かめるかのようにルヴィアスの顔をじーっと、穴が空きそうなほど見つめる……いや、凝視ってのがしっくりくるかしら? 何を思っているのかしらね?


「んで、どの子がお目当てなのかしら帝王くん?」

「ぶふっ!? え、いやいや! なな、何を仰ってますことやら!? 俺は主神ティリアの部下としてですねぇ~!?」

「そーいうのいいから」

「うおぅ!?」


 え? え? ちょ、ちょっとどーいうことよ!? アホぽんをしばーらく凝視してたアリサ姉さんが、漸く口を開いたと思ったらなんかすっとんきょうな事を言い出して、アホぽんを問い詰めてる!


じぃぃぃーっっ!!!


 それがきっかけで、集まった皆の視線を一身に浴びることになったルヴィアスは、だらだらと冷や汗をかいては視線を右往左往させて、如何にも挙動不審になっている。

 待て待てまてーい! ウソでしょ! じゃあルヴィアスは私達の誰かにその……お目当ての子がいて、その子のために頑張ってたって事なの!?


「だ、誰よ!? アホぽん! 誰の為に頑張ってたのよ!?」

「あーあー! もうマジかよ!? なんでバレちゃうんだよ~? こっぱずかしいからカッコつけてたのにぃ~魔女さん怖いぃぃ~」

「うわぁーっ! やっぱりアリサちゃんの睨んだ通りなんだぁ! ねね! 誰なんですルヴィアス様!?」

「へぇぇーっ! ルヴィアス、お前なかなかにかっけぇ事すんじゃねぇか! 見直したぜ!」


 思いきって私も問い詰めると、観念したのかとうとうその通りであると認めるアホぽん! 羞恥にもんどりうってるけど、その事実にリールとゼオンが沸き立つ、いや、集まっている皆もだ。


「そこんとこ白状したらその鎖を解いてあげましょう~♪ さぁ、教えて教えて~?」


 あぁ……これ、アリサ姉さん楽しんでるわね? 顔がめっちゃ嬉しそうだもの! うむむ! 普段からアイギスとの仲をからかいすぎたかしら? すっかり女の子になっちゃって!


「わ、わかった! でも流石にアレなんで、その魔女さんだけに~で、いい?」

「おうおう♪ 私も鬼じゃないからね、それでいいよ♪ じゃあこれで……」


 あっ!? 狡い! アリサ姉さんってば通信魔法の『個人通話(ウィスパー)』に切り替えた! ふんふんって頷いてアホぽんの答えを聞くアリサ姉さん。くぅ、二人とも、唇の動きを見せないように私達に背中を向けおった!


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【長い会議】~沢山あるの~《アリサview》

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「なるほどなーるほどぉ~むほほ♪ そういうことなのね! わかったわ、帝王くんを信用するよ!」


 そう言って帝王くんを縛ってた『神を縛る鎖(デ・アラ・チェイン)』を解除する。


「あ、ありがとう魔女さん……あの、今の話はくれぐれも!」

「うんうん! 大丈夫よ、誰にも言わないって……そう軽々しく言えない内容だったもん。安心してちょうだいね!」


 ティリア達のルヴィアスに対する説明を聞いていて、な~んか違和感と言うか、違うな~って感じてたのよ。勿論私の基準での判断だけどさ、でっかすぎるリスク背負って上司と言うか、会社? の為に~とかする普通? 私はしないね、絶対。そう思ってじーっと観察して、カマかけて見たらビンゴですよ、ビンゴ!

 以前にアルティレーネが「私達は愛を大切にしている」って言葉を思い出したのも、大きいきっかけになったんだけどね……彼が誰をってのは私の口からは言わないけど、陰ながら応援させてもらおう。


「ぜんっぜん! 納得いかないんですけどぉぉーっ!? アリサ姉さん! 説明をもとーむ!」

「だめでぇぇーす! ティリアもみんなも、この件に言及するのはダメ! 帝王くんが自分から話すのを待ってあげてね?」


ブーブー!!


 私が文句たれてきたティリアを含め、みんなにも無理に聞いたりしちゃ駄目だよって言うと、一斉にブーイング! ブーイング! ええい! 駄目だってば!


ガタッ! バァンッ!!


「皆さん、お静かに! ルヴィアスの気持ちも考えて下さいね? それとも、彼を晒し者にして嗤うおつもりですか!?」


しーん……


 アルティレーネ偉い! ブーブー文句が鳴り止まない中、一人勢いよく立ち上がり、テーブルを叩いて大きな音を出し。よく通る声で全員を叱りつけた。そうそう、こう言うことで笑われたり、からかわれたりするのってマジでキツイし、嫌だよね。


「「「「すいませんっしたぁぁーっ!!!」」」」


 おうおう、アルティレーネがこんな風に怒る事って滅多にないから、ブーイングたれてたみんなが一斉に謝ってきたよ。

 さて、ルヴィアスが信用に足る人物ってわかったことだし、いよいよ会議をおっ始めましょうかね。


「はいはい。それじゃあ改めて会議を始めるよ? 今回は議題も多いから途中長目の休憩を挟もうと思うわ」


 場が落ち着いたことを確認して、私は席を立ち、この会議室に配置された円卓の正面に移動すると、ミーにゃんポーチから最早馴染みとなったホワイトボードをドンって置く。


「今回から室内になったからね。『ガルーダナンバーズ』達とか妖精さん達、『四神』や『懐刀』の部下のみんなにもこの会議の内容をお届け出来るように、各地に映像通信(ライブモニター)飛ばすから、ちゃんと見て、聞いてちょうだいね!?」


 『セリアベール』でも街の住人達に見てもらうために用意した街頭テレビタイプのでっかいモニターで見れる映像通信(ライブモニター)を神殿前の広場にどどーんと魔法で設置。双方に連絡が取れるから、テレビと言うよりはリモート会議だね。


《ふむぅ、器用だ器用だと思っていたが……街に行ったことで更に、その器用さに磨きがかかったようだなアリサ殿は》

「そう言えば、我を模したオプションも未だ各村落に配置されたままと聞くな」


 神殿前の広場を映し出した、この会議室のモニターからゼーロとユナイトの声が聞こえてくる。うん、どうやら稼働に問題はなさそうだ。


「まぁ、その辺も含めて話すよ。さて! 今日の議題はこちら!」


 ・お客さん紹介

 ・黒フード達と魔王ディードバウアー

 ・アリサさんの新作料理紹介

 ・鳳凰の処遇

 ・セリアベールとの交流

 ・ルヴィアス魔導帝国の問題

 ・新しい鍛練方法

 ・他 もろもろきゅう


 いや、多いな……順不同で箇条書きにずらずらって並べて見たけど、一気に色々と増えすぎでしょ? 全部消化出来るのかなこれ……?


「おお、本当に多いな!」

「どの議題も興味深いのぅ、魔女よ先ずはどれからじゃ?」


 私が書き上げたホワイトボードを見るやリンとシドウが、その議題の多さに声をあげる。そうなのよ、パッと思い付くだけでもこんだけあんのよねぇ~さて、どれから行くかだけど、やっぱり「お客さん紹介」から始めないと行けないだろうね。


「お客さんの紹介から行くよ、じゃないと進められないし。その後……」

「「「「新作料理!!!」」」」


 OH……満場一致。


「はいはい、もう~みんなしてハモってまで気になるんなら仕方ないわね……この食いしん坊さん達め♪」

「しょうがねぇって、姐御が街に行ってる間部下共の失敗作ばっか食わされてたんだからなぁ」

「そうなんです……もう、苦いわ、しょっぱいわ、渋いわ……」

「臭いわ、ドロドロだわ、ジャリジャリだわ……」

「中には毒を有する物まで出たな……」


 そう嘆きの声をあげるのは『四神』達。白虎の大地、玄武の水菜、朱雀の朱美、青龍の爽矢だ。更に続いてティターニアは炭を食べさせられただの、『懐刀』の面々も似たような状況だったらしい。映像通信(ライブモニター)で広場を見れば、集まっているその部下さん達が揃ってテヘペローっ! してる。苦労したんだねぇ~。


「わかったわかった! 美味しいの食べさせてあげるから期待しててちょうだいね♪」


 どうやらみんなの部下さん達は探求心が旺盛のようで、自分達で創作料理に挑戦してたみたい。レシピに手を加えるってのはよくやる失敗の代表例なんだけどなぁ~。まぁ、この事を教訓に『セリアベール』で広める際には注意したいね。


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【お客さん紹介】~ゼオン~《アリサview》

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「ゼオン・ユグライア・セリアルティと申します。『聖域』の皆様方、此度の防衛にご助力下さった事。『セリアベール』の街を代表しお礼申し上げる!」


 そんなこんなで始まった会議。最初はお客さん達の自己紹介からだ。トップバッターはゼオンだね、彼に関しては防衛戦で『ガルーダナンバーズ』と『四神』達がチラッとだけ面識があるけど、顔を見た程度だったはずだ。


《指揮を采られていた街の王だな。我等の力が街を守る一助となったのであれば幸いだ》

「ええ、ゼーロ殿率いる『ガルーダナンバーズ』の皆様には制空権を制して頂けて、地上での戦いに専念できましたな。まことに感謝致します」


 映像通信(ライブモニター)越しにゼーロとゼオンが話しているね。今思うとゼーロ達がいてくれて本当によかったよ。


「へぇ~そうなんだ? この顔に似合わず、アルティレーネ様を模した可愛いぬいぐるみ持ったおっちゃんが王様ねぇ……」

「あ、パルモーも気付いたか? 実は私もあのぬいぐるみが気になっていたのだ!」


 ぷふっ♪ 立派な挨拶をしたゼオンだけど、その肩に乗ったあるちぃが手をフリフリしたり、よちよち歩いたりするものだからどうにもしまらない。パルモーとフェリアはそのあるちぃの方に興味があるみたい。


「……いや、俺がこのぬいぐるみを持ち歩いてるのには深い理由がありまして」

「ホッホッホ! どうせ魔女の仕業じゃろう? さしずめ護衛と連絡役と言ったところか?」

「おお、御老人! わかって下さるか! そうなのです、アリサの嬢ちゃん……アリサ様が用意して下さったのですが、武骨な自分には似つかわしくなくてですね……」

「やっぱり嫌なんですかユグライア!?」


 流石の洞察力を見せる黄龍のシドウ。即座にあるちぃを私の魔法だと見抜いたようだね。その事に理解者を得た! とでも言わんばかりに、ゼオンは嬉々としてシドウに笑顔を見せる……んだけど、そんなゼオンを見て悲しそうに叫ぶのがアルティレーネだ。


「あ! い、いや、アルティレーネ様。決してそのような訳ではなくてですね!」

「ぶはは♪ 成る程成る程、アリサ姉ってばまたおもろいことやらかしたね!」

「ちょっと~あんた私の可愛い妹を悲しませたら承知しないわよ~?」

「ん♪ とても可愛いぬいぐるみ……あたしも作ってフォーネにあげよう」


 そうすると、慌てて弁明するゼオンだ。ふふ、こりゃ面白い♪ その反応を見てフォレアルーネは笑いだし、ティリアは注意してるけど、これはわかってて言ってるね。レウィリリーネはあるちぃの出来栄えに感心した様子、フォーネにプレゼントしてあげるつもりのようだ。


「オイラはよくわかんないぞー? でも、コイツすごいぞーユグライアそっくりだぞー?」

「うむ、余もジュンと同じことを思っておった。ゼオンとやらは間違いなくユグライアの子孫だな」

「あ~、それはアルティレーネ様にお会いしたときにも言われましたな。そんなにそっくりなのですか? 祖先の肖像画とか何も残っていないもので……」


 ジュンとリンにはぬいぐるみの可愛さとかは理解できへんのんか? まぁ、熊と狼だから仕方ないのかな? んで、この二頭もゼオンがかつてのユグライア王と瓜二つであると言う、ゼオンが言うように、アルティレーネも出会った時に同じことを言ってたね。その事に同意するかのように妹達もうんうん頷いてる。


「ふぅむ、かのユグライアと瓜二つの貴様が『セリアルティ』を復興させようとするのにも、何やら因果を感じるものよ」

「そうね、私の領域から近いとこにあるし、見守っていてあげる。頑張るのよ?」

「アルティレーネ様のためにも是非復興させてほしいですね」

「それだけじゃねぇ、三神国の連中は皆気のいい奴等だったからな……ゼオン、俺達も協力は惜しまねぇ! いいか? 必ず復興させるんだぜ? 無念のうちに散っていったオメェの祖先達や、民達の為にな!」


 感慨深そうにゼオンを見つめる『四神』達、爽矢も朱美も水菜もその想いをゼオンに向けて吐露する。そして特に熱く語る大地が最後をしめる。私も街で感じた『セリアルティ』の気風と言うのか、人柄は彼等も気に入っていたようだね。


「はいっ! 必ずや『セリアルティ王国』の復興を成してご覧にいれます! それこそが『セリアベール』に住まう我等の悲願ですから!!」


 力強くそう私達に宣言するゼオンに、みんなも満足気だ。映像通信(ライブモニター)の向こうからは、やれ「頑張れ!」とか、「感動したぞ!」だの、「手伝えることがあればいつでも声をかけてくれ!」なんて声も妖精さんと部下さん達から挙がっている。なんか便乗してグリフォン達もぐわーぐわーって楽しそうに叫んでるけども。やっぱり代表者やってるだけあって、ゼオンはこう言う演説みたいなのが得意なんだろうか?


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【リールとフォーネ】~ラグナース~《アリサview》

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「リール・サイファ・フォレストです! かつての『ルーネ・フォレスト』の末裔です!」

「同じく、『リーネ・リュール』が末裔。フォーネ・ウィル・リュールと申します」


 続けて三王家の子孫組。リールとフォーネの紹介だ。さっきからレウィリリーネとフォレアルーネが落ち着きなくソワソワしてたからね。あんまり待たせるのも可哀想だし、順番的にも悪くないのでお願いしたよ。


「「せーのっ! 『聖域』のみなさん! よろしくお願いしま~す♪」」


 互いの名前を紹介した後、リールとフォーネの二人は目配りしてタイミングを合わせて、二人揃って明るく挨拶をしてくれた。どこぞのアイドルユニットかな?


わーっ! よろしくーっ! 可愛いーっ! こっち向いて~♪


 映像通信(ライブモニター)からは二人に対して黄色い声援が飛び交う。主に妖精さん達が多いね。セリアベールのノリのよさにも負けてないんじゃないかな? これ。


「リール!」「フォーネ♪」

「フォレアルーネ様!」「レウィリリーネ様!」


 フォレアルーネとレウィリリーネが席を立ち、それぞれ二人とも縁の深い子孫のもとに駆け寄っては、手を取り合い、巡り会えた事に喜んでいる。うんうん、えがったのぅ~。


(かつての三神国の王家末裔が、こうして皆無事に揃った事。なんて喜ばしいんでしょう……おめでとうございます女神様♪)

「ありがとうエスペル。本当に紡いだ縁が途切れずにいてくれて、良かった……」


 抱き合う二人の子孫と妹二人を目にして、エスペルがおめでとうを言うと、うんうんと、みんながアルティレーネの言葉にしみじみ頷く。


《しかし、彼女達もまた、話に聞いた黒フード達に狙われる恐れがあるのでしょう?》

《うむ、故に『聖域』にてお護りするのだ。今後はより警戒を厳とせねばならぬな》

「そうでっすね。『待ち望んだ永遠(アルカディア)』があるとはいえ、絶対に油断しちゃダメでっす」


 八咫烏のレイヴン、ガルーダのゼーロがゼオン、リール、フォーネの姿を見つつ懸念を口にすれば、アリスもそれに同意する。彼等だけじゃない、今後この『聖域』には多くの人が訪れる事になるだろう。アリスの言うように『待ち望んだ永遠(アルカディア)』があるとはいえ、それを過信してはいけないね。


「お初にお目にかかります。『聖域』にお住まいの皆様。僕はラグナース。『セリアベール』の街でしがない商人をしている者です」


わーっ! ラグナースさんだ! 彼が噂のレイリーアの恋人か! カッコいい~♪


 続いてはレイリーアの恋人のラグナースの紹介だけど。おやおや、ラグナースってば人気者だこと♪ 妖精さん達から歓声があがってる。

 と言うのも、アイギス達『白銀』がこの『聖域』に滞在していた時、彼等は妖精さん達を始め、『四神』や、『懐刀』の部下さん達ととても仲良くなっていたんだよね。で、その時にレイリーアが散々ラグナースのことを自慢しまくっていたのだ。


「ありゃ? ファムさんとギドは来てねぇのかい?」

「ドガの野郎めがレイリーアに負けじと自慢しておったから、ちょいと楽しみにしてたんだがなぁ~」


 そして、ドガも奥さんのファムさんと親友のギドをやっぱり自慢してたのよ。『聖域』のと言うか、妖精国の同胞達であるドワーフにね。だから、彼等も今回一緒に来るものとばかり思っていたみたい。


「そのお二人からお土産を預かっておりますので、後程アリサ様よりお受け取り下さいませ。『聖域』にお住まいの皆様には物足りないかもしれませんが……」


 しかし、流石やり手の商人さんだねラグナース。私が言うのもなんだけど、集まってるみんなは結構な大物揃いなんだけどちっとも物怖じしてない。優雅に、そして堂々と挨拶をする彼の姿に感嘆してしまう。


「ほほう、それは楽しみだ!」

「ああ、アイギス殿の盾に施された細工は見事な物だったからな!」


 私がファムさんとギドからお土産として受け取ったのは、美味しい芋煮と一振りの剣だ。前者は私も手伝った力作。味見したときはその美味しさに笑みがこぼれたよ! んで、後者はギドが持てる総ての技術と素材を用いた渾身の一品だ。見事な装飾に濡れたような剣身は一目で業物と判らせる程の物だったよ。剣を「美しい」って思えたのはアリア以来かな?


「僕もゼオンさんと同じく、『セリアルティ王国』の復興を志す者の一人。「商売」という、仕事を通し、皆様と今後、より良い関係を築けたらこの上ない喜びとなりましょう! どうぞよろしくお願いいたします!」


パチパチパチパチーッ!!


 うん、流石の挨拶。私達はラグナースに惜しみ無い拍手でもって歓迎の意を表した。


「彼は私達と街の人々を繋ぐ架け橋となり得ましょう。『聖域』の外に広がる世界に触れるいい機会かもしれませんね」

「ああ、姐御のお陰で狭かった世界がどんどん広がってるからな! 何かと楽しみだぜ! よろしくな、ラグナース!」


 水菜と大地がさも嬉しそうに微笑む。そうだ、世界が広がったと感じているのは私だけじゃない。彼等『四神』達だってそうなんだ。きっと彼等も私と同じようにワクワクしていることだろう。


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【ビット】~不滅の忠義~《アリサview》

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「お懐かしゅう御座います……創世の女神様方。そして『聖域』の皆様方……かつての魔王征伐に向けた三神国会談以来となりますな。『セリアルティ王国聖騎士団』その第三騎士団の団長を務めさせて頂いたビットに御座います」


ガタガタッ!!


「マジ!? 見覚えあるって思ってたけど……マジに当時の騎士団長かい!?」

「アリサお姉さん、詳細……詳細希望!」


 続いての紹介は私の魔法で創りあげた仮の『物質体(マテリアルボディ)』、『アバター』を用いることで期間限定ではあるものの、その存在を今に繋ぎ止めたビットだ。これには流石のフォレアルーネもレウィリリーネも驚きを隠せず、私にどういう事なのか説明を求めて来るので、彼との出会いから今回に至るまでの経緯を事細かに説明してあげた。


「ちょっと!? やだぁ~残り湯ってなに~? もぅ! アリサ姉なにしてくれてんのぉ!?」

「は、恥ずかしすぎる……アリサお姉さん、ひどい!」

「ほらぁ~妹達も同じことを言ってるじゃないですか!?」


 そうしたらフォレアルーネもレウィリリーネも顔を赤くして、いやーん! とか言い出した。


「まぁまぁ、そう言わないでよ。お陰でこうしてビットが現世に留まれてるんだしさ? 今後もあんた達のいい出汁、じゃない、その力が必要になることもあるって!」

「「「今、『出汁』って言ったーっ!?」」」


 おっと、いけないいけない☆ つい口が滑っちゃったよテヘペローっ!


「なんと言う見事な忠義か! ビット殿、このユナイト……貴殿に敬服致します!」

「よもや今に至るまでその『想い』を遺しておったとはのぅ……天晴れな男よ!」

「信じられない。あの大戦から今まで自我を保ち続けておられたのですか!?」

「すげぇや! 並大抵の精神力じゃねぇよ! ビットさんマジに尊敬するよ!」


 わーん! って喚く妹達をよそに、現世にまで残り続けたビットにユナイトとシドウが心底感心したように、彼の忠義の心を誉め称える。フェリアとパルモーは、かつての大戦で無念のうちに命を落とし、それから今日に至るまでの途方もない年月を、自我を保ち続けていた彼の強靭な精神力に驚きを隠せないようだ。うんうん、これに関しては私も正直頭が下がる思いだよ。


「すげぇな……アルティレーネは本当に慕われてたんだね……俺にも彼のような忠臣がいればな……いや、もう過ぎたことか……」

「わ、(わたくし)の臣下達とはえらい違いようですわー! 女王なのに罵られてばかりですのよ(わたくし)!?」


 ルヴィアスはビットを見てちょっと羨ましそうにしている。忠義に厚い臣下に巡り会えるってのは余程の幸運なのかな? 遠い目をする彼の瞳に映るのはかつての大戦か、はてさて。

 で、似たようなことで叫ぶのがティターニアだ、いやいや、あんたはあんたでかなり慕われてると思うよ? あんだけ遠慮なく言い合える仲って難しいって、しかも身分差も一切気にせずにだ。


「祖国『セリアルティ』の復興を見届ける迄の間ではありますが、このビット。全身全霊を持って御力になれればと思います!」


 うおおおーっ!! ってみんなからすごい歓声があがる。中には感動のあまり涙する者の姿も見えるくらいだ。忠義に厚く、義理と人情を重んじる騎士の鑑とも言うべきビット。『聖域』のみんなは彼から色々な事を学んでもらいたいね! 勿論私もだけど。


「かの日の騎士の一人にこうして出会えたこと、心から嬉しく思うわ。ビット。短い時間だけれど、妹の……アルティレーネの為に、ゼオンや、ラグナース達と協力して是非『セリアルティ王国』を復興してちょうだい」

「うう、おのれアリサ姉……でも、ビットんが残っていられるなら、ありかぁ~アルティ姉はホントに『セリアルティ』が大好きだからさ、ビットんも頑張って! うちも手伝えることがあるなら手伝うし♪」

「ん……少し羨ましくもある。でも、喜ばしい事にかわりない……あたし達も沢山協力するからね?」

「ティリア姉さま、フォレア、レウィリ……ありがとう。私も精一杯頑張りますね! ビット、ユグライア、ラグナースさん。必ず『セリアルティ』を復興させましょう!」


 ティリアを始め、フォレアルーネもレウィリリーネも『セリアルティ王国』の復興を応援してくれている。そんな嬉しい激励を受けたアルティレーネは少し涙ぐみ、ビット、ゼオン、ラグナースに向けて『セリアルティ王国』復興を頑張ろうって呼び掛けている。


「勿論、私達もみんなで手伝おうって思うの。『聖域』のみんな、手を貸してくれる?」


おおおーっっ!!!


 彼等の雄叫びが室内に響き渡り、空気をビリビリと震わせる。最早『セリアルティ王国』の復興は『セリアベール』と『聖域』の共通の目標になったと言ってもいいだろう。その悲願の達成向けて、私も惜しみ無く協力するつもりだ。お互いに手を取り合って頑張ろう!

ティリア「|д゜)ジー」

アルティレーネ「じー(  ̄- ̄)」

フォレアルーネ「じー( ̄▽ ̄)」

レウィリリーネ「(´・ω・`)?」

ルヴィアス「……(-_-;)」

アリサ「こら!( `Д´)/あんた達、そんな訝しげに見ないの!( `д´)」

ティリア「見てないもーん( ´∀`)」

アルティレーネ「あ、ごめんなさい(^_^;)つい……いけませんね、皆さんに注意しておいて、私がこんなことでは(*/□\*)」

レウィリリーネ「ん( -_・)? なにが?」

フォレアルーネ「レウィリ姉、無頓着と言うかなんと言うか……( ̄▽ ̄;)」

ルヴィアス「勘弁してぇ~(´_`。)゛」

ゼオン「ふはは(´▽`)アリサの嬢ちゃんには流石の皇帝陛下もかなわんか(^ー^)」

ルヴィアス「ふーんだ( ̄^ ̄)そんな可愛いぬいぐるみ持ち歩いてるゼオンこそ、魔女さんにしてやられてるじゃないか~?(`ε´ )」

ゼオン「あっ!Σ(ノ`Д´)ノお前、それは言わない約束だぜ!?ヽ(゜Д゜)ノ」

リール「ふふ♪ 可愛いよねぇ~(*´▽`*)フォレアルーネ様~私にもくださぁ~い(σ≧▽≦)σ」

フォレアルーネ「Σ(´□`;)う、うち、そんな器用な真似できないよぉ~(;>_<;)うー、でも可愛いリールの頼みだし頑張る!(`ヘ´)」

レウィリリーネ「んo(*⌒―⌒*)oあたしもフォーネに作ってあげる、楽しみにしてて(’-’*)♪」

フォーネ「わぁー!ヽ(*≧ω≦)ノ嬉しいです! レウィリリーネ様大好き(*⌒∇⌒*)」

アルティレーネ「(( ̄_|じぃぃー!」

ビット「陛下……アルティレーネ様が陛下の御言葉をお待ちですぞ?(  ̄ー ̄)」

ゼオン「えっと……(´・ω・`; )お、俺もこのあるちぃを可愛いって思ってますよ?(>_<)」

アルティレーネ「まあ~(*^▽^*)そうですか!(*´∇`)うふふ( *´艸`)ユグライアったら♪」

ティリア「めっちゃ嬉しそうねアルティったら(;´∀`)」

ラグナース「ふふ(´▽`*)とても楽しいですね『聖域』って(^∇^)」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 以前は質問への返答ありがとうございました とても面白く一気に読ませてもらいました これからも更新頑張ってください 応援してます [気になる点] どこかで今までの登場人物のまとめなどを出して…
感想一覧
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