62話 魔女の帰還
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【あさごはん】~騎士のお兄さん~《ユニview》
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「う、美味い! なんたる美味! アリサ様、おかわりを頂いてもよろしいでしょうか!?」
「はいはい、まだまだ沢山あるから好きなだけ食べてちょうだい♪」
みんな~おはよー♪ ユニだよぉ~♪ なんかね、朝早くにミーナちゃんにいぢわるされて一回起きたんだけどね……ユニはまだ眠かったから、ミーナちゃんをぎゅってして二度寝してたの。あったかいミーナちゃんのもふもふを楽しんでうとうとーってしてたら、アリサおねぇちゃんが「ごはんできたよ」って優しく起こしてくれたんだぁ~♪
えへへ、嬉しくてまたアリサおねぇちゃんにぎゅうってしちゃった。あ~、でもお手伝いすればよかったなぁ~うん! お昼は絶対お手伝いしよう!
「あはは、流石の騎士団長さんもアリサちゃんのご飯には敵わないみたいだね!」
「うんうん、だってすんごく美味しいもんね。わかるぅ~♪ はぁ~あの時ギルドで声かけて大正解だったなぁ~♪」
そうしてみんなで囲む朝ごはん♪ セリアベールの街でお祭りを楽しんで『聖域』に帰る途中のセリアルティ王城跡地で、アリサおねぇちゃんが用意してくれたこのお家、ログハウスで食べてるんだけど。起きて来たら一人の見知らぬお兄さんが増えてたの!
だぁれ? って思ってアリサおねぇちゃん達にお話を聞いたら、むかしむかしにこのセリアルティがちゃんと王国だった頃の騎士団長さんなんだって! 正確には第三騎士団の団長ってことみたい。お名前はビットさん。
アイギスのおにぃちゃんや、ゼルワのお兄ちゃんとはまた違う感じがするお兄さん。ラグナースのお兄さんに似た感じがするよ。落ち着いてるって言うのかな? でも、そんなビットさんもアリサおねぇちゃんの作ったごはんの前にはビックリどっきりワクワクを隠せないみたい♪
一口を恐る恐るって感じで食べた後、目をランランって輝かせて、すっごい勢いでパクパクパクーってあっという間に平らげちゃった! もっと食べたいみたいで早速アリサおねぇちゃんにおかわりをお願いしてる。えへへ、なんかね、見てて気持ちのいい食べっぷりだよ。フォーネちゃんとリールちゃんも、そんなビットさんを見て笑ってる♪
「えへへ、美味しいねユニちゃん」
「アリサ様凄いね! こーんなに美味しいごはんを作れるなんて、魔法をかけられたみたい!」
「うん♪ とっても美味しいねシャフィーちゃん、ネーミャちゃん♪」
今回色々あったってことで、これから『聖域』で暮らすことになったって言うシャフィーちゃんとネーミャちゃんもとっても嬉しそうな笑顔をユニに向けてくれる。えへへ、街で出会って、一緒にお祭りを回って二人とはとっても仲良しのお友達になれたんだ。
「本当に美味しいわ……特にこの玉子焼き……どうやったらこの味が出せるのかしら?」
「今度一緒に教えて頂けないか頼んでみましょうファネルリア。私も気になって仕方がないわ」
そのシャフィーちゃんとネーミャちゃんのおかあさん達。ファネルリアさんとナターシャさんは特に玉子焼きにきょーみしんしんみたい。アリサおねぇちゃんならお願いすればちゃーんと教えてくれるよ? ユニも教えてもらってるんだ~♪ でもでも、アリサおねぇちゃんみたいに美味しい玉子焼きに出来ないの、むつかしいよぅ~!?
「ほっほーう!? お二人ともなっかなかにお目がたっかーいでっすねぇ~♪ フフフ、今のうちにそのたまーごやきをじぃっくり味わっておくといいでっすよぉぉ?」
「あはは、なんせあまりの美味しさに女神様達で取り合いになったくらいですからね?」
アリスちゃんとカインちゃんがそんな二人の呟きを聞くと、嬉しそうに、そしていぢわるな表情を浮かべてニヤニヤしてる!
「俺はこの鯖の味噌煮が最高に美味いって思うな……味噌っていう調味料って珍しいのかな?」
「兄さんもその魚の煮込みが気に入ったのか? やっぱり兄弟だな、俺もだよ。美味しいよな。骨までこんなに柔らかくなってまるっと食べられるし、このライスとミソスープとの相性も最高だ!」
「セリアベールでは「ミソ」も「醤油」も珍しいですね。「ライス」についてはそれなりに知れ渡ってはいますけれど……」
シャフィーちゃんとネーミャちゃんのおとうさん、ネハグラさんとジャデークさんだ。二人とも茶色い味噌が掛かったお魚の料理、「さばの味噌煮」が特に気に入ったみたい。「骨まで柔らかくしてあるからそのまま食べて」って、アリサおねぇちゃんが運んで来たときに言ってたけど……ホントに食べられたからビックリしたよ! その「味噌」も「醤油」も『四神』の青龍、爽矢のとこの『龍人族』達が作ってる物だよ、ラグナースのお兄さん。
「『龍人族』の彼等は、保存が効くと言うので作っていたそうなのですが、それがまさかこんなに美味しい料理になるとは思ってもいなかったようで、ふふ。アリサお姉さまがこれらを使った料理を食べた後の彼等は、それはもう精力的に色々試しているんですよ?」
「思わぬ発見ってやつですか。ラグナース、その青龍の爽矢様に頼んで仕入れてみちゃくれんか? このミソスープは特にいいぜ……なんか、こう、あったまるんだよなぁ~」
アルティレーネ様がにこにこしながら、アリサおねぇちゃんがその二つを使った料理を作った時の様子をざっくりとお話してる。味の好みも『龍人族』達に合っていたみたいで凄く喜ばれていたんだよね。
ゼオンのおじちゃんはお味噌汁を飲んで、「はぁ~」って美味しそうにため息を洩らしてはラグナースのお兄さんに何かお願いしている。よっぽど気に入ったんだね~♪
「朝起きて、かような食事を頂ける……ほんに有り難い事じゃのぅ~オヌシ等に散々抱きつかれた疲れも吹き飛ぶと言うものじゃ」
「あはは、ごめーんってばたまちゃん!」
「すみません、あまりにも心地好すぎたもので……」
たまちゃんも美味しそうに食べてたんだけど、リールちゃんとフォーネちゃんをちょっと、ムッっとした感じで睨んでる。どうもリールちゃんとフォーネちゃんはおねむするときたまちゃんをぎゅうってして寝てたみたい。
「あはは! 珠実様、エスペル達モコプーにのし掛かられて起こされるよりはよかったんじゃありませんか? 僕は寝てたらいつの間にか彼等が背に乗っていて、嘴で毛並みを乱されてたりしますよ?」
「カイン……それはあれじゃ、主神と末っ子のイタズラじゃぞ?」
あー! わかるよ! もぅ、ティリア様もフォレアルーネ様も時々そうやってイタズラするんだよ! この間だってユニが気持ちよくお昼寝してたらいつの間にかモコプーちゃん達とミーナちゃんがユニに乗ってるんだもん! 重いよぉ~って目が覚めちゃったんだ!
ユニがたまちゃんとカインちゃんの話にそう付け加えると、カインちゃんはそうだったんですか!? って少し驚いて、困り顔になる。
「まったく、しょうのない妹達ね。今度隙を見て仕返ししてあげようね」
そうやってみんなで楽しく、美味しい朝ごはんを食べてるとアリサおねぇちゃんがキッチンから戻ってきた。
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【緑茶】~眼前の『聖域』~《ゼオンview》
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「さてと、じゃあビットは今後ゼオンの護衛を務めてもらって、『セリアルティ王国』の復興を間近で見届けてもらうってことでいいかな?」
「はっ! 我が祖国復興を見届け、旅立った団員達への土産話としたいと思います!」
ズズーッ! あぁ、旨い……アリサの嬢ちゃんが淹れたこのグリーンティってのも、渋味の中に仄かな甘味があって中々に旨い……まぁ、リールやフォーネにシャフィー、ネーミャと言ったお子様達にはあんまりいい評価じゃねぇようだが、俺は好きだな。なんかクセになりそうだぜ。
俺達は『聖域』に向かう途中。祖先達が興した祖国。『セリアルティ王城跡地』にて、まさかの聖騎士に出会い、朝食を共にした。その聖騎士、ビット殿はかつてのセリアルティ王国、聖騎士団第三団長を務めあげたほどの伝説の武人だ。そんな御方が俺の護衛についてくれるとあっちゃ心強いこと、このうえねぇぜ! 遠き我が祖先よ、感謝します!
「俺達の街、『セリアベール』では誰もが平等であろうとしてる……しかしまぁ、募った恨み辛みってなぁそう簡単には払拭されねぇもんだ……俺の命を狙う『亜人』の親玉も、過去に相当な仕打ちを受けたんだろうぜ……」
「ふむ、話を伺うに陛下の命を代償に、かの魔王ディードバウアーを復活させるつもりであるとの事……愚かな、ディードバウアーは『獸魔王』の異名を持つ凶暴・凶悪な魔王。復活を果たせば只ひたすらに破壊の限りを尽くすだろう……その『亜人』達には逸話が伝わっていないのか?」
先日街で行われた後夜祭にて、黒フードの一味だろうって連中をアリサの嬢ちゃんが俺達関係者に教えてくれた……その中には昔からつるんでた連中もいてよ……結構ショックだったぜ……そんだけ『人間』と『亜人』との溝は深ぇってことなのか?
そいつ等が過去にどんな仕打ちを受けてきたかは知らねぇが、「はい、そうですか」と、自分の命をくれてやるつもりは毛頭ねぇぜ。ビット殿も言うように、ディードバウアーって魔王はとにかく、ろくでもねぇ逸話ばっか残っててな。一番有名なのがフォレアルーネ様の『ルーネ・フォレスト』をこれでもかってくらいに滅茶苦茶に破壊したってやつだな。
「冗談じゃないよ……よりにもよってフォレアルーネ様の怨敵を神様だ~なんて仰ぐなんて!」
「そうだね……ディードバウアーは『邪神』とか『破壊神』なんて伝えられてるくらいだもの。もし復活なんてしたら、本当にこの世界を壊されちゃう!」
リールとフォーネも黒フードの連中の目的に激昂している。そりゃそうだよな……一部の者の恨みで世界中を巻き込もうとしてやがるんだ。マジで冗談じゃねぇぜ。
「あ~それなんだけどさ、どうせまた魔神が絡んでるんじゃない? その『亜人』達がどんだけ長生きしてんのか知らないけど、どんだけ執念深い恨みなのよ? きっと、魔神に「負の感情を増幅」させるみたいな呪いかけられてんじゃない?」
「あり得ない話ではありませんね……シェラザードの事といい。あの自尊心の塊で唯我独尊の大馬鹿者で更に粘着質で陰湿で……」
ちょちょいっ!? アルティレーネ様が怖えぇよ! 顔から表情が抜け落ちてるんだが!? アリサの嬢ちゃんの指摘に頷くアルティレーネ様が、なんか「スンッ」って感じで無表情になり、魔神に対してつらつらと罵詈雑言を重ねていく。
アルティレーネ様はおっとりしてて、優しい女神様なんだが……そのアルティレーネ様にこんだけ言われる魔神ってのはどんだけクズだったんだよ?
「その辺りは今フォレアルーネ様も調べてるんじゃないでっしゃろか? とにかく一度『聖域』に帰ってお話を伺いまっしょい、なーんか変な気配も感じまっすし……」
アリスの嬢ちゃんの言葉に皆が頷く、この『セリアルティ王城跡地』まで来れば、『聖域』はもう目と鼻の先。ただでかくて広い内海に阻まれるが……空、飛ぶしなぁ~、そういやアイギス達『白銀』は東から船で渡ったらしいな。
「アリスの言う通りね。さて、食後の一服も済んだし、そろそろ出発しましょう!」
「うぅ~まだちょっとお口がしぶしぶだよぉ~」
アリサの嬢ちゃんの声に俺達は皆、席を立つんだが、ユニのお嬢ちゃんがうぇ~って顔をしかめてやがる。ははは、「アリサおねぇちゃんが飲むならユニも~」って、グリーンティを飲んだからだな?
「くふふ、初いのぅ~ホレ、ユニやミルクじゃ。口直しに一口飲むとよいぞ?」
「ありがと、たまちゃん。ユニにはまだ『緑茶』は早いみたいだよ……」
珠実様とユニのお嬢ちゃんのそんなやり取りを、ほっこりした気持ちで見守り、ログハウスの外に出る。
「ビット殿は『聖域』を訪れた事はあるんで?」
「はっ、陛下。過去に一度だけ御座います。当時はかようなオーロラはありませんでしたが、今と変わらず『世界樹』がそびえ、そこを中心に様々な花が咲き誇り、まさに楽園と呼ぶに相応しい地でありました」
外に出て、眼前に見えるそのオーロラに包まれた島。『聖域』を拝みながらビット殿の話を聞く。俺が知るその島は濃い魔素霧の立ち込める『魔の大地』だったんだがな……今や神秘的なオーロラを纏い幻想的な様相だ。
「忘れもしないのは創世の三女神様にお目通りが叶いました事ですな。あの時の事は例え輪廻しても忘れないでしょう」
「あはは! 今じゃほっかむり被って農作業したり、動物達のお世話したり、だらけてほけーってしたりするんだけどね♪」
わははは! そういやアリサの嬢ちゃん達に出会った時、チラッとその様子を見せてもらったな。すげぇのんびりした牧歌的な田舎村って感じだったが。
「ふふ、もう直ぐ着きますからビットもそう緊張せずにいてくださいね」
アルティレーネ様の言葉に頷き、俺達は再び馬車に乗り込んだ。
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【鳳凰】~自由になりたい~《アリサview》
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ドーンッ!!
《ぎゃああぁーっ!!》
「ほらっ! 遊んでんじゃないわよ鳳凰! 今日と言う今日はあんたのその性根を叩き直してあげるから覚悟しなさい!」
《い、イヤだぁ~! 姉ちゃん勘弁してくれよ、ちょーっとサボっただけじゃねぇかよ!?》
おう、こりゃまた派手な出迎えだこと。
『聖域』の南の空。『四神』朱雀こと、朱美の領域を通り、帰ってきた私達の目の前で派手に錐揉みしながらぶっ飛んできた大きくて派手な鳥は、そのぶっ飛ばした相手、朱色の大きな鳥、朱美に情けなく許しを請うていた。
《おお! アリサ殿、よくぞ戻られた!》
《《お帰りなさいませ! アリサ様! アルティレーネ様!》》
「ご無事のようで何よりです!」
《イエーイ♪》《ご主人のお帰りだ!》《ご主人~会いたかったぜぇ~♪》
《うげっ! あーあー、えっと……お、お初にお目にかかります~へへへ……》
「お帰りーっ! アリサ、みんな~♪」
あー、うん……あはは、ただいま~♪
でもって、朱美の側にいたガルーダのゼーロが私達に気付くと、八咫烏のレイヴン、フェニックスのレイミーア、セイントビートルのユナイト達が率いる『ガルーダナンバーズ』のグリフォン軍団が相も変わらずぐわぐわーって騒ぎ出す。う~ん、帰って来ましたねぇ♪
で、先程私達の目の前にぶっ飛んできた鳥と、朱美も私達に気付いたようでそれぞれに挨拶をしてくれる。んだけど……
(鳳凰さん、「うげっ!」ってなんですか~? 魔女様にそんな事言っちゃうと後が大変ですよ~?)
《ばっか! エスペルお前余計な事言うなよ!?》
モコプーのエスペルに『鳳凰』って呼ばれたコヤツだ。しっかり聞いたぞ~? 人を見るなり「うげっ!」って、まぁ~ご挨拶ねぇ~?
「聞いてアリサ! この鳳凰は私の弟なんだけどさ、とんでもないズボラな奴なのよ!」
《かの『魔神の残滓』共との戦いの折りにも、知らぬ顔で寝ておったのだ》
《セリアベールの防衛戦にはゼーロが蹴り飛ばして参加させましたが……》
《今も朱美様の鍛練がキツイと逃げ出したところで御座います》
「聖獣の風上にも置けませんぞ鳳凰殿!?」
ふむふむ、なるほど……朱美に続いて、ゼーロ、レイミーア、レイヴン、ユナイトが鳳凰の悪いところをつらつらと並べ立ててくるね。コヤツは典型的なおサボりさんってわけか。
《どうも、初めまして魔女様。いや、だってマジにきちぃんだって!? 俺はよぉ、自由に生きたいの! 何で聖獣だから、朱雀の弟だからって理由でこの『聖域』に拘束されにゃならんのよ?》
鳳凰が私を見て挨拶、はい、初めまして。そして続けざまに朱美と『ガルーダナンバーズ』達に文句を言い始めている。ふむむ……『聖獣』とか『神獣』っていう存在は、妹達女神がこの『聖域』を護る為って役割を与えた、所謂『神の遣い』だと聞いたけど……やっぱり、中には鳳凰のように、一つの場所に捕らわれず、大空を自由に旅したいって思う子もいるんだね。それなら……
「私は別に自由にしてくれて良いと思うよ? 役割がどうとかこうとかで自分のやりたいことも出来ないなんて、そりゃ嫌になるよね? しかもそれが『聖獣』として生まれたから。なんて理由じゃ余計に、ね?」
正直『聖域』を守る為の戦力ならじゅうぶん揃っている事だし、鳳凰の一羽くらい自由にさせてあげても問題ないんじゃないかなって思うよ。
《えっ!? ま、マジですかアリサ様……俺っちってば自由になれんの?》
青天の霹靂! とでも言わんばかりに口をあんぐり開けて、目を大きく見開いては、私の言葉にそりゃあびっくらこいてる鳳凰くんですよ。そんなに面白い顔したら笑っちゃうぞ?
「まぁ、あくまで私はそう思うってだけだから、今すぐって訳にはいかないだろうけど……そうだね、これから街で起きたこと、お客さんの紹介とか色々話もしたいから、またみんなで集まって会議しようか」
「うーん、アリサがそう言うなら……命拾いしたわね鳳凰。アリサに感謝しなさい!」
《うぇ!? あ、ああっ! 勿論だぜ、マジにアザっす! アリサ様!!》
妹達と色々話があるし、またみんなで集まって会議しようと提案した私に、朱美達も矛を納める。鳳凰はいまだに呆然としていたけど、朱美の声に我にかえり、お礼をしてきた。
(ティリア様達女神様も、妖精達、聖魔霊のご姉弟、他の『四神』様、『懐刀』様の皆さんも神殿で魔女様のお帰りをお待ちしていますよ~?)
「なーんか、久々の我が家って感じでっすねぇ~!」
「そうですね、街にいたのは七日くらいでしたけど……凄く久し振りって感じがしますよ」
エスペルが言うにはみんな私達の帰りを神殿で待ってくれているらしい。早く帰って元気な私達の顔を見せてやらないとね!
そびえ立つ『世界樹』に向けてゆらゆら飛んでいると、アリスが周囲を見渡して感慨深く帰省の感想を洩らす、それに同意するのがカインだ。うん、私も同じ思いだよ。『セリアベール』では色々あったからね、ホント「帰ってきたなぁ~」ってしみじみ感じる。
「おお、これは見事な!」
「ほおぉ~すげぇ立派な神殿だな!」
「綺麗……見てあなた、神殿を囲む泉に陽光が反射して眩しいくらいだわ!」
「ああ、凄いね……素直に美しいって思える。ここが『聖域』なんだな……」
私達の目に未だ建設中の神殿が映り始めると、馬車内のビット、ゼオン、ナターシャにジャデークが身を乗り出して感嘆のため息をつく。だいぶ出来上がってきたみたいだね、お。あれは『聖域の水蛇』だ。『神々の雫』の泉から顔を出して私達を見上げてる。
「わぁー! 見て見てフォーネ! なんかでっかいのが泉から出てきたよ!?」
「あれは『海蛇』? 初めて見るかも……」
その姿を見て驚いているのはジャデークとネハグラの二家族と交替して、リヤカーに乗っているリールとフォーネ。二人の言葉を聞くに、海に彼と似た魔物が存在しているみたいだね。
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【お帰りなさい!】~お出迎え~《フォレアルーネview》
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アリサ姉達が帰ってきた! わはーい♪ これでまた美味しいご飯食べられるよ、やったぁ!
うち等はバタバタと神殿から外に出て、空を見上げた。するとそこには、以前うち等も乗ったリヤカーを引っ張ったアリサ姉を先頭に、カインがたまみんを背中に乗せて馬車を曳き、左右に槍に腰掛けたアルティ姉、傘に腰掛けたアリスっちの姿。そしてその周りをあけみんと『ガルーダナンバーズ』が護衛して飛んできた。
「おっかりーアリサ姉、みんな~♪」
「ん、みんな無事……良かった」
「お帰りなさーい!」
嬉しくなったうちはアリサ姉達に向けて両手をブンブン振ってお出迎えする。レウィリ姉も、ティリア姉も横に並んでお帰りなさいだよ!
「よう帰ってきおったのぅ~うむ、皆元気そうで何よりじゃ」
「うおおーい! アリサ様~またオイラをなでなでしてほしいんだぞぉ~!」
「無事の帰還、お喜び申し上げる!」
次いで『懐刀』達。シドウじーちゃんにジュン、リン達も……
「お帰りなさいませですわぁぁーっ! ああ、漸くアリサ様が、アリサ様がお戻りに! これで失敗料理からオサラバできますわぁぁ~!」
「ひでぇな女王、いや、まぁ~毎日毎日失敗料理ばっか食わされてりゃ無理もねぇか」
ティタっちもめっちゃ嬉しそう♪ 妖精達が作り上げる数々の大失敗料理を食べ続けて来たから余計に嬉しいんだね! わかるわかる……うち等も同じだったかんね。だからヘルメットさんもそんなに責めないであげてね?
「みんな、ただいま~♪」
わぁー!! お帰りなさい! お帰りなさいませですーっ!
降り立ったアリサ姉がにこやかにただいまをしてくれたので、うち等はもう総出でお帰りなさいをする。レウィリ姉はちゃっかりと、真っ先にアリサ姉に抱きついていっぱい撫でてもらってるし! ちょっとずるいよ~!
「たはは……いやいや、すんごいお出迎えをありがとねみんな! 無事に帰ってきたよ♪」
「んぅ~会いたかったアリサお姉さん!」「待ってたわ、アリサ姉さん!」「アリサ姉~美味しいの食べさせてーっ!」
うちもティリア姉もレウィリ姉に負けじとアリサ姉に抱きつく。あー久し振りのアリサ姉だ~♪
「あらら、嬉しいけどちょっと待って、ちょっと待って。『神を縛る鎖』っと」
ジャラジャラジャラーッッ!!!
ほあ? アリサ姉がなんか魔法で鎖を呼び出して明後日の方向に飛ばし、あっ! そこは!? アリサ姉が呼び出した鎖が空間を裂いて異空間に飛び込んでいく!
「うおぉーっ!? なんだこりゃーっ!?」
「手応え有り! さぁ姿を見せなさい!」
引き裂かれた空間の穴から、悲鳴と一緒にアリサ姉の鎖に巻き付かれ、身動き取れない状態の男が引き摺り出されてくる。
「なんと!? コヤツは侵入者ですかな!?」
「驚きました。まさか女神様達の目を掻い潜ってこの『聖域』に侵入してくるなんて!」
「アリスの『待ち望んだ永遠』もすり抜けて来やがったんでっすかコイツ!?」
うわわっ! ヤバい! アリサ姉だけじゃなくて、街に行ってたバルガっちにネヴュらん、アリスっちが戦闘体勢になっちゃった! ちょっと待ってーっ!
「おわぁっ!? ま、待ってくれ待ってくれ!! 俺は敵じゃない敵じゃないからっ!」
「はぁ? ふざけないでくれる? あんた魔王でしょう? 直接この『聖域』に乗り込んで来るなんていい度胸してるじゃない!」
「魔王っ!? アリサ様、このビット助太刀致す! バルガス殿達は陛下と客人達を安全な場所へ移動されませい!」
うわぁ! そこまで見抜いちゃうのか!? 凄いなアリサ姉! って、あの騎士どっかで見たような……って、今はそれどころじゃないや!
「はーい! ストップ! 大丈夫よアリサ姉さん」
「ティリア、どういうこと?」
うわぁーっ!! ってお客さん達が慌ててしまいそうになったところでティリア姉が声を張り上げた。危ない危ない……いきなりパニックになっちゃうとこだった。
「このアホは確かに魔王だけど、敵じゃないわ」
「あのぉ~この鎖ほどいちゃくれませんかねぇ……俺の『神気』じゃびくともしねぇよ……」
「ん、だから変な小細工をするなって忠告した。それを無視したルヴィアスの自業自得」
「なるほど、『聖域』で何か起きたと話は伺っていましたが……貴方の来訪の事だったのですね。お久し振りですね、ルヴィアス」
アリサ姉の鎖にがんじ絡めにされた魔王ルヴィアスが、情けない声で助けを求めるんだけどね……レウィリ姉はアリサ姉には小細工なんて通じないからやめておけって言うのを無視して、隠れて噂の『聖域の魔女』を驚かせてやるんだーっ! とか言った結果がコレなんだよねぇ~。まったく本当にアホだわ。んで、アルティ姉が言うように、うち等もちょっとしたサプライズのつもりでコイツの事をアリサ姉達に内緒にしてたんだけど……
「この『神を縛る鎖』を解除するかどうかは私が決めるわ。さて、妹達。まさかコレが貴女達の言ってた「面白い事」じゃあないでしょうね?」
あぁ……ヤバイ……アリサ姉がちょっと怒ってるよ!? どうすんのティリア姉!?
「えっとぉ……実はその通りなの♪ 心配かけちゃってごめーん!」
テヘペロ~! おいぃ? ティリア姉~いいのかそんなんで!?
まさかのテヘペロにアリサ姉怒るかなって思ったら、「もう~しょうがない妹ね!」って、ティリア姉を「メッ」ってしただけだった。あ、そうか……アリサ姉はうち等を心配して怒ったんだね? ティリア姉のおちゃらけた言動で大丈夫ってわかったんだろう。
「や~ごめんね、アリサ姉……まさかルヴィアスを即座に魔王って見抜くなんて思ってもみなくてさぁ~」
「ん、あたしも驚いた。ホントは謎の男として紹介して、機を見て実は魔王なんだって、驚かせようとしてたの」
「ふはは♪ 実は女神達に口止めされておったが、街に向かったアリサ様達以外皆知っておったのじゃよ?」
アリサ姉がもう怒ってるわけじゃないってわかったので一安心だ、でもまさか隠れてたルヴィアスを気配だけで見つけたうえに、魔王だって見破っちゃうなんて……アリサ姉ってばシェラザードと戦ったことですんごいレベルアップしちゃったんじゃない?
レウィリ姉が説明した通り、ちょっとしたサプライズでびっくりさせてやろうって思ってたのになぁ~その為に他のみんなには内緒だよ~って口止めしてたんだよ、勿論たまみんもゆにゆにも知ってたんだよね。
「まったく、ホントにイタズラ好きの妹達ね! あんまり度が過ぎるとご飯作ってあげないわよ!?」
ぎゃあああっ!!?
待って! それは待ってよぉ!? うちを始め、ティリア姉もレウィリ姉もアリサ姉の無情な通告に絶叫をあげてしまう。マジで謝るからご飯抜きは勘弁して下さい!
「でも、一体何があったのよ? このエセイケメソ魔王以外にも三つくらいの気配が隠れてるわよね? しっかり説明してもらうわよ? こっちも紹介したい人に、相談したいこともあるからね」
はーい。ちゃんとお話しますよ~お出迎えで丁度みんな揃ってるし、このまま会議といきましょうかね~? でも、その前に何か食べさせてほしいよぉ!
ビット「ふふ……まさかまた『聖域』を訪れる事ができる日が来ようとは……(T∀T)このビット、感無量です。アリサ様、感謝致しますm(._.)m時に、『聖域』にも美味なる食事が( ̄¬ ̄)?」
ゼオン「ついに『聖域』か……ヘヘ、年甲斐もなくワクワクしちまうな!(°▽°)街の代表なんてやるようになってからちっとも冒険らしい冒険できなかったからよぉ~(´・ω・`; )あ、アリサ嬢ちゃん、『聖域』のウマイ飯、楽しみにしてるぜ!( ´∀`)」
リール「いよいよフォレアルーネ様にお会いできる……うぅ、ちょっと緊張してきたよ(^o^;)アリサちゃん、『聖域』には食べ物だけじゃなくて美味しい飲み物もある(´・ω・`)?」
フォーネ「もうすぐですね!( ・∇・)待っていて下さいレウィリリーネ様(’-’*)♪ あ、アリサちゃん、私も美味しいご飯楽しみにしてるよ(^ー^)」
ネハグラ「い、いよいよか(-_-;)き、緊張するなぁ……アリサ様。不躾で申し訳ありませんが、お昼は胃に優しい食べ物を……(;´д`)」
シャフィー「甘いのがいい~(σ≧▽≦)σ」
ネーミャ「プリンっていうのも食べてみたーい(*^¬^*)」
ナターシャ「う、噂のプリン!(; ゜ ロ゜)た、食べてみたいです!(*´∇`)」
ファネルリア「ちょっと!?((゜□゜;))みんなしてアリサ様に失礼でしょう?(>д<*)あなたも何か言ってあげてヽ(゜Д゜)ノ」
ジャデーク「え(-ω- ?)俺もプリン食べたい(゜ρ゜)」
ファネルリア「あなたまでーっ!( 。゜Д゜。)」
鳳凰《俺っちも俺っちも~♪(ノ≧▽≦)ノ》
ルヴィアス「あのぉ~この鎖ほどいてぇ~(T0T)あ、俺にもプリン下さいお願いしゃっす!人( ̄ω ̄;)」
ユニ「あはは♪(゜∀゜ )アリサおねぇちゃんのおりょーり大人気だね(*´∇`*)」
アリサ「ははは( ̄▽ ̄;)みんな凄い食い意地だ( *´艸`)」
アルティレーネ「他の『聖域』の皆も食べたがっていますよ( ゜ー゜)勿論私も(*´ω`)」
バルガス「食の力とはかくも凄まじいものであるな……(;´∀`)」
ネヴュラ「わ、私もお恥ずかしながらプリンを食べたいです(*´∀`*)ポッ」
カイン「アリサ様は今や『聖域』になくてはならない存在ですからね( ・`ω・´)キリッ」
珠実「妾達はアリサ様に胃袋を鷲掴みされとるからのぅ(*ノω・*)テヘ」




