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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
59/211

57話 魔女とユニとホットケーキ

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【引きこもりハウスの魅力】~全力でだらけるために~

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「はぁ……「引きこもりハウス」って、それだけでもう呆れるんだけど?」


 映像通信(ライブモニター)からティリアの呆れた声が聞こえてくる。セリアベール墓地にあるちょっとした広場に椅子とテーブルを置いて、私とアルティレーネ、珠実が揃ってお茶しつつモニター越しの妹達に魔王シェラザードのその後を聞かせているところなんだけど。


「すごいんだぞ~私の「引きこもりハウス」は!」


 どうもこの名前を聞いただけで呆れている様子。けしからん! 私が今からとくと「アリサさんの引きこもりハウス」の素晴らしさを語ってしんぜようぞ!


「まずはさっき話に出た数々のゲームだよ! 私が前世でプレイしたゲームを『不朽』とイメージ魔法で完全再現! 朝から晩までどころか、一年中遊んでも尚遊び尽くせないほどの数を用意してるよ!」

「アリサ姉……はぁ、それで次は?」


 ちょっとフォレアルーネ! そのシラケた反応はなんぞ!? むむむ! ならばこれでどうだ!


「勿論、アニメや、マンガも完備! 人を駄目にする素敵なクッションで最高にだらけた一時をご提供します!」

「おぉ……ちょっと……いや、かなり魅力的……あたしもだらけたい……」

「アリサお姉さまの前世での書物や、映像作品ですか♪ 私も気になりますね♪」


 よし! レウィリリーネにアルティレーネがいい感じに食いついてきたぞ♪ よし、じゃあとっておき……


「ふふ……どうせダラダラするならさ、がっつりだらけたいじゃん? 『無限円環(メビウス)』はそれを叶えてくれる夢の空間なのだ! なんとこっちの一日が『無限円環(メビウス)』内では一年なのよ!?」

「「マジでぇぇーっっ!!?」」


 ふはは! この情報には流石にティリアもフォレアルーネも声を大にして驚いておるわ!

 皆さんならピンってきただろう。そう、かの有名な漫画に登場した「あの部屋」で御座いますよ♪


「勿論だらけるのが目的だから、過酷な気温の変化も、重力の変化もありません! 毎日が忙しいあなた! 休みが一日だけじゃ足りないよって嘆くあなたも! 『無限円環(メビウス)』でその一日を一年にのばしてみませんか!?」

「イエェーイッ!! うちのばしたーい!」

「私もーっ! 一年中ゴロゴロしたーいっ!」

「おぉ~♪ あたしも~!」

「ちょっと!? ティリア姉様に貴女達まで! 確かにとても魅力的ですが、いけません! そんなに長い期間遊びほうけていては戻れなくなりますよ!?」


 むぅ! フォレアルーネもティリアもレウィリリーネもいい感じに乗って来たというのに、なかなかにしっかり者のアルティレーネが立ち塞がる!


「せめて小一時間程度になさってください! 作業合間の小休止の時間だけでも結構なお休みをとれるでしょう!?」


 わーお、やだ~アルティレーネってばめっちゃ具体的だこと! でもまあ、一年もの間そんなにだらけてたら社会復帰も大変か……でもそんな怠惰な生活一度でいいからしてみたいなぁ~♪


「良いのぅ~一年中アリサ様やユニとのんびりダラダラした時を過ごす……うむ、夢の空間じゃな! 事なき事こそ幸せ也じゃ」

「あはは、流石に一年中っていうのはアルティが言うように戻れなくなるわね。でも今度お邪魔しましょうよ?」

「さんせーい♪ アリサ姉そん時はよろしく!」


 話を聞いていた珠実がユニも誘おうって言い出し、ティリアとフォレアルーネも最初とうってかわって今や興味津々って感じだ! うむうむ♪ 機会見てみんなでだらけましょう! アルティレーネが言ったようにちょっとした休憩時間が何日もの休みになるのだ。みんなとのレクリエーションしたい時にはもってこいだよね♪


「ん……ここ最近忙しい日々が続いてるし、とても良いと思う」

「二~三日くらいのお休みがあっても良いですね。『聖域』再生から今日まで目まぐるしい日々でしたから」


 そうなのよね~レウィリリーネとアルティレーネが口にしたように、ドタバタしすぎな毎日が続いていたんだ、それはそれで結構楽しいんだけど、たまには何も考えずにぼーっとしたり、ゲームしたり漫画や、アニメ観たりして~っていう前世のだらけた過ごし方もしたくなる。


「よし、じゃあ『聖域』戻ったら『無限円環(メビウス)』で一緒に過ごしてみようか?」

「はい、ティリア姉様達のお話もそこで聞かせて頂きましょう」

「オッケー♪ 会議~っていうか、ちょいと相談とかするのにも、じっくり話し合いたい時とかにも使えそうだしね!」


 そんなわけで、お試しとして『聖域』に戻ったらお互いの報告会を『無限円環(メビウス)』内で開催することになった。


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【レトロゲーム】~魔女さん世代がバレますよ?~

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「げぇむ? この変な箱? みたいなのがそうなの?」

「奇妙な形……これでどうやってそのげぇむとやらをするんですか?」


 ユーニサリアで魔女アリサが妹達とそんなやり取りしてる間の『無限円環(メビウス)』内。『物質体(マテリアルボディ)』も無事に戻って完全回復したシェラザードとゆかりは、周囲が美しい花や木々に覆われ、『神々の雫(ソーマ)』の泉が陽光を反射させる、それはそれは素敵な立地に建てられた一軒のお屋敷内で、私が用意したゲーム機を見て不思議がっている。

 ここは『無限円環(メビウス)』内の「アリサの丘」にある「アリサさんの引きこもりハウス」だ。他にも「ユニの花園」や、「ミーナ野原」等ユニとミーナが喜びそうな場所も創ってある。いずれ一緒に遊ぼう~♪ ふふ、喜んでくれるかな?


「これはね~このカセットをここに差して、このスイッチをカチッ!」


ティロリ~ン♪


「わっ! びっくりした……なんですかこれ!? 線が繋がった箱から音と映像が!?」

「あら、これって話に聞いたマキナの世界にあるっていう……えっと、て、「てびれげぇむ」だったかしら? 「でびおげぇむ」だった?」

「テレビゲーム、ビデオゲームね。マキナの世界ってのは私はわかんないけど、私が前世で遊んでたゲームを魔法でかなり強引に再現してみたんだ♪」


チャーッチャラッチャチャチャチャチャチャ♪


 ゲームの映像を映すモニターからこれまた懐かしいピコピコ音が流れ出す。『不朽』から前世の記憶を引っ張り出して再現したその一本目のソフトは……


「えっと……『竜の探求』、いや……『竜の依頼』でしょうか?」

「へぇ、どんな内容なのかしら……アリサ、やって見せてくれない?」

「折角だしシェラザードがやってみなよ? この作品は凄い人気が出て、前世じゃ社会現象にもなって、国民的RPGなんても呼ばれた名作の記念すべき一作目なんだよ!」


ちゃーっちゃらちゃーちゃらちゃっちゃちゃー♪


 うむ! ピコピコ音でもやはり名曲! めっちゃ懐かしいわ! ゆかりがソフトの名前を読み上げるが翻訳がされているようだし、ちゃんとテキストも読めるだろうから、シェラザードにプレイさせてみたい。

 現実逃避かもしれないけど、しでかした事にいつまでも気に病んでしまっていては、どんどん考えが悪い方向に向かってしまうものだから、これに夢中にってまでは行かずとも、気をまぎらわせるくらいできるだろう。その間に出来るだけティリアと話をして、シェラザードの罪を軽くしてあげるよう交渉しなきゃ。


「はい、これがコントローラー。やってみそ?」

「ええ、わかったわ……スタートボタンを押して……名前を入力するのね? って四文字しかないじゃない……」


 そうそう、平仮名四文字しかなかったんだよねぇ、しかも濁点とかも一文字に数えられるから。


「『しぇらさ』ってしか入らないわ、どうすればいいのよ?」

「お試しなんだしテキトーでいいじゃん、『しぇら』とかどうよ?」

「いやよ、じゃあ『ゆかり』にしましょう」

「え、私か? まぁ別に構わないけど……」


ちゃららちゃららら~♪


 シェラザードが名前を入力していよいよゲームがスタートする、懐かしい……冒頭、ゲームの世界観を王様が説明してくれて、主人公の目的を教えてくれる。さぁ、シェラザード頑張れ! まずは色々な人から話を聞いて……


「えっと? ボタンを押してメニューを開いて、話す……北南東西……どうしてカニ歩きなのかしら?」


 あっはっは! 初代はそうなんだよねぇ~横向きや後ろ姿のグラフィックが用意出来てなかったんだよ。


「あら? 橋を渡ったらとても強い魔物が出てきてあっという間にやられちゃったわ……情けないわね、ゆかりったら」

「なんだと!? 私は情けなくないぞ! シェラザードがへたくそなんだ!」

「倒せる魔物倒してレベル上げたり、お金貯めて装備揃えたりしてみなさいな」


 そんな感じでわいわい騒ぎながら私達は三人でゲームを楽しんでいるのでした。


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【男泣き】~ほら、おっさんは涙腺弱いから~

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「って感じ。ねぇティリア、あんまりシェラザードを責めないであげてほしいんだけど……」


 シェラザードの『無限円環(メビウス)』内での状況を妹達に説明して、頭を抱えるティリアに私は懇願する。どうか軽い罰だけで済ませてあげてほしいんだよね。


「アルティ、レウィリ、フォレア……あんた達の考えは?」

「そう、ですね……ちょっと面倒になりませんか?」

「ん……あたし達はシェラザードが呪いを受けてたって知らなかったけど……」

「他の神には知ってた奴もいたんじゃない? それを報告もせずに黙ってたって奴もね?」

「ああぁぁ~そうなのよぉ~……実際今現在『神界』で結構騒ぎになっててさ……」


 頭を抱えたままティリアは妹達に意見を促す。すると、妹達は一様に困った顔を見せて、自分達とシェラザードの置かれていた状況を整理する。するとまぁ、それはそれは確かに面倒くさそうな状況だ。聞けば責任がどうとか、連絡の不備がどうとかでティリアの本体は忙しい事になってるらしい。


「そんな中に当の本人を還したら……大変よぉ~? どんな罪状でどんな裁きが皆を納得させられるのかとか、黙ってた奴等に罪はないのか? だのなんだの、場が紛糾する事間違いないし」

「そうですね……シェラザードに関しては、思うところはあるのですが……」

「彼女もまた被害者……情状酌量の余地は多いにある……」

「いやいや! だからって無罪放免って訳にはいかないよね? どっかに島流しの幽閉でもしてやればいいんじゃないの?」


 何だかんだで優しい妹達だ、ティリアはシェラザードの現状を鑑みて、暗に『神界』に戻すべきじゃないって言ってるんだろう、それはフォレアルーネも同じで「島流しの幽閉」と言うのは、要するに「『無限円環(メビウス)』内で過ごしてね」って言ってるんだよね。アルティレーネもレウィリリーネも事情を知った以上、シェラザードの罪はそう重いものにはしたくないみたいだ。元々、シェラザードには色々相談にのってもらったりしていたそうだしね。


「そうよね、しばらく一つの小世界に幽閉、厳重な管理で罪を反省してもらいましょう」

「アリサお姉さま、ご面倒お掛けしますが、引き続きシェラザードの監視をお願いします」


 うん、やっぱりそう言うことらしい。ティリアとアルティレーネがそう言って私に軽く会釈、『無限円環(メビウス)』内でシェラザードを監視してほしいと言ってきた。


「あいよ~♪ シェラザードは任されたよ! みんなもちゃんと心の準備ができたら会いにくるんだよ?」

「う、うん……まぁ、うちらも、もうちょい時間ほしいし……」

「フォレアはいざって時にヘタれになる……あたしは別に今でもいい」


 もじもじと、しおらしくしてるフォレアルーネにレウィリリーネがふんすっって息巻いている、ふふ、可愛い姉妹だこと。まぁ、お互いに気持ちの整理ってのは必要な事だろう。ゆっくり待つとしよう、よかった……厳罰にならなくて。


「あんれま~こんなお墓でお茶会ですか~? 女神様達はホント色々凄いですね~?」

「こら、ミュンルーカ! 失礼よ?」

「……感謝を、その……アリサ様、女神の皆様……」


 そうこうしていると、話が終わったのだろう。ミュンルーカとシェリー、デュアードくんが私達の側にやって来た。ミュンルーカは墓地でお茶会してる私達に驚いているみたいだ、う~ん見ようによっちゃ不謹慎だったか? シェリーはそんなに気にしなくていいのよ。デュアードくんは私達に感謝をしてくれた。


「ふむ、どうやら存分に話ができたようじゃな?」

「ええ、皆さん晴れ晴れとした良いお顔をされていますよ」


 珠実とアルティレーネが寄ってきた三人の表情を見て、微笑み返す。うん、確かに三人とも何か吹っ切れたようないい笑顔だ。


「おかげさまで、エミリアとのわだかまりもスッキリです!」

「ワタシは産まれてくる子が男の子ならエイブンの名前を付けるって約束しちゃいました……どーしましょー? まだお相手もいないのにぃ~」


 あはは♪ そりゃよかった! シェリーとデュアードくんはともかく、ミュンルーカは『聖域』でお婿さんでも探すといいんじゃないのかな? 妖精さんの男性は結構イケメソ揃いだしね! ああ、『四神』や『懐刀』達の部下もいるから、きっといいお相手が見つかるかもよ?


「アイギス達は~ああ、戻って来たみたいね」

「おうおう、あのおっさん泣いてるよ」


 ティリアの声にその方を見れば、ロッド少年との会話も済んだのだろう。アイギス、ゼルワ、サーサの『白銀』組と、バルドくん、セラちゃん、ブレイドくん、ミストちゃんの『黒狼』組に、あらら、フォレアルーネが言った方を見れば、デールのおっさんが泣きながらゼオンに支えられて戻って来たぞ。


「お帰りなさいアイギス。みんな」

「はい。ただいま戻りましたアリサ様」


 私がお帰りなさいをすれば、アイギスは優しく微笑んでただいまを返してくれる。その顔はミュンルーカやシェリー達のように晴れ晴れとしたもので、バルドくんも同様だ。


「デール、ほら! しっかりしやがれ!」

「そうだぜ~デール。そんなんじゃロッドに笑われるぞ?」

「あぁ……ズッ! そう、だね……済まないゼオン、ゼルワ……感極まってしまってね……」


 涙を拭い、鼻をすすってデールのおっさんは前を向く。しっかりとロッド少年との別れを済ませて来たのだろう、直接会って言えなかった事や、伝えられなかった思いもちゃんと吐き出せたのかもしれないね。


お嬢さん(フロイライン)、君にはいくら感謝してもしたりない……本当に、ありがとう! ずっと私の心にしこりとなって残っていたロッドへの思いが、ようやく果たせた……」

「俺からも感謝を。アリサ様のおかげで懐かしい朋友に会えて話が出来た」

「私も、久々にロッドに会えて、改めて初心を思い出しました」


 どういたしまして~デールのおっさんが私に深々と頭を下げると、バルドくんも、アイギスもそれに続いて感謝を述べてくれたよ。そんなに気にしなくていいのに、私はちょっときっかけを与えただけに過ぎないからね。


「アルティレーネ様、そして女神様方……さっきの話。この祭りの後夜祭に街を挙げて行おうって思います。今はまだ色々と試行錯誤しなきゃいけませんが、いずれこの祭りを伝統化して、盛大に死者を弔う年間行事みてぇにしたいって考えますよ」

「ん……とても良いと思う」

「それがいいよ♪ そうやって大事に扱われた魂はね、うちの『終焉』とアルティ姉の『生誕』の祝福を沢山受けることができるからね♪」


 ゼオンはゼオンでやっぱり色々と感じたんだろう。死者を丁重に弔う事の大切さを、肌で感じ、皆が忘れないように街を挙げてのお祭りにして代々伝えて行くつもりみたいだ。前世にもお彼岸だとか、お盆祭りとかあったし、とてもいい考えだと思う。レウィリリーネもフォレアルーネも嬉しそうだしね。


「よし、じゃあみんな戻ろうか! くれぐれもこのお祭りの間、警戒を忘れないようにね!」

「「「はい! アリサ様!!」」」


 そうして、夜のお墓参りは無事に終了して、みんなで街に戻ったのでした。


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【悪ノリする皆】~やっとユニの出番!~

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「『白銀』リーダー以下五名! 全員集合、全員異常なし! 以上報告終わり!」

「『黒狼』リーダー以下七名全員集合、全員異常なし! 以上報告終わり!」

「ギルドマスター以下、職員家族現状十一名集合完了! 全員異常なし! 以上報告終わり!」

「冒険者有志二名異常なし! 以上報告終わり!」

「りょぉぉかぁぃっっ! ぜぇぇーいぃぃんっっ!! 気をつけぇぇーぃぃっ!!」


ビシイィィィッッ!!!


 え? なんぞこれ? なんでいきなり防災訓練始まってんの?

 お墓参りの後の執務室。集うメンバーは『白銀』五名、『黒狼』七名、『聖域』からバルガス、ネヴュラ、アリス、珠実、カインの四名と一頭。そして、ネハグラとジャデーク家族六名。リールとフォーネの子孫コンビ二名。ガウスとムラーヴェの門衛二名。ゼオン、エミルくん、デールのおっさんのギルド組三名。計二十九名と一頭に加え、私とアルティレーネで三十一名と一頭と言う大所帯だ。


「よぉぉぉっく耳の穴かっぽじりやがって聞きやがれなさいでっすよぉぉ!? いいでっすかぁ~これより! マスターがこのアリスちゃんの先輩こと! ユニちゃんと! 大先輩たるミーナちゃんを召喚しまっすからねぇぇ~?」


 私が今日はユニとミーナを喚んで一緒に寝て、明日からのお祭りを一緒に楽しもうって思って、召喚しようとしたら、アリスが待ったをかけてきたんだよね……何でも……


「いいでっすかぁ~? この場にいる誰もが間違えても「あんた誰?」なんてユニちゃんに抜かしやがってみたら、このアリスが問答無用でぶっころがしてやりまっすからねぇ!? その目ん玉よぉぉっく擦りまくってそのご尊顔を焼き付けるんでっすよぉ~?」


 アホみたいに大仰に言ってるけども、要はみんなへの顔合わせに過ぎないからね? それなのに、何て言うか……これがセリアベールの人柄なのか、全員がノリノリでアリスに応えるんだよね。因みにバルガスとネヴュラ夫婦も一緒になって整列してる。


「「心得ましたアリス様!!」」


 ガウスとムラーヴェがビシィッってアリスに敬礼し……


「「私達一同、敬意を持ってユニ様とミーナ様へ応対致します!」」


 保護するギルド職員の家族の代表としてナターシャとファネルリアが声を揃えてそう言うと同時に、六人の家族が綺麗なお辞儀を見せて……


「ギルドに……いや、街全体にお触れを出すぞ、エミル! 後で職員達に通達だ!」

「了解ですゼオンさん! 英雄アリサ様の妹君に親友様の情報! 漏らさず伝えましょう!」

「超VIPですね! 私達が絶対お守りしますよ!」

「ついに噂のユニちゃんとミーナちゃんとのご対面! わくわくするよ♪」


 ゼオンとエミルくんがそんなこと言い出す、お触れって何よ? 漏らさず伝えるって、私達は尋ね人かなにかなのかね? いやいやフォーネあんたは守られる側だかんね? リールは素直な反応ね、ふふふ、ユニとミーナのあまりの可愛さに腰抜かすでないぞ♪


「こるぁぁっ! 私語は慎めやがりなさい!」

「うむ、皆静まれぃ!」

「我等が神、アリサ様の尊き御姉妹様たるユニ様と、その無二の朋友たるミーナ様が御降臨なされます神聖なる儀式ですよ!」

「さあ、皆さん! ひざまづくのです! ヒヒーン♪」


 ……いや、バカでしょあんたら? バルガスもネヴュラもカインまで悪ノリして、なにやってんのよ!? あ~あ……ザザッ! ってみんなが一斉にひざまづく音が執務室に響くよ……いや、ホントになにしてんのあんた達は?


「うふふ♪ いいですね! この勢いのよさ! あはは♪ 変わりません、『聖域』のみんなまで巻き込むこの気質。これこそセリアルティの民達ですよ、アリサお姉さま♪」

「……ん、昔から変わってないね? アルティ姉さんのセリアルティは陽気で勇敢な者達が多かった……あたしのリーネ・リュールは知恵者や思慮深い者が多くて……」

「うちのルーネ・フォレストは自由人の集まりだったね~探求心旺盛な連中が多かったよ!」


 アルティレーネが楽しそうに笑うと、映像通信(ライブモニター)からレウィリリーネとフォレアルーネが楽しそうに追加情報を話してくれる、ふぅん、そうなんだ? いや、私も数日だけど街で過ごしてみんないい人達だなぁっては思うんだけどね……時々ついていけなくなりそうだよ。


「いやいや……そのノリについていけない者の末路についてもちゃんと考えてくれる!? って、もういいや、早くユニとミーナに会いたいし喚んじゃおう」


 私はなんでかみんながひざまづく姿と、ニコニコ笑顔で見守るアルティレーネの姿を横目にしながら、召喚の魔方陣を展開させると、雑念を払い意識を集中させる。


「たった数日しか経ってない筈なのに、もう、こんなにも貴女が愛しい……さぁ、おいで。私の大切な妹、大事な親友……」


パアァァーッ!!


 魔方陣が淡い光を放つと、それはゆっくりと執務室に満たされていく、そしてふわりと消えて、その先には私の大切な妹の姿。


「アリサおねぇちゃん♪ 会いたかったよぉ~!」「なあぁ~ん♪」

「ユニ~! ミーナ♪」


 わーい! おねぇちゃん♪ ぎゅぅ~♥️ って言って、私の胸に飛び込んで抱きついてくるユニ。ミーナもミーナで私の肩に駆け登って来て、にゃんにゃん言いながらザリザリって私の頬を舐める、これ嬉しいけど、結構くすぐったくて、痛いんだよね♪


「ユニ、ミーナ。お待たせしちゃってごめんね~ひとまずやること済んだからさ! また一緒にいようね♪」

「うん~♪ えへへ! 嬉しい~♪ 久し振りのアリサおねぇちゃんだぁ♥️」

「にゃぁ~ん♪」


 再会を喜びあった私達はお互いの頬にちゅっちゅ♥️ するのでした♪


────────────────────────────

【楽しい夜】~メンバー増えてますます騒がしい♪~

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 ぐすっ……ううぅ……ぐすぐすっ……あぁ、ダメ……また泣いちゃう。


「アリサぁ~いつまで泣いてんだよ~?」

「うぅ……セラちゃん、だってだって……嬉しいんだもん!」


 セラちゃんがあきれた目で私を見るけど、しょうがないのよ。そう、今私はあまりの嬉しさに感極まって涙がちょちょぎれていますのですよ!

 理由は目の前に置かれたひとつのホットケーキ! なんと、このホットケーキはユニが今まで一生懸命に練習を重ねに重ね、作り上げた渾身の一品なのだ! 「アリサおねぇちゃんのためにいーっっぱい感謝を込めて!」と言って頑張って頑張って作ってくれたそのホットケーキを食べたら、もう……あまりの美味しさと嬉しさに涙が溢れて止まらないの!


「えへへ♪ 沢山失敗しちゃったけど、ユニも頑張ってここまで作れるようになったんだよ! 最初は絶対アリサおねぇちゃんに食べてもらうんだって決めてたの!」

「あぁ~ん! ユニ大好きぃぃ~♥️」


 嬉しい! 嬉しいよぉ~! ユニ~♥️ なんていい子なのだ! もう絶対離さないぞ♪

 ぎゅぅ♥️ 膝に乗るユニを抱きしめて改めてそう誓う!


「うふふ♪ それで、実際にお味は如何なのですかアリサお姉さま?」


 そんな私達を微笑ましく見ていたアルティレーネがユニの作ったホットケーキの味を聞いてくる。


「いや、実際にマジ美味しいよ? 私が作るより美味しいね!」


 そう、マジにお世辞を抜きにしても、ユニのホットケーキは美味しい仕上がりだ。以前教えたメレンゲ作りから、焼き上げに至るまできっと何度も何度も失敗を繰り返してきたのだろう。そうでないと、この美味しさは出せるはずがない。


「そうなの……ユニね、今まで沢山失敗しちゃったよ? ほらほら、こんなの~」


 そう言うとユニは以前の失敗作であろうホットケーキの数々をミーにゃんポーチから取り出してはテーブルに並べ始めた。


「わぁ! こんなにも! 凄い、ホントに沢山頑張ったんですねぇユニちゃん!」

「え? これ失敗なのか? すげぇうまそうだぜ!?」


 並べられた多くのホットケーキを見てフォーネとブレイドくんがびっくりしてる。あぁ、そうそう、ユニとミーナの事は既にみんなに紹介済みだ。沢山の見知らぬ人に囲まれて怯えたりしないか心配だったけど、ユニもミーナもあっという間に仲良くなった。


「えへへ♪ 最初はユニが食べてたんだけどね、作る方が多くなっちゃって……食べる? フォーネちゃん、ブレイドくん?」

「いいんですか! わーい♪」

「ありがてぇ! いただきますだぜ!」


 パクパクムシャムシャーウマーイ!! いやいや、あんた達はさっきあれほどケーキとか食べたのに……冒険者ってのは食欲に底がないのかね? って! そうだ!


「こんな素敵なプレゼントもらっちゃったらお返ししなきゃいけないね! ユニ~おねぇちゃんも、こんな物を用意してるんだよ♪」

「え? わぁー! 何これ~きれいでかわいぃ~♪」


 ホットケーキにがっつくフォーネとブレイドくんを見て思い出した。ユニにもケーキを食べてもらおう! 差し出したケーキを見てユニは嬉しそうにその顔を綻ばせる。


「ふふ、はい、フォーク♪ これはケーキって言って私が作った新作のお菓子だよ♪ 食べてみて~」

「うん~♪ じゃあ、頂きます! ふわぁぁーっ! 美味しい~♪ この白いのあまーい♥️」

「なぁ~ん! うなぁ~?」

「はいはい♪ 勿論ミーナの分もあるからね!」


 うんうん♪ よかった、とっても美味しそうでとっても嬉しそうに食べてくれてるよ♪ ミーナにも食べやすいように小口に切り分けてお皿に乗せてあげると、これまた嬉しそうに食べてくれてる。


「あぁぁぁ~いいなぁミーにゃんに、ゆにゆに~アリサ姉ぇ~うちらもうちらも食べたいよぉぉーっ!」

「ゴクリ……なんて美味しそうなお菓子……アリサお姉さん、詳細希望!」

「おおぉ……ケーキにチョコレートまでがこの世界でも……アリサ姉さんを選んだのは間違いじゃなかったわね!」


 ユニの美味しそうな食べっぷりを映像通信(ライブモニター)で見ていた妹達の声が聞こえてくる、大丈夫よ~戻ったらちゃんと食べさせてあげるからね!


「絶対! 絶対だよアリサ姉! うちらもうアリサ姉のご飯が恋しくて仕方ないんだかんね!?」

「ん! もう失敗作も目玉焼きもあきてきた!」

「うぅ……ユニは「最初はアリサおねぇちゃんに食べてもらうの!」って言って、私達には食べさせてくれなかったから……アリサ姉さん早く帰ってきて~」


 あははは!! 妹達の情けない声を聞いて、執務室が笑いに包まれる。もう~仕方ない子達なんだから♪


「お祭りは明日と明後日の二日残っていますからね♪ もうしばらくの辛抱ですよ女神様方?」

「あ、もう聞いてると思うんですけど……俺達今度は自力で『世界樹(ユグドラシル)』まで行くことになったんで……」

「今度は儂等だけでなく、挑戦者も一緒でしてなぁ~」


 そう説明するのはサーサとゼルワ、ドガの三人だ。まぁ、その辺りはアルティレーネから妹達も聞いているので知っているだろう。


「え? そうなの? アイギスのおにぃちゃん達は一緒に戻って来ないんだ?」

「ええ、私達はバルド達『黒狼』と、そこのガウスとムラーヴェと共に、またこのセリアベールの街から『聖域』に赴きます」

「へへっ! 絶対辿り着いてやるからな!」

「待っててねユニちゃん♪」


 おっと、そうか、ユニには知らせてなかったか、話を聞いて少し驚いているね。アイギスが街から『聖域』に向かうみんなの事を話すと、ブレイドくんとミストちゃんがユニに笑いかけている。


「ガウスの猪突猛進っぷりが不安で仕方ないんですけどね……上手くフォローして、必ずやアリサ様の元へ辿り着いて見せます!」

「抜かせムラーヴェ! 貴様こそ優柔不断を発揮して判断を誤るんじゃないぞ!」


 ムラーヴェとガウスはなんだかんだと言い合いながらも楽しそうだ、お互いに助け合いながら頑張ってほしいね!


「兎に角、準備は念入りに済ませましょう! 備えあれば憂い無しよ!」

「ああ、買い出しはシェリーとデュアードに任せる。手が必要ならいつでも声をかけてくれ」

「了……解っ!」


 どうやら『黒狼』のクエスト準備はシェリーとデュアードくんで行うようだ、今回は大所帯だし十分に準備を整える必要があるんだろう。この辺りはやっぱり熟練の冒険者達だね、いつか私も冒険者登録して一から始めてみようかな?


「アタイとバルドは武器や防具の手入れにギドんとこ行くけど……ミュン、お前は?」

「ワタシは~ラグナースさんのところで女神様達へのお土産を買い込むんですよ~ん♪」

「……因みにアタシも駆り出されたわ」


 セラちゃんとバルドくんはギドさんの『酒と鍛冶』で武器防具のお手入れをするようだ、でミュンルーカは、レイリーアを捕まえてラグナースのお店でお買い物する……いいのかそれで? レイリーアも少しあきれてるぞ? 因みにラグナース、ファムさん、ギドさんの三人はそれぞれが自分のお店に戻っている。


「わぁー♪ いっぱいでお出かけなんだね! えへへ♪ なんだか楽しそう~! ねぇねぇアリサおねぇちゃん、ユニ達も今度一緒にお出かけしたいね♪」

「ふふ、そうだね! じゃあ明日は私とユニ、そして珠実にセラちゃん、ミストちゃんにブレイドくんと~シャフィーとネーミャでお祭りまわろうか?」


 にゅふふ♪ 見事にチビッ子編成! この期にかわいこちゃん達とめいっぱい楽しんでくれよう♪


「──などと、供述しており……また私達を蔑ろにするおつもりですねアリサお姉さま!?」

「ってオイこら! 人聞き悪いでしょうアルティ!」

「まずだぁぁ~!! アリスを置いていかないでぐだざいよぉぉ~!」


 ちぃっ! せっかく私がかわいこちゃんハーレムでウヒョー♪ ってしようと思ったのに!


「おいおい、アリスの嬢ちゃんは俺達の護衛兼ねて一緒に祭りを廻るって話だったろ?」

「ちょい!? そんなん初の耳~ん! でっすよぉ!? ゼオンのおっちゃんは大好きなアルティレーネままんと一緒のがいいでっしゃろーい!?」

「あらっ! もう~ユグライアったら♪ こんなに大きくなっても甘えん坊なのですね?」


 よしよし! なんか滅茶苦茶なノリだけどいい流れだぞ!


「ゼオンのおじちゃんも甘えん坊なのぉ? えへへ~ユニもね~アリサおねぇちゃんにいーっぱい、甘えるんだぁ~ねぇ~アリサおねぇちゃん♪」

「うんうん~♪ いいよいいよ~ユニ~♥️ 沢山甘えてね♪」


 んぎゅぅ~って私に抱きつくユニがとんでもなく可愛い! 数日離れていた分の反動だろうか? ユニ自身も積極的に私にくっついてきてるね、ふふ、嬉しいなぁ~。


「あ~あ~……ええと……ははは。ユニの嬢ちゃんには敵わねぇや、アルティレーネ様、申し訳ありませんが俺と一緒に祭りを廻って下さい」

「あらあら、うふふふ♪ 仕方ありませんね」


 そんな感じでわちゃわちゃ騒ぎながら、その日の夜は更けていくのでした。

シェラザード「結構進んだわね(о^∇^о)」

ゆかり「おい、シェラザード(‘д‘ )たいまつもやくそうも切れてなかったか?(;・ε・ )ダンジョン入って大丈夫か?」

アリサ「一応、まほうもあるから直ぐ様駄目になることないだろうけどね( ゜ー゜)」

シェラザード「そうよ。ゆかりは心配性ね( *´艸`)ほら、これでダンジョン内も明くできるし、これで回復もできるわ(°▽°)」

ゆかり「いや、確かにそうなんだが(-_-;)このMPって数字がそのまほうを使う度に減ってて、凄く少ないんだが(・_・?)」

シェラザード「あ、ホントだわ( ゜Å゜;)え、あ!((゜□゜;))まものが強いわ(×_×)」

ゆかり「取り敢えず逃げて出直す方がいいだろ( ・-・)」

シェラザード「くぅ!(><)悔しいわ(≧口≦)ノ回復して、あぁ!Σ( ゜Д゜)MPがたりないって出るわ!(TДT)」

ゆかり「だからさっき言ったじゃないか!(゜Д゜#)」

シェラザード「あわわヽ(;´Д`)ノ折角さっきのまものから逃げたのに、また別のまものがあらわれてしまったわ、って、ああっ!Σ(゜ロ゜;)や、やられちゃった……(´TωT`)」

ゆかり「あああ……お金がまた半分に( ;∀;)」

アリサ(むふふ(*≧ω≦)なんかゲーム初心者の実況動画のようだね(^-^)……いや、まんまじゃん(;゜∇゜)折角だし録画しておきましょうね(’-’*)♪)


ゆかり「おい、見ろシェラザード!( ゜д゜)この先に扉があるぞ、さっき街で買ったかぎを使って入れるんじゃないか(^∇^)?」

シェラザード「ええ、早速試してみましょう(*つ▽`)っ♪ 何があるのかしら?(^-^)ふふ、楽しいわね(´▽`)」

ゆかり「敵だ!(; ゜ ロ゜)おおっ! ドラゴンじゃないか!ヽ(*´∀`)ノ」

シェラザード「って!(゜Д゜;)強いわ! 瞬殺されたじゃないの!?Σ(>Д<)」

ゆかり「ふはは! なんせドラゴンだからな!(  ̄▽ ̄)」

アリサ「あらら(^_^;)またお金減っちゃったね(-ω-;)」

ゆかり「( ゜д゜)ハッ! そうだった、何をやってるんだシェラザードぉ( ノД`)…」

シェラザード「泣きたいのはこっちよぉ(;つД`)」

アリサ「ふふ、二人の反応が楽しくて見てて飽きないわ( ^∀^)♪」

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