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TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
57/211

55話 魔女とお墓参り

────────────────────────────

【お墓参り】~三人からお話を~

────────────────────────────


 件の黒フードの連中、そして『死霊使い(ネクロマンサー)』の足取りを追うため、アイギスの提案で、彼の冒険者同期ロッドのお墓に彼の『想い』が残っていないかを確認するべく、私達はセリアベールの共同墓地へと向かった。

 同行するのはアルティレーネ、珠実、『白銀』からアイギス、ゼルワ、サーサと『黒狼』だ。それから、ギルドマスターのゼオンとデールのおっさん。

 他のメンバーはネハグラとジャデーク夫婦の護衛のため、冒険者ギルドで留守番をしてもらっている。まぁ……作りおきしておいた料理もそろそろなくなりそうだし、それらの補充も頑張ってもらうためでもあるんだけどね。


「じゃあまずは誰から行こうか? ロッド少年にする?」

「いや、待ってくれ……まだ心の準備がだね……」

「……おっさんのくせに意外と繊細だなぁ~なぁなぁアリサ姉ちゃん最初はエイブンさんにしようぜ? エイブンさんはソロの冒険者だったけどA寄りのBランク迄行った実力派の冒険者だったんだ!」


 先の『氾濫(スタンピート)』で散って行ったと言う冒険者のエイブン氏と、流浪の踊り子ながらAランクの実力だったと言うエミリア氏、そしてアイギス達の同期であるロッド少年の三名。最初は誰の話を聞くべきか聞いてみると、デールのおっさんはまだロッド少年と話す心の準備が出来ていないらしい、ブレイドくんはあきれてるけど、おっさんになればなるほどそう言った準備って必要なんだよ?


「エイブンなぁ……Aランク昇級試験間近だったんだよな……ハーフドワーフでな、中々の好青年だったんだぜ?」

「ワタシ彼の事結構好きでしたよ~何度かデートもしましたね……」


 ゼオンがエイブン氏の素性を教えてくれる。ふむ、ハーフドワーフか、ブレイドくんの話だとソロでAランク近くまで登り詰めた実力派だったそうな。ミュンルーカとは恋人未満友達以上の関係だったみたい。


「じゃあ呼んでみるよ、妹達も聞いててね?」

「はいはい、了解よアリサ姉さん」

「ん。大丈夫しっかり聞いてるから」

「……うん。ねぇ、アリサ姉……」


 映像通信(ライブモニター)で『聖域』の妹達にも事情を説明して、彼等の話を一緒に聞いてもらうことになったんだけど、魔王ディードバウアーの名前が出てから、なんかフォレアルーネが思い詰めたような表情を見せるようになった。


「フォレア、どうしたの? 大丈夫? 何か思うことがあったら話してくれない?」

「……う~ん、やっぱアリサ姉達が『聖域』に帰って来たら話すよ。うちもしっかりまとめておきたいし。そっちのお祭り終わってから戻ってくるんだよね?」


 流石に心配になってどうしたのか聞いてみるとそんな答えが返ってくる。ふむ、フォレアルーネはフォレアルーネで何かしら事情を知っているみたいだ、セリアベールのお祭りが終わったら『聖域』に戻って詳しく聞いてみよう。


「そう言えば『聖域』でも何か「面白いこと」があったんだよね? その辺も気になるし、戻ったらじっくり話を聞かせてね?」

「なはは♪ オッケー! こっちは明るい話題だから楽しみにしてて! あ、ゆにゆに~お祭り一緒に楽しむのはいいけど、この事はまだ内緒だよ?」

「うん! ユニはちゃーんと約束は守るもん♪」「なぁ~ん♪」


 以前ティリアが話してた「面白いこと」ってのも気になるところだよ。なんでも明るい話題って事だし、楽しみだね! ふふ♪ モニター越しのユニもミーナも元気そうで安心する。さぁ、じゃあ早速エイブン氏の話を聞くとしようか。


「……うぅ、あ、ああ……おお? これは……皆、俺が……見えるのか? 声が届いているのか?」

「エイブン……久し振り、って、そんなに時間は経っていませんでしたね~?」

「おぉ、エイブン! 俺だ、ゼオンだ。聞こえるか? 見えてるか?」


 私の『聖域の魔女』としての権能でエイブン氏の『想い』を具現させると、彼は私達を見ては声が届くのか、姿が見えるのか問うてくる。それに応えるようにミュンルーカとゼオンがエイブン氏をしっかり見つめては返事をしている。


「ああ、ミュンルーカ久し振りだ……またこうして話が出来るなんて思わなかった。アイギス達、バルド達も元気そうだな。そしてゼオンも、デールもわざわざ来てくれて感謝する」

「ああ、久し振りだエイブン。悪いなゆっくり寝てるとこ起こしちまってよ、ちょっと聞きてぇ事があってな」


 ゼオンやデール、『黒狼』の面子はぼんやりと発光し、うっすらと透けるエイブン氏の姿に驚いているのか、直ぐに言葉が出てこないようだ。そんな彼等をよそにゼルワが話しかける。『白銀』達は一度『セリアルティ王城跡地』でビット達聖騎士部隊を見てるから戸惑いも少ないのだろう。


「実はつい最近貴方の姿を街で見かけた者達がいるんです。何か心当たりはありませんか?」

「ああ、やはりその事か……実は……」


 サーサがズバッと核心を突いた質問をすれば、エイブン氏も心当たりがあるようで、その時の様子を語ってくれた。


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【エイブン氏】~ミュンルーカと仲良かった~

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「俺はこの墓地に埋葬されてから、ゆっくり静かに眠っていたんだ……」


 街の皆が手厚く弔ってくれたお陰で、本当に穏やかな気持ちで寝れてたんだ~なんてまた、貴重な意見をしゃべるエイブン氏。やっぱりどの世界でも死者を尊び、尊敬や親しみを込めた弔いっていうのは大事みたいだね。


「今までの出来事を夢の中でゆっくり振り返って、自分の死にもようやく納得というか、踏ん切りがついてきてな……じゃあそろそろ旅に出るかって思ってたそんなある日だ」


 走馬灯ってやつかな? あれは死の間際に見るんだっけ? 私の時はどうだったかな……? 確かミーナの事を思い出してたような記憶があるけど、なんにせよ記憶を整理して自身の死を自覚して、納得もして、漸く成仏するか~ってとこだったんだろう。


「記憶にない黒いフードに身を包んだ連中が現れたんだよ。これは間違いなく夢ではなく、現実の出来事だと判断し注意深く様子を見ていたんだ」


 出た! 黒フードの情報だ!


「黒フードの連中がこの墓地に来ていた。これだけでも重要な情報だぜ!」

「ええ、ナイスですよエイブン! それで、彼等は一体どうしたんです?」


 ゼオンとサーサがキタコレ! と言わんばかりにその情報に食いついた。確かにこれで黒フード共と『死霊使い(ネクロマンサー)』は繋がっている証拠にもなるだろう。


「ああ、奴等はどうやら俺の姿は見えてはいなかったようだが、気配は察していたようだ。他と少し違い、気持ち豪華な黒フードを被った奴は多分リーダー格だと思うが……そいつが俺の墓の前に立ち、何やら呪文らしきものを呟くと……」

「お前の幻影が現れた……と言う訳か……」


 そうだ。と、頷くエイブン氏。成る程……どうやら街に現れた彼等の正体は、その姿を模倣するような魔法の効果だったらしい。


「……ん。『死者の幻影(デスイリュージョナル)』だね。あたし、わかった気がする」

「レウィリ、それマジで?」


 静かに話を聞いていたレウィリリーネが早くも答えを導き出した。死者を幻影として映し出し更に物理的な干渉まで可能にするその魔法は『死者の幻影(デスイリュージョナル)』と言うらしいけど、もしかしてその魔法で何かわかったって事かな?


「そっかぁ~あっちゃぁ~……うちもわかったわぁ、わかっちゃったよ。予想通りだよ、はぁもうめんどくせぇなぁ~」

「フォレア! なんですかその下品な言葉は! 皆さんも見ているのですよ?」


 おやおや、なんとフォレアルーネもエイブン氏の話から黒幕がわかってしまったらしい、めっちゃ項垂れて、すんげぇ嫌そうな顔をしては女神らしからぬ発言でアルティレーネに怒られている。


「……彼女達は女神なのか? ふふ、もう少し早くに会えていたらな……ああ、俺が伝えられることはこんなものだ、役にたてただろうか?」

「じゅうぶんですよエイブンさん! すげぇ助かります!」

「うん、ありがとうございました!」


 そんな妹達のやり取りを見ていたエイブン氏は、寂しげに微笑んだ。まぁ、こればっかりはね……もし次に生まれてくることがあったらまた出会えるかもしれないよ。

 ブレイドくんとミストちゃんが彼にお礼をしてる。うん、かなり有力な情報を聞くことが出来た、エイブン氏の話のおかげで妹達は何か勘づいたようだし、私もお礼しよう。


「ありがとうエイブン氏。この『聖域の魔女』アリサ、貴方に心から感謝を。まだ少し時間があるわ、話しておきたいこと、話したい人はいないかしら?」

「こちらこそ感謝を、アリサ様……何か街に危機が訪れているのではないかと気が気じゃなかったんです、伝えることが出来てよかった……最後に、ミュン……君と話したい……」


 この人もいいひとだなぁ……死してもなお、街の行く末を心配してくれたりしてくれてる。もう一度安らかな眠りにつく前に、ミュンルーカ……彼女とお話をさせてあげよう。


「……あらあら~? いっちょまえにワタシをご指名ですかぁ~? うふふ♪ いいですよ、沢山お話しましょ?」


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【エミリア氏】~流浪の踊り子は恋敵~

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「じゃあ、次はエミリアですね。彼女は流れて来た流浪の踊り子でして……」

「ぷくく♪ 聞いてくれよアリサ~エミリアはなぁデュアードに惚れてたんだぜ!」

「ああ、懐かしいな。あの頃は毎日のように(ホーム)にエミリアが来ていたな」


 エイブン氏とミュンルーカを二人きりにしてあげて、私達は次に踊り子だったっていうエミリア氏のお墓の前に来た。不機嫌そうな顔をしているシェリーを見て、どうしたんだろう? って思ってたんだけど……セラちゃんがからかうような口調でエミリア氏の事を話す。と言うか、あんなに怖がってたのに、随分馴れたねセラちゃん。

 で、話を聞くと、どうもシェリーとデュアードくんは恋仲であり、そこに割って入って来たのがエミリア氏らしい。バルドくんが言うには毎日のように押しかけ女房の如く、デュアードくんに猛烈なアプローチをしてたそうな。いやはや、その行動力には感心するけど、既にお相手がいる人に~ってのはどうなのよ?


(……もしアイギスに言い寄る女性が現れたら、うん。その時は……仲良くする体でカロリーたっぷりのお菓子食べさせてぷっくっぷくに肥えさせてくれよう! ふふふ……あ、でも、アイギスがぽっちゃり好きだったら逆効果になってしまうか?)


 まぁ、そんなアホな事はこの際後回しにして……


「……安心しろ……俺は、こう見えて……一途……」

「わ、わかってるわよ……それでも、不安になるのが彼女なのよ?」


 おーおー、お熱いこって。見なさいな、他のみんなも苦笑いで見守っておるぞ~?


「カカカ♪ 中々に破天荒なおなごだったようじゃのう? どれ、アリサ様、そんなおなごを拝んでやろうではないか」

「あはは♪ 私はエミリアさん好きだったよ! 色々お話聞かせてくれたし、綺麗な躍りは凄かったし!」

「俺もエミリア姉ちゃんは好きだったぞ! 色々面白かったし、おっぱいでかかったし!」


 もーっ! ブレイドったらーっ!? って騒ぐ可愛いお子ちゃま達。いやいや、君達もじゅうぶん面白いよ? どれ、じゃあ、珠実の言う通りその踊り子さんを呼んで見ましょうか。


「あーあー! こらぁ~シェリー! 私の目の前でデュアードといちゃつくんじゃないわよぉ! なに見せつけてくれてんのよ! 化けて出てやるわよ~! えー聞こえてる!?」

「うるさいわよエミリア! 後からノコノコやって来て人の彼氏奪おうだなんて百年早いのよ! 生まれ変わって出直して来なさいよ!?」


 おぅ……のっけからなんとも熱い言い争いで始まったぞ? 呼び出した途端にギャーギャーと喚くエミリア氏、どうやらさっきのシェリーとデュアードくんの会話を聞いていたんだろう。文句をブーブー垂れ流している。それに負けじと吠えるシェリーもまたうるさいわ。


「あれ? え、声届いてる? 姿も見えてる? え? え? なにこれどーいうこと!? もしかしてあの黒いフード被った連中と似た魔法!?」

「ふっ……相変わらずだなエミリア。俺を覚えているか? 『黒狼』のバルドだ」

「……久し振りだな……エミリア」


 呼び出されたことで声と姿が私達の耳に目に届いている事に戸惑うエミリア氏にバルドくんとデュアードくんが声をかける。エミリア氏は二~三瞬きし、その表情を喜色に染める。


「うわぁ~♪ デュアード! バルド! 久し振り~! 会いに来てくれたのね!」

「ったく、お前は死んでも変わってねぇなぁ~エミリア!」

「お久し振りですエミリアさん!」「オッス! エミリア姉ちゃん、元気だったか?」

「おーおー♪ ちみっこ三人衆も相変わらずでお姉さん嬉しいな!」


 続いてセラちゃん、ミストちゃん、ブレイドくんもエミリア氏に声をかける。ちみっこ三人衆とはまた面白いこと言うね。セラちゃんはなんだと~ってぷんすかしちゃってるけど、まぁ、それなりに嬉しそうだ。


「妾も加わって四人衆となろうかの?」


 ぼそっと珠実が素敵な提案。それも魅力的だけど、今はそうじゃないので後でじっくり堪能させてもらおう、その時はユニも加わって五人……っと、いけないいけない、脱線しちゃうとこだった。


「……ふぅ~ん、そんな事があったのね? なんか怪しい連中だと思ったけど、ほら、私こんなだからどうしようもないじゃない? どうにかして伝えたいって思ってたから皆が来てくれてよかったわ!」

「……ああ、明らかに……異常事態……何か……その連中のことで、気付いた事は……ないか?」


 エミリア氏は話しかけるデュアードくんに一生懸命触れようとするけど、残念ながらスカスカッと素通りしてしまう。それを見てるシェリーは、振り払うようにエミリア氏をペイペイってはたこうとしてるけど、こっちも素通り。何を不毛な戦いをしてるのやら。


「ちぇ~やっぱりくっつけないか……そうね、私の墓に魔法使ってた奴から濃い血の臭いがしたのをよく覚えてるわ。貴方達もし戦うつもりなら気を付けてね? 結構な手練れ達みたいだったから、油断すると痛い目にあうかもしれないわ」

「ふんっ! 油断などするものですか! でも、『血の臭い』か……気になる情報ね。感謝するわ、エミリア」


 エミリア氏のお墓に魔法を使ったってやつは、先のエイブン氏が言ってたリーダー格の事だろう。『血の臭い』ってよくわかんないけど、その分有力な情報かもしれないね。


「臭いが染み付くほどの人数を手にかけてるってのか……? 想像以上にやべぇ奴なのかもしれねぇな……警戒強めとくか」

「それがいいよゼオン。前にも言ったけどあんたとこの街は結構世界に注目されてるからね……そしてそれは『氾濫(スタンピート)』を解決したことで大きく加速するだろうから……」


 私がゆっくり寝られるように頑張ってちょうだいね? って、ゼオンに向けてのメッセージを贈るエミリア氏。ゼオンはその言葉に力強く頷いた。


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【ロッド少年】~先生も涙~

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 今なおぎゃいぎゃい賑やかに騒ぐエミリア氏とシェリー、デュアードくんはブレイドくんとミストちゃんも一緒になって色々話に華を咲かせているので、お任せしておくとする。さて、最後はいよいよアイギス達の同期、ロッド少年だ。


「デールのおっさん、心の準備はいいかしら?」

「……ああ、じゅうぶんだよ。ありがとうお嬢さん(フロイライン)

「私も大丈夫ですアリサ様」「俺もです」


 エイブン氏とエミリア氏との邂逅を経て、かつての教え子との対面する心構えが出来たみたいだね。デールの言葉にアイギスとバルドくんも続く。


「アイギスとバルドの同期だった少年か、俺会ったことねぇんだよな」

「同じくです。話にはチラッと聞いた事がありましたけど、話題が話題だけに根掘り葉掘り聞くわけにもいきませんでしたから」

「アタイもないぜ、サーサとおんなじで話だけなら聞いたことあったけどな!」

「ロッドはなぁ~正直冒険者には向いてねぇって思ってたんだよ……なんせ優しすぎてな……ギルドの職員になってもらいたかったぜ」


 ゼルワとサーサにセラちゃんがロッド少年について話してるね。ゼオンが三人に答えるように、思い出してはため息をつく。冒険者に荒事は切っても切り離せないものだし、優しいだけじゃ駄目よね。


「──ああ、まさか、またこうしてみんなと話が出来るなんて……感謝します、女神様」


 姿を現したロッド少年は静かにその瞼を開き、優しい眼差しを私達に向けてくる。アルティレーネと私。そして映像通信(ライブモニター)に映し出される妹達を見て一礼し、感謝を伝えてきた。気にしないでいいのよん? それと私は女神じゃないからね?


「彼がロッド……ブレイドや、ミストと同じくらいの年の子だったのですね」

人間(ヒューマン)か、生きてたら今頃アイギス達みてぇに立派な成人だなぁ?」

「へぇ~ひょろっちぃ奴だな、ゼオンの言う通り職員目指したら良かったのにな」


 サーサとゼルワ、セラちゃんがロッド少年に対する率直な感想を口に出す、同期って言っても年はどうなんだろ? 少年と青年が同時期に冒険者になっても同期って言うんだろうし、まぁ、その辺はいいか。


「アイギス、無事に『魔の大地』に渡って腕を治せたんだね? よかった……ゼオンさんは、ふふ、暫く見ないうちに老けましたね?」

「ああ、報告が遅くなってしまったな。ご覧の通りだ」

「あー、悪いなあんま墓参りに来れなくてよ、お前が死んでからもう八年か? 俺も歳くうわけだ」

「もうそんなに経つんだな……ふっ、ロッドは変わらんな」

「…………」


 声をかけるロッド少年に答えるアイギス、ゼオン、バルドくん。デールのおっさんは緊張してるのかな? 口をパクパクさせてるけど声が出てない。

 ほほ~ん、ロッド少年が亡くなって八年が過ぎてるのか。アイギスとバルドくん、そしてデールのおっさんはちょくちょくロッド少年のお墓参りに来ていたそうだから、彼等の成長を度々見ていたんだろう。


「ユグライア、貴方八年もの間一度も訪れていなかったのですか?」

「そりゃあいかんよ、ユグラっち?」

「ん、故人はしっかり尊ぶべき……」

「そうよ~? 例え忙しくてもきちんとお墓参りして、お礼をしなさいね?」


 そうゼオンに注意するのは私の妹達だ。アルティレーネは母が子を躾るように、めっ! って感じで、フォレアルーネは苦笑い、レウィリリーネはうんうん頷いて、ティリアはさとすように文句を言う。


「年に一度でもいいよ、街のイベントにしてさ、頑張ってくれたみんなに感謝を伝えたらいいんじゃない?」

「お、応……いやはや、女神様総出で注意されるなんてな……面目次第もねぇや。その案採用させてもらうぜ、アリサの嬢ちゃん」


 まぁ、ゼオンも立場上忙しいってのは理解出来るからね、私はちょこっとだけ提案しておくにしておこう。街のみんなが故人を偲ぶ、そんな一日があってもいいだろうから。って、そう言えばこの世界にはお盆とかハロウィンとかってないのかな? 後で妹達に聞いてみよう。


「ふふ、そうしてくれると僕達も嬉しいです……先生? どうしました?」


 そんな話をしていると、デールのおっさんが意を決したような顔つきでロッド少年の前に一歩踏み出してきた。


「ロッド、私は君にずっと謝りたかった……済まない……あの時、もっと君をしっかり師事出来ていれば、君は命を落とすこともなかったはずなのに……」

「「デール……」」

「気にしないで下さい先生。「冒険者は総てが自己責任」そう教えてくれた通り、僕が命を落としたのは僕自信の責任なんですから」


 目の前の少年に深々と頭を下げて、真摯な謝罪を告げるデールのおっさんの目には涙が流れている。アイギスとバルドくんもそんな師匠を見て思わず彼の名前を呟くことしか出来ない。ずっと気に病んでいたんだね……ロッド少年は優しく微笑んでそんなおっさんを優しく諭している。


「って言っても、先生のことだから、気にしちゃいますよね? じゃあ、こうしましょう。先生、これからも多くの人を導くよき先生でいてくれますか? これからも多くの新人達が冒険者を志すでしょう、そんな彼等を一人でも多く導いてあげてほしい……ふふ、それこそアイギスや、バルドのような立派な冒険者になれるように」

「ロッド……ああ! 勿論だとも! 約束しよう!」


 ロッド少年の死を経て、デールのおっさんは新人の教育に力を入れたって聞いてるし。アイギスとバルドくんにも大きな影響を与えたと聞くよ。そんな彼が望むのが未来を担うであろう新人の教育ときたもんだ。実に先を見てる少年だね!


「いいのぅ~聞けば「学校」なる施設を作ると言う話じゃて、そこでは多くの者がこの者や、他の者から学を学ぶのだそうじゃぞ? 童や、安心すると良いぞ!」

「ああ! ロッド、私はその「学校」の講師として選ばれているんだ! ここで君に誓うよ、私は一人でも多くの人を導いて見せると!」


 珠実も良い話題だと思ったのだろう、ニコニコ微笑んでロッド少年に「学校」の事を教えて安心するように伝えている、そして力強く宣誓するデールのおっさんを見てロッド少年は嬉しそうに顔を綻ばせるのだった。


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【見えてきた犯人達】~そいえばシェラザードは?~

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「……と、言うわけなんだ。ロッド、何か知っている事があれば教えてくれないか?」

「なるほど、僕の姿を模倣して、か……そう言うことか、だからわざわざ全身をローブで隠して……そして先生達の前に……」


 ロッド少年にアイギスが今まで起きたことを説明して、情報を求めると、ロッド少年はなにやら考え込んで、ぶつぶついい始めた。


「アイギス、バルド、先生、ゼオンさん。そして仲間の皆さん。ズバリ言います……その集団は『亜人(デミヒューマン)』達です」


 暫く考え込んでいたロッド少年は意を決したようにハッキリと私達にそう告げるのだった。


「この墓地に現れた集団の一人に尻尾が見えたのです。あれは間違いなくリザードマンでしょう」

「マジか……」


 確信をもって言うロッド少年にゼオンが驚いている。

 『亜人(デミヒューマン)』とは、今ロッド少年が話に出した『リザードマン』や、サーサや、エミルくんと言った『エルフ』、ドガやファムさん、ギドさんといった『ドワーフ』、セラちゃんの『ハーフリング』、ゼルワの『ハーフエルフ』、レイリーアの『ダークエルフ』、ゲンちゃんの『ワーウルフ』と言った『人間(ヒューマン)』に類似した人種の総称だ。今例に挙げた種類以外にもまだまだ沢山いるって以前、妹達から聞かされた覚えがある。『聖域』の妖精さん達や、『四神』、『懐刀』達の棲処にいる者達もほぼ『亜人(デミヒューマン)』だ。


「んん~? おお、そうか! あぁ、俺もわかっちまったかも……」

「私も一部分なら、恐らくこうだろうって考えが……」

「……ちっ! 嫌な事を思い出しちまった」


 黒フードの連中の正体が『亜人(デミヒューマン)』と聞いて、ゼルワとサーサがなにやら合点が言ったという顔をする。セラちゃんは心底嫌そうな表情を浮かべては舌打ち。まぁ……きっとあんまりいい話じゃないんだろうってことは私でもわかる。


「アイギス、バルド、先生、ゼオンさん……彼等が魔王を頼ってまでこの世界を破壊しようとするその理由をよく考えてみて……僕が言えるのはこれくらいしかないよ?」

「十分だ、感謝するぞロッド! そしてしっかり考えると約束しよう」

「無論私もだ。ああ……しかし、君のその柔軟な考え、少し羨ましく思う……言っても仕方ない事だが、一緒に冒険したかったな」

「ふむ、私達は一度歴史を知るべきなのかもしれない……ふふ、教え子に逆に教えられるとはね……」

「フォレアルーネ様は総ておわかりになられているご様子でしたな?」


 ロッド少年はそれ以上の情報は特にないという、『亜人(デミヒューマン)』が今回の騒動の黒幕ってわかっただけでも大きな手掛かりだと思うし、素直に感謝だね! そして、バルドくんもアイギスもデールのおっさんも彼の言葉にしっかり考えを巡らせると約束しているようだ。


「……まぁ、ね。でもユグラっち? ちゃんと考えろってロッドんも言ってんじゃん?」

「ああ、いや、勿論俺も一つの答えが出てるんです……『聖域』に赴くんでそん時は答え合わせしたいんでさぁ」

「ん……なるほど、いいよ」


 んで、ゼオンは思考放棄して、手っ取り早くフォレアルーネに答えでも聞くつもりだったのかな? なんてまぁ、勘違いされて、フォレアルーネに注意されてるけど、それは誤解で、一つの答えが出たようだ、『聖域』で話し合って真実を知ろう。レウィリリーネも頷いている。


「はいはいはい! みんな、かなり有力な情報が得られたことだし、警戒は続けるにしても! 無事に『氾濫(スタンピート)』を解決したことを祝いなさいよ♪」

「ティリア姉様……ふふ、そうですね。シェラザードもアリサお姉さまが無事に無力化しましたし、今は一つの問題が解決した事を素直に喜びましょう」


 パンパンパンッ!! って映像通信(ライブモニター)越しに手拍子でもって私達に切り替えるよう促すティリアを見て、みんながそうだねって破顔する。アルティレーネも同意して一緒に喜んでるね♪


「ふふ、そうですね。でもまさかこんな形で女神様にお会い出来るなんて思いもしなかったな、えっと……アリサ様でしたね? 改めてお礼を言わせて下さい、本当にありがとうございます」

「ううん、いいのいいの♪ それよりほら、今のうちに先生と同期で積もる話でもしとくといいよ」


 ロッド少年が畏まって私にお礼をしてくるので、気にせずにアイギス達と沢山お話するように促す、生前伝えきれなかったこと、話しておきたかったことに、聞きたかったこととかこれを期にがっつり話をするといいって思うからね。


「それでアリサ姉~シェラザードって今はどうしてるのん?」

「ん、アリサお姉さんの『無限円環(メビウス)』にいる?」

「呪いはどうなったの、まともに話が出来るなら色々聞きたいんだけど?」

「そう言えばあの黒竜も一緒に閉じ込めたんですよね?」


 ロッド少年とゼオン、デールのおっさんに同期組とゼルワ、サーサ、セラちゃんでわいわいと楽しそうにしているアイギスを横目に、私は妹達の質問攻めにあっている。その内容は先の戦いで降した魔王シェラザードのことだ。


「あ~シェラザード……シェラザード……ね。あはは……」


 レウィリリーネが聞いてきたように、シェラザードは確かに今も私の『無限円環(メビウス)』内にいるんだけども……うん、ティリアが心配してる呪いは無事に解けておりますとも、アルティレーネの言ってる黒竜はアイギス達がシェラザードに飛ばされた異空間にいたアイツだ、今は怪我も治って狂気状態も治ってシェラザードと一緒に『無限円環(メビウス)』内にいる。


「アリサ姉~? どったのぉ~シェラザードになんかあったの?」

「あぅぅん~あったって言うか……どうしてこうなったっていうか……」


 フォレアルーネが歯切れ悪い私の態度を訝しんでいる……いやね、これを話すと、ちょっと面倒くさ、あ、いやいや! 面倒くさいのよ?


「はは~ん……なんぞしでかしたんじゃろう~アリサ様~?」

「ギクゥ!? ちょっ!? 何を言い出すのかねたまみん!?」


 そんな私を見てはニヤニヤとほくそ笑む珠実さん。なんて勘の良い子なのよこの子は!


「アリサお姉さん……」「アリサ姉さん?」「アリサ姉……」「アリサお姉さま……」


 やっべぇーっ!? 妹達のジト目が突き刺さってくるぅ~!!


「わ、わかった! ちゃんと話すから! でも、怒んないでよ~?」


 仕方ない、シェラザードがどうなったのか話して聞かせるか……

エイブン「……(((UωU` *)(* ´UωU)))」

ミュンルーカ「エイブン……もじもじしないでください(^_^;)ちょっとキモイですよ(-_-;)」

エイブン「Σ(*゜Д゜*)そ、そうか( ; ゜Д゜)いや、済まない……色々と話をしたかったのに(*ov.v)o」

ミュンルーカ「はぁ~まったく(*゜∀゜)=3だからあれほど先の事を話すなって言ってたでしょ~?( `Д´)/死亡フラグって言うんですよ!?」

エイブン「うぅ……( ノД`)…Aランクに登り詰めてキミに想いを打ち明けたかったのに(´TωT`)」

ミュンルーカ「残念でしたねぇ~( ̄^ ̄)……ワタシだって、ちょっと期待してたんですよp(`ε´q)ブーブー」

エイブン「ミュンルーカ……ごめん(;>_<;)」

ミュンルーカ「ホントですよ……まったく(つд;*)バカ……」


エミリア「でさぁ~ブレイドん(-ω- ?)ミストちゃんとはちゅっちゅ(^з^)-☆したのかい( ゜∀゜)? 冥土の土産に教えなさいよ(*´艸`*)」

ブレイド「ぶふっΣ(´д`*)!? エミリア姉ちゃん何言いだすんだよ(*`Д')!?」

シェリー「相変わらず下衆いわねあんたは(≧Д≦)!?」

ミスト「きゃー(/▽\)♪ ちゅっちゅだなんて、そんなそんなぁ~ヽ(〃´∀`〃)ノ」

デュアード「初々しい……( ´ー`)」

エミリア「可愛いわぁー゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜ほらほら~遠慮しないでお姉さんに教えなよ?」

ブレイド「イヤだよ(。・`з・)ノシェリー姉ちゃん達の聞けよなヽ(゜Д゜)ノ!?」

シェリー「はぁっ!?Σ(`Д´ )ちょっとブレイド、何を言うのよ!?」

エミリア「却下よ!( ̄^ ̄)その二人のイチャイチャ話なんて聞いたら、私悪霊になって枕元に毎晩立つわよ(y゜ロ゜)y!?」

デュアード「……面倒臭いところも変わってない( ゜Å゜;)」


ロッド「|д゜)ジー」

バルド「どうしたんだロッド( ゜ー゜)?」

セラ「アタイの顔になんかついてるかい( -_・)?」

ロッド「ううん(ーдー)キミは中々大変そうだなって思ってね(;´∀`)朴念仁が相手だと苦労も多いでしょ、ごめんね( ̄ω ̄;)」

セラ「(-_-)゛? ……Σ(゜ω゜)あ、いやいや!(-д- 三 -д-)大丈夫だ!」

バルド「一体全体何の話なんだ(,,・д・)?」

デール「ふふ( ̄ー+ ̄)相変わらずの洞察力だ、流石ロッド(’-’*)♪」

ゼオン「いや、ホントにな(°▽°)大したもんだぜ、生まれ変わってギルド職員になってくれよ(*つ▽`)っ」

ロッド「ふふ(゜ー゜*)考えておきますね、えっとサーサさんとゼルワさんは……ああ、とても良い関係のようですね(^ー^)」

ゼルワ「お、わかるか( ̄▽ ̄)?」

サーサ「ふふ( *´艸`)仰る通りの仲ですよ(’-’*)♪」

ロッド「アイギスは……ああ、うん……(´ヘ`;)」

アイギス「な、なんなのだロッド(゜Д゜;)? 気になるんだが(-_-;)」

ロッド「君の想いが報われるのを祈ってるよ(;´∀`)頑張れアイギス(*^-^)色々とねΣb( `・ω・´)グッ」

アイギス「あ、ああ……何か釈然としないが、ありがとう(-""-;)」

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