表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS魔女さんはだらけたい  作者: 相原涼示
39/211

39話 魔女と模擬戦『黒狼』

誤字報告ありがとうございます! 修正しました。(2023/9/24)

──────────────────────────────

【思わぬ出会い】~もう見付かったの?~《レウィリリーネview》

──────────────────────────────


「「…………」」


 困った……正直こんなに早くリュールの子孫に会えるとは思ってなかったから……どんな顔すればいいかわからない。映像通信(ライブモニター)ごしのこの子も戸惑ってるみたい。でも……


「ん、やっぱり……リュールの子孫だね、面影がある……」


 似ている……うん。在りし日のリュールに……勤勉で、努力家だったリュール。記憶の中の彼女の顔が今、映像通信(ライブモニター)に映し出される彼女と重なる。


「れ、レウィリリーネ様……あぁ、本当に……本当にお戻りになられて……」

「ん、そう……あたし、レウィリは帰ってきたよ。今は遠き友の子。名前を聞かせてほしい」

「はい! 私は……フォーネ。フォーネ・ウィル・リュールです!」


 涙をその瞳に溜めて、元気に名乗ってくれる彼女。あぁ……フォーネ、とても良い名だね。色々聞きたい……あたしが『リーネ・リュール』から皆を逃がした後、どうしていたのかとか。

 少しだけ話そう……あたし達永い時を生きる者にはちょっと昔。フォーネ達にとってはとても遠い昔話。

 あたしが祝福を授けた国『リーネ・リュール』は世界の北東に位置していた。アルファベットの『Y』の文字を思い浮かべてほしい。中心点を『聖域』として、そこから下にアルティ姉さんの『セリアルティ』、左上……北西にフォレアの『ルーネ・フォレスト』、そして右上、北東の『リーネ・リュール』が存在していたのだ。

 当時はその三王家を『三神国』とも呼んでいたりした。魔神との戦いでは先陣を切って矢面に立ち、魔王率いる軍勢に一歩も退くことなく勇敢に戦った英傑達。かの勇者アーグラスにも「『三神国』の助力があったからこそ魔王達を討てた」と言わしめた程だ。

 しかし……如何に屈強な戦士達と言えど、疲弊は重む……まるで終わりの見えない戦いに周辺各国が次々に滅ぼされて行き、遂には『リーネ・リュール』もこれまでというところまで来てしまった。

 あたしは予めアルティ姉さんとフォレアと話して決めておいた、「いざというときは皆を転移で逃がす」事を判断。リュール達、多くの国民達を避難させて『聖域』に移ったのだ。


「……悔しかった、そして……悲しかった……」

「レウィリリーネ様……」


 滅び行く『リーネ・リュール』を泣きながら見ていた、その当時の記憶が思い起こされる。


「でも! 私達はこうして今、お会い出来ました! だいぶ世代は代わってしまいましたけど……」

「フォーネ……」

「うふふ♪ 私の実家には古くから伝わるレウィリリーネ様の肖像画があるんですよ~?」


 え!? なんでそんなのが残って……あっ! そう言えばいつだったかリュールがコソコソと何かを描いている時期があった。あの時は「風景画です」と言って、王城を描いた絵を見せてくれたのだ。それはまた立派な絵画で、あたしも褒めてあげたのを覚えている。


「あの頃か……むぅ、風景画だけじゃなかった……そう言えば状態保存の魔法を教えてってねだってきたのも同じ頃だった……」

「あははは、レウィリリーネ様に内緒で描いていたんですね! ええ、それで間違いないと思いますよ。絵の裏にはしっかりサインも残っていますから」


 うむむっ! おのれリュール、なんて物を遺していったのか!? 恥ずかしいじゃないか!

 聞けば彼女はセリアベールから少し離れた位置にある農村の生まれで、祖先達がどのような経緯でそこに居を構えるようになったのかまではわからないという。


「今度里帰りして父と母に……いえ、村の皆に聞いてみま~す! レウィリリーネ様、よろしければその時ご一緒していただけませんか?」

「うん。勿論、貴女達も『聖域』に来て。沢山……沢山話そう?」

「はい! アリサちゃん達と『白銀』さん達と氾濫(スタンピート)を解決して、リールと一緒に伺わせていただきますね!」


 お互いにそう約束をして、二、三会話を楽しんだ後通話を終わらせた。

 それにしても……こんなに早く見付かるとは思わなかった……セリアルティからアルティ姉さんに転移させられた者達と合流したのかな?


「なんにしてもよかったよかった! ね~レウィリ姉?」

「ん、同意。そっちの子はどうだったの?」


 フォレアの方も通信を終えたみたいで、機嫌良さそうにニコニコしてあたしに話しかけてきた。『ルーネ・フォレスト』の末裔、リールと言ったあの子とお話しできて嬉しかったのだろう、あたしのように。


「リールちゃんすっごく良い子だった! 冒険者になって酷い目に遭いそうになったりしたけど、それでも頑張ってるって!」

「酷い目?」


 詳しく聞いたりはしなかったそうだけど……大体の想像はつく。後でこっそりアリサお姉さんに伝えて、あたし達の大切な友人を陥れようとした輩にお仕置きしてもらおう。


「『聖域』に来たら目一杯甘やかそうね! レウィリ姉♪」

「うん、ゆっくり傷を癒してあげよう……」


 セリアベールの問題、『悲涙の洞窟』の氾濫(スタンピート)が片付けば彼女達もこの『聖域』にやってくる。ふふ……楽しみ♪

 それまでに『聖域』を立派に開拓して歓迎の準備をしなくては! あたしとフォレアはお互いに笑い合いそれぞれの作業をすすめるのだった。


──────────────────────────────

【ビックリです】~信じられない!~《エミルview》

──────────────────────────────


「凄い……信じられない!」


 僕の名前はエミル。このセリアベールの街の冒険者ギルドのサブマスターを務めている一介のエルフです。今僕は眼下で起きている事態を飲み込めず、動揺の最中にいます。


「おおぉっ! 行くぞ! 合わせろセラ! デュアード!!」

「「応っ!!」」


 『魔の大地』から無事に生還したアイギスさん達『白銀』。その面々がお世話になったという女神様一行も氾濫(スタンピート)解決に御助力下さるとのことで、今は他の冒険者達、ひいてはこの街の住人達に認めてもらうため、そのお力の一端をお見せ下さっております。

 そのお相手を務めているのが『黒狼』の方達です。『白銀』に並び街の誇るSランクパーティー。最近は新人二人も加わってますます精力的に活動されているパーティーですね。


「……え? 遅くないですか、魔神の残滓はもっと速かったですけど?」

「そう言えばカインはホーンライガー相手にしたらどんな感じ?」


 その『黒狼』相手にアリサ様とのんびりお話しながらヒョイヒョイと連携攻撃をかわし、シェリーさんとミストさんの魔法を意にも介さず、ヒヒーンッ! と嘶きだけで『黒狼』全員を吹き飛ばすペガサスのカイン様。


「「うおおっ!?」」「「きゃあぁっ!!」」「ぐあっ!」

「みんな!? 直ぐに回復します!」


ワアアァーッ!!


 会場に集まった人々が沸き立ちます! 凄い! 思わず僕も立ち上がってしまいますよ! あの『黒狼』の必殺の連携をこうも簡単にはねのけるなんて!


「ホーンライガーってあの六本足のですか? あんなの『聖域』に沢山いますよ? エスペルにむぎゅってされて逃げていったりしてますよね。僕はミッドルとか羽蜘蛛の方が苦手かなぁ」

「だ、そーでっすよぉ? Sランクパーティーさん?」


 うげげ!? なんてことでしょう! 『白銀』のアイギスさんの腕を喰い千切ったあのホーンライガーがうようよいるうえに、それ以上の魔物が棲息しているって言うんですか?


「はは……こりゃあ冒険者ランクの見直しが必要かも知れねぇなぁ」

「ど、同感ですゼオンさん。最高峰と思っていたSランクがこうもあっさり……彼等に限ってないとは思いますが、慢心を防ぐためにも必要かと……」


 僕達は今まで『白銀』と『黒狼』の二大Sランクパーティーこそがこの世界の頂きと思っていました。ですが、それは間違いだったようです。それほど迄に『聖域組』の方達は別次元の強さを誇る!


「みゅんみゅん~回復は終わりましたかぁ~つーぎーはぁ~アリスちゃんの番でっすよぉ~?」

「マジか……どうすんだいバルド? 正直侮ってたよアタイは……」

「あぁ、俺もだ……まさか俺達が手も足も出ないとはな……」

「全霊をもって……戦う……それだけだ……」


 『黒狼』の前衛組、バルドさん、セラさん、デュアードさんが気概を揚げています。全身に闘志を滾らせてカイン様と交替したアリス様に向かいっ!!


「……秘技・流星!」

「喰らいな! 穿斧撃!」

「黒狼剣!」


 デュアードさんが目にも止まらない高速の連続突きを放ち、セラさんが会場の地面を大きく穿つ渾身の一撃! そしてバルドさんの剣技がアリス様を襲います!


「はーい♪ ぽこ、ぽんぽ~ん! おまけにぽぽっぽ~!」


バタバタバタッ! ボンッボンッボボーンッ!!


「「「!!?」」」

「「「きゃああぁーっ!!?」」」「おわぁっ!?」


 一瞬! 一瞬のうちにバルドさん、セラさん、デュアードさんが地面に伏し、少し離れて攻撃の機会を窺っていたシェリーさん、ミュンルーカさん、ミストさん、ブレイドくんが吹き飛びました! アリス様のカウンター攻撃です!


「うおおおーっ!! すげぇぇっ! アリスちゃんつええぇぇーっ!!!」

「きゃあーっ!! アリス様素敵ぃ~♪」

「いえ~ぃ♪ ピースピース!」


 嘘でしょう? 本当に信じられない……! 彼等のあの攻撃は以前の氾濫(スタンピート)で現れた身の丈五メートルはあるサイクロプスすら屠ったんですよ!?

 観客達もそれをわかっているため、難なくかわしてカウンターで切って捨てたアリス様を称えています。


「うーん……思ってた以上に開きがあるみたいだね。アリス、カイン。あんた達も『黒狼』に付きなさいな。あぁ、指揮訓練も兼ねるからあくまでもサポートだけよ?」

「うえぇっ!? マジでっすかぁ~?」

「指揮訓練? 僕とアリスさんで彼等を指揮してアリサ様と戦うんですか?」


 おや? ここでアリサ様からまさかの提案が……なんとアリス様とカイン様も『黒狼』に付けて戦われると仰るのですか!?


「そ、今回は私が映像通信(ライブモニター)だのなんだの駆使して全体の指揮を取るけど。万が一私と連絡が取れなくなった時も踏まえて、やっておきましょ?」

「なるほど……マスタぁに万が一があるとも思えませんけど、了解でっす!」

「わかりましたアリサ様! やってみます!」


 先を見据えておられる……先刻、執務室でお聞きした『悲涙の洞窟』に眠る魔王の話が脳裏をよぎります。アリサ様は既に、どうすれば冒険者の皆を上手く戦わせる事ができるか、とお考えになられていらっしゃいます。それを、おそらく部隊中核を成すであろうアリス様、カイン様にも考えてほしいのでしょうね。


──────────────────────────────

【これほどとは!】~手玉に取られる~《バルドview》

──────────────────────────────


 参った……

 いやはや、『手も足も出ない』とはよく言ったものだ。

 俺はバルド。セリアベールの冒険者パーティー『黒狼』を率いる者だ。

 失われた腕を治し、凱旋した俺の朋友アイギス。彼等『白銀』が連れて来た『魔の大地』……いや、『聖域』からの助っ人五人と一頭。

 その内、アリサ殿とアリス殿、そしてペガサスのカイン殿を相手に試合を行った俺達七人。

 結果から言えば先に言った通り、手も足も出なかった。俺達が今まで培ってきた技も経験も何一つ彼女達に届かない。そして今は……


「ほら~みゅんみゅん遅いでっす! 避けるんだよぉぉ~!?」

「うわわっ! はぁ~い!」

「シェリーさん! ミストちゃん危ないです! しっかり周囲警戒しましょう!」

「「は、はい! ありがとうカインさん!」」


 アリス殿とカイン殿も俺達の陣営に加わり、一対九。アリサ殿お一人を相手に仕切り直している。


「すげぇぇ……あの『黒狼』相手に、微動だにしねぇぞあの姉ちゃん!」

「ど、どうなってんだ一体!?」


 観戦しているギャラリーも沸き立つ。無理もない、アリサ殿はその言葉通り一歩も動いていないのだ。アリス殿とカイン殿はあくまでも俺達をサポートするにとどまって、攻撃には加わらない。だが、その強化魔法(バフ)は凄まじく、俺達の動きを更なる高みへ押し上げた。


「うん。よく防いだね! じゃあどんどん行くよ~掻い潜って私に触れてみそ?」


もに~ん


 アリサ殿がそう言うと不思議な球体がその周囲に現れる。『弾性空気弾(もちもちエアもっちー)』とか言う魔法との事だが、この魔法に当たるとダメージはないが非常に弾かれる。


「斬っても切れず、突いても割れずとは恐れ入る。だがっ!」


バシィッ!


 それならば反らせばいいだけのこと! 俺は迫る弾に得物の大剣の腹を添え彼女に打ち返す。


「さっすがバルド! へへんっ! 『黒狼』を舐めんなよ、アリサ!?」

「セラは調子に乗るな……アリス殿の強化魔法(バフ)あってこそだ……」

「そうよセラ、デュアードの言う通り。そしてアリサ様がだいぶ手加減してくれているおかげだわ」


 セラも真似して打ち返し得意気に吠えるが、それをデュアードとシェリーが窘める。


「おーおー、セラちゃんや吠えるだけなら犬でもできるぞい? そうやってのんびり立ち止まって打ち返してていいのかな?」

「マズイ!? 全員散開しろ!」


ボゴォッ!!


「「うわあぁっ!!?」」


 俺が言うのが早いか否か。足場が突然崩れ、浮遊感に見舞われる! 『落とし穴(ピットトラップ)』!? 馬鹿な! 一体いつの間に!?


飛行(フレイ)!!」


 落ちるっ! そう思った瞬間身が驚くほど軽くなり、俺、セラ、デュアード、シェリーは空に浮き上がる! これがあの有名な飛行魔法か!?


「あっぶな! ほら、さっさと這い出て、ダメでっす!!」

「「「「えっ!?」」」」


ドガーンッ!!


「ぬわぁぁっ!?」「わあぁっ!?」「きゃあぁっ!?」「うぐっ!?」


 アリス殿の飛行魔法とその声に反応し、即座に落とし穴から飛び上がった矢先だ。俺達四人を正確に捉えた魔力弾(エナジーショット)が爆ぜる! やられた!


「駄目よアリス、これほど未来予測がわかりやすい例はないでしょう? あっさり引っ掛かってどうするの!? 後でお説教だかんね!」

「あううっ! ごめんなさいごめんなさいマスタぁ~Σ(ノд<)」


 ドザッと地面に叩き付けられる。が、アリス殿の飛行魔法のお陰で大きなダメージはない。アリサ殿はアリス殿が俺達に出した指示について叱っているな。

 アリサ殿が仰った未来予測。なるほど……と、思う。誰も陥った罠からは一刻も早く抜け出たいと思うものだ。それは最早条件反射と言ってもいいだろう。


「うぐぐ……あの一瞬でなんでこうも正確にアタイ達を!?」

「……次元が……違い過ぎる……」

「うふふっ! 凄いわ……無詠唱どころかその静謐性、速度、魔力操作! これほどの高みがあったなんて! あぁっアリサ様~♪ 私ますますファンになりましたぁ~!」

「ああ、まったく上には上がいるものだ……しかし!」


 セラとデュアードがぐぐぐと起き上がる。うむ、たいした怪我は負っていないな。シェリーは……何か恍惚とした表情でアリサ殿を称えているな……大丈夫かコイツ?

 アリサ殿はアリス殿に色々とアドバイスをしている最中だが、忘れていないか? その油断、取ったぞ! 目にもの見せてやれ!


「もらったぜアリサ姉ちゃん!!」

「背中ががら空きですよ~♪」


 ブレイドとミュンルーカがアリサ殿の背後から急襲をかける! そう、俺達四人は陽動だ。アリサ殿の目を引き付けている間に背後に移動したブレイドとミュンルーカが隙を窺っていたのだ。


「『浮遊(フロート)』」

「おわあっ!?」「はわっ! なになにこれぇ~!?」


 なっ!? 馬鹿な!


──────────────────────────────

【ぎゅってされて】~おかぁさぁん~《ミストview》

──────────────────────────────


 そんなぁ~!? どうして気付かれたのぉ?

 バルドさん達が正面でアリサ様の攻撃を受けている隙に背後に近付いたブレイドと、ミュンさん。ここぞってタイミングでアリサ様の背後から奇襲をかけたのに、浮遊魔法でその踏み込みを潰されちゃった! ブレイドもミュンさんもこの上無く完璧なタイミングで奇襲をかけたのに! 不思議、アリサ様はまるで背中にも目があるみたい。


「うーん、もうひとつ足りないかなぁ……カイン、ここは一つ貴方の魔法を空撃ちして、私の注意をそらすとかしてほしかったわねぇ? それと、二人とも~せっかく背後を取ったのにいちいち声かけちゃ駄目よ?」

「ははは……マジかよアリサ姉ちゃん……」

「うぅぅ……完全に捉えたと思ったのに……」


 アリサ様のご指摘に項垂れるブレイドとミュンさん。正直私も信じられないって気持ちでいっぱい! どうして気付けたんだろう? 見てるのかな? 気配を感じてるのかな?


(……も、もしかして、今の私にも気付いているのかな!?)


 私は今、カイン様に襟首を咥えられて空高くに放り投げられて、自由落下中なんです。はうぅっ! いくら浮遊補助(フレス)の魔法が使えるからって滅茶苦茶ですよぉ~ふえぇっ!


「成る程、気を反らせば良いんですね! えっとその時に使う魔法は……」

「そうそう、例えば大きな音を出す魔法とか、派手に光ったりするのがいいかな!」


ズガアァァーンッッ!!!!


 ひゃううぅっ!!? ビックリしたよぉ~眼下ではアリサ様のアドバイスを早速実行に移しているカイン様が凄い音と光る魔法を使ってます。何の魔法だろ?


(って、今のうちに浮遊補助(フレス)を……風さん風さんお願いします! 私を運んで下さい、私にあつまって! お友達のみんな!)


 私はカイン様が派手な魔法でみんなの気をひいているうちに、そ~っと自分に浮遊補助(フレス)をかける。途端私の身体がふわっと軽くなり、落下速度がゆっくりになる。


(よーし! このままゆっくりアリサ様に近付いて……)

「そうそう、相手の注意を引き付けるってのも大事な戦術だからね。今のもいい感じだと思うよ? まぁ、私には無意味なんだけどねぇ~ミストちゃん♪」

「えぇっ!!?」


 そこまで言ってアリサ様が上を見上げた! バッチリと私と目が合って、ビックリした私は思わず叫んじゃった。


引き寄せ(アポート)っと、はーい♪ ミストちゃんつかまえた~♪」

「え? えぇーっ!? なにこれ~?」


 次の瞬間私はアリサ様の目の前にいて、むぎゅってアリサ様に抱き締められちゃってたの! 一体何が起きたか全然わかんなくて狼狽える私なんだけど……


「ふふ、ミストちゃん頑張ったね? よしよし、うん♪ 偉い偉い♪」

「ふああぁぁ……アリサ様……」


 撫で撫で~と、私の髪を優しく撫でてくれて抱き締められたそのぬくもりと、柔らかさがあまりにも心地よくて私はふにゃふにゃ~ってなっちゃう。


「おかぁさぁん……」

「え~? 私ママじゃないんだけどな?」

「はうぅっ!? ご、ごめんなさい! ま、間違えちゃった!」


 あうぅ……は、恥ずかしいよぉ~! 思わず声に出ちゃった。


「ぷっ! ワハハハ! 「お母さん」ってミスト子供かよ! はははっ!」

「あうーっ! 笑わないでよブレイドぉ~!!」


 むうーっ! お腹抱えて笑うブレイドにプンプンって怒ると、「ごめんごめん!」って謝るブレイド。もう! しょうがないんだから~!


「いやはや……完敗だ。アリサ殿、『聖域』の皆さん。ありがとうございました!」

「ここまで手玉に取られちゃぐうの音も出ないよ!」

「……勉強になった……感謝……します」


 バルドさん、セラさん、デュアードさんがそれぞれアリサ様達にお礼する。うん、本当に凄かったね! 私もこの場に居合わせる事が出来て本当によかった。こんな経験、まず出来ないもん。


「あぁぁ~ホント凄かったわぁ~♪ アリサ様! アリスちゃん! カインくんありがとね!」

「とても良い勉強になりました! 是非今後もよろしくお願いしたいです!」


 ミュンさんとシェリーさんも絶賛してます。それもそのはず、『聖域組』の皆さんは魔法の行使に詠唱を必要としないから、それだけで尊敬にあたいするんです。

 魔法使いとしてこれほどわかりやすい練度の指針はなく、私の先生のお二人も平行詠唱止まりだったんです。


「あーでも、アリサ姉ちゃんの剣技見たかったなぁ~なぁなぁ! 今度見せてくれよ!」

「も~ブレイドったら! でも、『聖域組』の皆さんがお手伝いしてくれるのは本当に有難いです! どうかよろしくお願いします!」


ワアアァーッ!!


 私達が揃ってアリサ様達に頭を下げると、観客の皆さんからも盛大な歓声と歓迎の声があがりました!


「「すげぇぇーっ!!」」「「こりゃあ次の氾濫(スタンピート)は勝ったも同然だぜ!」」

「「「来てくれてありがとうーっ!」」」「「大歓迎だぜーっ!!」」


ワアアアァァーッ! ワアアァーッ!!


 凄いです! 街中から喜びの声が聞こえます! アリサ様達はみんなに向けて手を振ってます。改めてその姿を目に焼き付ける、本当に凄い……とてもお綺麗で、とても強くて……尊敬、憧れ、羨望してしまいます! 私も頑張ってアリサ様のようになりたいな!


──────────────────────────────

【二戦目準備】~むくれる女神様~《ネヴュラview》

──────────────────────────────


「応! 静まれお前等~! いやぁ~すげぇもん見たな!! もう彼女達の実力を疑うような奴ぁいねぇだろうが、もう一つあるぜ! お前等も気になるだろ!? 帰ってきた『白銀』達がよぉ!!」


オオオォォォーッッ!!!


 ふふ、賑やかですわね。セリアベールの皆さんはこういったお祭り騒ぎがお好きなのかしら?

 アリサ様に、アリス様、そしてカインさんがそのお力の一端をお見せしただけでとても喜ばれています。さて、次は私と夫、そしてアルティレーネ様と『白銀』の皆さんとの模擬戦ですね。


「うふふ! さぁ、いよいよですね♪ バルガスさん、ネヴュラさん。頑張りましょうね?」

「はっ! 今やアイギス達は我等とて油断出来ぬ相手。全力で挑む所存!」

「ええ、私も頑張りますわ!」


 アルティレーネ様も夫も張り切っていますね。特にアルティレーネ様はとても楽しそう。街の皆さんにアリサ様達が認められて嬉しいのかしら?

 そして、アイギスさん達『白銀』の皆さんは『聖域』での鍛練を経て、見違えるような成長を遂げました。それはもう、私達聖魔霊一家にも迫るほどに。


「彼等は最初から全力で来るでしょう。あなた、どうされますか?」

「知れたことよ。全力には全力をもって応えるのみぞ。あやつ等は強くなった、一つ間違えれば我等が喰われる。油断するでないぞ?」

「あら? あらら? お二人ともそんなに気を張らなくていいんですよ?」


 え? アルティレーネ様の拍子抜けする一言に思わず私と夫は彼女に目を向けてしまいました。


「うふふ、だってこれはレクリエーションですもの♪ 楽しみましょう?」

「「は、はぁ……」」


 ええと……アルティレーネ様のご機嫌が良いのは、喜ばしいことなのですけれど。あら、あなた? なあに?


「我等は未だ女神様の戦うお姿を知らぬ。この期に知っておくべきなのかもしれんな」

「それは、そうかもしれませんけど……アルティレーネ様は護衛対象ですよ?」

「うむ。確かにそうだが、護衛対象の力量を知っておくのも必要ではないか?」


 うぅん~夫の言うことも最もではあるのですけれど、アルティレーネ様に戦っていただくなんて恐れ多くて恐縮してしまうわ。


「もう、お二人とも気にしすぎですよ? 私はお飾りじゃないんですから。それに街の皆さんに認めてもらわなくてはいけないのですからね?」


 アルティレーネ様はちょっと怒ったように私達を窘めます。そこまで仰られるのなら良いのかしら?


「そう言えばアリサお姉さまはまだ戻られていないのですか?」

「あぁ、レーネ様。アリサの嬢ちゃんならアイギス達のとこにいますぜ?」


 思い出したようにアリサ様の行方を探すアルティレーネ様に、ゼオンさんが答えます。

 アイギスさん達『白銀』の皆さんは一足先に、会場入りしています。アリサ様はこの来賓席には戻らずアイギスさん達と談笑されていますね。

 うふふ、アリサ様ったらもう、とても可愛らしい笑顔をされて……ふふ、恋する乙女ですね♪ 思わず私も頬がにやけてしまいます。


「もぅ~……アリサお姉さまったら! 可愛い妹よりもアイギスさんの方が大事ですか? ネヴュラさん。その辺どうなんです?」

「えっ!? そ、そう言われましても……」


 唐突に話をふられて動揺してしまいます。しかも、何かもう、とても答えづらい質問ですね。

 ですがまぁ、仕方ありませんわね、なんと言いましても……


「アリサ様はアイギスさんが初恋ですし……優先してしまうのは無理からぬ事ですわ、アルティレーネ様? 温かく見守りましょう?」

「うう……なんだかちょっと悔しいです……バルガスさん、ネヴュラさん。アイギスさんをちょっといぢめて差し上げましょうね?」

「「えっ?」」


 あらら、これは困りましたね……ごめんなさいねアイギスさん。今のアルティレーネ様には逆らえません。


「さあ、そろそろ私達も参りましょう。いつまでも皆さんをお待たせしてはいけませんからね」

「畏まりましたアルティレーネ様」

「はっ! 参りましょうぞ!」


 ゼオンさんとエミルさんに「行って来ます。見ていて下さいね」と、一声をお掛けになり、アルティレーネ様が会場に向かい、その後に私と夫も続きます。

 さて、上手く立ち回って街の皆さんに認めていただかなくてはいけませんね! 頑張りましょう!

ユニ「はっ!?Σ(*゜Д゜*)キュピーン」

フォレアルーネ「ん~? ゆにゆにどったの(-ω- ?)」

ユニ「ムムム!( ゜ε゜;)らいばるの気配がするよぉ~( `д´)」

レウィリリーネ「ライバル……(・_・?)」

ユニ「アリサおねぇちゃんに「ぎゅぅ」されるらいばるだよぉ!ヘ(゜ο°;)ノ」

ティリア「うん? 珠実みたいな子の気配するってこと?(*´ー`*)」

珠実「呼んだかえ~? 主神よ(ーωー)」

ユニ「あ、たまちゃんたまちゃん(゜A゜)大変だよ! アリサおねぇちゃんが、うあきしちゃう!(つд⊂)」

珠実「……女神達よ何の話なんじゃ?(;¬_¬)」

フォレアルーネ「アハハ(;´∀`)」

レウィリリーネ「ん、街にユニや、珠実みたいな可愛い子がいて……(。-ω-)」

ティリア「あんた達に会えなくて寂しいアリサ姉さんが、その子達を「ぎゅぅ♥️」 しちゃうよ~ヽ( ゜∀゜)ノって話よ?」

珠実「……成る程、故にらいばるとな(*-ω-) ふむ、案ずる事はないぞユニや(*´∇`*)」

ユニ「おぉ!?Σ(O_O;) たまちゃん何か名案があるの(°▽°)!?」

珠実「なに、アリサ様が帰ってきたらこちらから「ぎゅぅ」してやるのじゃ!(ノ≧▽≦)ノ」

ティリア「お~♪ いいわねそれ! みんなで突撃しちゃいましょう!Σd(・∀・´)」

ユニ「おぉーっ! いっぱい「ぎゅぅ」してなでなでしてもらうんだ~♪(☆∀☆)」

フォレアルーネ「うちもうちも~!ヽ(*´▽)ノ♪」

レウィリリーネ「……アリサお姉さん帰って来たら大変そう(´・ω・`; ) でも、あたしも突撃する(’-’*)♪」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ